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最終回
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日向の中には、諦めて、この恋をなかったことにするという選択肢もあった。
しかし、どうしてもそれは悲しいと思ってしまう。
空がオレンジ色に染まり始めた頃、いつもより長く教室に滞在していた双葉が席を立った。
「柚原くん、じゃあね」
普段通りに声を掛けられ、日向も手を振る。
一緒に帰ろう、と言い掛けたが、口も足も動いてくれなかった。
帰宅するなり、内玄関でへたへたと座り込む。
いつもなら荷物を降ろし、ルームウェアに着替えたらすぐに夕食の準備に取り掛かるのだが、今日はその気力が無い。
明後日には双葉と離別しなければいけないと思うと、胸が張り裂けそうだ。
からかわれてスマートフォンを届けに行ったあの日から、毎日が輝きだした。
苦手だった玉ねぎを好きになり、身なりや、料理の盛り付けにまで気を遣うようになった。
双葉と話すために必死に玉ねぎについての知識を身につけ、時にはレシピを編み出した。
玉ねぎのことを話している時の彼女を見ている時間が、何よりも幸せだった。
――――この思い出を、過去にしたくはない。
我知らずと、立ち上がる。
使命感や義務感に似た感情に突き動かされて、夕陽が沈みかけている空の下に駆け出した。
しかし、どうしてもそれは悲しいと思ってしまう。
空がオレンジ色に染まり始めた頃、いつもより長く教室に滞在していた双葉が席を立った。
「柚原くん、じゃあね」
普段通りに声を掛けられ、日向も手を振る。
一緒に帰ろう、と言い掛けたが、口も足も動いてくれなかった。
帰宅するなり、内玄関でへたへたと座り込む。
いつもなら荷物を降ろし、ルームウェアに着替えたらすぐに夕食の準備に取り掛かるのだが、今日はその気力が無い。
明後日には双葉と離別しなければいけないと思うと、胸が張り裂けそうだ。
からかわれてスマートフォンを届けに行ったあの日から、毎日が輝きだした。
苦手だった玉ねぎを好きになり、身なりや、料理の盛り付けにまで気を遣うようになった。
双葉と話すために必死に玉ねぎについての知識を身につけ、時にはレシピを編み出した。
玉ねぎのことを話している時の彼女を見ている時間が、何よりも幸せだった。
――――この思い出を、過去にしたくはない。
我知らずと、立ち上がる。
使命感や義務感に似た感情に突き動かされて、夕陽が沈みかけている空の下に駆け出した。
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