メトロポリタン

暁エネル

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遊園地①

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「遊園地 本当に来ちゃった」


俺はそう言いながらシートベルトをはずした




俺が車から出ると 入場口にはチケットを買う人が並んでいた


「弘樹行こう」


「うん」


俺と翔はチケット売り場へと並んだ


翔に気付き見た人が友達の肩をたたき 口を手で押さえていた


翔の立ち姿は誰もが目を引いていた




(翔はもうこういうの慣れっこなのかなぁ~ あんなにジロジロみんなから見られて・・・ 俺だったらこんな人の集まる所へは来ないかなぁ~)




俺は財布を出そうとポケットへ手を入れた




(えっそうじゃん これ翔の洋服 俺財布持って来てないじゃん どうしよう・・・)




「翔ごめん・・」


「どうした弘樹」


「俺財布持って来てない・・・」


「なんだそんな事・・・ 大丈夫だ」


翔は笑ってそう言った


翔の長い髪の毛が風になびいて 本当にモデルさんみたいに見えた



「えっでも俺・・・」


翔の嬉しそうな顔がそこにはあった


俺はその翔の顔に 何も言う事が出来なかった




チケット売り場のお姉さんが マイクを使って対応していた


俺達の番になり 翔がチケット売り場の前へ


「大人2枚 お願いします」


翔がそう言うと 売り場のお姉さんは何も答えず


俺が売り場を覗き込むと 売り場のお姉さんは翔を見たまま固まっていた


「あの~ チケット・・・」


「あっすいません」


お姉さんは大きな声を出し チケットを渡してくれた




(わかる わかるよお姉さん 一緒に居る俺ですらそうなるんだから・・・)




俺は心の中でそう言って 翔からチケットを受け取った


「翔 ありがとうチケット代は ちゃんと返すから・・・」


「弘樹それはいいよ 今日は俺の付き合いだから・・・」


そう言って翔は笑っていた




入口に居たのは男の人 順番に並びチケットの半券を切ってもらった


「いってらっしゃい」


そう言ってにこやかに手を振ってくれた




いよいよ遊園地の中へ


「翔 俺遊園地スゲ~久しぶりに来たよ」


「弘樹 俺もだ」


そう言いながら翔は キョロキョロと何かを探している様子だった


その時 キャーと言う悲鳴が遠くから聞こえ 翔は俺の腕を掴み歩き出した


「弘樹こっちだ」


そう言って翔は グイグイと俺を引っ張り歩いていた 




(ちょっと待ってみんなが見てるよ)




翔は長い髪の毛をなびかせながら 俺の腕を掴み歩いていた


翔を目にした人は みんな足を止めていた




(えっ待って もしかして翔が向かっている場所って・・・)




凄い音とキャーと言う悲鳴が だんだんと大きくなり 俺の嫌な予感が当たってしまった


そこはレールがグニャグニャと曲がった ジェットコースターの前だった


たくさんの人達が並んで順番を待っていた




「翔」


「弘樹並ぶぞ」




(やっぱりジェットコースターじゃん 翔はへ~きな人なの? 遊園地に来て1番初めに乗るって やっぱり好きなんだよねぇ~ 俺は正直苦手なんだけど・・・)





そう思いながらキャーと言う悲鳴と 物凄いスピードの音に俺は耳をふさぎたくなっていた


早いペースで前へ前へと進み 俺は先頭にならないでほしいと願っていた



「順番に枠の中へお進み下さい」


係の人にそう言われ 翔が俺の前に進んだ


翔が進んだ枠は 1番後ろの席 俺は翔に続いた





(とりあえず良かった1番前じゃなくて・・・)




翔の前の人がジェットコースターに乗り込んだ




(いよいよ次の番だ・・・)




「いってらっしゃい」


係の人がニコやかに手を振っていた


ジェットコースターは勢い良く走り出した




(えっ最初からそんなに速いの・・・)




俺はドキドキが止まらなかった


「弘樹 次だ・・・」


そう言って翔は俺の方を向いて 長い髪の毛をゴムでしばっていた



ジェットコースターは俺の心の準備もそっちのけで帰って来た



翔がジェットコースターに乗り込むと 俺に手を差し伸べていた


「弘樹 気を付けて・・・」


「あっありがとう・・・」


俺は条件反射で 翔の手の上に乗せジェットコースターへ乗り込んだ


俺は座席に着いた


「えっ翔 これどうやるの?」


翔はすでに上から安全バーをおろしていた


「弘樹 上から引っ張って・・・」


俺は翔に言われるがまま 力強く上から安全バーをおろした


係の人がちゃんと確認しに回って来てくれていた




(これ手はどこを掴めばいいの? 隣に居る翔の顔が見えない 見えないってこんなに不安なの・・・)




俺はとりあえず安全バーを両手でしっかりと掴んでいた


「それでは いってらっしゃい」


そう聞こえたとたん ジェットコースターが勢い良く走り出した




(ヤバいヤバいヤバい・・・ 怖い・・・)




少し走り出しすと ジェットコースターは急にゆっくりと動き出した




(えっ何これ・・・ 登ってる)




「弘樹 あっちの景色スゲ~ながめ・・・」


翔の腕が俺の方へと伸びて来た




(本当だ・・・ ずいぶん高く上った・・・)




キレイな景色を見ていたとたん いきなり前がなくなり


俺はみんなのキャーと言う悲鳴に負けないくらい 


安全バーに力が入り 目を思いきりつぶっていた





(俺 ダメかも?)




