うそつきな友情(改訂版)

あきる

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side久賀1-1

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 警告音はしきりに頭の中でカチカチ鳴って
 目の中で七色の可視光線がピカピカしていた

 心音は限りなく 低く 低く
 身体は驚くほど冷たくて
 指一本すら動かせない

 脳みそだけがフル稼働して
 まざまざと記憶を巡らせた

 まるで走馬灯だ

 世界は異常なほど真っ暗なのに 血の色だけが鮮明で
 命が燃えてるかと思った


 ――冷たい雨が降っていた

 道路には赤い花が咲いていて
 周りは酷く騒がしかった
 
 けれど 現実感はまるでない
 モノクロテレビの砂嵐のようだ
 
 ただ 花の色だけが鮮やかで
 冷たい雨がしきりに自己主張を繰り返す

 それは
 現実と非現実の深い溝

 あの雨の日に
 俺の心は囚われて


 永遠にあなたを失った気がした




☆★☆★☆★☆★☆

 
 他人ヒトの気配に反応して、体は無意識に動いていた。
 掌に脈動が伝わってくる。
 零れそうなくらい見開いた丸い目が、困惑の色を浮かべながら見上げてくる。

 次第に苦しげに歪むソレの顔に見覚えはあるはずだ。
 けれど半分夢の中にある脳では、正常な思考を確立出来なかった。
 組み敷いたソレに重なって見えるのは、大事な誰かの姿だった。

(なんで、あんたがここにいるの)

 バグった頭で、ぼんやりとそんな事を思う。
 手を離したら何処かに行ってしまうような気がして、押さえつける手に力を込めた。

 くが。とそう呼びかけられて、ようやく脳が異常を認識する。
 あのヒトはそんな風に俺を呼ばなかった。
 瞬きと一緒に、現実に引き戻された。

(あ……こいつは)

「おがみ」

 そうだ、尾上だ。
 ここは学校で、俺は高校生だ。
 視線を巡らせた、夢の中の景色はどこにもない。
 吐き出した息は安堵だったのか、それとも落胆の意だったのか、答えは自分にも分からなかった。

「お前なにやってんの?」

 殺す気かと喚きだした相手の声に、ズキリと頭が痛んだ。寝不足の相手に怒鳴るなよ。
 ああ、静かな昼寝タイムが散々だ。

「まずはゴメンナサイとか言えよ」

 きゃんきゃんうるさいよ。
 犬かお前は。
 大体、謝る必要がどこにある?
 ヒトが寝てるところを邪魔したのは尾上だよな。
 俺に非があったか?ま、首絞めちゃったみたいだけど、わざとじゃないし、寧ろ寝込み襲われたワケだから正当防衛だし。
 それとも、あの件について言ってるのかな。
 あれもさ、先にチューして来たのはお前なのに、なんか理不尽ぢゃね。

(メンドくせぇ)

 どーでもいいや。
 今は体力を回復する方が大事だろう。
 他人の気配があると眠れないのだが、じっとしていたら体くらいは休まるだろうと、うっさい犬に背中を向けて寝転がった。
 眠ったけど眠れていない。久しぶりに見た夢に、頭はくらくらするし胃は重いし散々だ。
 夢も見ないくらい頭もカラダも酷使したはずなのに、おかしいな。

 バシッと頭を叩かれた。無視するなとか意味が分からない。お前だって質問に答えてないじゃん。

「自習でも、授業中にかわりないでしょ」

 ああ、もう、どうでも良いから早くどっか行ってくれよ。眠りたいんだ、俺は。

 しつこくヒトの額に手を伸ばしてくる相手に、ちょっぴりイライラする。
 触るなら金払ってくれよ。
 慈善事業をするつもりは下の毛ほどもありませんよー。なんてね。
 尾上が目聡く手首の怪我に気づいて騒がなかったら、滑稽なくらい明るく笑って、今思ったことを言ってやったのに。
 うーん、残念だ。

「お前、やっぱりウリやめろよ!」

 叫ぶように尾上が言った。
 頭が痛くて、片方の耳を塞いだ。
 コイツは、またそのハナシかよ。それはこの間も却下だって言ったのに。マジで諦め悪いヤツだな。
 つか、俺が何しようが俺の勝手なのに、何でいちいち口をだしますかね。
 しかも、死ぬからやめろとか。ウケる。
 ヤってヤってヤりまくって腎虚じんきょで死ぬってか?
 美女相手に腹上死なら願ってもない。

 ちょっぴり楽しくなりながら大袈裟だと言ってやると、ちっちゃい子犬みたいにきゃんきゃん吠える。
 前言撤回、ちっとも楽しくない。ああ、頭痛い。

「大袈裟じゃない。ああ、左手もかよ!お前これっ、ナガノさんにやられたのか?」

「ぶはっ!あははは」

 ヤバい。ヤバい。前から思ってたけど、こいつの発言って時々面白い。笑うと頭が痛いのに、止まらないな。
 永野さん。どうやらオガミンの中じゃぁ、あんたは鬼畜カテゴリーに分類されちゃうみたいだぜ?
 だったら、黒曜コクヨーとか笹金ささがねさんとかに会ったらどーするんだろ。
 永野さんレベルで鬼畜なら。
 笹金さんはサド星の王子の座も狙えちゃうし、黒曜に至っては皇帝だ。わぁお。似合いすぎて吐き気がするね。考えるの止めよ。

 ちょうど尾上が、人の神経を逆撫でしまくる発言をしてくれちゃったからね、笑いも吹っ飛んだ。
 尾上に視線を向ける。ちょっぴりびくついてるけど、真っ直ぐな目をしてた。
 力になりたいとか、呆れるくらいキレイな言葉を並べてる。
 そんなに、オトモダチごっこがしたいのか。
 正直、余所でやってくれよってカンジだな。
 友情を深めたいなら、別に俺じゃぁ無くても良いでしょう?どうせ、どんなに頑張っても、願っても、必死になっても。

「お前なんかに、何が出来るよ」

 俺には、お前なんて必要ないや。
 大事な者は、この両手で繋いでいられるくらいあれば十分で、俺の二つの手はとっくに特別で埋まっていた。
 これ以上はいらない。
 どうせ、沢山あっても、守れるわけじゃあ無いのだから。

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