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第1章 売却少女
第4話 実力テスト ー昼、2戦目ー
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さて、先ほどのアナウンスで残り人数が240とわかったわけだが。思ったより減りが早いので、この密林は見た目ほどの広さはないと思われる。
ちなみに、アマリア様との戦いの後、3人ほど襲いかかって来たが、全員叩きのめした。アマリア様に比べれば随分と弱い3人だった。とはいえ、油断はできない。この密林には、リヒター殿、そしてあのグウェントと名乗った青年もいる。
リヒター殿は、何度か手合わせしているから、その強さはよくわかっている。また、グウェントに関しても先ほどの感じから、なかなかの強さではないかと思っている。
奇襲をされたら、正直危ないが。リヒター殿に関してはそれは絶対に無い・・・・・ので、心配はいらない。ならば危険なのはむしろグウェントの方だけれど。
いやいや、待てよ。あの2人だけでは無いだろう危険なのは。王族なのだから、ミーナ様も強いだろうし、俺が会ってないだけで、強いやつなんてどれだけでもいるはずである。
そんな考え事をしている俺の耳に、爆発音が聞こえてくる。
「ふむ、珍しいな。」
思わずそんな感想を漏らす。なぜ珍しいかというと、一つの理由としては、この戦いがバトルロワイアルという点にある。
この実力テストにおいて、敵は1人では無い。そのため、交戦の際に大きな音を立てたりなどすれば、自分の位置を他者に教えているのと同義である。
ゆえに、それをするのは、そのことがわかっていない未熟者か、それとも。
「それでも構わないと考える、強者か。」
まぁ、後者だろう。この軍事学校に来る人間が、その程度のことを理解してないとは思えない。
さて、このエサに食いつくかどうかだが。
まあせっかくなので食いついてみよう。
ということで、俺は爆発地点に向かう。周りの草木の音からして、他にも俺と同じような考えを持つ人たちがいるようだ。
そして、その現場に着いてみると、そこには、あのグウェントと、ここに来る前に校長先生に質問していた少女がいた。
「あははははは!!!やっぱ兄貴は凄い!戻ってきなよ!」
「は、冗談きついぜ。お前らがやり方を変えない限り俺は戻らねえよ!」
なかなかの接戦である。グウェントの方は、先ほども見た大剣を振るっている。予想通り、立ち回りが非常に上手く、実際に戦えば、苦戦を強いられるだろう。
しかし、それに対応する少女も、豪快に武器を振るい、グウェントとやりあっている。というか、扱っている武器がチェーンソーなんだが、近代的すぎやしないか?
「おらぁ!」
「あっぶなーい!あはははは!!」
しかし、グウェントの方は殺す勢いで武器を振るっているが、対応する少女の方は、戦いを楽しんでいるように見える。この差はなんだ?会話から兄妹なのはわかるんだが、どうも因縁があるらしい。すると、突然、少女の目がこちらを捉える。
「ーーあーもう、せっかく楽しんでるのに、ウザい。」
少女がつぶやくと、チェーンソーを横薙ぎ。すると、その軌跡に沿って、真紅の炎が、俺たちに迫って来るのが目に入る。やばい、これは喰らったら間違いなく、死ぬ。しかし、反応が遅れたから避けるのは無理だ。くっそ、それならーーー。
#####
「ふー、ほら邪魔者もいなくなったし、続けよ、兄貴!」
イかれてやがる。今こいつは幻の世界だから人を殺したのでは無い。邪魔だから、殺した。だからこそこいつは、現実でも間違いなく同じことをする。
くそ、やっぱりこいつらとは相容れないな。いくら血が繋がっていても、許容できないことはある。幸い俺はこいつらのような殺人衝動は持ち合わせて無い。
巻き込んだ奴らには済まないことをしたな・・・。俺たちの兄弟喧嘩のようなものに巻き込んでしまったも同義だ。こいつの一撃をもらって、まともに動けるやつなんているわけがないからな・・・。
「けほっ、あっぶな。流石に肝が冷えたな。」
ーーーバカな。煙が晴れたそこには、1人の男がいた。その男は黒い瞳に、黒い髪。背が高い方ではないが、鍛えているとわかるその体。朝に話したトランという男だった。
「ーーーなんでだ?」
