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第1章 売却少女
第9話 疾風
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ーーなるほど、これは確かに、最強とも呼ばれるわけだ。
思わず感心してしまう。強い。アクアスさんはシャレにならないくらい強い。
ー2分前。
武器を構えた俺たちにアクアスさんは先手を譲るかのように動きを止めていた。もらえるものはもらうの精神で、まずグウェントが大剣を構えながら、地を駆ける。アリスは弓を引き、ティナは魔法を準備し、援護に回る。
俺もグウェントとわずかにタイミングをずらし、攻撃に移る。この時、念の為赤色を周囲に張っておいたのが功を奏した。
衝撃。壁が何かしらの攻撃を受けた。けれど。攻撃されたのはわかるのだが、なにに攻撃されたのかがわからない。
少し前でグウェントが大剣を盾にしている。どうやら、グウェントも耐えれたらしい。だがそこで俺は気づく。その先に、誰もいないことに。
「トランさん!後ろです!」
ティナから飛んで来た声に後ろを見ないまま前に飛ぶ。頭の上を風切り音が通り抜ける。そのまま振り向かず、後ろに黄色を展開。わずかにでも時間を稼ぐ。
「む、これはーー。」
「そこっ!」
俺の魔法におそらく足を取られたであろうアクアスさんに、アリスが弓を射る。非殺傷の木でできた矢だが、速度があるので、まともに当たれば気絶してもおかしくはない。第一、黄色の上にいる人がアリスの矢を避けられるとは思えない。
しかし、俺が振り向いた先には、あっさりとその矢を切り落とすアクアスさんの姿があった。
「なーー!?」
「なるほど、動きを遅くするのか。厄介な魔法だな。」
いや、おかしいだろう。遅くなってなお、飛来する矢を剣で斬るとか、ありえない。
「今です!」
アクアスさんの後ろからティナが杖を振る。すると杖から電撃の弾が発生し、弾幕となりアクアスさんを襲う。
「ーーこれは流石に全部は落とせないな。」
だが、アクアスさんは次の瞬間そこにはいない。まだ黄色の上にいたにも関わらず、俺が目でついていけるかどうかの速度で移動したのだ。つまりアクアスさんの速度は、黄色で制限して、ようやく視認が可能で、視認できても反応できるかどうかはギリギリなのだ。
この1ヶ月の間に俺は、貢献部のメンバー全員の魔法を教えてもらった。
グウェントの持つ魔法は、紅狂。身体能力の爆発的向上と引き換えに理性を失う魔法。仲間のいるところでは使えないとぼやいていた。
アリスの魔法は、第六感。時々天啓めいた考えが頭に浮かぶらしい。ただ、望んだ時に使えるわけではないらしいのでなかなか扱いにくい魔法でもある。
そしてティナの魔法は、演算化。視界に入る全ての情報を頭の中で数式化し、それを書き換えられる魔法。言い換えれば、ある程度までなら現象を規則化する魔法ということだ。
先ほど、ティナは魔法を準備していたので今の攻撃はその魔法を使った結果なのだろう。それさえも避けられたというのは、まさに異常としか言えないのだ。
そこで、近くまで来たティナが言う。
「トランさん、ダメです。アクアスさんは、私が書き換えようと思った時には行動が終わってるので、規則化できません。」
「流石最強、常識なんか当たり前のように超えてくるわけだ。」
どうする。強い相手に対しての戦い方ってのは確かにあるけど、ここまで力の差があると、取れる手段が無さすぎる。
「ーーさて、では次は私から行こうか。」
その言葉に俺たちは身構える。あの速度だ、簡単にはーーっが!?
