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前編
16.奉仕
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困ったな、とレーネはティノールトに触れるのを少しためらった。しかしそれも一瞬のことで、指の背でそっと触れてから、ゆっくりと頬を撫でてやる。嬉しそうに、気持ちよさそうに目を細める顔に手が止まりかけて、目を伏せて必要な言葉を口にする。
「 Good boy、ティノールトくん」
視線を感じて目を向ければ空色の瞳がいつもより濃く見えた気がして、レーネは表情に出てしまわないよう微笑んでみせた。応えるように零すティノールトの笑みに結局指がうろたえて、そっと手を放す。
「今までは、君と話すことを大事にしていたつもりだけど……何かしてみたいことはある? Say」
レーネはあまり、暴力を伴うPlayが得意ではない。一人のSubに深入りしないよう、性的なことも避けてきた。
そのはずなのに遠征のとき、ティノールトに手を出して、拒まれなくて、本能に従って彼を射精させた。自分のCommandに従って、耐えて、放埓するまでのティノールトの顔が艶めかしくて、きっとレーネも興奮していたと思う。
自分がティノールトに傾いてきてしまっている自覚はレーネにもある。ちゃんと冷静でいなければならないはずなのに、彼のふとした表情や仕草に色気を感じてしまって、身勝手な欲が独り歩きし始めそうで恐ろしい。足元にいる彼はまだ学校を卒業したばかりの若者で、レーネの考えを伝えることはあっても、植えつけてはいけない相手だ。
彼は、彼の思うように。縛ってはいけない。
「……レーネさんに、奉仕したいです」
ティノールトに手を取られて、すりすりと頬を寄せられた。撫でてほしいのかと手を動かして、ただ、直前に聞いた言葉がうまく噛み砕けずに聞き返す。
「ほ……し……?」
「はい」
返事とともに見上げてきた瞳の艶に、思わず固まる。体がそわついたのは、きっと、気のせいのはずだ。
「レーネさんに……触りたいです」
頬を撫でていた手を取って手の甲に口づけるという行為に、色が含まれていないとは思わない。さすがにレーネでもわかる。
そのまま腕を伝うように向けられた視線に、レーネは喉を詰まらせた。夏のように鮮烈な空色が、ひたりとレーネに据えられている。
「嫌だったら……Stopって、言ってください」
答えられずにいるレーネの足に手を伸ばして、ティノールトがそっとズボン越しに肌を撫でてくる。反応を確かめるように、ゆっくり、レーネを見つめたまま手が進んでくる。
「ティノ、ルト、くん」
「嫌ですか」
ティノールトの手が即座に離れて、じっと見つめてくる。うまく言葉が出せず、レーネは首を横に振った。
嫌ではない。でも、どうしていいかわからない。
「誰か、と、あの……そういうこと、した、こと、ないから……こわ、い」
ティノールトの空気がふっと和らいで、レーネは小さく息をついた。
いい年をして怖いも何も、と自分でも思うが、経験がないことや知らないものは、いくつになっても怖い。誰かに言い寄られたこともないし、レーネ自身が誰かにそういう感情を抱いたこともない。
「俺を、手でイかせたのは?」
向けられたままの空色がいたたまれなくて、レーネはおずおずと椅子の上に足を引っ込めた。養父に見られたら行儀が悪いと怒られそうだが、体をぎゅっと縮めていないと落ちつかない。
「ティノールトくん、に、気持ちよくなって、ほしくて」
すでにティノールトが兆していたから、管理したいという欲を抑えきれずに手を出した。あれくらいだったら自分でするときとほぼ変わりないから、そんなにハードルも感じなかったのだ。止めたいならセーフワードを言ってもらえばいいと思っていたのだが、言えるような心理状態ではなかったとなじられるなら、もちろん謝罪する。
半ば泣きそうな気持ちでティノールトに謝ろうと目を向けると、先ほどより柔らかくなった空色がまっすぐこちらを見つめていた。
「……レーネさんに、触れてもいいですか」
「……うん」
立ち上がったティノールトが、ゆっくり手を伸ばしてくるのが怖くて目をつむる。叩かれたり殴られたりするのは、痛くて怖い。
