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第31話
しおりを挟む大丈夫?と頭を傾けるヤンキーくんに、軽く手をあげて応えた。
「心配アリガト。平気だから行きなよ、昼休み終わるぞ」
無理矢理 笑顔をつくる。
思ったより上手く出来たハズだが、ヤンキーくんの表情は冴えないままだ。
「なぁ。シーナ。コイツなんかカワイソーなんですけどー」
「あ"ー?同病相憐れむってか?」
「何だよ、同病って」
「ちび」
「「平均だ!!」」
思わずハモってしまって二人で顔を見合わせた。
へらりっとヤンキーくんが笑い、思わず釣られた。
あ、良かった。まだ笑えるや。
作り笑いなんかじゃなくて……。
でも、気持ちは直ぐに沈んでいく。
頭の一部にモヤがかかっているみたい。
無意識に考えないようにしていた。
悲しくて、倒れてしまいそうだから。
「よし。一緒に行こうぜ、そんで昼飯食おう。俺がリューを怒ってやるし!」
がしっと手首を掴まれて引っ張られる。えっ、えっ?と困惑する俺にお構いなしで、ヤンキーくんは自己紹介なんかをはじめた。
「俺は西河原ね。ニシカワとかカワラとかなら簡単で良かったのに、ニシガワラ。学年は1年。クラスは6ホーム。身長は170にちょっと足りないけどホントちょっとね。平均だよなーこれ。趣味はケンカ。血液型はオー型で、性格もオーざっぱらしくて、ナニのサイズはエムでーす。あんたは?」
「あは。ナニのサイズってなに……いや、ギャクじゃねぇから。えっと、名前は尾上。学年とクラスは1-2。身長は俺も170センチに心なしか足りないや。趣味は……なんだろ。血液型はA型で性格は、しつこいっぽい。えっと…………な、ナニのサイズは、たぶん、エムだと思う」
「ぶはっ。いいね、いいね!ノリがいい子だいすき。ヨロシクな、オガミ。で、あの無駄にデカいのはシーナ。クラスは俺と同じで、リューとは小学校から一緒らしーよ。身長は、ムカつくことに184だっけ?」
あってる?と後方に投げかけたら「85」と返ってきて、西河原は「ちね。おっちね」とぶーたれた。
ひゃくはちじゅうご。なんと羨ましい。久賀とどっちが高いのかな……。
俺を気遣ってか、もともとおしゃべりなのかは知らないが、西河原はひたすらニコニコ笑ってしゃべり続けた。
「おい、露出狂。服を着ろ」
後ろから投げられたYシャツが頭にあたって、西河原は大袈裟に痛がった。
そーいや、半裸でしたね、ヤンキー君。
「乱暴だよなー。リューとシーナのコンビは『エロ・粗野・鬼畜』の三拍子揃っちゃってるから気ぃーつけなよ?油断してたらぺろりんって食べられちゃうよー」
西河原がちょっとだけ声をひそめた。
パチッとさまになるウインクをひとつ。
西河原は明るくて面白くて楽しいヤツみたいだ。
冷酷で意地悪で、うそつきな久賀は西河原を見習えばいいのに。と、ぼやけた頭でそんなことを思う。
明るく笑う西河原に頷いたり、笑ったりして返事はしているが、心の一部は遠い場所に置き去りになっていた。
冷たくてうそつきな男の笑顔が、胸に焼き付いて離れない。
俺に向けた顔と、さっきの“トモ”ってヤツに向けた顔。
天と地ほどの差に、心は何回でも傷を負う。
それでも思い描く事をやめられない。
頭の中はあいつでいっぱいだ。
作り物の笑顔。
ホントの笑顔。
ふざけた口調。
髪を掻きあげる仕草。
唇の柔らかさと、舌の熱さ。
雨の日の、儚げな横顔。
一度も振り返らない、冷たい背中。
出来るなら気づかない振りをしていたかった。
けれど、ダメだった。
心が叫んでいる。
頭でいくら否定しても心が勝手に叫び続けている。
あいつが欲しいと。
ああ。もう無理だ。
これ以上は目を背けても無駄みたい。
もういい。もう、認めよう。
俺は恋をしているのだ。
とても残酷で最低でうそつきな男に、恋をしていた。
胸に抱く渇望の名前を恋いだと認めるしか無いほどに、強く強くアイツに惹かれて、気持ちは勝手に走って、愚かで無様な真似すらして、結局心の一片すら触れ合えずに片思いは砕けてしまった。
泣けないのが不思議だ。
とても痛いのになぜだろう。
「おい」
急に声をかけられて、びくりと肩が跳ねた。
西河原に手を引かれてなかったら、たぶん立ち止まって硬直していただろうな。
左側に視線を向ける。歩幅を合わせて隣に並んだ不良……シーナだっけ?そいつに、じろじろと品定めでもするかのように見られて、ビクビクする。
デカいし目つき悪いし、怖ぇなコイツ……。
「お前、龍二の【客】だろう。何をしたのかは知らないが、不興を買ったようなら、これ以上アレに関わっても無駄だ。諦めて帰れ」
「えっ?」
ドキッと心臓が跳ねた。
客ってつまり、そーゆー意味?じゃぁコイツは、久賀の事情を知ってるのか。
「えーうそっ。【客】?リューってば子ども相手にバイトはしないって言ってたのに。マジで?」
立ち止まって振り返った西河原にもマジマジと見られた。
コイツも知ってるのか。なんだよ『バラしたら殺す』って言ったくせに、結構知ってるヤツいるんじゃん。
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