俺はジェットコースターに頭を振られ 何度も息を止めていた


翔の笑い声が聞こえる様になったのは ジェットコースターがゆっくりと進み止まる頃だった





(はぁ~やっと終わった・・・)




安全バーが上に自動的に上がり 翔の手が俺へと伸びていた


「弘樹 立って・・・」


俺は翔に手を伸ばし よろけながら立ち上がり


ジェットコースターから離れた瞬間 俺は膝から崩れ落ち翔に支えられた


「弘樹大丈夫?」


俺は足に力が入らず 係の人も駆け付けて来てくれた


「お客様大丈夫ですか?」




(うわ~みっともない 俺って情けない・・・)




「大丈夫です俺が連れて行きますから・・・」


翔の言葉に俺は少し安心していた




(良かった・・・ このまま医務室とか 俺それこそ翔に申し訳ないよ・・・)




俺はしっかりと翔に支えられ スラロームをゆっくりと進んで行った




「弘樹大丈夫か?」


「うん 少し良くなった」


俺は翔に支えられ歩く事が出来た


「弘樹 そこのベンチ・・・」


ジェットコースターの下には ベンチがあちらこちらにあった


俺は翔から滑り落ちる様にベンチに座ると 俺の前に翔がしゃがんだ


「弘樹 飲み物買って来る 何がいい?」




(翔の顔が近いよ・・・)




「あっありがとう・・・ 俺お茶がいい」


「わかった 弘樹はここで休んでて・・・」


そう言って翔は 髪の毛を束ねていたゴムを取りながら 歩いて行ってしまった




(本当にモデルさんみたい・・・ カッコいいなぁ~)




俺はそう思いながら 翔の後ろ姿を見ていた




(そうだよね そう言う反応になちゃうよね)




翔を見て立ち止まる人がたくさん居た




(何で翔は遊園地なんかに来たんだろう・・・)




(弘樹の顔色も良くなったし大丈夫かなぁ~)




俺はそう思いながら自販機でお茶を買った




ジェットコースターに乗る前よりも みんなのキャーと言う悲鳴や物凄い音にも 慣れた様な気がした




翔は両手にペットボトルを持ち 真っ直ぐ俺の方へと歩いて来た


「弘樹お待たせ・・・」


そう言って翔は俺の隣に座って ペットボトルのお茶を渡してくれた


「ありがとう 翔」


俺は翔からペットボトルを受け取り 半分ぐらい一気に飲んだ




(あぁ~生き返る・・・)




俺がふぅ~と息をはくと 翔がクスっと笑った


「弘樹はもしかして ジェットコースター苦手だった?」


「うん 割とダメな方・・・」


「そっか・・・ でもスッキリしただろう・・・ 身体が浮いた感覚・・・」


「それが嫌なんでしょう」


俺はつい大きな声を出してしまった


すると翔は俺の顔を見て 声を出して笑い出した


俺は翔が笑い出し 初めはびっくりしたものの 


翔がお腹を押さえながら笑い その姿に呆れ果ててしまうほど 翔が笑っていた




(えっ何で笑うの? 俺おもしろい事なんて言ってないのに・・・)





「弘樹・・・ そんなに笑わせないで・・・」


そう言って翔は俺の顔を見て 笑うのをこらえ また吹き出し笑っていた




(こりゃ~ダメだ・・・ 翔はツボに入ってるしばらく笑ってる 意外だなぁ~ 翔がこんなに笑う人だったなんて・・・ もっとクールな人だと思ってた)





翔が笑って居る間も ジェットコースターからおりて来る人は みんな翔に目を向けていた




翔がやっと落ち着き ペットボトルのお茶を飲んだ


「はぁ~弘樹 こんなに笑ったのは久しぶりだよ・・・」


そう言って翔は俺の顔を見ていた


「俺も翔がこんなに笑う人だとは思わなかったよ」


「本当に久しぶりだ・・・ ありがとう弘樹」




(そんなカッコいい顔で言わないでよ 怒れないじゃん)




俺はペットボトルのお茶を飲み干した



「翔 ここ嫌だどこか移動しよう・・・」


「そうだな」


俺と翔は立ち上がった



(つづく)

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