しかし手が触れたのは思っていたのと反対側で、レーネが何かする前に温かいものが寄り添ってくる。
思いきって目を開けて、目の前の体と、見上げた先の表情に、肩の力が抜けた。
「……怖がらせてすみません。気がはやってました」
よしよしと背中を撫でられるとほっとする。炎にまかれて怖い思いをした、あのときと同じだ。
ティノールトに抱きしめてもらうと、温かくて怖くないし、安心する。おそるおそるすがってみても、嫌がられない。力のこもっていた体を緩めて預け、背中に触れる手のリズムに合わせて息を整える。
「ティノールト、くん」
「はい」
子どもをあやすように背中を撫でられているというのは少々情けないが、レーネだって覚悟を決めれば何とかなる。はずだ。ティノールトに悪意がないことだってわかっているし、たぶん、怒ってもいない。
だから、決心すれば、大丈夫。あと、ティノールトが抱きしめてくれていれば。
「僕がHugって言ったら、ぎゅってしてくれる?」
「……新しい、Commandですか?」
「うん」
Stopと止めるほど嫌ではないし、Stayで待ってもらったとして、どれくらい経てば大丈夫なのかわからない。
でも、ティノールトの腕の中にいれば、安心できるし怖くなくなるはずだ。そうしたら、触られても大丈夫。
「わかりました」
「Hug」
すかさずぎゅっと抱きしめてくれる。下心があってレーネに優しくしていると言っていたが、ティノールトは根が優しいと思う。こんなに回りくどくあれこれ手をかけないといけない相手に付き合うのは、面倒なだけだろう。しかも年上の同性で、魔法の腕以外はぱっとしない。
自分でちょっと悲しくなったが、とにかくそんな相手に丁寧に対応してくれるのだから、ティノールトは誠実で、優しい。
「……触っても、いいよ」
ぴた、と背中の手が止まった。そうしたいのではなかったかと視線を上げると、なぜかティノールトが真顔になっている。もしかして間違えたのかもしれない。
「……違っ、た?」
「さっき、怖い、って」
「……君がぎゅってしてくれてたら、大丈夫だと思う」
急に体が浮いて、少し遅れて抱き上げられたらしいことを理解する。レーネを軽々と抱えられるティノールトはすごいと思うのだが、そもそも抱き上げられた理由がわからない。首を捻ってティノールトを見るものの、じっとレーネを見つめているだけだ。
「ティノールトくん?」
「……椅子だと難しいので、ベッドでもいいですか」
「…… Take」
そのまま大股で二段ベッドに運ばれて、下側に下ろされる。ティノールトも滑り込んできて、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「連れてきてくれて、ありがとう」
「……本当に、嫌だったらStopって言ってください」
言いつつ、ティノールトの手がレーネのズボンに伸びてくる。ドキドキはするがさっきほど怖くはないから、やはりティノールトに抱きしめられていたら大丈夫そうだ。下着も脱がされて下半身があらわになって、腿をゆっくり撫でられる。レーネを抱えているほうの手がへその下あたりを撫でてくるのが、ちょっとこそばゆい。
「お腹、くすぐったいよ、ティノールトくん」
くつくつ笑うレーネにティノールトが何を思ったかわからないが、ふにっとしたものが耳にあたる。
「そのほうが、怖くないでしょう?」
気遣ってくれていたらしい。腿を撫でていた手がいつのまにかレーネのものに触れていて、ゆるゆると刺激してくるものの確かに怖くない。少し、撫でられている腹のあたりがそわそわする。
「……嫌じゃ、ないですか」
「嫌じゃ、ないよ」
レーネより長い指、大きな手が、予測できない動きをして吐息が漏れる。自分でするときは出すことだけが目的だから単調な動きになりがちだが、人にされると手の感触も触れ方も違って、身構えていられない。
「っ、ん、でちゃ、ぅ、ティ、ノールトっ、くん……っ」
「……俺も、レーネさんに気持ちよくなってほしいです」
出して、と囁きを流し込むように言われて、我慢しなくていいのだと欲望を押し出す。乱れた息のままティノールトを振り返ると、するりと腹を撫でられた。
「……かわいい、レーネさん」
ぼんやり見つめているレーネのおでこに口づけて、ティノールトの手がまたレーネのものを撫でる。
「んっ、ん」
