蒼い春も、その先も、

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憂う春、君の視線

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 そんな変わりのない日々を繰り返していた、ある日のことだ。

 穂希はドアを開けてすぐに、椿の様子がおかしいことに気が付いた。普段通りに招き入れるが、内玄関から先に進もうとしない。
 何か言いたげに唇は震えている。目は泳ぎ、手は裾を掴んでいた。

「……椿、どうかした?」

 訊ねてみても、返事は無い。明らかに自分を見ていない椿の目線を追ってみると、出来たばかりの傷を覆う、血の染みた包帯があった。

「もしかして、これが気になるの?」

 顔を覗き込むと、椿がごくりと唾を飲み込んだ。そして次の瞬間、身体を折り、深々と頭を下げた。

「……穂希君! ごめん!!」

 あまりにも突然の謝罪に、呆然とする。どうしていいものかと戸惑っていると、椿はフラフラと顔を上げて、そのまま俯いてしまった。

「穂希君、……僕は、き、君を……君の事を……好きになってしまった……!」

 よく耳にする言葉だと言うのに、思考が追いつかない。心が返事を急かしているが、まるで全ての言語を忘れてしまったかのように、何一つ発する事が出来ない。

「僕は君を一目見た時から、……君を好きになってしまったんだ……!!」
「それってどういう……」
「じ、自分勝手で本当にごめん、僕は穂希くんの努力を応援出来ない。……だからもう、穂希君とは会わないよ」 

 やっと出てきた声を躊躇いがちに遮って、椿は静かにそう言った。最後にもう一度謝って、彼は内玄関を飛び出した。

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