35 / 135
side久賀1-2
しおりを挟む
屋根を蹴って、宙に身を踊らせた。
恐怖心がないわけではない。だが着々を失敗しても下は芝の地面だから、頭からでも落ちない限り大きな怪我などしないだろう。
せいぜい、骨にヒビが入る程度。
だが、怪我をすれば痛いことには変わりないので、指の先にまで神経を集中させる。
狙い定めていた木の枝を掴む。腕を軸に体が大きく揺れた。このままだと手が滑って頭から落ちるだけなので、勢いを利用し前に飛び上がる。
膝を曲げ、体を回転させた。
視線が地面と平行になる少し手前の位置で、足を延ばす。勢いに負けて、バランスが後方に行きすぎないように腕と上半身で微調整。
以上の動作をスムーズに行って、地に足が着いた瞬間に膝をおって衝撃を和らげたらゴール。
「着地成功」
上出来だと、服にくっついた葉っぱを手で払う。
寝不足の所為で集中力に少しだけ不安があったが、無事に着地出来て何よりだ。が、しかし、回転着地の所為かそろそろ頭痛も限界だ。
本格的に爆睡できる場所を探さなければ。
ちらりと視線を上に向けた。
降りられるかなんて、わざわざ心配してやる必要は無いだろう。自己責任でガンバレよ、尾上。
さて、校内一周してヤツをまいたら、また戻ってきたらいいさ。ヒトの邪魔が入らない絶好の昼寝場所を早々に手放す気はねぇーですから。
(まさかまたここに戻るとは思うまい)
ちょっぴり演技かがった調子で考え、くつくつ笑う。
と。
「俺も行くから逃げんな!!」
空から降ってきた声に、はっ?と視線を動かした。
ちょうど、バカが屋根を踏み切る瞬間だった。
絶対落ちる!
頭で考えるより先に、駆け出していた。
案の定、枝を掴んだものの手を滑らして背中から落下するバカが一匹。
頭からじゃなかっただけ、ラッキーだと思え。
つか、俺。
はやまったよな、確実に。
(しまった。芝の地面だった。放っとけば良かった)
背中に受けた衝撃に、ぐふっと潰れたカエルみたいな声が漏れた。
クソッ。無様だ。
とっさにスライディングまでしてしまった自分がダサいぜ。制服が汚れた。史ちゃんに怒られる。あーあーあー……ちくしょう。
「いつつ。あ、れ……?うわっ、久賀!」
早く退いてくれないかな。ガチで呼吸がつらい。
骨はイッてないだろうけど、胸が圧迫されて息が詰まってんだよ。
痛みにちょっぴり呻いた。
ガリガリと地面を引っ掻いて、爪が汚れた。あー、ちくしょー。
「久賀っ!久賀!!しっかり。ゴメン!俺の所為で」
そうだよ。お前の所為だよ。
自分の運動能力を、視野にいれて行動してくれないかな。
こいつ運動は不得意じゃぁなかったハズだが、だからって無茶し過ぎ。
サッカーとかバスケなんかのスポーツが得意だからって、何でも出来ると思ったら大間違い。ううっ、背中痛い。脳みそ揺れた。頭痛が……限界。
「久賀!!」
喚くな、揺するな、抱きしめんな。痛いって言ってんだろ。うっ。息が苦しいから、マジで揺するな、おい。
ぽたぽたと頬に何かが落ちてきて、うっすら目を開けた。
水の向こうで、黒い目が揺れていた。
(…………あー、泣いちゃったよ。コレ俺の所為ぢゃぁねぇよな)
ゴメンと泣きながら繰り返す尾上に、何だがやれやれって気分になった。
あのさ、別に俺が勝手に動いたんだから、そんなに自分を責めなくてもいいんじゃね?
尾上は自分自身を絞め殺しそうなくらい責めて、詫び続けていた。
いつか、何処かで見た表情だ。
ああ。鏡を見ているみたいでイライラするな。
俺はね、シリアスな雰囲気ってヤツが苦手なんだよ。
重い空気をぶち壊してやろうと、無理やり口の端を持ち上げた。
「……人工呼吸が、必要みたい」
『こんな時になに言ってんだよバカ』的なね、流れになることを期待したわけだ。
ついでに、キスのひとつでもしてやれば、お馬鹿なワンコはキャンキャン吠えて泣きやむかなぁー、なんて思ったわけだ。
はぁ、天然って扱い困る。
ちょっぴり入ってるよな、オガミンは。
「わかった!ヤってみる」
「……あ?」
鼻をぐっと掴まれて、ぶちゅっと口を塞がれて、息を吹き込まれて。
待て待て待て待て!殺す気かぁぁ!!
『呼吸、心拍ともに正常な相手への人工呼吸、心臓マッサージは大変危険です。生死にもかかわる場合あるのでよい子の皆さんは絶対に真似をしないで下さいね』というナレーションが脳内を駆け抜けた。
下手すりゃ死ぬから、マジで。
シリアスが嫌いでも、命懸けで笑いを取りに行く気はありませんから。
「馬鹿犬!殺す気かよ」
相手の胸を押して、怒鳴りつけた。
潤んだ目をこれでもかってくらい見開いて、尾上が困惑する。
「え?えっ?なに?俺、なにか間違ったか?」
「本気とジョークの区別もつかねぇのかよ……?」
動揺しまくりの天然パーに誰か小学生でも分かる緊急時の処置方法を教えてやってくれませんかね?