「え?いやなんでって、試験なんだから攻撃されたら身を守るだろ。」
俺のつぶやきを拾うトラン。違う、そうじゃない。俺は、なんで防いだ?ではなく、なんで、防ぐことができたんだ?と思っているんだ。
しかし俺はそれを聞けなかった。なぜなら、
「ーーあはっ!」
あいつが、興味を持ってしまった。俺の妹、ディーナが、トランに。
「ねーねー。キミ名前なんていうの?」
「ん?あー、そうだな、名乗っていなかった。名はトラン、平民の出だが、よろしく頼む。貴殿は?」
「ディーナって言うんだ。いい名前でしょ。」
「あぁ、そうだな。素晴らしい名前だと思う。」
軽口を交わしているが、俺の妹は今か今かと襲いかかるタイミングを狙っている。だめだ、ああなったあいつは止めようがない。
「で、トランはここに何しに来たの?」
「ん?そうだな、爆発音が聞こえてな、よほど自分の力に自信があるやつがいるのだろうと思ってな。」
「ーーそれで?」
目を見開く。俺はてっきりトランという男は、穏便なタイプかと考えていた。けれど、今目の前にいる男は。俺の妹がその顔に貼っているのと同じように。
ーー口元を吊り上げ、凶悪に笑っていた。
「ーーなに、戦ってみたいと思うだろう?普通。」
その言葉を皮切りに、ディーナが飛びかかる。しかし、どうみてもトランは獲物を持っていない。あいつ相手にそれは無謀としか言えない。
でも、なぜだろうか。目の前の男ならどうにかする気がする。それこそ、ディーナにすら、勝ってしまいそうな、そんな気が。
#####
さてさて、驚いた。あのディーナと名乗った少女、殺気がやばい。俺が彼女の攻撃に耐え切ってから、俺を殺したいという感情がよく伝わった。しかし、先ほどの立ち振る舞いからして、ディーナは強い。チェーンソーを振り回している時点で恐ろしいし、何よりその戦闘センスがずば抜けている。
なのでいつものように地面に色を塗っても恐らく、反応される。ディーナは見た感じ、理詰めで戦うタイプではなく、本能で戦うタイプだ。こちらの行動一つ一つに、本能的に反応してくる。正直、だいぶ厄介なタイプだ。普通にやっても無駄になるだろう。
それに、ディーナの魔法がまだ読みきれていない。先ほどの真紅の炎がその魔法の一端だろうが、あれしか見ていないからなんとも言えない。
まぁなんにせよ、とりあえずは身体能力を上げておかないと、長くは持たないと思うので、青色を身体に張りめぐらせる。これにより自身の速度を上昇させる。また、妨害の赤をいくつか仕掛けておく。バレてはいるだろうが、戦闘中に邪魔にはなるはずだ。そこまでやったところで、ディーナとの会話が終わる。
ディーナが自分の体と同じくらいの大きさのチェーンソーを構え、突っ込んでくる。案の定俺の仕掛けた赤色は気づかれていたらしく、避けられている。しかし、それは承知の上、あえて赤が1番多いところで勝負をするため、俺自身もディーナに突っ込む。
チェーンソーは人を一撃で殺すのには向いていない武器だ。実際、チェーンソーで人を真っ二つにしようとしてもそれはできない。ただし、最大の利点は何かといえば、肉を断つというより、肉を切り潰すという点にある。もっと簡単にいえば、チェーンソーとは、人を苦しませて殺すことに特化した武器とも言えるのかもしれない。
だからこそ、目の前のディーナという少女は、その見た目にそぐわず快楽殺人者のような類の可能性もある。先のグウェントとの会話からもそのようなイメージは感じる。などなど、ディーナに関わることはあまり良くないのかもしれない。
しかし、とにかく今は。
彼女を倒すことに全てを尽くそう、とそう思うのだ。
「よい、しょ!」
縦に大振りの一撃。当たれば脳をグチャグチャにされる一撃だが、当然のごとくそんな大振りには当たらない。横にわずかに体をずらすことで回避する。ディーナはチェーンソーを地面に突き立て、しかしそのまま、体を回し、蹴りをかましてくる。その攻撃には、右手を構え、さらに妨害の赤を付与することで防ぐ。
続いて、チェーンソーを引き抜こうとするディーナに、俺は重量化の朱を左手に付与。その手でディーナの足を掴み、バランスを崩させる。そしてその勢いのまま、右手の赤を解除し、代わりに推進の青を付与。かなりの速度で繰り出された拳をディーナに打ち込む。