「もっと、あなたに奉仕させてください」
そのあとも乳首や尻を揉まれたり、体を余すところなく撫で回されたりして、レーネがすっかり動けなくなるまでティノールトの奉仕が続いた。
「 Good boy、ティノールトくん」
視線を感じて目を向ければ空色の瞳がいつもより濃く見えた気がして、レーネは表情に出てしまわないよう微笑んでみせた。応えるように零すティノールトの笑みに結局指がうろたえて、そっと手を放す。
「今までは、君と話すことを大事にしていたつもりだけど……何かしてみたいことはある? Say」
レーネはあまり、暴力を伴うPlayが得意ではない。一人のSubに深入りしないよう、性的なことも避けてきた。
そのはずなのに遠征のとき、ティノールトに手を出して、拒まれなくて、本能に従って彼を射精させた。自分のCommandに従って、耐えて、放埓するまでのティノールトの顔が艶めかしくて、きっとレーネも興奮していたと思う。
自分がティノールトに傾いてきてしまっている自覚はレーネにもある。ちゃんと冷静でいなければならないはずなのに、彼のふとした表情や仕草に色気を感じてしまって、身勝手な欲が独り歩きし始めそうで恐ろしい。足元にいる彼はまだ学校を卒業したばかりの若者で、レーネの考えを伝えることはあっても、植えつけてはいけない相手だ。
彼は、彼の思うように。縛ってはいけない。
「……レーネさんに、奉仕したいです」
ティノールトに手を取られて、すりすりと頬を寄せられた。撫でてほしいのかと手を動かして、ただ、直前に聞いた言葉がうまく噛み砕けずに聞き返す。
「ほ……し……?」
「はい」
返事とともに見上げてきた瞳の艶に、思わず固まる。体がそわついたのは、きっと、気のせいのはずだ。
「レーネさんに……触りたいです」
頬を撫でていた手を取って手の甲に口づけるという行為に、色が含まれていないとは思わない。さすがにレーネでもわかる。
そのまま腕を伝うように向けられた視線に、レーネは喉を詰まらせた。夏のように鮮烈な空色が、ひたりとレーネに据えられている。
「嫌だったら……Stopって、言ってください」
答えられずにいるレーネの足に手を伸ばして、ティノールトがそっとズボン越しに肌を撫でてくる。反応を確かめるように、ゆっくり、レーネを見つめたまま手が進んでくる。
「ティノ、ルト、くん」
「嫌ですか」
ティノールトの手が即座に離れて、じっと見つめてくる。うまく言葉が出せず、レーネは首を横に振った。
嫌ではない。でも、どうしていいかわからない。
「誰か、と、あの……そういうこと、した、こと、ないから……こわ、い」
ティノールトの空気がふっと和らいで、レーネは小さく息をついた。
いい年をして怖いも何も、と自分でも思うが、経験がないことや知らないものは、いくつになっても怖い。誰かに言い寄られたこともないし、レーネ自身が誰かにそういう感情を抱いたこともない。
「俺を、手でイかせたのは?」
向けられたままの空色がいたたまれなくて、レーネはおずおずと椅子の上に足を引っ込めた。養父に見られたら行儀が悪いと怒られそうだが、体をぎゅっと縮めていないと落ちつかない。
「ティノールトくん、に、気持ちよくなって、ほしくて」
すでにティノールトが兆していたから、管理したいという欲を抑えきれずに手を出した。あれくらいだったら自分でするときとほぼ変わりないから、そんなにハードルも感じなかったのだ。止めたいならセーフワードを言ってもらえばいいと思っていたのだが、言えるような心理状態ではなかったとなじられるなら、もちろん謝罪する。
半ば泣きそうな気持ちでティノールトに謝ろうと目を向けると、先ほどより柔らかくなった空色がまっすぐこちらを見つめていた。
「……レーネさんに、触れてもいいですか」
「……うん」
立ち上がったティノールトが、ゆっくり手を伸ばしてくるのが怖くて目をつむる。叩かれたり殴られたりするのは、痛くて怖い。
しかし手が触れたのは思っていたのと反対側で、レーネが何かする前に温かいものが寄り添ってくる。
思いきって目を開けて、目の前の体と、見上げた先の表情に、肩の力が抜けた。
「……怖がらせてすみません。気がはやってました」
よしよしと背中を撫でられるとほっとする。炎にまかれて怖い思いをした、あのときと同じだ。