ーーな、くそ。ありえないだろ。瞬きもしてない、目を離してもいない。なのに。
アクアスさんの言葉が終わると同時に俺たちは全員攻撃されていた、なんて、速すぎるだろ。
「1の太刀『疾風』。まさか2人も耐えるとはな。」
アクアスさんが驚いている。周りを見渡せば、アリスとティナは、地面に伏していた。意識はあるようだが、動くことはできない。
グウェントも膝をついている。
ーそしてここで、冒頭に戻る。
その強さを噛みしめる。トルーパーの一年の中で優勝したなんて、大した話じゃないな、やっぱり。上には、当然のごとく上がいた。
でも、けれど。
「なぁ、トラン。行けるか?」
グウェントも同じ考えか。そりゃそうだよな。格の違いはわかるけど、男として、何もできずに負けたなんてカッコ悪すぎる。特に同級生の女子の前とか、カッコつけたいじゃないか、なんてことも年頃の男子としては思うわけで。
「もちろん行けるさ。グウェントこそ大丈夫か?」
「は、もちろん。ピンピンしてるぜ。」
たとえ勝てなくとも。
「一矢報いてやろうじゃないか・・・!!」
全力で色を塗り巡らせる。まずいつものように推進の青で地面を隆起させ、妨害の赤で壁化させる。だが今回はそれでは終わらない。それを連続して作り、壁と壁との間には黄色を塗る。これで下準備はできた。アクアスさんは余裕がまだまだ有り余っているので、俺の行動を待っていてくれたようだ。
「行くぞ、グウェント!」
「あぁ、任せとけ!」
作戦は言わない。アクアスさん相手じゃ、下手に型にはまった動きをしても、意味がない。その場その場で対応するのが最善だろう。
グウェントは、俺の作った壁の間を縫いながら走る。俺はそれを横目に、自身の足元を隆起させ、壁の上を走る。アクアスさんは未だ動かず、かと思ったら、
「ーーっ!!」
目が合う。前に飛ぶ、その上をまたもや風切り音が抜ける。続く行動でまた黄色を張っても今度は避けられる、どうする。
慌てた俺の下に黄色が塗られ、俺はしまったという顔をする。遅延された俺の動きは、アクアスさんにとっては止まっているように見えるかもしれない。
そこで俺が隆起させた地面を走り、グウェントが登って来る。アクアスさんの後ろから切りかかるが、弾かれる。2、3発なんとか喰らい付いたようだが、腹に蹴りを受け吹っ飛ぶ。アクアスさんが落ちないように気を使ってくれたのか、グウェントは、壁の上を転がって行く。
続いて、俺を見て、
「学生にしては上出来だ。だが、自分の魔法を土壇場で暴発させるのはいただけないな。」
そう言い、ケリをつけようと近寄って来る。そんなアクアスさんに俺は、赤色を解く。そしてアクアスさんは俺の下の地面を見て驚く。
ーー実は黄色ではなく、青色だった床に。
「っ、確かその色は・・・!」
身体中に塗っていた赤も解く。それにより、加速され続けていた俺の身体は、この瞬間のみ、アクアスさんの速度を超える。
世界が置いていかれる。景色が飛んで行く。あまりの速さに意識を飛ばしそうになりながら、
「ぐっ!?」
俺はそのまま、アクアスさんの体に体当たりをかました。それと同時に、体を固定して加速させるなんて無茶なことをしただからだろう、俺は意識を失った。
#####
私は久しぶりに驚いていた。ここ、ブレイザーズというのはどの国でも戦えるように皆それなりの強さを持っている。
その中でも私はここに所属してから様々な依頼をこなし、疾風のアクアスなどという二つ名も持つ程度には自分が強いということもわかっている。
そして、熟練のブレイザーと私が戦った場合、おそらく持って30秒だろう。そして目の前の少年たちは2分半と言ったところだ。いくら手を抜いていたとはいえ、大したものだ。特に私の『疾風』を耐えられたのは驚いた。
そしてなにより。彼らは私に一撃を与えた。いつぶりだろうか、攻撃を喰らうのなど。この子たちがもしこのまま強くなれば、もしかしたら私に追いつくこともあるのかもしれない。
その光景を想像し、ついつい口元がつり上がってしまう。いかんな、とにかく今はこの子たちを治療しよう。先ほどの青年に声をかける。
「君、この子たちを医務室へ連れて言ってやってくれ。」
「ーーあ、は、はい!」
ふふ、あの青年呆けていたな。驚いていたのだろう、この少年たちに。
とは言っても、今のこの子たちではこの中の誰か1人とと一対一で戦っても勝てはしないだろうな。それでも、この子たちは将来を期待させるには十分な片鱗を見せた。きっとフェミルが熱心に勧誘することだろう。
ーーにしても、あのトランという少年、なぜか懐かしさを覚える。昔、彼と会っていただろうか?いや、彼も私を知らなかったことを考えても、そんなことはないはずだが。・・・まぁ、彼の人となりがそう思わせるのだろう。さて、確か私に依頼が来ていたな。彼らともう一度話して見たかったが、仕方ない。またいつか会えることを願おう。
#####
「う、ん・・・?」
「お、やっと起きたかトラン。」
「グウェント、か。・・・どこだ?ここ。」
「ブレイザーズの医務室だ。ヨルハさんがここまで運んでくれたんだぜ。」
「よるは、さん?」
「僕だよ、トラン君。さっきはお疲れ様。」
「あ、はい、ありがとうございます。」
渡された水を飲む。目の前の人は戦う前、アクアスさんに話しかけてた人だ。あ、そういえば。
「戦いはどうなったんですか?」
「君のタックルを食らったアクアスさんが少しぐらついた後に君が気絶したから、君たちの負けだな。」
まあ、あれで倒せるとは思ってなかったけど、負けたって言われると悔しいなぁ。
「いやいや、君たちすごいよ?アクアスさんに一撃入れられるブレイザーなんてほんと数人しかいないんだから。あ、ブレイザーってのはブレイザーズに所属している人のことだよ。」
なら結構奮戦できたのかな?
