蒼い春も、その先も、

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イタズラは桜色

4-2

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「着いた。ここだよ」

 シンプルモダンな一軒家の前で、椿が立ち止まる。新築宛らの外装を彩っているのは、数種類の野菜やハーブだ。遠目に菜園を見ただけでも、よく手入れされているのが分かる。

「あれ、椿が育ててるの?」
「うん、そうだよ。息抜きみたいなものだけどね」

 学業とアルバイトの合間にある息抜きが、家庭菜園とは全く驚きである。どんな教育をしたら椿のような人間が出来上がるのか、想像すら出来なかった。

 椿がドアを開けると、赤みがかった褐色の毛並みが美しい、ミニチュアダックスフンドが出迎える。

「あ、言うの忘れてた……! 穂希君、犬は大丈夫?」
「大丈夫、好きな方だよ」
「良かった、モカって言うんだ。やんちゃだけど噛んだりしないから安心してね」

 近付いていくと、モカは短い脚で何度も跳ねながら穂希の匂いを確かめた。
 ペットは飼い主に似る、とよく言うが、モカの場合は該当しないようだ。椿の両親が影響しているのかと疑うも、玄関にある家族写真を見て、すぐにそうではないと確信する。

「誰もいないの?」
「うん、お父さん仕事だから。夕方までは僕とモカしかいないよ」

 少し引っ掛かりながらも、母親については敢えて触れないことにして、穂希は玄関を上がった。
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