異世界の学園物語

白い犬

文字の大きさ
3 / 17
第1章 売却少女

第3話 実力テスト ー昼、1戦目ー

しおりを挟む
「さて、ここからどうしようか。」

 現在俺は、セレナ校長の魔法により、密林にいる。一応ここは幻らしいのだけれど、木や、草を触ってみたところ全く違いがわからない。これがもし本当に幻なら恐ろしい力だと思う。あんなほんわかした人だけど、校長ってだけはあるんだな、と思う。

 ーとはいえ、密林とはまた厄介な地形である。視界が悪く、奇襲を受けやすい。それは逆に奇襲しやすいことにもつながるが、残念ながら俺の魔法にはそういう探知系のものは含まれていない。

 つまるところ、基本的に俺は、探知ができる相手には後手に回らざるを得ないということになる。困ったものだ。

「ん、とりあえず考えてても仕方ない。動くか。」

 しかし、密林とはいうが、いったいどれほどの規模なのだろう。確認してみたいものだが・・・。

 と、ここで俺の横の草むらがわずかに揺れた。風かとも思ったが、念のため、いつでも俺の周りに、赤色を塗ることをできるように、考えておく。

 すると、案の定。

「ふっ!」

 草むらから、槍と思わしき武器が飛び出てくる。それを俺は赤色を展開することで俺に当たる前に止める。しかし思いの外、力が強かったので、少し距離をとる。そして、俺を襲ってきた相手の顔を見ると・・・。

「ーーアマリア様ですか。」

「あら、名乗ってないのに知ってるのね。」

「この国の第1王女様ですから。名前くらいは。」

 もちろん嘘である。元々田舎にいた俺は、何も知らなかったけれど今朝のやりとりでリヒター殿が言ってたので覚えてた。

「そういうあなたはトラン、と言ったわね。」

「覚えていただけてるとは光栄です。」

「毎日のようにリヒターがあなたの話を昔してたから、覚えたわよ。今でも、たまに話してくるし。」

 リヒター殿が、俺の話をしている?誇張してたりしないといいけれど、大丈夫だろうか。俺はただの田舎から出てきた一市民なのだけど。

「ーーこれ以上は、いいでしょう。」

 アマリア様が武器を構える。アマリア様の武器をよくよく見るとそれは槍ではなく薙刀であった。アマリア様の目が、細められる。本気だ。ここまでの軽口はここで終わり。

 ーーここからは、戦いである。

「せいっ!」

 アマリア様が、一歩踏み込み、突きを仕掛けて来る。それを俺は体を横にずらすことで避けるが、アマリア様はそれを、追いかけるように攻撃して来る。こちらが息つく間もなく切りかかって来るその技術は、思わず感心してしまうほどだった。

 しかし俺もただやられっぱなしではない。魔法を構築し、仕掛ける準備をする。最初に使う色は、黄色だ。

「ーー!?なに!?」

 俺が塗った地面の上を踏みしめた瞬間、アマリア様は目に見えて動きが遅くなる。しかし、意識はそのままの速度なので、自分の身が遅くなったことに驚きを隠せないようだった。

 さて、いくら技術が優れていてもこうなればこちらのもの。トドメをーー、と思ったところで。近づいていく俺の左腕に、ザシュッ、と切り傷がついた。

「ーー!?」

 思わず退いてしまう。なんだ、今のは。確かにあそこにはなにもない。なのに、俺の腕は確かにあそこで切られた。まるで、薙刀がそこにあるかのように。

「ふふ、驚いた?」

 アマリア様が、黄色の地面から抜け出して、俺にかけてきたその言葉に、正直なところ、はい、と答えてしまいそうだった。しかしここは戦いの場。相手が教えてくれるはずもないので、俺は頭をできる限り回してみる。

 この世界において、常識は通用しない。魔法は人の数だけ存在し、その一つ一つが似通ってはいても、全く同じものはないのだ。ならば、今の現象を説明するには、いくつかの可能性がある。

 例えば、見えない武器を扱えること。
 例えば、風を操るなど、目に見えない現象を扱っていること。

 しかし、この二つは怪しいだろう。一つ目の例ならば、アマリア様は、薙刀という武器を使う必要があまりない。それよりももっと射程の短い武器でも使って、フェイントをかけたほうがいい。

 二つ目の例も、風を操れるなら最初からそれを使えばいい。アマリア様はあまり出し惜しみをするタイプではないと思うので、これもおかしい。

 ならば、おそらくアマリア様の魔法は。

「攻撃の残滓を残す、と言ったところですか?」

「ーーー。まさか当てられるとは思わなかったわ。」

 どうやらビンゴらしい。とは言っても、わかったからと言って対処できるかどうかは怪しい。残滓が見えていれば話は別だが、見えないとなるとこれは難しい。避けられそうにない。