「でもまだまだ君たちは甘いから、きっと他のブレイザーとやっても勝つのは難しいだろうね。経験の差がでると思うよ。」
確かに俺が今まで戦って来たのは魔物とかばかりで、あまり対人戦というのをやったことがなかった。これは、鍛えなきゃいけないな。
「あ、起きたんですねトランさん。」
「もう、無茶しないでよね?」
「ティナ、アリス。心配かけてごめん。」
申し訳ない。カッコつけたかったんです。
「はは、トランがまさかあんな捨て身特攻するなんてな。」
「あなたも似たようなものです。心配かけないでください。」
「お、おぉ・・・?」
グウェントが素直に心配されて戸惑ってやがる。ティナがジト目でグウェント見てるから、グウェントは目を逸らしまくってるし。
「はは、青春だね。さて、フェミルさんが君たちを誘おうと意気込んでたけど、何か用事が入ったらしくて、行っちゃったからね。もうこれで依頼は終わりにするから、お疲れ様。」
「あ、わかりました。・・・えっと、クーネ知りませんか?」
帰るならクーネも連れてかなければ。まだ遊んでるのかな?
「あぁ、あの黒い髪の子?それならーー。」
ヨルハさんが何かを言おうとした時、視界の端を何かが掠めたので、そちらに顔を向けると。
「トランーーーー!」
「グフゥ!」
横腹に飛び込んでくるクーネがいました。その向こうに受付少女がいる。あはは、と笑ってるし、特に問題はなかったぽいな。
「じゃあ帰ろうか。」
「今日はいい経験だったな。」
「私たちすぐやられちゃったし、なんとも言えないわ。」
「私もちょっと魔法をもっとうまく使えるように修行します。」
「帰るー!」
みんな各々の課題を得ることができたらしい。俺もいくつか自分の弱点のようなものを再認識した。色々考えなきゃな。
ーーあ、そう言えば、まさかクーネって俺の部屋に来るのか?
思わず感心してしまう。強い。アクアスさんはシャレにならないくらい強い。
ー2分前。
武器を構えた俺たちにアクアスさんは先手を譲るかのように動きを止めていた。もらえるものはもらうの精神で、まずグウェントが大剣を構えながら、地を駆ける。アリスは弓を引き、ティナは魔法を準備し、援護に回る。
俺もグウェントとわずかにタイミングをずらし、攻撃に移る。この時、念の為赤色を周囲に張っておいたのが功を奏した。
衝撃。壁が何かしらの攻撃を受けた。けれど。攻撃されたのはわかるのだが、なにに攻撃されたのかがわからない。
少し前でグウェントが大剣を盾にしている。どうやら、グウェントも耐えれたらしい。だがそこで俺は気づく。その先に、誰もいないことに。
「トランさん!後ろです!」
ティナから飛んで来た声に後ろを見ないまま前に飛ぶ。頭の上を風切り音が通り抜ける。そのまま振り向かず、後ろに黄色を展開。わずかにでも時間を稼ぐ。
「む、これはーー。」
「そこっ!」
俺の魔法におそらく足を取られたであろうアクアスさんに、アリスが弓を射る。非殺傷の木でできた矢だが、速度があるので、まともに当たれば気絶してもおかしくはない。第一、黄色の上にいる人がアリスの矢を避けられるとは思えない。
しかし、俺が振り向いた先には、あっさりとその矢を切り落とすアクアスさんの姿があった。
「なーー!?」
「なるほど、動きを遅くするのか。厄介な魔法だな。」
いや、おかしいだろう。遅くなってなお、飛来する矢を剣で斬るとか、ありえない。
「今です!」
アクアスさんの後ろからティナが杖を振る。すると杖から電撃の弾が発生し、弾幕となりアクアスさんを襲う。
「ーーこれは流石に全部は落とせないな。」
だが、アクアスさんは次の瞬間そこにはいない。まだ黄色の上にいたにも関わらず、俺が目でついていけるかどうかの速度で移動したのだ。つまりアクアスさんの速度は、黄色で制限して、ようやく視認が可能で、視認できても反応できるかどうかはギリギリなのだ。
この1ヶ月の間に俺は、貢献部のメンバー全員の魔法を教えてもらった。
グウェントの持つ魔法は、紅狂。身体能力の爆発的向上と引き換えに理性を失う魔法。仲間のいるところでは使えないとぼやいていた。
アリスの魔法は、第六感。時々天啓めいた考えが頭に浮かぶらしい。ただ、望んだ時に使えるわけではないらしいのでなかなか扱いにくい魔法でもある。
そしてティナの魔法は、演算化。視界に入る全ての情報を頭の中で数式化し、それを書き換えられる魔法。言い換えれば、ある程度までなら現象を規則化する魔法ということだ。
先ほど、ティナは魔法を準備していたので今の攻撃はその魔法を使った結果なのだろう。それさえも避けられたというのは、まさに異常としか言えないのだ。
そこで、近くまで来たティナが言う。
「トランさん、ダメです。アクアスさんは、私が書き換えようと思った時には行動が終わってるので、規則化できません。」
「流石最強、常識なんか当たり前のように超えてくるわけだ。」
どうする。強い相手に対しての戦い方ってのは確かにあるけど、ここまで力の差があると、取れる手段が無さすぎる。
「ーーさて、では次は私から行こうか。」
その言葉に俺たちは身構える。あの速度だ、簡単にはーーっが!?
ーーな、くそ。ありえないだろ。瞬きもしてない、目を離してもいない。なのに。
アクアスさんの言葉が終わると同時に俺たちは全員攻撃されていた、なんて、速すぎるだろ。
「1の太刀『疾風』。まさか2人も耐えるとはな。」
アクアスさんが驚いている。周りを見渡せば、アリスとティナは、地面に伏していた。意識はあるようだが、動くことはできない。
グウェントも膝をついている。
ーそしてここで、冒頭に戻る。
その強さを噛みしめる。トルーパーの一年の中で優勝したなんて、大した話じゃないな、やっぱり。上には、当然のごとく上がいた。
でも、けれど。
「なぁ、トラン。行けるか?」
グウェントも同じ考えか。そりゃそうだよな。格の違いはわかるけど、男として、何もできずに負けたなんてカッコ悪すぎる。特に同級生の女子の前とか、カッコつけたいじゃないか、なんてことも年頃の男子としては思うわけで。
「もちろん行けるさ。グウェントこそ大丈夫か?」
「は、もちろん。ピンピンしてるぜ。」
たとえ勝てなくとも。
「一矢報いてやろうじゃないか・・・!!」
全力で色を塗り巡らせる。まずいつものように推進の青で地面を隆起させ、妨害の赤で壁化させる。だが今回はそれでは終わらない。それを連続して作り、壁と壁との間には黄色を塗る。これで下準備はできた。アクアスさんは余裕がまだまだ有り余っているので、俺の行動を待っていてくれたようだ。
「行くぞ、グウェント!」
「あぁ、任せとけ!」
作戦は言わない。アクアスさん相手じゃ、下手に型にはまった動きをしても、意味がない。その場その場で対応するのが最善だろう。
グウェントは、俺の作った壁の間を縫いながら走る。俺はそれを横目に、自身の足元を隆起させ、壁の上を走る。アクアスさんは未だ動かず、かと思ったら、
「ーーっ!!」
目が合う。前に飛ぶ、その上をまたもや風切り音が抜ける。続く行動でまた黄色を張っても今度は避けられる、どうする。
慌てた俺の下に黄色が塗られ、俺はしまったという顔をする。遅延された俺の動きは、アクアスさんにとっては止まっているように見えるかもしれない。
そこで俺が隆起させた地面を走り、グウェントが登って来る。アクアスさんの後ろから切りかかるが、弾かれる。2、3発なんとか喰らい付いたようだが、腹に蹴りを受け吹っ飛ぶ。アクアスさんが落ちないように気を使ってくれたのか、グウェントは、壁の上を転がって行く。
続いて、俺を見て、
「学生にしては上出来だ。だが、自分の魔法を土壇場で暴発させるのはいただけないな。」
そう言い、ケリをつけようと近寄って来る。そんなアクアスさんに俺は、赤色を解く。そしてアクアスさんは俺の下の地面を見て驚く。
ーー実は黄色ではなく、青色だった床に。
「っ、確かその色は・・・!」
身体中に塗っていた赤も解く。それにより、加速され続けていた俺の身体は、この瞬間のみ、アクアスさんの速度を超える。
世界が置いていかれる。景色が飛んで行く。あまりの速さに意識を飛ばしそうになりながら、
「ぐっ!?」
俺はそのまま、アクアスさんの体に体当たりをかました。それと同時に、体を固定して加速させるなんて無茶なことをしただからだろう、俺は意識を失った。
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私は久しぶりに驚いていた。ここ、ブレイザーズというのはどの国でも戦えるように皆それなりの強さを持っている。
その中でも私はここに所属してから様々な依頼をこなし、疾風のアクアスなどという二つ名も持つ程度には自分が強いということもわかっている。
そして、熟練のブレイザーと私が戦った場合、おそらく持って30秒だろう。そして目の前の少年たちは2分半と言ったところだ。いくら手を抜いていたとはいえ、大したものだ。特に私の『疾風』を耐えられたのは驚いた。