一瞬ひるんだので、その隙にディーナの足元に青を付与。それにより、ディーナは右方向に飛ばされる。そこには俺が仕掛けておいた赤がある。そこにぶつかったディーナまで青の道を作り、加速していた俺はノータイムで拳を打ち込む、つもりだったが、顔を上げたディーナと目が合う。
「ーーっ!!」
青の効果を逆向きにし、咄嗟に後ろに自分を飛ばす。すると、ディーナの体を真紅の炎が包み始める。あぁ、なるほど、そういう魔法か。
「やー、凄いね。トランは。」
目が煌々と真紅に光っている。そうか、これがディーナという少女か。まさに獣というにふさわしいその目は、とても楽しそうに、狂った光を携えていた。
「ほんと、凄い。私に魔法使わせたのって、トランで4人目なんだ。」
「そうか、それは光栄だな。」
「うん、だから、トラン。ーー死なないでね?」
爆発。彼女を中心に、真紅の炎が舞い上がる。その暴力的ながら、美しい炎は、周り一面を焦土に変えた。もちろん俺は赤を重ねまくって防いでいるが、これは不意打ちを喰らえば一発だろうな。
「ぴ、ピンポンパンポーン・・・。試験開始から、20分が経過しましたー・・・。残り人数は7人でーす・・・。あと、20分経過したので、エリア縮めまーす・・・。」
思ったよりも急激に減ったせいか、校長先生の元気が無くなったな。本来なら何時間もかけてやるものなのだろう。それがこの有様だ。俺と、ディーナ、そして普通に後ろで大剣を振るい、炎に耐え切ったグウェントを抜けば、4人しか残っていない。
だけど、さっきも言ったが、ここは焦土と化した。だから、俺たちはお互いを全員認識している。周りを見渡せば、リヒター殿、ミーナ様。さらに、白髪の弓を構えた女性と、杖を構えたエメラルドの髪の少女がいた。
リヒター殿と目が合う。すると、リヒター殿がニヤリと笑う。どうやら、邪魔はしないとのことらしい。
それならば存分にやらせてもらう。いざという時は、異常色を使うことも検討しておこう。
「もういい?トラン。」
「あぁ、やろう。ディーナ。」
顔一面に喜色を浮かべ、チェーンソーを構えるディーナ。それに対し、俺も構えを取る。
さあ、久しぶりに本気で行こう。
ちなみに、アマリア様との戦いの後、3人ほど襲いかかって来たが、全員叩きのめした。アマリア様に比べれば随分と弱い3人だった。とはいえ、油断はできない。この密林には、リヒター殿、そしてあのグウェントと名乗った青年もいる。
リヒター殿は、何度か手合わせしているから、その強さはよくわかっている。また、グウェントに関しても先ほどの感じから、なかなかの強さではないかと思っている。
奇襲をされたら、正直危ないが。リヒター殿に関してはそれは絶対に無い・・・・・ので、心配はいらない。ならば危険なのはむしろグウェントの方だけれど。
いやいや、待てよ。あの2人だけでは無いだろう危険なのは。王族なのだから、ミーナ様も強いだろうし、俺が会ってないだけで、強いやつなんてどれだけでもいるはずである。
そんな考え事をしている俺の耳に、爆発音が聞こえてくる。
「ふむ、珍しいな。」
思わずそんな感想を漏らす。なぜ珍しいかというと、一つの理由としては、この戦いがバトルロワイアルという点にある。
この実力テストにおいて、敵は1人では無い。そのため、交戦の際に大きな音を立てたりなどすれば、自分の位置を他者に教えているのと同義である。
ゆえに、それをするのは、そのことがわかっていない未熟者か、それとも。
「それでも構わないと考える、強者か。」
まぁ、後者だろう。この軍事学校に来る人間が、その程度のことを理解してないとは思えない。
さて、このエサに食いつくかどうかだが。
まあせっかくなので食いついてみよう。
ということで、俺は爆発地点に向かう。周りの草木の音からして、他にも俺と同じような考えを持つ人たちがいるようだ。
そして、その現場に着いてみると、そこには、あのグウェントと、ここに来る前に校長先生に質問していた少女がいた。
「あははははは!!!やっぱ兄貴は凄い!戻ってきなよ!」
「は、冗談きついぜ。お前らがやり方を変えない限り俺は戻らねえよ!」
なかなかの接戦である。グウェントの方は、先ほども見た大剣を振るっている。予想通り、立ち回りが非常に上手く、実際に戦えば、苦戦を強いられるだろう。
しかし、それに対応する少女も、豪快に武器を振るい、グウェントとやりあっている。というか、扱っている武器がチェーンソーなんだが、近代的すぎやしないか?
