8 / 17
第1章 売却少女
第8話 ブレイザーズ訪問
しおりを挟む
ちょっと一旦落ち着こう。
先ほどまで、俺たちは学校の部室で、メチルダマンションで出会った半人半蜘蛛の少女を見ていたはずなのだが。一体どうしたことやら、今目の前にいるのは完全に人間の女の子だ。
「えっ、と。これはどういうことかな?」
思わず言葉が漏れる。周りを見ても、3人とも呆けてしまっている。どうやら俺しかこの状況には対応できないらしい。
「どういうことってー?」
蜘蛛少女が俺に聞いてくる。
「いや、何で姿が変わってるのかな?」
俺も率直に聞く。というか、今はそれしか気にならない。目の前の少女が裸なことはたいして気になっていない。
気になっていないったらいない。
「んー?なんか、こう、うりゃー!って感じでやればできるよ?」
あ、これだめだ。感覚派だこの子。とてもじゃないけど、この子の説明はきっと理解できないだろう。
まぁでも、推測は立つ。この世界の仕組みから考えて、こんな超常現象引き起こせるのって言えば、魔法だろう。この少女はおそらく、何らかの魔法を使用し、見た目に変化を加えたのだろう。逆にそれ以外何かあるとは思えない。
と、ここでようやく3人が正気に戻る。
「はぁー。驚いたな。魔物の中にも魔法が使えるやつがいるとは聞いていたが・・・。ま、目の保養にはなるわな。」
「信じられないです。堂々とセクハラしてますよこの人。」
「はは、何だ嫉妬か、ティナすけ。」
「ふふ、まさか。」
グウェント、その発言は俺もどうかと思うぞ。
「か・・・。」
んん?アリスがなんか小刻みに震えて・・・?
「かーわいーいーー!」
と思ったらダッシュで蜘蛛の少女に近づき、撫でるわ抱きつくわとするので、蜘蛛の少女も身をよじり
「やーー!」
完全に嫌がっている。何だどうしたんだ、アリス。
「私、妹がずっと欲しかったの・・・。」
やばい、目がイッてる。新しい一面を見たなこれは。
「アリス、とりあえずその子嫌がってるから離れようか。」
「う、わかったわ。」
すごく名残惜しい目で蜘蛛少女を見てるアリスさん。この人、幼女誘拐とかしてないだろうな。
「えー、と。とりあえず、君の名前は?」
最優先で聞かなければいけないことを聞いていなかった。コミュニケーションを取るには、まず互いの名前を知らないとな。
「なまえー?」
「そう、名前。周りの人になんて呼ばれてた?」
「んと、まもの!」
後ろで息を呑む音が聞こえる。あぁ、そっか。この子は、それでしか呼ばれたことがないのか。魔物という、括りでしか。
「ちょっといいかい?」
しゃがんで、視線を合わせる。できる限り、威圧感を与えないように。
「君に名前をつけたいんだけど、いいかな?」
「さっきのなまえじゃないのー?」
「さっきのも名前だよ。でも、それとは違う名前をつけたいんだ。どうかな?」
「いーよー!」
了承も得た。さて、どんな名前をつけてあげよう。
「あ、ちょっと、「よし決めた、クーネだ。」・・・遅かったです。」
「ん?どうした、ティナ。」
「いえ、何でも。ただ、トランさんは多分わかってないだろうなーと思ったので。」
その言葉に首を傾げていると、またもや蜘蛛少女、改めクーネが光り始める。
「ま、また!?」
「いえ、これは名前をつけたからです。」
名前をつけたから?名前つけたら光るの!?
「友好的な魔物に名前をつけると、稀に従魔化するんですよ。」
「・・・ティナさんや、ちなみにそれはどれくらい稀?」
「1000回やって1回成功すれば御の字です。」
ナンテコッタ。また目立つ要因を作ってしまった。・・・まぁいいか。最近もう目立たないの無理だと分かってきたし。それより、とにかく目の前の状況を処理しよう。
光が晴れると、そこには先ほどより幾分か大人っぽくなったクーネ。小学生くらいから中学生くらいになったようなイメージだ。髪の色も変化し、もともと白だったのが黒になっている。目に変化はなく、元の赤のままだ。
「マスター、ありがとー!」
残念ながら、精神年齢に変化はないようである。いや、それよりも。
「マスターはやめてほしいかな、クーネ。」
「えー?じゃあなんて呼べばいーの?」
「普通にトランって呼んでほしいかな。」
「はーい!」
素直でよろしい。
ーーふう、それにしても思わぬ展開だったな。まさか猫を探すだけだったはずが、半人半蜘蛛を仲間にしてしまうとは。
「さて、帰ろうか。」
「トラン、まだブレイザーズへの見学があるからね?」
あ、てっきり忘れていた。そう言えば、そんな依頼もありましたね。
「クーネはどうしようか。」
魔物とバレたら厄介そうだし、あまり連れ歩かないほうがいいかな?
「行きたいー!」
「この姿の分には大丈夫なんじゃないかしら。」
「それもそうか。よし、じゃあ行こう。」
そして俺たちはクーネを連れて、ブレイザーズ支部のある湾岸部へと向かうことになった。
#####
「おおきーい!」
「予想より結構でかいな。」
ブレイザーズ・トルーパー支部の前に立って、俺は正直驚いていた。ボランティア集団みたいなのの巨大版みたいなイメージだったから、こんなしっかりしてる感じだと思ってなかった。
ちなみに、ブレイザーズ・トルーパー支部と、支部が付いているのは本部は別にあるからである。本部はラスティア王国という、トルーパーを出て、東街道を抜け、さらにいろんな所を通ったところにある王国にある、とティナが言っていた。正直徒歩で行くのは自殺行為なので、徒歩ルートは覚えていないそうだ。
「とりあえず中に入って挨拶しましょう。」
「うん、そうしようか。」
扉を開けて、中に入る。建物が上に大きいので、奥行きはそれほど無く、入って10メートルくらいの場所に受付がある。そこに座っている少女に声をかける。
「依頼を受けたトルーパー軍事学校の貢献部です。本日は見学をさせていただけるとのことで。」
「あ、はい。貢献部の皆さんですね。少々お待ちください。」
少女がパタパタと二階に上がって行った。
「誰か呼びに行ったみたいですね。」
「みたいだな。さて、見学とは言うが、何をするのかね。」
「そうね、ブレイザーズという組織を知らない人はいない、いえほとんどいないと思うし。」
こっちチラ見していい直すのやめてもらえます?
「勧誘の可能性がやっぱり高いです。」
「うーん、やっぱりそうかしら。」
まあ、ありえない話ではないかな。
「わーい!」
・・・ん?なんか今視界の端に、赤い目をした黒い髪の少女が知らない人の腕を掴んでぶら下がっているような気がしたぞ?
「ーー君たち。」
気のせいではなかったか。
「この子の保護者なら、その、助けてほしいんだが。」
「すいません・・・。」
クーネを引き摺り下ろす。すると今度は俺の背中に張り付いてきた。
「すまない、遊んであげられればよかったんだが、どうにも子供の扱いが私はわからなくてな。」
目の前の男性が苦笑いしながら申し訳なさそうにしている。髪の色は、紺で、透き通った翠色の目を持った、20代くらいの男性だ。
「いえこちらこそ、ほら、クーネも謝って。」
「ごめんなさい?」
なぜ疑問系なんだ。
「こちらこそ。君たちが貢献部の子たちか?」
その問いにアリスが答える。
「はい、本日は見学に来させていただきました。失礼ですが、アクアスさんでいらっしゃいますか?」
「あぁ、そうだ。」
アクアス?初耳だ。でも多分有名な人なんだろうな。ちょっと最近自分の世間知らずがやばいと思う。今度図書館で色々勉強しておこう。
「私はクローディア家のクシナの娘です。あの時、母を魔物から助けていただきありがとうございました。」
「クシナさんのところの娘か。あの人は息災か?」
「はい、おかげで今は父と仲良く暮らしています。」
「そうか。」
ふっと、表情を和らげるアクアスさん。どうも話からするに、アリスは母親をアクアスさんに救われたらしいな。ふむふむ。
「お待ちさせてすいませんー!」
と、ようやく上の階から先ほどの受付少女が降りて来る。そしてその後ろから現れたのはーー。
「あら、君たちが貢献部?今日はよく来てくれたわね。」
オカマの筋肉むきむきマッチョマンでした。もうね、絶句。ちょっと前に蜘蛛の少女が人間の少女に変わるシーンを見たから、しばらくはあんな風に呆けたりしないだろうとか思ってたんだけど、そんなことはなかった。
「あら、グウェントちゃんじゃない。」
「お、フェミルさんじゃないすか。お久しぶりすね。」
ただし、今回は俺以外のみんなは普通だった。うっそだろ。
「あなたが貢献部って違和感あるわねー。」
「まぁ、俺にも色々あったんすよ。」
「ふーん?まぁいいわ。じゃああなたたちもこっち来てちょうだい。今日の見学について話すから。」
そう言われるがまま、上の階についていく。4階まで上がり、部屋の中に置いてある椅子に座る。クーネは、入り口で受付少女と遊ばせている。そしてこの場にはアクアスさんもいた。
「さて、じゃあまず聞きたいんだけど。今日の見学ってなんだと思うかしら?」
これは、推測の話でいいのだろうか。少し俺が思い悩んでいると、
「勧誘じゃないんすか?それくらいしかないと思うんすけど。」
グウェントが先に言う。というか、グウェント、フェミルさんには若干畏まってるな。昔何かあったんだろうな。
「それは少し先の話ね。あなたたちのことをよく知らないのに、いきなり勧誘ってのも変な話でしょ?」
それもそうか。いやしかしつまり。よく知れば、勧誘するのかもしれないのか。ならもしかして。アクアスさんの方を一瞬見ると目が合った。それで確信する。
「なら、戦力分析ですか?」
「あら、正解。なかなか頭回るわね、あなた。」
やはりか。ブレイザーズという組織形態から考えて、勧誘するか否かは、その性根と、そして実力から判断するだろう。性根は、俺たちに貢献部という部活である以上、人を助けるという意思があることがわかるので、いいだろう。実力は、グウェントは知り合いみたいだが、俺たちは初めて会ったのだし、まだわからない。ならば今日はそれを試すために呼んだと考えるのが妥当。
さらに、アクアスさんがアリスの話から、実力者なこともわかる。ここまでついて来たのだし、話にはどう考えても関わっているのだろう。野次馬根性を見せる人には見えないし。ならば、俺たちの相手はもちろん。
「相手はアクアスよ。地下空洞の鍵渡すから、連れて行ってあげて。」
フェミルさんが、アクアスさんに鍵を渡す。地下空洞て。
「了解した。こっちだ。」
アクアスさんが降りていく。俺たちも顔を見合わせ、そしてその後についていく。一階まで降りて、アクアスさんは部屋の端に近寄る。そしてしゃがんだと思うと、床を開けた。こんなところに床戸あったなんて気付かなかったな。ていうか、クーネがなんか受付少女とめちゃくちゃ仲良くなってる。
よそ見をしていたら、いつのまにかアクアスさんがその階段を降りていたので、慌ててついていく。地下は整備されていて、灯りもちゃんと灯っている。
「地下は修練場となっていてな。こういうことにはうってつけなんだ。」
アクアスさんがそう言う。しばらく降りると、開けた場所に出る。そこでは、数十人の人たちが訓練をしていた。
「あれ、アクアスさん。どうしたんですか?」
若い青年がアクアスさんに話しかける。というか、アクアスさんが来たらみんな動きを止めてるぞ。
「あぁ、貢献部の子たちが来たからな。」
「あ、なるほど。みんなー、アクアスさんが戦うってさー!」
その言葉で、訓練をしていた人たちが丸い円を作る。え、まさか観客みたいな感じですか。
「じゃあ頑張ってね君たち。」
青年は、俺たちに声援を送ってその円に混ざる。
「準備ができたら、4人で来てくれ。」
アクアスさんは、円の中に入っていく。なるほど、その円に入場したら始めるってことですか。
「で、アクアスさんってどれくらいの強さなんだ?」
「それもやっぱり知らないのね、トラン・・・。」
そんな幻滅した目で見ないでください。
「アクアスさんは、ブレイザーズ最強の存在で、この世界最強の一角。誰一人勝てたことがないっていう噂ね。」
思った以上にアクアスさんが強かった。よくそんな人が俺たちの相手してくれるな。
「はは、まぁここまで来たらやれるだけやってみようぜ。」
「頑張るしかないです。」
はは、やる気十分だな。
「うん、そうだな。俺たちの全力をぶつけてみよう。」
4人で円の中に入る。目の前のブレイザーズ最強の存在であるアクアスさんを見つめる。
「よし、では始めよう。」
アクアスさんが刀を抜く。俺たちも構える。
そして、俺はこのあと知ることになる。彼の最強という称号は。
伊達ではないということを。
先ほどまで、俺たちは学校の部室で、メチルダマンションで出会った半人半蜘蛛の少女を見ていたはずなのだが。一体どうしたことやら、今目の前にいるのは完全に人間の女の子だ。
「えっ、と。これはどういうことかな?」
思わず言葉が漏れる。周りを見ても、3人とも呆けてしまっている。どうやら俺しかこの状況には対応できないらしい。
