嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん

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ギリアムさまはイレギュラーすぎます

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「なぜあなたは、そんなに色々なことを知っているのですか?」

 俺の問いに、ミューゼア嬢は真剣な表情で答えた。

「予知夢……のようなもの、と言えばわかりやすいでしょうか。ゲーム転生なんて言っても、ギリアムさまにはピンとこないでしょうし」
「予知夢? ゲーム転生? いや、さっぱりわかりません」

 俺は首を振ったが、彼女の目は本気だ。
 昔、俺の目の前で大地震を言い当てたあのときと同じ、妙に確信に満ちた目。普通なら笑いものだが、彼女の言葉には妙な重みがある。

「この先、世界がどうなるか。いくつかの『ルート』――『未来』を見たんです。信じてもらえますか?」
「未来? それは俺たちの、ってことですか?」
「はい。その中には、ライゼル領が破滅する未来も……私自身の破滅も」

 彼女の声が少し震えた。
 破滅。重い言葉だ。だが、幼い頃に彼女が言っていた俺の「破滅エンド」も、俺が昔のままなら確かに辿り着いたかもしれない道だった。
 あのまま俺が民を顧みず、魔族に負け、荒れた領地で腐っていたら……。

「にわかには信じがたい話です」

 俺はゆっくり言った。彼女の顔が一瞬曇る。だが、俺は続けた。

「ですがミューゼア嬢、昔のあなたの言葉――あの予言がなかったら、俺は今みたいな領主にはなれていませんでした。あのときのあなたは、俺しか知らないだろうことをズバリ言い当てた上で、俺がダメになる未来を教えてくださった。だから信じますよ、あなたの言葉を」
「ギリアムさま……」

 ミューゼア嬢の目が潤んだ。
 ふう、と彼女は小さく息を吐き、肩の力を抜いた。俺もつられて笑う。なんだか、ようやく腹を割って話せた気がした。

「この話をしたのは、ギリアムさまが初めてです」
「へえ? それは光栄な。でも、なんでですかね」
「あなたも仰ってましたでしょうギリアムさま。なかなか信じて貰えるような話じゃありませんから」

 それはそうだな。
 突然こんなこと言われても、頭がおかしいと思うだけだろう。
 俺だって過去のことがなかったら、信じてなかったに違いない。

「ギリアムさまなら信じてくださるんじゃないかと思い、勇気を出して告白しました」
「それは嬉しい。で、お聞きしたいのですが、この先俺たちの前には、どんな破滅エンドの可能性が待っているのですか?」

 となると、これも聞いておきたいよな。

「今の流れで、一番近い破滅エンドは『中央に謀反の嫌疑を掛けられて首を刎ねられるエンド』だと思います」

 ミューゼア嬢を疎ましく思ったセルベール公爵家が、全てを清算するために俺ごと処分しようとするのだという。

「ああ! だから公爵家を潰しましょうなんて言ってたのか!」
「はい」

 つまり、やっぱり本気だったのかあれ。ミューゼア嬢怖い。

「だけど、ウチには公爵家と争えるような力はないよ?」
「そうですね。幸せそうな領地だとは思いましたが、規模として見たらまだまだなのは、見ててわかりました」
「とはいえ我がライゼル領は、まだまだ伸びしろのある土地だと思う。あれじゃないかなミューゼア嬢、ウチが強い都市になって、あちらさんが気軽に手を出せなくするってのも、良い防衛策になるんじゃないか?」

 俺は彼女に、この先ライゼル領を開拓していく未来のビジョンを伝えた。

 まずは周辺の魔物を狩って街道の脅威を取り除き、流通の弁を整える。
 パパラ米はウチの主力特産品になるだろう、これを大量に輸出できる環境を整える。
 得た金でどんどん領地を開拓して、広くしていく。

 なにせ辺境だ、開拓できればできるほど、領地を広げられると思っていい。
 町が成長すればするほど、いくら公爵家といえど俺たちに手を出しづらくなるはずだよな。

「なるほど! ……その発想はありませんでした!」
「だろう?」
「確かに私が知っていた未来では、ライゼル領は貧困の底にある土地でした。なので簡単に中央からの処断を受けてしまった、というのはあると思います」
「よかった、同意を得られたみたいだ」

 なら話は早い。

「で、物は相談なのですがミューゼア嬢」
「はい?」
「あなたのその『予知知識』を、もっと活用はできないものでしょうか」
「と、仰られますと?」
「たとえば、俺たちはこれから町を発展させるために、まず流通の弁を確保しないとなりません」

 現在ライゼルでは四ヶ月に一回、他の町からも冒険者を募って大規模な魔物狩りを実施している。
 領内に魔物が多くて、ライゼルの町に商人が立ち寄ってくれないので、少しでもと思い俺の代になって始めた対策だ。

「しかしこれは、費用対効果の効率がすこぶる悪いのです」
「なるほど」
「ミューゼア嬢の知識では、これをどうにかしていける未来などは知り得ていないのでしょうか?」

 俺はダメもとで聞いてみた。
 ここの効率を上げられたら、それだけでもウチの経済は良い方向へと向かうだろう。

「良い提案、ありますよ」
「やはり無理ですか。――って、えええ!?」

 あるんですか、良い案が!?
 聞いてみるものだな!

「魔物が増えるのは、大黒魔石が土地のどこかにあるからです。これを処理できれば、魔物が寄ってくるというモトを絶てます」
「へ? 大……黒魔石?」

 初耳だ。セバスも首を振った。彼でも知らないなんて。

「ミューゼアさま、それはどちら由来の知識でございましょう。魔物の発生には諸説ありますが、その話は初耳にございます」
「ゲームの最終章で……あ、いえその」
「……先ほどの、未来予知の話の一環なのでしょうか」
「はい」

 ミューゼア嬢は、少し困り顔ながらも頷いた。
 セバスが俺の方を見た。どうなさいますか、と目で問いかけてくる。ふむ。

「俺はさっきミューゼア嬢を信じます、と言った。だからここも、彼女を信じる」

 信じるといったからには、その責任も負わないと。
 言葉は行動が伴って初めて真実となるものだ、俺はミューゼア嬢に対して真摯でありたい。
 それになにより、俺から訊ねたことだしね。

「で、ミューゼア嬢、その黒魔石というのは?」
「魔物を呼びよせる効果のある魔石です。この土地に魔物が多いのはそれが原因です」

 言い切った。
 つまり彼女には、確証があるということか。

「なるほど。それを見つけ出して壊す方が、今の魔物狩りを続けるよりも効率良いと」
「はいギリアムさま。……ですが」

 彼女は顔を曇らせた。

「ですがそれには、魔族に伝わる宝具が必要なのです」
「ああ、魔族?」
「はい魔族です。……宝具は彼らが大事にしているもの。戦って奪うか交渉するか、どちらも難しい。失敗すれば魔族エンドの可能性も出てくる恐ろしい相手――」
「セバス、魔族王に連絡して」
「かしこまりました」
「え?」

 キョトンとした顔で、俺とセバスのやり取りを見るミューゼア嬢。

「こないだの火炎竜のモモ肉は美味しかったって礼も忘れずに。返礼も考えてといて」
「そうですな、なにか見繕いましょう」
「え?」

 彼女の顔が、なんだか困惑に染まっていく。

「ギ、ギリアムさま。いったいなんのお話を?」
「ん? いやほら、ミューゼア嬢が魔族から宝具を借りろっていうからさ」

 魔族とは懇意にしている。
 というか魔族王のガリアードレが、一方的に俺のことを持ち上げて付きまとってきてる、というのが正解に近い。なにが気に入ったのか、あいつは俺を褒め始めると止まらないのだ。

「ガ、ガリアードレ!? あの最狂最悪の、大魔族!」
「え、そんな悪い奴じゃないぞ? あ、でも少し悪いか、頭が」
「なにを言ってるんですか。原作だと、ガリアードレは超高難易度ルートの隠しボス。そんな簡単に名を呼べる存在ですらないはずなのに」

 急にアタフタし始めるミューゼア嬢だ。
 両手の平を前に出してフリフリ振ってる姿はなんだかカワイらしい。俺が女性苦手じゃなかったら、ああいう仕草にイチコロなのだろうか。

「……では、ギリアムさまは魔族と親交がおありになる、と?」
「ええ。セルベール家にご支援頂いたあの戦争以来ですから、10年来の付き合いになりますか」

 目を丸くするミューゼア嬢。

「ガリアードレが……貸してくれる? 隠しボスのアイテムを、そんな簡単に……?」

 なんだろう、こんどは頭を抱えだした。――と思ったら。

「ギリアムさまはイレギュラーすぎます! どうしてこうも、私のゲーム知識を上回っていくのですか!?」

 怒られてしまった。
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