そしてなにより。彼らは私に一撃を与えた。いつぶりだろうか、攻撃を喰らうのなど。この子たちがもしこのまま強くなれば、もしかしたら私に追いつくこともあるのかもしれない。
その光景を想像し、ついつい口元がつり上がってしまう。いかんな、とにかく今はこの子たちを治療しよう。先ほどの青年に声をかける。
「君、この子たちを医務室へ連れて言ってやってくれ。」
「ーーあ、は、はい!」
ふふ、あの青年呆けていたな。驚いていたのだろう、この少年たちに。
とは言っても、今のこの子たちではこの中の誰か1人とと一対一で戦っても勝てはしないだろうな。それでも、この子たちは将来を期待させるには十分な片鱗を見せた。きっとフェミルが熱心に勧誘することだろう。
ーーにしても、あのトランという少年、なぜか懐かしさを覚える。昔、彼と会っていただろうか?いや、彼も私を知らなかったことを考えても、そんなことはないはずだが。・・・まぁ、彼の人となりがそう思わせるのだろう。さて、確か私に依頼が来ていたな。彼らともう一度話して見たかったが、仕方ない。またいつか会えることを願おう。
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「う、ん・・・?」
「お、やっと起きたかトラン。」
「グウェント、か。・・・どこだ?ここ。」
「ブレイザーズの医務室だ。ヨルハさんがここまで運んでくれたんだぜ。」
「よるは、さん?」
「僕だよ、トラン君。さっきはお疲れ様。」
「あ、はい、ありがとうございます。」
渡された水を飲む。目の前の人は戦う前、アクアスさんに話しかけてた人だ。あ、そういえば。
「戦いはどうなったんですか?」
「君のタックルを食らったアクアスさんが少しぐらついた後に君が気絶したから、君たちの負けだな。」
まあ、あれで倒せるとは思ってなかったけど、負けたって言われると悔しいなぁ。
「いやいや、君たちすごいよ?アクアスさんに一撃入れられるブレイザーなんてほんと数人しかいないんだから。あ、ブレイザーってのはブレイザーズに所属している人のことだよ。」
なら結構奮戦できたのかな?
「でもまだまだ君たちは甘いから、きっと他のブレイザーとやっても勝つのは難しいだろうね。経験の差がでると思うよ。」
確かに俺が今まで戦って来たのは魔物とかばかりで、あまり対人戦というのをやったことがなかった。これは、鍛えなきゃいけないな。
「あ、起きたんですねトランさん。」
「もう、無茶しないでよね?」
「ティナ、アリス。心配かけてごめん。」
申し訳ない。カッコつけたかったんです。
「はは、トランがまさかあんな捨て身特攻するなんてな。」
「あなたも似たようなものです。心配かけないでください。」
「お、おぉ・・・?」
グウェントが素直に心配されて戸惑ってやがる。ティナがジト目でグウェント見てるから、グウェントは目を逸らしまくってるし。
「はは、青春だね。さて、フェミルさんが君たちを誘おうと意気込んでたけど、何か用事が入ったらしくて、行っちゃったからね。もうこれで依頼は終わりにするから、お疲れ様。」
「あ、わかりました。・・・えっと、クーネ知りませんか?」
帰るならクーネも連れてかなければ。まだ遊んでるのかな?
「あぁ、あの黒い髪の子?それならーー。」
ヨルハさんが何かを言おうとした時、視界の端を何かが掠めたので、そちらに顔を向けると。
「トランーーーー!」
「グフゥ!」
横腹に飛び込んでくるクーネがいました。その向こうに受付少女がいる。あはは、と笑ってるし、特に問題はなかったぽいな。
「じゃあ帰ろうか。」
「今日はいい経験だったな。」
「私たちすぐやられちゃったし、なんとも言えないわ。」
「私もちょっと魔法をもっとうまく使えるように修行します。」
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