「どういうことってー?」
蜘蛛少女が俺に聞いてくる。
「いや、何で姿が変わってるのかな?」
俺も率直に聞く。というか、今はそれしか気にならない。目の前の少女が裸なことはたいして気になっていない。
気になっていないったらいない。
「んー?なんか、こう、うりゃー!って感じでやればできるよ?」
あ、これだめだ。感覚派だこの子。とてもじゃないけど、この子の説明はきっと理解できないだろう。
まぁでも、推測は立つ。この世界の仕組みから考えて、こんな超常現象引き起こせるのって言えば、魔法だろう。この少女はおそらく、何らかの魔法を使用し、見た目に変化を加えたのだろう。逆にそれ以外何かあるとは思えない。
と、ここでようやく3人が正気に戻る。
「はぁー。驚いたな。魔物の中にも魔法が使えるやつがいるとは聞いていたが・・・。ま、目の保養にはなるわな。」
「信じられないです。堂々とセクハラしてますよこの人。」
「はは、何だ嫉妬か、ティナすけ。」
「ふふ、まさか。」
グウェント、その発言は俺もどうかと思うぞ。
「か・・・。」
んん?アリスがなんか小刻みに震えて・・・?
「かーわいーいーー!」
と思ったらダッシュで蜘蛛の少女に近づき、撫でるわ抱きつくわとするので、蜘蛛の少女も身をよじり
「やーー!」
完全に嫌がっている。何だどうしたんだ、アリス。
「私、妹がずっと欲しかったの・・・。」
やばい、目がイッてる。新しい一面を見たなこれは。
「アリス、とりあえずその子嫌がってるから離れようか。」
「う、わかったわ。」
すごく名残惜しい目で蜘蛛少女を見てるアリスさん。この人、幼女誘拐とかしてないだろうな。
「えー、と。とりあえず、君の名前は?」
最優先で聞かなければいけないことを聞いていなかった。コミュニケーションを取るには、まず互いの名前を知らないとな。
「なまえー?」
「そう、名前。周りの人になんて呼ばれてた?」
「んと、まもの!」
後ろで息を呑む音が聞こえる。あぁ、そっか。この子は、それでしか呼ばれたことがないのか。魔物という、括りでしか。
「ちょっといいかい?」
しゃがんで、視線を合わせる。できる限り、威圧感を与えないように。
「君に名前をつけたいんだけど、いいかな?」
「さっきのなまえじゃないのー?」
「さっきのも名前だよ。でも、それとは違う名前をつけたいんだ。どうかな?」
「いーよー!」
了承も得た。さて、どんな名前をつけてあげよう。
「あ、ちょっと、「よし決めた、クーネだ。」・・・遅かったです。」
「ん?どうした、ティナ。」
「いえ、何でも。ただ、トランさんは多分わかってないだろうなーと思ったので。」
その言葉に首を傾げていると、またもや蜘蛛少女、改めクーネが光り始める。
「ま、また!?」
「いえ、これは名前をつけたからです。」
名前をつけたから?名前つけたら光るの!?
「友好的な魔物に名前をつけると、稀に従魔化するんですよ。」
「・・・ティナさんや、ちなみにそれはどれくらい稀?」
「1000回やって1回成功すれば御の字です。」
ナンテコッタ。また目立つ要因を作ってしまった。・・・まぁいいか。最近もう目立たないの無理だと分かってきたし。それより、とにかく目の前の状況を処理しよう。
光が晴れると、そこには先ほどより幾分か大人っぽくなったクーネ。小学生くらいから中学生くらいになったようなイメージだ。髪の色も変化し、もともと白だったのが黒になっている。目に変化はなく、元の赤のままだ。
「マスター、ありがとー!」
残念ながら、精神年齢に変化はないようである。いや、それよりも。
「マスターはやめてほしいかな、クーネ。」
「えー?じゃあなんて呼べばいーの?」
「普通にトランって呼んでほしいかな。」
「はーい!」
素直でよろしい。
ーーふう、それにしても思わぬ展開だったな。まさか猫を探すだけだったはずが、半人半蜘蛛を仲間にしてしまうとは。
「さて、帰ろうか。」
「トラン、まだブレイザーズへの見学があるからね?」
あ、てっきり忘れていた。そう言えば、そんな依頼もありましたね。
「クーネはどうしようか。」
魔物とバレたら厄介そうだし、あまり連れ歩かないほうがいいかな?
