悠と榎本

暁エネル

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僕の悲劇

雷 三日と言うけれど 


昨日 榎本が帰ってから また雷雨になった


お母さんは 榎本の事を心配していたけれど


榎本はいつも 走って帰る


榎本の足なら 数分だ


だから 雨には降られていない 多分・・・




僕は昨日みたいに 榎本が来るのを待っていた




(昨日 榎本は僕の部屋に 宿題を置いて帰ってしまったから 必ず榎本は来るはず・・・ 昨日とは全く違う 今日は榎本が来るが 待ち遠しい・・・)





チャイムが鳴った


僕が玄関のドアを開けると 榎本が顔を出した


「悠 おはよう」


「おはよう 榎本」


榎本は 昨日と同じ時間に来た


僕は榎本の顔を見て ホッとしていた



「あっ榎本 ちょっと待って」


僕は部屋を少し開け 榎本に宿題の入ったリュックを渡した


「おっ サンキュー」


榎本はリュックを受け取り 奥へと進んだ


僕は玄関のドアに つっかえ棒をし チェーンをかけた


「今日も 暑いなぁ~」


榎本は そう言いながら椅子に座った


僕は扇風機を 榎本に向けた


「榎本 昨日の雨 大丈夫だった?」


「あぁ~雷 鳴ってたけど降られなかったよ」


僕は麦茶を入れ 榎本の前に置いた


「いや~ 悠のマンション出た時は そんな雲なかったんだけどなぁ~ シャワー浴びて出て来たら 部屋が暗くなってて 雨 以外に早く降って来たなぁ~」


「うん そうだね・・・ お母さんが榎本の事 心配してたよ」


「そっか・・・」


榎本は麦茶を飲み 宿題を開いた




「あぁ~そうだ悠 明日も 空いてる?」


「うん 何もないけど何?」


「プール行こう プール」


「えっ プール?」


「あぁ~昨日 隆から電話あって サッカー部の連中とプール行く事になったんだ 悠も行こう」


「えっいいよ~ 僕 サッカー部じゃ~ないし 楽しんで来てよ」


「ダメだ・・・ 悠も一緒に行くんだ」


榎本は 真っ直ぐ僕を見て そう言った


「悠・・・ 水泳苦手だろう だから俺が教える」


「えーいいって大丈夫・・・ だから・・・」





(榎本が教える・・・ 冗談じゃない・・・ 榎本はきっと 僕を泳げる様に 教えてくれるかもしれない・・・ でも多分 そんな事をされたら 僕の体がもたない・・・ 多分 いや絶対に)





「悠・・・ 今度は俺が教える番だ」


榎本はそう言って 英語の宿題に取り掛かった




(やっと俺が 悠の役に立つ時が来た・・・) 





(どうしよう どうすればいい・・・ このままだと 僕は明日 プールに行くことになってしまう・・・ 何とかしないと・・・)




榎本は シャーペンを止める事なく 次々と問題をクリアしていく





(これはまずい・・・ 本当にまずい 何とか 榎本の気をそらさないと・・・)





「榎本チョコ・・・ チョコレートあるよ食べる?」


「今は いい」


榎本は 僕の顔を見る事なく そう言った





(昨日の榎本とは まるで別人だ・・・ 榎本は目標を定めると それに向かって突き進む・・・ 終わりだー 僕が いくら榎本に話しかけても 榎本は・・・)





「悠 どうしたの?」




(なんか悠が かわいい・・・ 落ち着かない様子の悠 初めて見た・・・)




僕は 消しゴムを転がしてみたり チョコレートを突っついていた


「あっ 何でもない」




(これじゃ~昨日の榎本と アベコベだ)





榎本は 僕の顔をチラリと見て また宿題に取り掛かっていた


「榎本・・・ そろそろ お昼ご飯買いに行かない?」


「悠ワリー 俺今日 自分でおにぎり握って来た 宿題 今日中に終わらせねぇ~となんねぇ~し」


「そうなんだ」


「あっでも 悠が買いに行くなら付き合うよ」


「ううん 僕も大丈夫 カップラーメンにするから」




(やられたー 榎本は 何が何でも宿題を終わらせるきだ・・・ 僕が何をしても 榎本の集中力は阻止出来ない)





僕は 台所へ


「はぁ~」


僕は 小さくため息をついた





(どうしよう・・・ 僕がプールに行っても 僕が泳げる様になるまで どれだけの時間がかかる・・・ 榎本は みんなと一緒に遊べないんじゃ~ないか? せっかく大塚君が 誘ってくれたのに 僕が行く事で榎本が つまらない思いをするのは・・・ 耐えられない・・・)




榎本は 大きなおにぎり2個を テーブルに置いて 食べながら宿題を始めた


僕は 榎本に麦茶を入れ カップラーメンをテーブルに置いた


「悠は 読書感想文 もう終わった?」


「えっ まだだけど」


「俺さ~ 字が並んでるの見るだけで 読む気力がなくなる マンガなら いくらでも読めるんだけどなぁ~」


榎本はそう言いながら 麦茶を飲んだ


「悠 何か俺でも読める本ない? ってか悠は 何でそんなに本が好きなの?」


榎本にそう言われて 僕は逆に考えてしまった






(僕はいつから 本を読む様になったんだろう 小さな時は絵本だった)





「なんかさ~ こう想像するんだ・・・ こんな感じなのかなぁ~?とか 僕とは全く違う考え方や価値観が 面白いなぁ~って・・・ その物語僕の中に 入って行けるそんな感じがして・・・ 榎本 僕が持っている本なら 貸してあげるよ・・・ 太宰治の人間失格とか 走れメロスとか・・・ 夏目漱石のこころとか 坊ちゃんや 吾輩は猫である 三四郎 芥川龍之介の羅生門や 蜘蛛の糸・・・ 宮沢賢治の雨ニモマケズ 銀河鉄道の夜とか・・・あと・・・」


「悠・・・ ちょっと ちょっと待った」





(悠の勢いが止まんねぇ~ そんなに言われても俺わかんねぇ~ でも 悠の嬉しそうな顔は やっぱかわいいなぁ~)




「あっ ごめん榎本」


「いやいい 悠が本を好きなのは伝わった」





(榎本が笑ってる 僕 調子に乗って喋り過ぎた?)





「悠・・・ あとで本見せて」


「うん いいよ」


榎本の優しい顔に 僕はまた救われた


榎本と僕は お昼ご飯を食べ終え 榎本は また宿題を始めた


「ねぇ~ 榎本」


「ううん 何?」


「やっぱり僕 プールに行くのやめておくよ』


榎本は シャーペンを置いて僕を見た


「悠 何で?」


「だって僕が行ったら 榎本は楽しめなくなちゃう・・・ 僕 泳げないし・・・ 榎本は 教えてくれるって言ったけど 僕が 泳げる様になるまで どれぐらいの時間がかかるかわからない だから僕が・・・」


「悠 聞いて・・・」


榎本は 僕を真っ直ぐ見た


「俺が 悠と一緒に居て楽しめない訳がない・・・ 勉強そんなできない俺が 悠のおかげで 成績 上がったんだ・・・ だから今度は 俺が 悠の役に立つ番なんだよ・・・ それに 隆にも頼んだんだ 隆は的確なアドバイスができるから・・・ 昨日も言ったけど・・・ 悠が 俺の事で悩む事は 何もなんだよ悠・・・  今こうして居る事じたい 俺は凄く嬉しいんだ・・・」


榎本はそう言って 僕に手を伸ばし 僕の手を重ねた




(あぁ~ このまま悠にキスしてぇ~・・・ 手だけじゃなくって・・・ なんで 宿題なんてあるんだよ・・・ )





榎本は 僕を見つめながら ゆっくりと僕の手から離れた




僕が 明日の事を考えているうちに 榎本はついに 英語の宿題を終わらせた



「ヤッター 悠 やっと英語の宿題終わった」


榎本はそう言って 嬉しそうに両手を上げた


「これも 丸付けするんだっけ?」


「うん」


「じゃ~ 悠 また丸付けして」


「うん わかった」


榎本はチョコレートに手を伸ばして 口に放り込んだ


榎本の英語の宿題は 僕が全部見ていたから 丸付けもすぐに終わった


「榎本 丸付け終わったよ 僕の部屋に行って 本を見てみる?」


「あぁ~悠ワリー 俺 悠の部屋行けねぇ~」


「えっ 何で?」




(何で行けないの? 榎本が困っている?)




「あっじゃ~ 僕 何冊か持って来るね」


「あぁ~ 悠ありがとう」


僕は直ぐに席を立ち 部屋へ





(榎本が 僕と同じだと言う事を忘れていた・・・ 僕のニオイが 榎本にとって刺激になるんだ)





(俺が 悠の部屋に行ったら 昨日の二の舞いだ・・・ そんな事になったら 明日ゼッテー 悠はプールに行くところじゃ~なくなる・・・ そんな事ゼッテーダメだ)




僕は いろいろな本を持って 榎本の所へ


「悠 ありがとう スゲーなぁ~」


僕は テーブルに本を置いた


「いろいろ 持って来たんだけど」


榎本は 本に手を伸ばした


「薄くて 簡単に読めそうな・・・」




(どれもこれも 俺にとっては難しいそうだなぁ~)




「あっ これ薄い」


榎本が1冊の本を 手に取った


「あぁ~その本ね 結末が初めに書いてあって どうなるんだろうって ワクワクしながら 読んだ本だよ・・・ 榎本向きかもしれない」


「そうかぁ~ じゃ~決まりだ」


榎本は 嬉しそうにそう言った





家のチャイムが鳴った


僕は 玄関へ


「お母さん お帰り」


「ただいま」


榎本は席を立ち お母さんに頭を下げた


「お邪魔しています」


「榎本君 いらっしゃい」


お母さんは 買い物袋を台所へ


「おばさん明日 悠とプールに行ってもいいですか?」


「まぁ~プール楽しそうね 行って来たら」





(しまった・・・ 僕が言う前に 榎本に言われてしまった・・・)





(やったー おばさんの許可がおりた これでもう 大丈夫だ・・・)





榎本はテーブルに置いてある 宿題を片付けはじめた



「お邪魔しました おばさんあとで うちの母ちゃんから 連絡が来ると思います」



「そう じゃ~待ってるわね」



榎本は 僕の貸した本を リュックに入れた


「じゃ~悠 本借りとく 明日 迎えに来るから」


「うん わかった」


「お邪魔しました」



榎本は慌ただしく 帰って行った





(やっぱ俺 悠の母ちゃん苦手だなぁ~・・・ なんか全部 お見通しだって 思われてるみてぇ~で・・・ でも 明日 悠とプールに行ける スゲー楽しみ・・・)



(つづく)


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