うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第33話

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 四苦八苦してようやく西河原の腕の中から脱出成功。
 ぐしゃぐしゃになった髪を整えながら俺は後退りだ。

 西河原は彼方の空に腕を伸ばし、ビシッと指を向けている。
 ポージングは若干違うが、さながら北海道の某大学にゆかりのある博士みたいだ。

 少年だから大志を抱いているわけですか?

 久賀に鉄槌をくだすね……大志かこれ。
 俺の意見を申し上げますと、ただでさえ怒らせて機嫌を損ねてるわけだから、これ以上嫌われるような事はしたくないのデスが。

 それに正直なところ……今は、会うのキツいデスヨ。
 あいつに抱いていたモノが、恋だと自覚したばかりだ。
 しかも即座に失恋したのだ。
 心に負った傷をケアする時間もなく向き合えとか、無理だろう。
 うん、俺は無理です。
 シカトなんてされたらきっと人前でも泣いてしまいそうな気がする。
 あー……俺、涙腺弱ぇのな。いや、あいつの前でだけか。

 あいつに関することだと、馬鹿になって無謀になって愚かになる。
 はじめから恋だった。
 気づかずに落ちたのは恋の穴。
 いや、正確には気づかないフリをしたんだ。
 傷つくのが嫌で、同性に惹かれている心に、気づかないフリをした。
 あー。くそ、どうにもならないってわかってるのに、いちいち傷つくな。

「何もしなくていいよ。西河原。俺がしつこくしたのが、悪いんだし……」

「あー。リューは追いかけると逃げるからね。でもこっちが逃げても追いかけてきてくれないから、欲しいなら走るしかないよ!」

 欲しいって、バレてるのか!バレてるのか!?
 もしかして、俺って態度に出過ぎちゃってるの?
 うわぁー……死ねる。
 もしかして、久賀にもバレてたのか?
 だから嫌がられたのか?
 うわぁっ!あーあああ"っ!
 も、いっそ埋めてくれよ!
 冬じゃないけど冬眠したい。

 頭を抱えて、いっそ地面に埋まって、記憶を消してしまいたかったけれど、テンション高めなヤンキーくんは俺を放っておいてくれないようだ。

「とゆーわけで、俺と走ろう!夕日は出てないけど青春ごっこしよう」

「ええっ!い、意味がわかんね」

 確かに青春と言えば青春だ。
 甘酸っぱいを通り越して、重くて苦い恋なんだけど。相手がヤローなんだけど。

 がしっと再び手を掴まれた。
 いい笑顔の西河原に「ちょまお」な気分です。
 「ちょ」っと「ま」ちやがって下さいませ「お」まえさん、でちょまお。
 
 だからさ!今の俺のライフポイント的なモノは、削りに削られて後わずかなんだって!
 今は会えないってゆーか、会いたくないっ。軽く死ねる。

 俺の内情なんて知りもしない西河原は、彼方をびしっ!と指したまま「さあ。行こうぜ」と足取り軽く歩き出した。

 ざぁぁっと血の気が引いた。
 心臓がバクバクと早鐘を打つ。

「無理っ!!むり無理ムリ!」

 今度はぐわぁぁっと体温が上昇するのがわかった。引いた血の気が一気にのぼる。
 足に力を入れて踏ん張るが、無駄な抵抗だった。見た目より力あるじゃん西河原っ!
 半ば引きずられるようになりながら連れて行かれる。

 ああ、嫌だ嫌だっ。
 いまアイツになんか言われたら、たぶん立ち直れない。登校拒否る自信がありまくりだ。

「ムリムリ!いまは無理ほんと無理っ!ちょっ!手を離して、話を聞けっ!」

「ムリじゃない。ムリじゃない。だいじょーぶ。俺たち二人なら魔王リューも倒せるから、きっと。あっ、止めるなよ。シーナ」

「ま……頑張れ」

 付き合ってられね、と呆れ顔の椎名が掌をひらひらさせながら先に歩いていく。

 そこは面倒臭がらず止めて欲しかった!
 心の底から今すぐ止めて欲しいと思ってますが、どうにかなりませんかぁぁ!

「あー。シーナ置いてくなしっ!走ろう、オガミ」

「ちょっ。ホント人の話を聞」

 ぐんと力強く引っ張られて腕が抜けるかと思った。
 ムリヤリ走らされて、内心号泣だ。

 何というか、流石は久賀の友人(なんだろうな多分)たちだ。ひと癖もふた癖もある奴らばっかりだ!


 椎名を追い抜かしてぐんぐん走る西河原に引っ張られながら『マジで助けて』と心の中で祈ってみても、どうやらこの願いを叶えてくれる気は西河原や椎名は勿論、カミサマにもないらしい。



 ああ、どうか俺の残りわずかな精神力が保ちますように。
 せめてコレくらいは叶えてくれよな。と、空の彼方に縋るような目を向けた。

 視界いっぱいの青。

 憎らしいぐらい晴れやかな秋空だった。

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