うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第6話★

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 言われなくても、さっさとどうにかするよ。

 久賀は先に帰るのだろうか。
 ナニの処理が終わるまで外で待たれるのもイヤだが……置き去りにされたらされたで誰かに見つかった時に困る。

 いろいろと考えを巡らせてはみたが、取りあえず身体に溜まった熱を先にどうにかしようと決めた。

 個室に入り、扉を閉めようとして手を伸ばし……その手をなぜだか握られた。


 は?


 キィッパタン、ガチャッ。
 ドアが閉まって、鍵がかかる音。
 そして何故か目の前には久賀がいる。

 どういうつもりだ。

 あっち向いてと指で示す相手を、意味が分からないと凝視する。

「何で入ってくるんだよ」

「……もちっと色気出せないかな。やる気が湧かない」

「はぁ?」

 何のやる気だと訊ねる前に、肩を掴まれて無理やり身体の向きを変えられた。
 文句を言う暇も与えられず、後ろから抱きしめられる。

 心臓が、ばくんと跳ねた。

 鞄が床に落ちたけど、きたねぇとかそんな事を気にしている場合じゃない。
 どぎまぎしてる間に、服の上から危険部位を撫でられた。

 ななななっ!

「ちょっ!てめっふざけっ……」

 ファスナーを下げる音にびくりと肩が跳ねあがった。
 聞き慣れたその音を酷く卑猥に感じるのは、俺の脳みそが煮えたぎっているからか?

「嘘だろ嘘だろ!笑え……ねぇっ。くっ」

 躊躇なく手慣れた様子で前を弄られて、湯気が立ちそうなくらい体温が上がった。
 何でこんな所で、こんな恥ずかしい目に合っているのだろう。本気で訳が分からない。

 あ、コレ夢だ。そうに違いない。

「……ぃっ……やめ」

 うん、無駄だった。
 現実逃避は敢えなく失敗だ。
 この熱が現実じゃないなら、そうとう溜まってたんだろうよ。
 残念ながら、夢だと思い込むには心臓の鼓動が煩すぎるし、衝撃が半端ない。

 離せよと、唇だけが動いて、言葉にはならなかった。
 声を殺すだけで精一杯だ。

 絶妙な強弱とリズムで追い立てられて、噛み締めた歯の隙間から悲鳴が漏れた。


 チクショー。こんなの自慰と大差ないのに……どうしよう。

 脳みそ、溶けそうなくらい、気持ちがいい。



 他人の手で辱められる屈辱と、背徳的な行為に対する小さな興奮。
 理性をぶっ飛ばしかねない快感。
 雄のプライド。

 様々なモノが入り混じって、押し寄せてくる。
 時折、気まぐれで首や耳に落とされるキスに、敏感な場所に与えられる快感よりも大きく心が反応する。

 こんなモノよりキスが欲しいと、理由も分からず心で叫んだ。

 いやいや、違うだろう!そうじゃない、なにこれ、や、ヤバイ……!やばいやばいやばい!コレはやばいって!男として、いや、ヒトとしてダメな気がする!まってホント、コレはない、ホント、ない、からっ……。


 発せられるのは、堪えきれない喘ぎだけだ。
 心とは裏腹に、身体はキモチイイを追いかける。

 ああ、ダメだダメだ。と、死にかけの理性が警告音をガンガン鳴らすけど、息が苦しくて、でもそれ以上に胸が苦しい。


 ぎゅぅっと、胸の奥底で何かが押し潰される。
 自然に湧き上がった涙がぽたりと一粒落ちた。


「……ぁ……くがっ」


 助けてと、身体を支える腕に縋った。
 まさに酷いことをしている張本人に、助けてくれと懇願した。

 なんて情けないことか。でも、他にどうしろと。
 まるで酷い拷問を受けている気分だ。

 手の動きは一層強さを増して、激しい官能の波に襲われた。


 濡れた音が室内に響き、耳朶じだを犯し、理性が麻痺して声を押し殺すことが出来なくなる。

 短い喘ぎと呼吸を繰り返した。

 激しく追いつめて、急に緩くなる手の動きに焦れったさを感じ、自ら腰を動かしていた。



 ああ……。

 どうしてだろう。

 何なんだろう、このよさは。



 女の子と付き合ったことはもちろんある。

 セックスをしたこともある。

 柔らかな女の肉に己を穿つ快感を知っている。

 それなのに、武骨な男の掌に自らを打ち付ける方が何倍もイイだなて……終わってる。


(俺……ホモだったのか)


 思考がピンクに染まる中、端っこの冷静な部分でそんな事を思ってみる。


 そうでなければ、説明が出来ない。

 いや、ホントはもう一個、思い当たる理由があるのだけれど、出来ればソレは認めたくない。


 女よりも、イイ理由。
 友人に、キスをした理由。
 雨の日のコイツを、忘れられない理由。

 ピッタリと密着した相手の、ムカつくくらい冷めている身体に、怒りすら覚える。
 よがって、縋って、快感に喘いでいるのは俺だけで、久賀からは快感のかの字すら見受けられない。

(絶対、違う)

 認めるものかと唇を噛みしめ、最後の悲鳴だけは必死に押し殺した。

「ーっ!!」

 達した後、最後の一滴まで搾り取った手が、するっと逃げていった。
 途端に、空虚感が湧き上がる。


 肩で息をしながら、行為中に浮かんだ考えを必死に否定した。

 有り得ない。違う。そんなはずない。
 ホモだという可能性は……認めよう。あくまでも可能性だけどな。でも、あっちは違う。絶対に違う。

 俺が、コイツを……なんて、そんなまさか。有り得ない。

「おつかれ」

 平然とした、笑みさえ含む声音に、目の中で火花が散った気がした。

「テメェ」

 ガバッと振り返り胸ぐらを掴んだ。

「なんだよ。またキスするの?金取るよ」

「くれてやるよ!」

 ただし、グーパンだけどなっ!
 ガッと力任せに相手の頬を殴りつけた。

 避けもせずにそれを受けた久賀は、よろけて壁に肩をぶつけた。
 何が楽しいのか唇の端を持ち上げる。
 そこから赤い血が流れてアゴを伝いスーツに落ちた。
 拳と歯に擦れて切れた唇を、手の甲ですっと拭う相手。
 何気ない仕草に視線が奪われた。


 ……俺、マジで終わってないか?


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