「ま、私もあなたの魔法知ってたし、これでおあいこかしらね。」

「え?アマリア様、俺の魔法知ってたんですか?」

「えぇ、リヒターが喋ってたから覚えてるわよ。」

 リヒター殿。あなたに早く会いたいです。お話しすることがどんどん増えてますので。ていうか、なら俺は罠にかけられたということだろうか。いや、アマリア様のさっきの態度から見てきっとそうなのだろう。

「でも実際に体験してみると、これ厄介ね本当。確か名前は、色彩、だったかしら?」

 そう、俺の魔法の名前は色彩と言う。
 朝にも使っていたが、この魔法は、色の魔法だ。色ごとに力があり、俺は視界内の無機物になら、ある程度自由に魔力で色を塗れる。しかし、ある程度である。基本的には、俺以外の生物、またはその一部と認識されるものには色は塗れない。

 例えば、今目の前にいるアマリア様の武器には色は塗れない。その薙刀は、アマリア様の一部なのだ。だから、そう言ったものに効果を及ぼすには、他の無機物に色を塗ってそれを当てるか、俺自身に色を塗って、触るかの二択である。

 さらに俺の使う色には通常色と、異常色がある。通常色は、
 赤:妨害
 青:推進
 黄:遅延
 緑:治癒
 etc...
 次に、異常色が
 白:献身
 黒:侵食
 金:変性
 etc...

 と言った感じである。ちなみになにが違うかといえば、その力の強さと、代償の有無である。
 例えば、緑と白を比べてみよう。緑は治癒の力を持つが、体の欠損などは治せない。それに対し、献身は欠損すらも治す。しかし、その名前の通り、この色は俺に負担を強いる。具体的には、幻痛などと言ったものだ。まるでその部位がなくなったような痛みを感じるのだ。そのため、戦いの場で安易に使えば動けなくなることもある。

 などなど、俺の魔法はなかなかの曲者なので、便利なのだが扱いが難しいのである。

 さて、そんな俺の魔法だが。なんせ、曲者だが手数だけは多い。そのため、この状況も打破できてしまうのである。

「まぁ、でも。私の魔法の残留は、破れないけどねっ!」

 アマリア様がもう一度薙刀を構え、攻撃してくる。もちろん放っておけば、どんどん魔法が張り巡らされ、俺は身動きが取れなくなっていくだろう。しかし恐らく、そうはならない。俺の魔法のように、アマリア様の魔法にも間違いなく欠点がある。この世界の魔法はそう言う風にできている。

 とは言っても、今それを探すほどの時間はないので。現状はゴリ押しで解決しよう。魔法を展開、使う色は、赤。

「ーーなっ!?」

 今度こそは、アマリア様も驚いたようだ。そりゃそうだろう。なんせ、赤色の壁が地面から次々に生えてきたのだから・・・・・・・・・。俺のとった戦法は極めて簡単。そこら中に見えない太刀筋が潜んでいる?ならば、壊せばいいじゃないか、という発想である。

 もちろん、赤色だけでは壁など作れはしない。しかし、地面に最初に上向きの推進の力を持たせた青を塗り、その後、横壁を赤で塗れば、このような真似もできるというわけである。

 そしてこれにより、アマリア様の太刀筋は次々と瓦解。もしかしたら俺の赤色の力が負けて、こちらが壊されるかもと懸念していたが、その心配はなかったようである。

 さて、今度こそチェックメイトである。

「ちょ、嘘でしょ!?なにその乱暴な魔法の使い方!?」

「魔力総量はちょっと人より多いんですよ。」

「どう見てもちょっとじゃないでしょ!」

「はいはい、もう言われ慣れましたし。じゃあ、すいませんがアマリア様、思いっきり行きますね。」

「え、ちょっ!?」

 この世界なら死んでもセーフなのだし、自粛は必要ないものとします。両足に青色を塗る。そして右手に、重量の朱色を。さらに、アマリア様までの道のりに青色を。そしてその道に向かって、せーのっ!

「快適な空の旅へ、いってらっしゃぁぁい!!!」

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 俺の加速に加速を重ね、さらに右手の質量を5倍にした全力パンチは、見事にアマリア様を吹っ飛ばした。あ、もちろんアマリア様の腹部には、軽減の色であるエメラルドを塗ってあるので、打撃ダメージはないと思う。その代わり、時速150kmくらいで空の旅に行ったけど。

 ・・・後で、絶対なんか言われるなー。ちょっと後先考えてなさすぎた気がする。まぁ、気にしても仕方がないし、とりあえずうろつきますかな。

「ピンポンパンポーン!試験開始から、10分が経過しました!残り人数は240人!なお、20分経過ごとにエリアを縮めていくのでシクヨロでーす!」

 おっとりとした声が響く。校長先生のアナウンスらしい。というか、初めて聞く情報がちらほらあったぞ。なんでそういうこともっと早く言ってくれないんだろう。・・・いや、普通にあの人は忘れてたんだろうな。

 さて、気を取り直して。次は誰が相手かな?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

処理中です...