「行きたいー!」
「この姿の分には大丈夫なんじゃないかしら。」
「それもそうか。よし、じゃあ行こう。」
そして俺たちはクーネを連れて、ブレイザーズ支部のある湾岸部へと向かうことになった。
#####
「おおきーい!」
「予想より結構でかいな。」
ブレイザーズ・トルーパー支部の前に立って、俺は正直驚いていた。ボランティア集団みたいなのの巨大版みたいなイメージだったから、こんなしっかりしてる感じだと思ってなかった。
ちなみに、ブレイザーズ・トルーパー支部と、支部が付いているのは本部は別にあるからである。本部はラスティア王国という、トルーパーを出て、東街道を抜け、さらにいろんな所を通ったところにある王国にある、とティナが言っていた。正直徒歩で行くのは自殺行為なので、徒歩ルートは覚えていないそうだ。
「とりあえず中に入って挨拶しましょう。」
「うん、そうしようか。」
扉を開けて、中に入る。建物が上に大きいので、奥行きはそれほど無く、入って10メートルくらいの場所に受付がある。そこに座っている少女に声をかける。
「依頼を受けたトルーパー軍事学校の貢献部です。本日は見学をさせていただけるとのことで。」
「あ、はい。貢献部の皆さんですね。少々お待ちください。」
少女がパタパタと二階に上がって行った。
「誰か呼びに行ったみたいですね。」
「みたいだな。さて、見学とは言うが、何をするのかね。」
「そうね、ブレイザーズという組織を知らない人はいない、いえほとんどいないと思うし。」
こっちチラ見していい直すのやめてもらえます?
「勧誘の可能性がやっぱり高いです。」
「うーん、やっぱりそうかしら。」
まあ、ありえない話ではないかな。
「わーい!」
・・・ん?なんか今視界の端に、赤い目をした黒い髪の少女が知らない人の腕を掴んでぶら下がっているような気がしたぞ?
「ーー君たち。」
気のせいではなかったか。
「この子の保護者なら、その、助けてほしいんだが。」
「すいません・・・。」
クーネを引き摺り下ろす。すると今度は俺の背中に張り付いてきた。
「すまない、遊んであげられればよかったんだが、どうにも子供の扱いが私はわからなくてな。」
目の前の男性が苦笑いしながら申し訳なさそうにしている。髪の色は、紺で、透き通った翠色の目を持った、20代くらいの男性だ。
「いえこちらこそ、ほら、クーネも謝って。」
「ごめんなさい?」
なぜ疑問系なんだ。
「こちらこそ。君たちが貢献部の子たちか?」
その問いにアリスが答える。
「はい、本日は見学に来させていただきました。失礼ですが、アクアスさんでいらっしゃいますか?」
「あぁ、そうだ。」
アクアス?初耳だ。でも多分有名な人なんだろうな。ちょっと最近自分の世間知らずがやばいと思う。今度図書館で色々勉強しておこう。
「私はクローディア家のクシナの娘です。あの時、母を魔物から助けていただきありがとうございました。」
「クシナさんのところの娘か。あの人は息災か?」
「はい、おかげで今は父と仲良く暮らしています。」
「そうか。」
ふっと、表情を和らげるアクアスさん。どうも話からするに、アリスは母親をアクアスさんに救われたらしいな。ふむふむ。
「お待ちさせてすいませんー!」
と、ようやく上の階から先ほどの受付少女が降りて来る。そしてその後ろから現れたのはーー。
「あら、君たちが貢献部?今日はよく来てくれたわね。」
オカマの筋肉むきむきマッチョマンでした。もうね、絶句。ちょっと前に蜘蛛の少女が人間の少女に変わるシーンを見たから、しばらくはあんな風に呆けたりしないだろうとか思ってたんだけど、そんなことはなかった。
「あら、グウェントちゃんじゃない。」
「お、フェミルさんじゃないすか。お久しぶりすね。」
ただし、今回は俺以外のみんなは普通だった。うっそだろ。
「あなたが貢献部って違和感あるわねー。」
「まぁ、俺にも色々あったんすよ。」
「ふーん?まぁいいわ。じゃああなたたちもこっち来てちょうだい。今日の見学について話すから。」