ティノールトに抱きしめてもらうと、温かくて怖くないし、安心する。おそるおそるすがってみても、嫌がられない。力のこもっていた体を緩めて預け、背中に触れる手のリズムに合わせて息を整える。
「ティノールト、くん」
「はい」
子どもをあやすように背中を撫でられているというのは少々情けないが、レーネだって覚悟を決めれば何とかなる。はずだ。ティノールトに悪意がないことだってわかっているし、たぶん、怒ってもいない。
だから、決心すれば、大丈夫。あと、ティノールトが抱きしめてくれていれば。
「僕がHugって言ったら、ぎゅってしてくれる?」
「……新しい、Commandですか?」
「うん」
Stopと止めるほど嫌ではないし、Stayで待ってもらったとして、どれくらい経てば大丈夫なのかわからない。
でも、ティノールトの腕の中にいれば、安心できるし怖くなくなるはずだ。そうしたら、触られても大丈夫。
「わかりました」
「Hug」
すかさずぎゅっと抱きしめてくれる。下心があってレーネに優しくしていると言っていたが、ティノールトは根が優しいと思う。こんなに回りくどくあれこれ手をかけないといけない相手に付き合うのは、面倒なだけだろう。しかも年上の同性で、魔法の腕以外はぱっとしない。
自分でちょっと悲しくなったが、とにかくそんな相手に丁寧に対応してくれるのだから、ティノールトは誠実で、優しい。
「……触っても、いいよ」
ぴた、と背中の手が止まった。そうしたいのではなかったかと視線を上げると、なぜかティノールトが真顔になっている。もしかして間違えたのかもしれない。
「……違っ、た?」
「さっき、怖い、って」
「……君がぎゅってしてくれてたら、大丈夫だと思う」
急に体が浮いて、少し遅れて抱き上げられたらしいことを理解する。レーネを軽々と抱えられるティノールトはすごいと思うのだが、そもそも抱き上げられた理由がわからない。首を捻ってティノールトを見るものの、じっとレーネを見つめているだけだ。
「ティノールトくん?」
「……椅子だと難しいので、ベッドでもいいですか」
「…… Take」
そのまま大股で二段ベッドに運ばれて、下側に下ろされる。ティノールトも滑り込んできて、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「連れてきてくれて、ありがとう」
「……本当に、嫌だったらStopって言ってください」
言いつつ、ティノールトの手がレーネのズボンに伸びてくる。ドキドキはするがさっきほど怖くはないから、やはりティノールトに抱きしめられていたら大丈夫そうだ。下着も脱がされて下半身があらわになって、腿をゆっくり撫でられる。レーネを抱えているほうの手がへその下あたりを撫でてくるのが、ちょっとこそばゆい。
「お腹、くすぐったいよ、ティノールトくん」
くつくつ笑うレーネにティノールトが何を思ったかわからないが、ふにっとしたものが耳にあたる。
「そのほうが、怖くないでしょう?」
気遣ってくれていたらしい。腿を撫でていた手がいつのまにかレーネのものに触れていて、ゆるゆると刺激してくるものの確かに怖くない。少し、撫でられている腹のあたりがそわそわする。
「……嫌じゃ、ないですか」
「嫌じゃ、ないよ」
レーネより長い指、大きな手が、予測できない動きをして吐息が漏れる。自分でするときは出すことだけが目的だから単調な動きになりがちだが、人にされると手の感触も触れ方も違って、身構えていられない。
「っ、ん、でちゃ、ぅ、ティ、ノールトっ、くん……っ」
「……俺も、レーネさんに気持ちよくなってほしいです」
出して、と囁きを流し込むように言われて、我慢しなくていいのだと欲望を押し出す。乱れた息のままティノールトを振り返ると、するりと腹を撫でられた。
「……かわいい、レーネさん」
ぼんやり見つめているレーネのおでこに口づけて、ティノールトの手がまたレーネのものを撫でる。
「んっ、ん」
「もっと、あなたに奉仕させてください」
そのあとも乳首や尻を揉まれたり、体を余すところなく撫で回されたりして、レーネがすっかり動けなくなるまでティノールトの奉仕が続いた。
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