異世界の学園物語

白い犬

文字の大きさ
7 / 17
第1章 売却少女

第7話 網にかかった獲物

しおりを挟む
 あれから、1ヶ月が経った。

 新しいクラスではそれなりに馴染めているとは思う。どうにも尊敬の眼差しのようなものが向けられているのはむず痒いものだが、それに目を瞑れば、学園生活は概ね好調だろう。

 そして今、クラスはとても燃えている。なぜなら、1週間後、決闘祭が開かれるからだ。この1ヶ月、訓練と学業に励んできたからこそ、その実力を発揮したいというもの。

 かくいう俺も、この決闘祭を楽しみにしていて、魔法の鍛錬や、体術の訓練などもしてきたものだ。それに、戦場は校長の魔法で毎回変わるらしいので、座学で学んだ戦略も使い所となる。

 放課後、そんな風に意気込んでいる俺のところに、いつものメンバーが集まってくる。貢献部の面々だ。

「トラン、口元が緩んでるぜ。どうせ一週間後が楽しみで仕方ないんだろ。」

 そう話しかけてくるのはグウェント。そういう彼も、口元が緩んでいる。

「好戦的です、2人とも。まぁ、私も新しい道具を試せるのは楽しみですけど。」

 そう言うのはティナ。また何か作ったらしい。1週間前の彼女の発明品については、思い出したくもない記憶となっている。

「はいはい、楽しみなのはいいけど、今日は依頼があるからそれを忘れないでね?」

 そう言うのは、アリス。

「今日の依頼はどんなのだった?」

「えーと、猫の捜索と、ブレイザーズへの見学ね。」

 ん?猫の捜索はわかる。貢献部は民間からの依頼も受けているので、恐らく小さい子かそこらの依頼だろう。だが、ブレイザーズとはなんだろうか?

「アリス嬢、多分トランのやつブレイザーズがわかってないぜ。」

 グウェントに呆れられながら言われる。そんな反応しなくてもいいだろう。

「まぁ、トランさんは紅い狂犬も知らないですから。」

 ティナまでそんなことを言ってくる。すまないね、世間知らずで。

「えっとね、ブレイザーズって言うのは、民間の何でも屋さんみたいな組織なのよ。荒事とかも請け負うから、戦力としても大きな存在だし、この街では有名な組織よ。」

「凄い組織なんだな。でもなんでそこが俺たちに見学の誘いを?」

「ほら、うちの学校でブレイザーズに近いことやってるし、それなりに強い人が集まってるから、勧誘みたいなものでしょうね。」

 なるほど。将来の引き抜きということか。まぁ、依頼は依頼だから、行くしかないのだけど。

「とりあえず、猫の捜索からやろうか。依頼主は?」

「学校裏に住んでるミルちゃんね。なんでも、旧市街に連れて行った後に見失ったから、そこらへんにいるかもってことらしいわ。」

 旧市街ときたか。これは手間だな。なぜなら、トルーパーの旧市街はとにかく広いのだ。

「お嬢、もう少し絞れないか?流石に旧市街全域は無理があるぜ。」

 さすができるグウェント。俺の聞きたいことを的確に聞いてくれた。

「うーん、そうは言っても、これ以上書いてないし・・・。」

「あー、てなると、しらみつぶしに探すしかないか・・・。」

 これは仕方ない。書いてないことまで考えるのは不可能だからな。

「多分、旧市街のマンションメチルダじゃないでしょうか?」

 と、ここでティナがそんなことを言う。

「なんでだ?」

 ティナは適当なことを言わない。そう思うからにはそれ相応の理由があるはずだ。

「まぁ、予測の域は出ないですよ。ミルちゃんはお母さんを亡くしてるんですが、昔一緒に住んでたのが確かあのマンションだったはずです。それ以外にミルちゃんが旧市街に行く理由も思いつきませんから、そう思っただけです。」

「思い出巡りって、ことか。それはありそうだな。」

「じゃあ、とりあえずメチルダマンションに向かいましょうか。」

「そうだな、確か旧市街は街の南東部にあったはずだ。」




 #####



「さて、メチルダマンションに着いたが。」

 ボロッボロである。すでに廃墟化しているとは聞いていたけれど、よくこんなところに入ろうと思ったね、ミルちゃん。

「噂に、魔物も湧いてるって話もあるです。」

「とんでもないな、おい。」

 グウェントが顔をひきつらせる。横で俺とアリスもひきつらせる。猫は大丈夫なのか?