「おらぁ!」
「あっぶなーい!あはははは!!」
しかし、グウェントの方は殺す勢いで武器を振るっているが、対応する少女の方は、戦いを楽しんでいるように見える。この差はなんだ?会話から兄妹なのはわかるんだが、どうも因縁があるらしい。すると、突然、少女の目がこちらを捉える。
「ーーあーもう、せっかく楽しんでるのに、ウザい。」
少女がつぶやくと、チェーンソーを横薙ぎ。すると、その軌跡に沿って、真紅の炎が、俺たちに迫って来るのが目に入る。やばい、これは喰らったら間違いなく、死ぬ。しかし、反応が遅れたから避けるのは無理だ。くっそ、それならーーー。
#####
「ふー、ほら邪魔者もいなくなったし、続けよ、兄貴!」
イかれてやがる。今こいつは幻の世界だから人を殺したのでは無い。邪魔だから、殺した。だからこそこいつは、現実でも間違いなく同じことをする。
くそ、やっぱりこいつらとは相容れないな。いくら血が繋がっていても、許容できないことはある。幸い俺はこいつらのような殺人衝動は持ち合わせて無い。
巻き込んだ奴らには済まないことをしたな・・・。俺たちの兄弟喧嘩のようなものに巻き込んでしまったも同義だ。こいつの一撃をもらって、まともに動けるやつなんているわけがないからな・・・。
「けほっ、あっぶな。流石に肝が冷えたな。」
ーーーバカな。煙が晴れたそこには、1人の男がいた。その男は黒い瞳に、黒い髪。背が高い方ではないが、鍛えているとわかるその体。朝に話したトランという男だった。
「ーーーなんでだ?」
「え?いやなんでって、試験なんだから攻撃されたら身を守るだろ。」
俺のつぶやきを拾うトラン。違う、そうじゃない。俺は、なんで防いだ?ではなく、なんで、防ぐことができたんだ?と思っているんだ。
しかし俺はそれを聞けなかった。なぜなら、
「ーーあはっ!」
あいつが、興味を持ってしまった。俺の妹、ディーナが、トランに。
「ねーねー。キミ名前なんていうの?」
「ん?あー、そうだな、名乗っていなかった。名はトラン、平民の出だが、よろしく頼む。貴殿は?」
「ディーナって言うんだ。いい名前でしょ。」
「あぁ、そうだな。素晴らしい名前だと思う。」
軽口を交わしているが、俺の妹は今か今かと襲いかかるタイミングを狙っている。だめだ、ああなったあいつは止めようがない。
「で、トランはここに何しに来たの?」
「ん?そうだな、爆発音が聞こえてな、よほど自分の力に自信があるやつがいるのだろうと思ってな。」
「ーーそれで?」
目を見開く。俺はてっきりトランという男は、穏便なタイプかと考えていた。けれど、今目の前にいる男は。俺の妹がその顔に貼っているのと同じように。
ーー口元を吊り上げ、凶悪に笑っていた。
「ーーなに、戦ってみたいと思うだろう?普通。」
その言葉を皮切りに、ディーナが飛びかかる。しかし、どうみてもトランは獲物を持っていない。あいつ相手にそれは無謀としか言えない。
でも、なぜだろうか。目の前の男ならどうにかする気がする。それこそ、ディーナにすら、勝ってしまいそうな、そんな気が。
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さてさて、驚いた。あのディーナと名乗った少女、殺気がやばい。俺が彼女の攻撃に耐え切ってから、俺を殺したいという感情がよく伝わった。しかし、先ほどの立ち振る舞いからして、ディーナは強い。チェーンソーを振り回している時点で恐ろしいし、何よりその戦闘センスがずば抜けている。
なのでいつものように地面に色を塗っても恐らく、反応される。ディーナは見た感じ、理詰めで戦うタイプではなく、本能で戦うタイプだ。こちらの行動一つ一つに、本能的に反応してくる。正直、だいぶ厄介なタイプだ。普通にやっても無駄になるだろう。
それに、ディーナの魔法がまだ読みきれていない。先ほどの真紅の炎がその魔法の一端だろうが、あれしか見ていないからなんとも言えない。
