異世界の学園物語

白い犬

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第1章 売却少女

第17話 腐の視線

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「はは、流石ティナすけ!こりゃ完敗だ!」

試合の後、俺の予想とは裏腹に、グウェントは案外ケロッとしていた。

「いえ、グウェントさんも想像以上でした。流石です。」

ティナはティナで、いつもの悪態なしで素直にグウェントをほめていた。なんだ、心配することもなかったな。この二人のことだ、試合後にもっと言い合うかと思っていたが、穏やかなものじゃないか。

と、思っていた俺だったが、

「はは、次はぼこぼこにしてやる。」

「ふふ、敗者のセリフじゃないですね。」

ーーこの二人、笑顔のまま喧嘩してやがる。

そんな二人の様子に俺が苦笑いをしていたところ、アリスが近寄ってくる。

「でも、ティナちゃん新作の道具は使わなかったのね。何か作ってたみたいだけど。」

そういえば、そんな話もしていたな。

「あー・・・、それはですね。グウェントさん相手だとあまり効果がないものですので。どちらかというと、トランさん対策に近いんですよ。」

「ん、俺対策?」

「はい、楽しみにしていてください。」

これは怖い。ちょっといろいろ考えておこう。

「しかし、悔しいもんだな。」

そういうのはグウェント。

「結構マジだったんだが、ティナすけの罠にこんな簡単にはまっちまうなんてな。」

「いつものグウェントさんなら絶対気づいてました。グウェントさんが魔法使ってたからできたんですよ。」

「いや、男のプライド的に、負けたってのがなあ・・・。」

「はあ・・・?」

グウェントのその発言に、ティナが首をかしげる。だが、俺はとてもよくわかる。なんか、別に差別とかではないんだが、女性に負けると格好がつかないよな。

と、俺はうんうん、とうなずいていたのだが、

「あっ。」

と、アリスが俺のほうを見て声を漏らす。その反応にどうしたのだろうか、と俺が首を傾げ、アリスに声をかけようとした瞬間。

「トラーーーーーン!」

「ごはっ!?」

後ろから突然の飛来物っ!!

「うふふ、クーネちゃん楽しそう。」

アリスさん、クーネをほほえましそうに見るのもいいんですが、少しはエビぞりで吹き飛ばされた俺の心配もしていただけないでしょうか。

「いたた・・・、どうしたんだクーネ。」

最近、クーネが俺に対してとる行動が激しくなってきた。そろそろどこかで注意しないと体が壊れるかもしれないな。

「三回戦の相手が発表されてたよー!」

「お、さすが、早いな。」

「そんじゃあ、見に行こうぜ。」

そのグウェントの言葉に、俺たち五人は掲示されている場所へと移動することにした。


#####


「ん、俺はシードか。」

「あら、私はミーナちゃんとね。」

「よろしく、アリス。」

新たに掲示されていた三回戦の対戦表には、俺がシードで、クーネとティナは別々の人と試合。そして、ミーナとアリスが試合、といった内容が書かれていた。

「じゃあ、俺は今回は観客席からみんなを応援するよ。」

「ん、見てて。」

掲示板前で合流したミーナがこくりとうなずく。

そのまま俺は試合に出る組に手を振り、観客席側に移る。すると、リヒターが少し離れたところから手を振っていたので、そちらに合流する。

「こちらに来たということは、貴殿の出番はもっと後か!」

「いえ、運がいいことにシードになったんですよ。」

そう話しながらリヒターの横に座る。

「ほう、シードか。それはよかったな。」

「はい、とりあえずは休憩って感じですね。」

まあ、シードじゃなくても問題はなかったけれど、それをわざわざ言うこともない。

「トランさん、よ、横いいですか?」

と、後ろから急に声がしたので振り返ってみると、少し緊張した様子のエミリアが立っていた。

「ああ、どうぞ。」

特に断る理由もないので、少しリヒターのほうにずれてエミリアが座りやすいように席を指す。

「あ、ありがとうございます!」

花が咲いたような笑顔で、エミリアがお礼を言ってくる。はは、大げさだな。

「・・・貴殿は、卒業までに何人の女を虜にするのだろうなあ。」

と、そこで急にリヒターがそんなことを言ってきたので、言い返しておく。

「なに変なこと言ってるんですか、それを言うのはむしろ俺ですよ。」

その俺の言葉に、エミリアとリヒターが同時にため息をつく。

「「はあ・・・。」」

「な、なんですか二人して。」

「これだものなあ・・・。頑張れよ、エミリア殿。こいつは苦労するぞ。」

「は、はい。頑張ります。」

な、なんなんだ?

「トラン、お前それが本当に素なんだな。」

と、後ろからまたもや声が聞こえる。そこには、グウェントと、ディーナ、アマリア様がいた。

「だから何の話なんだ?」

「あー、気にすんな。もうわかった。」

グウェントがへらへら笑いながら手を振る。いや、俺がわからないんだが。

「だーかーら、気にすんなって。」

「うおっ、や、やめろって、グウェント。」

急に頭を撫でられた。男にそんなことをされて喜ぶ趣味は持ち合わせていないんだが・・・。

と、その瞬間、俺の背筋がぞわっとした。

「・・・キャー、みて、見てあれ!」

「トラン様と、グウェント様の生絡み・・・!?」

「尊い、尊すぎるわ・・・!」

「トラン様とリヒター様の絡みとはまた違った良さが・・・!」

「やはり、トラン様は、総受けが、一番・・・!」

ーー後ろからぼそぼそと聞こえてきていたその声をもうそれ以上聞くのはやめた。というかこれ以上聞いてはいけない。俺の心がつぶれる。

「ん?どうしたのだ、トラン。目が死んでいるぞ。」

「ちょっと・・・。はい、触れてはいけないものに気づいてしまったというか。どこにもやっぱりいるんだな、っていうか。現実の怖さを再確認していました。」

「む・・・?そ、そうか。」

みんなが怪訝な顔で俺を見てくるが、俺はそれどころではなかった。

異世界にも、やっぱりいるんですね。


#####


「ん、お疲れ。二人とも。」


あのあと、決闘祭は順調に進み、クーネとティナが連続で試合だったのだが、見事に二人とも勝利をおさめてきた。二人の相手も三回戦まで勝ち上がってきていただけあって、決して弱くはない相手だったのだが、二人のほうが単純に上手だったな。

「トラン、見てたー?」

「ああ、見てたよ。」

「えへへー。」

ほんと、戦ってないときは娘みたいだな。

「ティナすけ、もうこうなったらトランにも勝って優勝しちまえ。」

「いわれなくても最初からそのつもりです。」

ティナも気合十分だな。これは俺も油断できないぞ。

「さて、じゃあ後はミーナとアリスの試合ね。」

アマリアさんがそうつぶやく。

「はっはっは、どちらが勝つかわからんなこれは。」

「そうだねー、実力は五分五分じゃないかな?」

リヒターと、ディーナがそう分析する。俺もそれに賛成なんだが、ミーナの魔法が正確にまだ把握できていないことを考えると、安易に五分五分だともいえない気もする。

逆を言えば、ミーナはアリスの魔法を知らないはずなので、それによって戦況は簡単に逆転しうる。

ただ、どちらかといえばアリスが不利かもしれないな。アリスの魔法は望んで発動できるタイプじゃない。

まあ、でもアリスの実力は間違いないし、魔法だけで勝敗が決まるわけじゃない。とにかく、見てみないとわからないな。っと、そろそろ始まりそうだ。

「はーい、じゃーあ、準備はー、いいですかー・・・。」

校長先生、もうちょっと頑張ってください。

「戦場はー、学校ですー。ではー、すたー・・・。」

声が途切れたかと思ったら、あのひと寝たぞ。しかも立ったまま。どれだけ疲れてるんだ。

「いったあい!?」

かと思ったら後ろからハリセンでたたかれた。この世界、ハリセンもあるんだ。

「わかった、わかりましたーー!じゃあ、もう行きますよ!?すたあとおっ!」

と、そんなやけくそな校長先生の叫びで試合は始まった。

なんか、もはやかわいそうになってきたな、あのひと。
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