「と、とにかく、早く猫ちゃんを助けてあげましょ。」

 皆、アリスの言葉に頷く。というか、早く助けて、早く帰りたい。不気味すぎるぞ、このマンション。

 ーーさて、中に入りましたけども。暗いし、ギシギシ音はするしで、不気味極まりない。

「ティナ、ミルちゃんのお母さんはどの部屋に居たんだ・・・?」

「流石にそこまでは知らないです。」

 ティナはそう言いながら、グウェントを盾にして歩いている。

「おい、ティナすけ。何してる。」

「1番頑丈そうな人を、1番役立てる場所に置いてます。」

「お前、俺相手のその容赦のなさはなんなんだ?」

 仲良しの2人はいつもこんな感じだ。なんやかんやで、ティナはグウェントを1番頼りにしてると思う。しかし、部屋がわからないとなるとな・・・。

「じゃあ一つずつ探すしかないってことね。」

 アリスが嫌そうな顔をしている。まぁ、ここに長時間いるのは俺も嫌だ。

「とにかく、ゆっくりやるのは滞在時間を増やすだけだから、できる限り速やかに見つけよう。」

「じゃあ二手に分かれようぜ、トラン。」

 グウェントがそう言う。なるほど、それは一理ある。

「じゃあ、私はグウェントさんと行きます。いざという時はおぶってもらいます。」

「便利アイテムじゃないぞ俺は。」

「そうなると、俺とアリスのペアだな。」

「ええ、頼むわね、トラン。」

 ニッコリと微笑むアリス。これはいざという時は盾になれという脅迫でないだろうか。

 とにかく、二手に分かれることにした俺たちは、4階建てマンションの1.2階をグウェントとティナ。3.4階を俺とアリスで回ることになった。

「よし、とにかく部屋を開けて探していこう。」

「そうね。・・・幽霊とか、居ないわよね?」

「はは、まさか。・・・まさか。」

 いや、居そうなんだよ、この雰囲気。だから、そんな目で見つめないでください、アリスさん。

「と、とにかく、ほら。部屋を探していこう。」

「・・・そうね。怖がってても仕方ないわ。」

 そういい、部屋を開けて猫を探していく俺とアリス。結果、3階には
 猫はいなかった。

「じゃあ4階を探しにーー。」

 カサッ。

「「・・・。」」

 今、階段の奥から、聞こえちゃいけない音が聞こえた気がする。横を見ると、顔の引きつったアリス。その口が、わずかに開き、言葉を紡ぐ。

「ーー頼むわね、トラン。」

 俺に一任してきた。その顔は青ざめていて、本当に無理、と激しく意思表示している。俺もあの黒いナニカは嫌いだが、アリスを見ると、まだマシだなと思う。仕方ない、ここは俺が行くしかないな。

「はは、わかったよ。じゃあ、アリスは下で待っててくれ。」

「ごめんね、あれは本当に無理なの。」

 そう言ってアリスは降りて行く。よし、なら4階の捜索に行くか。黒いあいつは見つけ次第赤色で囲って、隔離だ。

 階段を一段、また一段と上がって行く。その度にギシギシと鳴る音が更に恐怖を掻き立てる。どこだ、どこからくる。目を光らせながら、階段を上がりきる。

 カサッと、もう一度音がなる。右上天井、そこか!すぐさま俺は朱色を展開、そこにいる生物を下に落とす!すると、床にどたん、と音を立てその生物が落ちてくる。・・・え、そんなGって重かったっけ?暗闇でよく見えない。落ちた地点を赤で囲い、逃げられないようにして近寄る。そこにいたのは。

「ーー蜘蛛、の女の子?」

「痛い・・・。」

 めそめそと泣いている、下半身蜘蛛、上半身女の子の生物だった。



 #####



 猫は、グウェントたちが見つけていた。あの後、無事に猫は飼い主のミルちゃんの元へ届けて、そして今、俺たちは学校の部室で、蜘蛛の少女が俺の作った炒飯を食べているところを見ている。

「美味しい!」

「ーーおい、トラン。どういうことだ、説明しろ。」

「何もわかってないのはむしろ俺だ、グウェント。」

「もしかして、噂の魔物ってこの子?」

「恐らく、そうです。」

 困った。どうすれば良いのだろうか。何となく落とした申し訳なさから連れて帰ってきてご飯も上げてしまったけれど。これは大変ではないか?

「魔物だとしたら、ここに連れて帰ってきてるのまずいんじゃないか?」

「そうね、害をなすようには見えないけど、周りの人はそう思わないかもしれないし。」

「街の外に還すのがいいです。」

 まぁ、そうだろうな。3人のいう通りだと俺も思う。

「せめて、人間と同じ姿ならまだ何とかなるんだけどな・・・。」

 その言葉に、蜘蛛の少女はこちらを見て、首を傾げる。人間の言葉はわかるけど、会話の意味まではわかんないか。仕方ない、俺はしゃがんで、少女に話しかけようとしたその時、少女が、淡く光り始める。その光に目を閉じた次の瞬間。

「これでいーの?」

 下半身蜘蛛の少女は、完全に人間の姿になっていた。

「「「「ーーえ?」」」」

 俺たちは彼女を間抜けな顔で見ることしかできなかったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

処理中です...