まぁなんにせよ、とりあえずは身体能力を上げておかないと、長くは持たないと思うので、青色を身体に張りめぐらせる。これにより自身の速度を上昇させる。また、妨害の赤をいくつか仕掛けておく。バレてはいるだろうが、戦闘中に邪魔にはなるはずだ。そこまでやったところで、ディーナとの会話が終わる。
ディーナが自分の体と同じくらいの大きさのチェーンソーを構え、突っ込んでくる。案の定俺の仕掛けた赤色は気づかれていたらしく、避けられている。しかし、それは承知の上、あえて赤が1番多いところで勝負をするため、俺自身もディーナに突っ込む。
チェーンソーは人を一撃で殺すのには向いていない武器だ。実際、チェーンソーで人を真っ二つにしようとしてもそれはできない。ただし、最大の利点は何かといえば、肉を断つというより、肉を切り潰すという点にある。もっと簡単にいえば、チェーンソーとは、人を苦しませて殺すことに特化した武器とも言えるのかもしれない。
だからこそ、目の前のディーナという少女は、その見た目にそぐわず快楽殺人者のような類の可能性もある。先のグウェントとの会話からもそのようなイメージは感じる。などなど、ディーナに関わることはあまり良くないのかもしれない。
しかし、とにかく今は。
彼女を倒すことに全てを尽くそう、とそう思うのだ。
「よい、しょ!」
縦に大振りの一撃。当たれば脳をグチャグチャにされる一撃だが、当然のごとくそんな大振りには当たらない。横にわずかに体をずらすことで回避する。ディーナはチェーンソーを地面に突き立て、しかしそのまま、体を回し、蹴りをかましてくる。その攻撃には、右手を構え、さらに妨害の赤を付与することで防ぐ。
続いて、チェーンソーを引き抜こうとするディーナに、俺は重量化の朱を左手に付与。その手でディーナの足を掴み、バランスを崩させる。そしてその勢いのまま、右手の赤を解除し、代わりに推進の青を付与。かなりの速度で繰り出された拳をディーナに打ち込む。
一瞬ひるんだので、その隙にディーナの足元に青を付与。それにより、ディーナは右方向に飛ばされる。そこには俺が仕掛けておいた赤がある。そこにぶつかったディーナまで青の道を作り、加速していた俺はノータイムで拳を打ち込む、つもりだったが、顔を上げたディーナと目が合う。
「ーーっ!!」
青の効果を逆向きにし、咄嗟に後ろに自分を飛ばす。すると、ディーナの体を真紅の炎が包み始める。あぁ、なるほど、そういう魔法か。
「やー、凄いね。トランは。」
目が煌々と真紅に光っている。そうか、これがディーナという少女か。まさに獣というにふさわしいその目は、とても楽しそうに、狂った光を携えていた。
「ほんと、凄い。私に魔法使わせたのって、トランで4人目なんだ。」
「そうか、それは光栄だな。」
「うん、だから、トラン。ーー死なないでね?」
爆発。彼女を中心に、真紅の炎が舞い上がる。その暴力的ながら、美しい炎は、周り一面を焦土に変えた。もちろん俺は赤を重ねまくって防いでいるが、これは不意打ちを喰らえば一発だろうな。
「ぴ、ピンポンパンポーン・・・。試験開始から、20分が経過しましたー・・・。残り人数は7人でーす・・・。あと、20分経過したので、エリア縮めまーす・・・。」
思ったよりも急激に減ったせいか、校長先生の元気が無くなったな。本来なら何時間もかけてやるものなのだろう。それがこの有様だ。俺と、ディーナ、そして普通に後ろで大剣を振るい、炎に耐え切ったグウェントを抜けば、4人しか残っていない。
だけど、さっきも言ったが、ここは焦土と化した。だから、俺たちはお互いを全員認識している。周りを見渡せば、リヒター殿、ミーナ様。さらに、白髪の弓を構えた女性と、杖を構えたエメラルドの髪の少女がいた。
リヒター殿と目が合う。すると、リヒター殿がニヤリと笑う。どうやら、邪魔はしないとのことらしい。
それならば存分にやらせてもらう。いざという時は、異常色を使うことも検討しておこう。
「もういい?トラン。」
「あぁ、やろう。ディーナ。」
顔一面に喜色を浮かべ、チェーンソーを構えるディーナ。それに対し、俺も構えを取る。
さあ、久しぶりに本気で行こう。
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