そう言われるがまま、上の階についていく。4階まで上がり、部屋の中に置いてある椅子に座る。クーネは、入り口で受付少女と遊ばせている。そしてこの場にはアクアスさんもいた。
「さて、じゃあまず聞きたいんだけど。今日の見学ってなんだと思うかしら?」
これは、推測の話でいいのだろうか。少し俺が思い悩んでいると、
「勧誘じゃないんすか?それくらいしかないと思うんすけど。」
グウェントが先に言う。というか、グウェント、フェミルさんには若干畏まってるな。昔何かあったんだろうな。
「それは少し先の話ね。あなたたちのことをよく知らないのに、いきなり勧誘ってのも変な話でしょ?」
それもそうか。いやしかしつまり。よく知れば、勧誘するのかもしれないのか。ならもしかして。アクアスさんの方を一瞬見ると目が合った。それで確信する。
「なら、戦力分析ですか?」
「あら、正解。なかなか頭回るわね、あなた。」
やはりか。ブレイザーズという組織形態から考えて、勧誘するか否かは、その性根と、そして実力から判断するだろう。性根は、俺たちに貢献部という部活である以上、人を助けるという意思があることがわかるので、いいだろう。実力は、グウェントは知り合いみたいだが、俺たちは初めて会ったのだし、まだわからない。ならば今日はそれを試すために呼んだと考えるのが妥当。
さらに、アクアスさんがアリスの話から、実力者なこともわかる。ここまでついて来たのだし、話にはどう考えても関わっているのだろう。野次馬根性を見せる人には見えないし。ならば、俺たちの相手はもちろん。
「相手はアクアスよ。地下空洞の鍵渡すから、連れて行ってあげて。」
フェミルさんが、アクアスさんに鍵を渡す。地下空洞て。
「了解した。こっちだ。」
アクアスさんが降りていく。俺たちも顔を見合わせ、そしてその後についていく。一階まで降りて、アクアスさんは部屋の端に近寄る。そしてしゃがんだと思うと、床を開けた。こんなところに床戸あったなんて気付かなかったな。ていうか、クーネがなんか受付少女とめちゃくちゃ仲良くなってる。
よそ見をしていたら、いつのまにかアクアスさんがその階段を降りていたので、慌ててついていく。地下は整備されていて、灯りもちゃんと灯っている。
「地下は修練場となっていてな。こういうことにはうってつけなんだ。」
アクアスさんがそう言う。しばらく降りると、開けた場所に出る。そこでは、数十人の人たちが訓練をしていた。
「あれ、アクアスさん。どうしたんですか?」
若い青年がアクアスさんに話しかける。というか、アクアスさんが来たらみんな動きを止めてるぞ。
「あぁ、貢献部の子たちが来たからな。」
「あ、なるほど。みんなー、アクアスさんが戦うってさー!」
その言葉で、訓練をしていた人たちが丸い円を作る。え、まさか観客みたいな感じですか。
「じゃあ頑張ってね君たち。」
青年は、俺たちに声援を送ってその円に混ざる。
「準備ができたら、4人で来てくれ。」
アクアスさんは、円の中に入っていく。なるほど、その円に入場したら始めるってことですか。
「で、アクアスさんってどれくらいの強さなんだ?」
「それもやっぱり知らないのね、トラン・・・。」
そんな幻滅した目で見ないでください。
「アクアスさんは、ブレイザーズ最強の存在で、この世界最強の一角。誰一人勝てたことがないっていう噂ね。」
思った以上にアクアスさんが強かった。よくそんな人が俺たちの相手してくれるな。
「はは、まぁここまで来たらやれるだけやってみようぜ。」
「頑張るしかないです。」
はは、やる気十分だな。
「うん、そうだな。俺たちの全力をぶつけてみよう。」
4人で円の中に入る。目の前のブレイザーズ最強の存在であるアクアスさんを見つめる。
「よし、では始めよう。」
アクアスさんが刀を抜く。俺たちも構える。
そして、俺はこのあと知ることになる。彼の最強という称号は。
伊達ではないということを。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる