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運動会⑤
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グランドに居る 全ての人達が応援している様は 迫力があった
それに答えるかの様に 選手達も凄い走りを見せていた
僕と榎本が席に座ると リーダーがスタートラインに立った
(本当に危なかった・・・ もう少し遅かったら 見逃してしまうところだった)
みんなが声をあげ リーダーを応援していた
僕は祈る様に両手を組 リーダーを見守る事しか出来なかった
リーダーが バトンを受け取り走り出した
リーダーは男子と走っているのに 抜かされる事もなく 3位で次の人にバトン渡していた
順位は変わらず 最終ランナー大塚君にバトンが繋がり
大塚君も凄い速さで 前を走る人を追いかけていた
(みんなの応援が凄い・・・ 大塚君も速いのに・・・)
パンパンと音が鳴り 2年生の学級対抗リレーが終わった
「他のクラス 陸上部揃えてきてたでしょう」
「やっぱそうか~ 隆が抜けねぇ~訳ねぇ~もん」
須藤さんが振り返って 榎本と話をしていた
「悠 どうした?」
榎本が僕の方を向いてくれた
「榎本どうしよう・・・ 僕の指がほどけない」
(僕の指 どうしちゃったんだろう・・・)
(なんだよ悠・・・ ここでそんなかわいい顔すんなよ・・・)
祈る様に組まれた僕の指は まるで言う事を聞かなかった
榎本は驚いた様子もなく 僕の指を1つずつゆっくりと伸ばしてくれた
「悠も力いっぱい 応援していたんだなぁ~」
榎本はそう言いながら 優しい笑顔を僕に向けてくれた
「悠 ゆっくりグーパーしてみて」
榎本に言われた通り 僕はゆっくりと手を動かした
「榎本 ありがとう」
(良かった 動かせた・・・ でもなんでだろう・・・)
「悠みんなが居る前で そんなかわいい顔をするな・・・」
榎本は僕の耳元で 小さな声でそう言った
僕の顔が熱くなるのがわかった
3年生の学級対抗リレーも終わり リーダーと大塚君が退場した
「2年生のみなさんは 入場門へ集まって下さい」
放送が流れた
「悠 大ムカデだ」
榎本はそう言って立ち上がった
みんなは入場門へと向かっていた
僕と榎本と須藤さんは 退場門から出て来た リーダーと大塚君を待っていた
「美咲~やられた~」
そう言いながら僕と榎本の間に居た 須藤さんにリーダーが抱きついていた
須藤さんは リーダーの頭を優しくポンポンした
(なんだよリーダー・・・ 俺も堂々と悠に 抱きつきてぇ~よ)
「正臣 わかってんだろうなぁ~」
「あぁ~大丈夫だ 隆の言いたい事は だいだいわかる」
(大塚君がいつもと違う・・・ よっぽどさっき 抜かせなかったのが悔しかったんだ・・・)
「まずは大ムカデだ」
榎本の言葉で みんなは入場門へと向かった
「ゼッテー1位 取るからなぁ~」
「当たり前・・・ このまま 負けっぱなしなんて冗談じゃないからね」
大塚君の言葉に リーダーが続いた
(凄い気合いだ・・・ 足を引っ張らない様にしなくちゃ・・・)
僕は 大塚君やリーダーの後ろ姿にそう思った
大ムカデは 男子と女子に別れ 足をヒモで結び進む競技
並び順は いろいろな案が出た 背の順にしてみたり 背の高い人を前後にしてみたり バラバラに並んでみたり
声の大きな大塚君が 号令をかける事になり
なぜか大塚君は 僕を大塚君の前に指名した
大塚君の話では 大塚君と同じくらいの背の僕が 前に居た方が前方が良く見えるからと
大塚君の声を 聞きなれている榎本が先頭になり 自然と背の高い順となり今の形になった
僕は始め 大塚君の大きな声に驚き みんなとうまく合わせる事ができず
大塚君と何度も練習を繰り返した
大塚君は なかなかうまく リズムをつかめない僕にも 嫌な顔一つしないで 僕に付き合ってくれた
女子の後ろに男子が並び入場し 僕達は ヒモを足に結び並んでいた
係の生徒が全員のヒモを確認して周り 僕達は女子がスタートするのを待っていた
(いよいよだ・・・ ドキドキする)
「高橋 あんなに練習したんだ もう体が覚えている・・・ 高橋は この雰囲気を楽しめばいい」
大塚君は 僕の肩に手を乗せてそう言った
「うん そうだね 大塚君ありがとう」
ピストルの音が鳴り 女子の声が一斉に聞こえ走り出した
でもすぐに キャーと言う女子の声 僕の位置からは何も見えなかった
(何があったんだろう・・・ うちのクラスじゃ~ないよね)
僕の後ろから 女子の声と足音が
「大塚」
須藤さんの大きな声が聞こえ 次の瞬間 大塚君の大きな声で 僕達は動き出した
(練習では 1度も1番になった事がない でも今は どこのクラスよりも速い)
足の遅い僕が みんなと声を揃えて進む
こんなに 速く走った事がないくらい速いスピードで走っていた
まだ女子が 走っているクラスもあり
僕達は ダントツの1位でゴールしていた
喜ぶのもそこそこに 僕達はみんなの邪魔にならない様に すぐトラックから内側に入りヒモを外した
クラスの女子が 僕達の方へとやって来た
みんなの笑顔が 凄くキラキラして 自分が息を切らしている事も忘れていた
「悠 大丈夫?」
榎本が僕の方に来てくれた
「うん僕 あんなに速く走ったの初めて・・・ 凄くいい気持ち・・・」
(だから そんなかわいい顔するなよ~ 悠は 何もわかってねぇ~なぁ~)
「そっか」
榎本はまた 僕に優しい笑顔を見せていた
パンパンとピストルが鳴り
僕達の大ムカデの競技は終了した
僕達はまた 女子の後ろに並び退場した
席に戻って来た クラスみんなの笑顔や笑い声が 凄くキラキラして見えた
「色別対抗リレーの選手の方は 入場門へ集まって下さい」
放送が流れた
「美咲 頼んだよ」
リーダーの声にみんなも 須藤さんに声をかけた
「正臣 他のクラスのヤツを蹴散らして来いよ」
大塚君の声に 榎本がみんなに手を上げた
「悠は 何を言ってくれる?」
榎本は僕に顔を近づけて 小さな声でそう言った
「榎本 頑張って・・・ 僕ずっと榎本の事見てるから・・・」
僕が榎本にそう言うと 榎本の手がスーと僕に伸びて来て 僕の頭をくしゃくしゃとなでた
僕は一瞬 何をされているのか わからなかった
榎本が行ってしまい 僕は大塚君の隣へ座った
「高橋 大丈夫か?」
大塚君が 僕の顔を覗き込んでいた
「あっごめん 何?」
「何じゃねぇ~ 正臣の応援だ」
「あっうん そうだね」
僕はさっき 榎本の頭を触られた事を 思い出していた
(榎本は何であんな事を・・・ まただ 僕が走るわけじゃないのに またドキドキしてる・・・)
「高橋 どうした?」
大塚君が僕に話かけてくれた
僕は 自分のドキドキを抑えて 大塚君に聞いてみた
「ねぇ~大塚君・・・ 榎本って 緊張したりとかしないのかなぁ~ 僕が走るわけじゃ~ないのに 凄く緊張するんだよ・・・」
「何で高橋が 緊張するんだよ」
そう言って大塚君は笑った
「俺 正臣と結構ながく一緒に居るけど・・・ 正臣が緊張したとこ 見たことねぇ~なぁ~ 正臣はさぁ~ 誰とでも友達になっちゃうんだよなぁ~ それで 俺も結構助けられてるとこあるからなぁ~ だから一緒に走る 1年生と3年生とも うまくコミュニケーションとれて 仲良くしてるんじゃ~ねぇ~の それに須藤も 正臣に似てるところがあるしなぁ~」
(僕も 榎本のおかげで 友達がたくさん出来たんだ・・・)
僕は 大塚君の話を聞きながら 入場門を見ていた
6色の得点ボードが 全て外されていた
(そう言えば榊先生が 最後のリレーが勝敗を分けるって言ってた・・・)
「最後の種目になりました 次は色別対抗リレーです」
放送が流れ みんなが入場して来た
須藤さんは バトンを持っている
榎本はタスキをかけて 手足を大きく回していた
「正臣アイツ 何やってんだ・・・」
大塚君の言葉に 僕は吹き出しそうになって 慌てて自分の口を押さえた
榎本は 僕達の方を向き手を振った
僕達も榎本に 手を振り返した
「高橋の心配は 無駄だったなぁ~」
大塚君は 僕の顔を見ないでそう言った
(いよいよだ・・・ 本当に僕が走るわけじゃないのに 何でこんなにドキドキするんだろう・・・)
「高橋・・・ 正臣に聞こえる様に 大きな声出せ」
「うん」
(どうしよう・・・ さっきよりもドキドキするよ・・・)
須藤さんがスタートラインに立った
ピストの音が鳴り 一斉にスタートした
グランドに居るみんなが応援して 走る選手を後押しする
須藤さんから 1年生の女子へバトンが渡り
1年生の男子 3年生の女子から男子へとバトンが渡り
今 青色の3組は 2位
榎本が3年生に手を上げ バトンを受け取った
榎本は前を走る 4組を追っている
僕も みんなに負けない様に 大きな声を出した
榎本は 直線で4組と並び そのまま僕達から見えなくなった
パンパンと音が鳴り 色別対抗リレーは終了した
榎本と4組の人は まだ僕達の方へ 姿は見せていなかった
クラスのみんなが いろんな事を言っていた
「大塚君 榎本・・・」
「高橋・・・ 正臣なら大丈夫だ 信じて待ってよう」
「うん そうだね」
得点ボードは まだ動きがない
色別対抗リレーを 走った選手が退場した
「只今の競技で 全ての種目が終了となりました 生徒の皆さんは整列して下さい」
「高橋 整列するぞ」
「うん」
僕達は 榎本達を待たずに 朝礼台に向かって整列した
(得点は どうなったんだろう・・・)
得点ボードが 次々と表示されていった
それと同時に 放送での得点が発表になり
みんなの声が大きくなった
僕達 3組の得点が表示され より大きな声になり
大塚君が 僕の肩に手を乗せ 僕が振り返るとみんなの笑顔が まぶしいくらい そこにはあった
3組の3年生が 優勝旗と優勝カップを受け取り
僕達の運動会は終了した
「生徒の皆さんは椅子を持って 教室に移動して下さい」
放送が入り 僕達が椅子のところまで戻ると 榊先生が走って 僕達の方へとやって来た
「ちょっと ちょっと待ってくれ~」
「先生どうしたの? そんなに慌てて」
リーダーが先生に気づいて みんなも先生の方を向いた
「放送入れるって言ったのによ~」
先生が 息をきらしながらそう言った
「優勝した 3組の皆さんは その場で待機していて下さい」
放送が流れた
「おっせぇ~よ~」
先生の言葉に みんなが笑った
(あれ・・・ 榎本がまだ 戻って来てないんじゃ~)
僕の不安をよそに どんどん写真を撮る形に・・・
優勝した記念に写真を撮る事に
3年生から優勝旗と優勝カップを受け取り
先生を中心にみんなが並んだ
「いいか~ みんな笑顔だぞ」
先生の言葉に みんながまた笑った
カメラマンが手を上げ 写真を撮り終えた
「じゃ~みんな 椅子を持って 教室で待っててくれ」
先生はそう言って また 走って本部へと戻って行った
「悠」
僕が振り向くと 榎本がそこに立っていた
「榎本 どこに居たの?」
僕は榎本の方へ
「悠 俺の事ちゃんと 見ててくれた?」
「うん ちゃんと見てたよ・・・ でも ゴールしたところは見られなかった 大塚君が 榎本なら大丈夫だって そう言ってくれて・・・ 1位だったんでしょう」
「あぁ~」
(なんだ~見られなかったのか~ そう言えば 須藤とかみんなが立っていた様な・・・)
「正臣 椅子持って行け・・・」
大塚君の大きな声が聞こえて 僕と榎本は 急いでみんなのところへ
僕達は教室に戻り 机を元に戻した
「高橋君 お疲れ・・・」
「副ちゃん」
副ちゃんが 笑顔でそう言った
「おっ お疲れ様」
(副ちゃんは 僕と榎本の事を見ていたんだよね・・・ 副ちゃんに 何か聞かれたらどうしよう・・・)
僕がそんな事を思っていると 先生が教室に入って来た
「いや~ みんなお疲れ良くやった・・・ 先生は嬉しいよ まぁ~このクラスの団結力を 見せつけただけなんだけどなぁ~ このクラスなら 優勝できるとも思っていたしなぁ~」
先生は 嬉しそうに笑った
「誰も ケガがなくて本当に良かった・・・ 他のクラスは結構 スっ転んでたよなぁ~ 先生見ててヒヤヒヤしてたよ・・・ みんなの笑顔が 凄く良かったぞ・・・ その勢いのまま 中間テスト 期末テストも乗り切ってほしい・・・ 明日 あさってとしっかり体を休めて 月曜日また 元気な姿を見せてくれ・・・ 再来週から 中間テストが控えているからな 気持ち切り替えてくれよ」
「先生・・・ 私達 頑張ったからテスト 簡単なのにしてよ~」
前の席の須藤さんが 先生に言った
「美咲 それとこれとは話が違うんだなぁ~」
先生は そう言い切った
「え~」
須藤さんの声にみんなも乗った
「これこれ・・・」
先生はみんなをなだめた
「じゃ~みんな 寄り道しないで帰れよ」
先生はそう言って教室を出て行った
「高橋君?」
副ちゃんが 僕の顔を覗き込んだ
「何? 副ちゃん」
「高橋君 大丈夫?」
副ちゃんが心配そうに 僕の顔を見ていた
「あっうん ちょっと疲れただけ」
「そっか」
(副ちゃんの笑顔は 凄く癒される)
「副ちゃん 帰ろう」
そう言っていつもの様に 委員長が僕の前へ
「それじゃ~ね 高橋君」
「うん 委員長 副ちゃん 月曜日」
委員長と副ちゃんは 僕に手を振った
榎本は 大塚君とリーダー 須藤さんと楽しそうに話をしていた
(みんな凄いなぁ~ あんなに動いたのに おしゃべりする元気がある)
僕は おしゃべりしている みんなを見ていた
「悠 どうした?」
榎本が 僕の方を見た
「あっううん 何でもない」
僕は首を振った
みんなも僕の方を見た
「正臣・・・ 高橋の声 聞こえなかったのか? 高橋スゲー大きな声出して 正臣の事応援してたんだぞ」
大塚君の言葉に 僕は恥ずかしくなり下を向いた
(悠が・・・)
「高橋君も 今日は凄く頑張ったよねぇ~」
リーダーの言葉に 僕はますます 顔を上げられなくなった
「ねぇ~高橋君・・・ 榎本にはいつも 付きまとわれているんだから 今日は高橋君が 榎本にお世話になっちゃいなよ」
須藤さんの言葉に 僕は顔を上げた
「そうだなぁ~ 高橋も今日はスゲー頑張った・・・ 正臣 高橋のカバンを持って送ってやれよ」
(大塚君・・・)
僕はみんなに首を振った
「ダメだよ・・・ 榎本だって疲れてる」
「高橋 正臣なら大丈夫だ・・・ これから 1500メートル走を走れって言われても 余裕で走る」
「オイオイ 隆」
(俺は そんなにタフじゃ~ねぇ~よ)
「じゃ~正臣 1000にしとくか」
大塚君が笑いながらそう言った
「あのなぁ~」
榎本の言葉にみんなが笑った
「悠・・・ でも俺は 悠を送って行くよ」
榎本の言葉にリーダーが続いた
「じゃ~ 帰ろうっか」
榎本は 自分のカバンと僕のカバンを持った
僕が立ち上がると 足がふらつきよろけた
「悠 大丈夫?」
榎本が僕を支えてくれた
「ごめん榎本 大丈夫だから」
僕は榎本から離れた
(良かった・・・ みんなに気づかれなかった)
(悠・・・ 相当 疲れてんなぁ~)
僕は 痛む足をゆっくりと進めた
みんなは楽しそうに話ながら 階段を下りた
グランドから榊先生が上がって来た
「おう 今帰るのか 楓・・・ 美咲も・・・ なんだ~隆達も一緒かぁ~」
先生は僕達を見てそう言った
「先生は まだやってるの?」
「そうなんだよ 楓・・・ 村上にコキ使われてよー」
「先生」
「なんだ 正臣」
「俺 悠を送って行きたいんだ」
「悠・・・ どこか痛めてたのか?」
先生が心配そうに僕を見ていた
僕は首を振った
「違うんだよ先生・・・ 今日 悠 スゲー頑張ったから 疲れてフラフラしてるからさぁ~」
榎本が 榊先生にそう言った
「そうか・・・ 悠 明日 あさって ゆっくりと休むんだぞ」
僕は 先生の言葉にうなずいた
「みんなも気を付けて帰るんだぞ」
先生はそう言って走って 校舎に入って行った
(つづく)
それに答えるかの様に 選手達も凄い走りを見せていた
僕と榎本が席に座ると リーダーがスタートラインに立った
(本当に危なかった・・・ もう少し遅かったら 見逃してしまうところだった)
みんなが声をあげ リーダーを応援していた
僕は祈る様に両手を組 リーダーを見守る事しか出来なかった
リーダーが バトンを受け取り走り出した
リーダーは男子と走っているのに 抜かされる事もなく 3位で次の人にバトン渡していた
順位は変わらず 最終ランナー大塚君にバトンが繋がり
大塚君も凄い速さで 前を走る人を追いかけていた
(みんなの応援が凄い・・・ 大塚君も速いのに・・・)
パンパンと音が鳴り 2年生の学級対抗リレーが終わった
「他のクラス 陸上部揃えてきてたでしょう」
「やっぱそうか~ 隆が抜けねぇ~訳ねぇ~もん」
須藤さんが振り返って 榎本と話をしていた
「悠 どうした?」
榎本が僕の方を向いてくれた
「榎本どうしよう・・・ 僕の指がほどけない」
(僕の指 どうしちゃったんだろう・・・)
(なんだよ悠・・・ ここでそんなかわいい顔すんなよ・・・)
祈る様に組まれた僕の指は まるで言う事を聞かなかった
榎本は驚いた様子もなく 僕の指を1つずつゆっくりと伸ばしてくれた
「悠も力いっぱい 応援していたんだなぁ~」
榎本はそう言いながら 優しい笑顔を僕に向けてくれた
「悠 ゆっくりグーパーしてみて」
榎本に言われた通り 僕はゆっくりと手を動かした
「榎本 ありがとう」
(良かった 動かせた・・・ でもなんでだろう・・・)
「悠みんなが居る前で そんなかわいい顔をするな・・・」
榎本は僕の耳元で 小さな声でそう言った
僕の顔が熱くなるのがわかった
3年生の学級対抗リレーも終わり リーダーと大塚君が退場した
「2年生のみなさんは 入場門へ集まって下さい」
放送が流れた
「悠 大ムカデだ」
榎本はそう言って立ち上がった
みんなは入場門へと向かっていた
僕と榎本と須藤さんは 退場門から出て来た リーダーと大塚君を待っていた
「美咲~やられた~」
そう言いながら僕と榎本の間に居た 須藤さんにリーダーが抱きついていた
須藤さんは リーダーの頭を優しくポンポンした
(なんだよリーダー・・・ 俺も堂々と悠に 抱きつきてぇ~よ)
「正臣 わかってんだろうなぁ~」
「あぁ~大丈夫だ 隆の言いたい事は だいだいわかる」
(大塚君がいつもと違う・・・ よっぽどさっき 抜かせなかったのが悔しかったんだ・・・)
「まずは大ムカデだ」
榎本の言葉で みんなは入場門へと向かった
「ゼッテー1位 取るからなぁ~」
「当たり前・・・ このまま 負けっぱなしなんて冗談じゃないからね」
大塚君の言葉に リーダーが続いた
(凄い気合いだ・・・ 足を引っ張らない様にしなくちゃ・・・)
僕は 大塚君やリーダーの後ろ姿にそう思った
大ムカデは 男子と女子に別れ 足をヒモで結び進む競技
並び順は いろいろな案が出た 背の順にしてみたり 背の高い人を前後にしてみたり バラバラに並んでみたり
声の大きな大塚君が 号令をかける事になり
なぜか大塚君は 僕を大塚君の前に指名した
大塚君の話では 大塚君と同じくらいの背の僕が 前に居た方が前方が良く見えるからと
大塚君の声を 聞きなれている榎本が先頭になり 自然と背の高い順となり今の形になった
僕は始め 大塚君の大きな声に驚き みんなとうまく合わせる事ができず
大塚君と何度も練習を繰り返した
大塚君は なかなかうまく リズムをつかめない僕にも 嫌な顔一つしないで 僕に付き合ってくれた
女子の後ろに男子が並び入場し 僕達は ヒモを足に結び並んでいた
係の生徒が全員のヒモを確認して周り 僕達は女子がスタートするのを待っていた
(いよいよだ・・・ ドキドキする)
「高橋 あんなに練習したんだ もう体が覚えている・・・ 高橋は この雰囲気を楽しめばいい」
大塚君は 僕の肩に手を乗せてそう言った
「うん そうだね 大塚君ありがとう」
ピストルの音が鳴り 女子の声が一斉に聞こえ走り出した
でもすぐに キャーと言う女子の声 僕の位置からは何も見えなかった
(何があったんだろう・・・ うちのクラスじゃ~ないよね)
僕の後ろから 女子の声と足音が
「大塚」
須藤さんの大きな声が聞こえ 次の瞬間 大塚君の大きな声で 僕達は動き出した
(練習では 1度も1番になった事がない でも今は どこのクラスよりも速い)
足の遅い僕が みんなと声を揃えて進む
こんなに 速く走った事がないくらい速いスピードで走っていた
まだ女子が 走っているクラスもあり
僕達は ダントツの1位でゴールしていた
喜ぶのもそこそこに 僕達はみんなの邪魔にならない様に すぐトラックから内側に入りヒモを外した
クラスの女子が 僕達の方へとやって来た
みんなの笑顔が 凄くキラキラして 自分が息を切らしている事も忘れていた
「悠 大丈夫?」
榎本が僕の方に来てくれた
「うん僕 あんなに速く走ったの初めて・・・ 凄くいい気持ち・・・」
(だから そんなかわいい顔するなよ~ 悠は 何もわかってねぇ~なぁ~)
「そっか」
榎本はまた 僕に優しい笑顔を見せていた
パンパンとピストルが鳴り
僕達の大ムカデの競技は終了した
僕達はまた 女子の後ろに並び退場した
席に戻って来た クラスみんなの笑顔や笑い声が 凄くキラキラして見えた
「色別対抗リレーの選手の方は 入場門へ集まって下さい」
放送が流れた
「美咲 頼んだよ」
リーダーの声にみんなも 須藤さんに声をかけた
「正臣 他のクラスのヤツを蹴散らして来いよ」
大塚君の声に 榎本がみんなに手を上げた
「悠は 何を言ってくれる?」
榎本は僕に顔を近づけて 小さな声でそう言った
「榎本 頑張って・・・ 僕ずっと榎本の事見てるから・・・」
僕が榎本にそう言うと 榎本の手がスーと僕に伸びて来て 僕の頭をくしゃくしゃとなでた
僕は一瞬 何をされているのか わからなかった
榎本が行ってしまい 僕は大塚君の隣へ座った
「高橋 大丈夫か?」
大塚君が 僕の顔を覗き込んでいた
「あっごめん 何?」
「何じゃねぇ~ 正臣の応援だ」
「あっうん そうだね」
僕はさっき 榎本の頭を触られた事を 思い出していた
(榎本は何であんな事を・・・ まただ 僕が走るわけじゃないのに またドキドキしてる・・・)
「高橋 どうした?」
大塚君が僕に話かけてくれた
僕は 自分のドキドキを抑えて 大塚君に聞いてみた
「ねぇ~大塚君・・・ 榎本って 緊張したりとかしないのかなぁ~ 僕が走るわけじゃ~ないのに 凄く緊張するんだよ・・・」
「何で高橋が 緊張するんだよ」
そう言って大塚君は笑った
「俺 正臣と結構ながく一緒に居るけど・・・ 正臣が緊張したとこ 見たことねぇ~なぁ~ 正臣はさぁ~ 誰とでも友達になっちゃうんだよなぁ~ それで 俺も結構助けられてるとこあるからなぁ~ だから一緒に走る 1年生と3年生とも うまくコミュニケーションとれて 仲良くしてるんじゃ~ねぇ~の それに須藤も 正臣に似てるところがあるしなぁ~」
(僕も 榎本のおかげで 友達がたくさん出来たんだ・・・)
僕は 大塚君の話を聞きながら 入場門を見ていた
6色の得点ボードが 全て外されていた
(そう言えば榊先生が 最後のリレーが勝敗を分けるって言ってた・・・)
「最後の種目になりました 次は色別対抗リレーです」
放送が流れ みんなが入場して来た
須藤さんは バトンを持っている
榎本はタスキをかけて 手足を大きく回していた
「正臣アイツ 何やってんだ・・・」
大塚君の言葉に 僕は吹き出しそうになって 慌てて自分の口を押さえた
榎本は 僕達の方を向き手を振った
僕達も榎本に 手を振り返した
「高橋の心配は 無駄だったなぁ~」
大塚君は 僕の顔を見ないでそう言った
(いよいよだ・・・ 本当に僕が走るわけじゃないのに 何でこんなにドキドキするんだろう・・・)
「高橋・・・ 正臣に聞こえる様に 大きな声出せ」
「うん」
(どうしよう・・・ さっきよりもドキドキするよ・・・)
須藤さんがスタートラインに立った
ピストの音が鳴り 一斉にスタートした
グランドに居るみんなが応援して 走る選手を後押しする
須藤さんから 1年生の女子へバトンが渡り
1年生の男子 3年生の女子から男子へとバトンが渡り
今 青色の3組は 2位
榎本が3年生に手を上げ バトンを受け取った
榎本は前を走る 4組を追っている
僕も みんなに負けない様に 大きな声を出した
榎本は 直線で4組と並び そのまま僕達から見えなくなった
パンパンと音が鳴り 色別対抗リレーは終了した
榎本と4組の人は まだ僕達の方へ 姿は見せていなかった
クラスのみんなが いろんな事を言っていた
「大塚君 榎本・・・」
「高橋・・・ 正臣なら大丈夫だ 信じて待ってよう」
「うん そうだね」
得点ボードは まだ動きがない
色別対抗リレーを 走った選手が退場した
「只今の競技で 全ての種目が終了となりました 生徒の皆さんは整列して下さい」
「高橋 整列するぞ」
「うん」
僕達は 榎本達を待たずに 朝礼台に向かって整列した
(得点は どうなったんだろう・・・)
得点ボードが 次々と表示されていった
それと同時に 放送での得点が発表になり
みんなの声が大きくなった
僕達 3組の得点が表示され より大きな声になり
大塚君が 僕の肩に手を乗せ 僕が振り返るとみんなの笑顔が まぶしいくらい そこにはあった
3組の3年生が 優勝旗と優勝カップを受け取り
僕達の運動会は終了した
「生徒の皆さんは椅子を持って 教室に移動して下さい」
放送が入り 僕達が椅子のところまで戻ると 榊先生が走って 僕達の方へとやって来た
「ちょっと ちょっと待ってくれ~」
「先生どうしたの? そんなに慌てて」
リーダーが先生に気づいて みんなも先生の方を向いた
「放送入れるって言ったのによ~」
先生が 息をきらしながらそう言った
「優勝した 3組の皆さんは その場で待機していて下さい」
放送が流れた
「おっせぇ~よ~」
先生の言葉に みんなが笑った
(あれ・・・ 榎本がまだ 戻って来てないんじゃ~)
僕の不安をよそに どんどん写真を撮る形に・・・
優勝した記念に写真を撮る事に
3年生から優勝旗と優勝カップを受け取り
先生を中心にみんなが並んだ
「いいか~ みんな笑顔だぞ」
先生の言葉に みんながまた笑った
カメラマンが手を上げ 写真を撮り終えた
「じゃ~みんな 椅子を持って 教室で待っててくれ」
先生はそう言って また 走って本部へと戻って行った
「悠」
僕が振り向くと 榎本がそこに立っていた
「榎本 どこに居たの?」
僕は榎本の方へ
「悠 俺の事ちゃんと 見ててくれた?」
「うん ちゃんと見てたよ・・・ でも ゴールしたところは見られなかった 大塚君が 榎本なら大丈夫だって そう言ってくれて・・・ 1位だったんでしょう」
「あぁ~」
(なんだ~見られなかったのか~ そう言えば 須藤とかみんなが立っていた様な・・・)
「正臣 椅子持って行け・・・」
大塚君の大きな声が聞こえて 僕と榎本は 急いでみんなのところへ
僕達は教室に戻り 机を元に戻した
「高橋君 お疲れ・・・」
「副ちゃん」
副ちゃんが 笑顔でそう言った
「おっ お疲れ様」
(副ちゃんは 僕と榎本の事を見ていたんだよね・・・ 副ちゃんに 何か聞かれたらどうしよう・・・)
僕がそんな事を思っていると 先生が教室に入って来た
「いや~ みんなお疲れ良くやった・・・ 先生は嬉しいよ まぁ~このクラスの団結力を 見せつけただけなんだけどなぁ~ このクラスなら 優勝できるとも思っていたしなぁ~」
先生は 嬉しそうに笑った
「誰も ケガがなくて本当に良かった・・・ 他のクラスは結構 スっ転んでたよなぁ~ 先生見ててヒヤヒヤしてたよ・・・ みんなの笑顔が 凄く良かったぞ・・・ その勢いのまま 中間テスト 期末テストも乗り切ってほしい・・・ 明日 あさってとしっかり体を休めて 月曜日また 元気な姿を見せてくれ・・・ 再来週から 中間テストが控えているからな 気持ち切り替えてくれよ」
「先生・・・ 私達 頑張ったからテスト 簡単なのにしてよ~」
前の席の須藤さんが 先生に言った
「美咲 それとこれとは話が違うんだなぁ~」
先生は そう言い切った
「え~」
須藤さんの声にみんなも乗った
「これこれ・・・」
先生はみんなをなだめた
「じゃ~みんな 寄り道しないで帰れよ」
先生はそう言って教室を出て行った
「高橋君?」
副ちゃんが 僕の顔を覗き込んだ
「何? 副ちゃん」
「高橋君 大丈夫?」
副ちゃんが心配そうに 僕の顔を見ていた
「あっうん ちょっと疲れただけ」
「そっか」
(副ちゃんの笑顔は 凄く癒される)
「副ちゃん 帰ろう」
そう言っていつもの様に 委員長が僕の前へ
「それじゃ~ね 高橋君」
「うん 委員長 副ちゃん 月曜日」
委員長と副ちゃんは 僕に手を振った
榎本は 大塚君とリーダー 須藤さんと楽しそうに話をしていた
(みんな凄いなぁ~ あんなに動いたのに おしゃべりする元気がある)
僕は おしゃべりしている みんなを見ていた
「悠 どうした?」
榎本が 僕の方を見た
「あっううん 何でもない」
僕は首を振った
みんなも僕の方を見た
「正臣・・・ 高橋の声 聞こえなかったのか? 高橋スゲー大きな声出して 正臣の事応援してたんだぞ」
大塚君の言葉に 僕は恥ずかしくなり下を向いた
(悠が・・・)
「高橋君も 今日は凄く頑張ったよねぇ~」
リーダーの言葉に 僕はますます 顔を上げられなくなった
「ねぇ~高橋君・・・ 榎本にはいつも 付きまとわれているんだから 今日は高橋君が 榎本にお世話になっちゃいなよ」
須藤さんの言葉に 僕は顔を上げた
「そうだなぁ~ 高橋も今日はスゲー頑張った・・・ 正臣 高橋のカバンを持って送ってやれよ」
(大塚君・・・)
僕はみんなに首を振った
「ダメだよ・・・ 榎本だって疲れてる」
「高橋 正臣なら大丈夫だ・・・ これから 1500メートル走を走れって言われても 余裕で走る」
「オイオイ 隆」
(俺は そんなにタフじゃ~ねぇ~よ)
「じゃ~正臣 1000にしとくか」
大塚君が笑いながらそう言った
「あのなぁ~」
榎本の言葉にみんなが笑った
「悠・・・ でも俺は 悠を送って行くよ」
榎本の言葉にリーダーが続いた
「じゃ~ 帰ろうっか」
榎本は 自分のカバンと僕のカバンを持った
僕が立ち上がると 足がふらつきよろけた
「悠 大丈夫?」
榎本が僕を支えてくれた
「ごめん榎本 大丈夫だから」
僕は榎本から離れた
(良かった・・・ みんなに気づかれなかった)
(悠・・・ 相当 疲れてんなぁ~)
僕は 痛む足をゆっくりと進めた
みんなは楽しそうに話ながら 階段を下りた
グランドから榊先生が上がって来た
「おう 今帰るのか 楓・・・ 美咲も・・・ なんだ~隆達も一緒かぁ~」
先生は僕達を見てそう言った
「先生は まだやってるの?」
「そうなんだよ 楓・・・ 村上にコキ使われてよー」
「先生」
「なんだ 正臣」
「俺 悠を送って行きたいんだ」
「悠・・・ どこか痛めてたのか?」
先生が心配そうに僕を見ていた
僕は首を振った
「違うんだよ先生・・・ 今日 悠 スゲー頑張ったから 疲れてフラフラしてるからさぁ~」
榎本が 榊先生にそう言った
「そうか・・・ 悠 明日 あさって ゆっくりと休むんだぞ」
僕は 先生の言葉にうなずいた
「みんなも気を付けて帰るんだぞ」
先生はそう言って走って 校舎に入って行った
(つづく)
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