恐怖心がないわけではない。だが着々を失敗しても下は芝の地面だから、頭からでも落ちない限り大きな怪我などしないだろう。
せいぜい、骨にヒビが入る程度。
だが、怪我をすれば痛いことには変わりないので、指の先にまで神経を集中させる。
狙い定めていた木の枝を掴む。腕を軸に体が大きく揺れた。このままだと手が滑って頭から落ちるだけなので、勢いを利用し前に飛び上がる。
膝を曲げ、体を回転させた。
視線が地面と平行になる少し手前の位置で、足を延ばす。勢いに負けて、バランスが後方に行きすぎないように腕と上半身で微調整。
以上の動作をスムーズに行って、地に足が着いた瞬間に膝をおって衝撃を和らげたらゴール。
「着地成功」
上出来だと、服にくっついた葉っぱを手で払う。
寝不足の所為で集中力に少しだけ不安があったが、無事に着地出来て何よりだ。が、しかし、回転着地の所為かそろそろ頭痛も限界だ。
本格的に爆睡できる場所を探さなければ。
ちらりと視線を上に向けた。
降りられるかなんて、わざわざ心配してやる必要は無いだろう。自己責任でガンバレよ、尾上。
さて、校内一周してヤツをまいたら、また戻ってきたらいいさ。ヒトの邪魔が入らない絶好の昼寝場所を早々に手放す気はねぇーですから。
(まさかまたここに戻るとは思うまい)
ちょっぴり演技かがった調子で考え、くつくつ笑う。
と。
「俺も行くから逃げんな!!」
空から降ってきた声に、はっ?と視線を動かした。
ちょうど、バカが屋根を踏み切る瞬間だった。
絶対落ちる!
頭で考えるより先に、駆け出していた。
案の定、枝を掴んだものの手を滑らして背中から落下するバカが一匹。
頭からじゃなかっただけ、ラッキーだと思え。
つか、俺。
はやまったよな、確実に。
(しまった。芝の地面だった。放っとけば良かった)
背中に受けた衝撃に、ぐふっと潰れたカエルみたいな声が漏れた。
クソッ。無様だ。
とっさにスライディングまでしてしまった自分がダサいぜ。制服が汚れた。史ちゃんに怒られる。あーあーあー……ちくしょう。
「いつつ。あ、れ……?うわっ、久賀!」
早く退いてくれないかな。ガチで呼吸がつらい。
骨はイッてないだろうけど、胸が圧迫されて息が詰まってんだよ。
痛みにちょっぴり呻いた。
ガリガリと地面を引っ掻いて、爪が汚れた。あー、ちくしょー。
「久賀っ!久賀!!しっかり。ゴメン!俺の所為で」
そうだよ。お前の所為だよ。
自分の運動能力を、視野にいれて行動してくれないかな。
こいつ運動は不得意じゃぁなかったハズだが、だからって無茶し過ぎ。
サッカーとかバスケなんかのスポーツが得意だからって、何でも出来ると思ったら大間違い。ううっ、背中痛い。脳みそ揺れた。頭痛が……限界。
「久賀!!」
喚くな、揺するな、抱きしめんな。痛いって言ってんだろ。うっ。息が苦しいから、マジで揺するな、おい。
ぽたぽたと頬に何かが落ちてきて、うっすら目を開けた。
水の向こうで、黒い目が揺れていた。
(…………あー、泣いちゃったよ。コレ俺の所為ぢゃぁねぇよな)
ゴメンと泣きながら繰り返す尾上に、何だがやれやれって気分になった。
あのさ、別に俺が勝手に動いたんだから、そんなに自分を責めなくてもいいんじゃね?
尾上は自分自身を絞め殺しそうなくらい責めて、詫び続けていた。
いつか、何処かで見た表情だ。
ああ。鏡を見ているみたいでイライラするな。
俺はね、シリアスな雰囲気ってヤツが苦手なんだよ。
重い空気をぶち壊してやろうと、無理やり口の端を持ち上げた。
「……人工呼吸が、必要みたい」
『こんな時になに言ってんだよバカ』的なね、流れになることを期待したわけだ。
ついでに、キスのひとつでもしてやれば、お馬鹿なワンコはキャンキャン吠えて泣きやむかなぁー、なんて思ったわけだ。
はぁ、天然って扱い困る。
ちょっぴり入ってるよな、オガミンは。
「わかった!ヤってみる」
「……あ?」
鼻をぐっと掴まれて、ぶちゅっと口を塞がれて、息を吹き込まれて。
待て待て待て待て!殺す気かぁぁ!!
『呼吸、心拍ともに正常な相手への人工呼吸、心臓マッサージは大変危険です。生死にもかかわる場合あるのでよい子の皆さんは絶対に真似をしないで下さいね』というナレーションが脳内を駆け抜けた。
下手すりゃ死ぬから、マジで。
シリアスが嫌いでも、命懸けで笑いを取りに行く気はありませんから。
「馬鹿犬!殺す気かよ」
相手の胸を押して、怒鳴りつけた。
潤んだ目をこれでもかってくらい見開いて、尾上が困惑する。
「え?えっ?なに?俺、なにか間違ったか?」
「本気とジョークの区別もつかねぇのかよ……?」
動揺しまくりの天然パーに誰か小学生でも分かる緊急時の処置方法を教えてやってくれませんかね?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる