うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第52話

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 久賀の心配をして落ち込む俺に「龍二の心配をしてくれてありがとう」と笑った従兄弟さんは、お待の持ち込む厄介事を迷惑がって嘆くよりも、お前が苦しいのを我慢して、何かあった方が悲しいと思うよ……。

「お前に何かあるほうが従兄弟さん……史彦くんだって嫌だろう」

「あのさ、だからね……ちょっと寝不足と栄養が足りてないだけだからさ、寝て食えば治るんだよ」

 大袈裟と、微笑された。

 ちっとも大袈裟じゃないよ。


「病院」

「には、行きません。マジで舌噛んじゃうよ」

 べーっと舌先を見せて、ケラリと笑い、ひらひらと手を振って距離をとろうとする。
 笑ってるけど、目がすわっててちょっとびびる。
 ガチで舌噛むんじゃねぇの……?なんて、怖い考えが過った。
 取りあえず、精神状態が普通じゃないみたいだから、刺激は極力しない方が賢いかも。
 病院に連れて行くのはいったん保留だ。
 実に不本意だが、目の前で舌噛まれたら一生のトラウマ……なんて、生易しいモノじゃすまなくなる。

「じゃあ、せめて家まで送らせろよ。家どこだよ」

「…………あー」

 久賀にじーっと見つめられた。
 なんだよ、なにかついてますかね、俺の顔に。それは兎も角、コイツ顔色最悪なんだけど。本当に大丈夫なのか?
 青黒く変色した目元を見て、胸がぎゅっと締まるような気がした。
 あとさ、そんなマジマジみられると、だんだん落ち着かなくなってくるんですけどね、心が。

「な、なんだよ」

「いや、まぁ……いいか」

 ぽつりと呟いて、久賀が地名を口にした。
 何がなんだかよく分からないが、取りあえず久賀を家まで送っていく方が優先だ。

「電車でふた駅じゃん。あ、バス停の方が近いか」

「いやん、乗り物は危険よオガミン。胃液ぶちまけちゃう」

 胃液ぶちまけるとか、マジかよおい。そんな状態なのに、フザケ口調とやめろよな。真面目にやれ、真面目に。

「お前、まさか、歩いて帰るつもりだった、とか?」

「それ以外の方法が見つかりません。テレポーテーションは使えません、残念ながら。んー、どこでも○アとか持ってない尾上」

「ねぇよ。あったら乱用しまくりだって」

「例えば?」

 きかれて、ちょっと考える。
 突っ込まれるとは思っていなかった。
『持ってないの、残念だ』とか、そんな風に笑って終わらせると思ったから。
 平気な振りをしているが、会話するのもダルそうなのにさ。

(やっぱ……かなり、変ってゆーか、疲れてるのか…………バイトしてた、んだよな。きっと)

 そんなに、自分を痛めつけなくても良いじゃん。と、悲しくなる気持ちを紛らわせようと、質問された事を考えてみる。
 夢の道具があったら、どんな事に使うかな……えーと。

「あ。毎朝ギリギリまで惰眠を貪って、予鈴が鳴り終える前に教室まで移動する」

「…………………………………………………ぷっ」

 長い沈黙の後、ぎゃはははは、と久賀が笑い出した。
 何だよ突然。

 いたたたっ。と胸を押さえて「あはは、笑うと、胃が、ぎゃははっ」とケラケラ笑う相手。
 コイツの笑いのツボっていまいち分からない。
 どーでもいーけど、相変わらずナチュラルに失礼な男だな。

「ウケ狙いの発言なんてしてねぇぞ!」

 何がそんなに可笑しかったんだよとむくれてみせた。

 笑いと体調不良からくる痛みに喘ぎながら、久賀が人様の家の壁をバシバシ叩く。
 だんだんムカついて来ましたよ。

「おまっ。なんか良くわかんねぇけど、物凄くバカにされてるって事は分かるぞ!」

「あははっ。してないしてない。勘違い勘違いっっはははは!あー……笑い死ねる」

「アホか!苦しいのに馬鹿笑いするなよ」

 誰の所為だと思ってんの?と笑い疲れた久賀に言われた。
 なんだよ、俺の所為かよ。
 俺は別に変な事なんて言ってないだろ?

 夢の道具の使い方で笑われたんだよな。
 おかしな事言ったか?
 朝寝坊しても、一瞬で目的地(俺の場合学校)に繋がる便利なドア。あれば乱用するとは言ったが、他に使い方なんて思い浮かばない。
 うーん。旅行とか?
 でもさ、旅行は目的地に向かう道中も楽しいだろう。
 景色を楽しんだり、友だちと「到着したらまず何処に行こうか?」なんて話をしたりさ。だからさ、その過程も俺には必要で、ショートカットは別にしなくても良いなぁと思うんだよな。

 むー……意外と使い道がない。
 ま、いまここにあったら間違いなく。

「ドアの出口を病院に繋いでやるよ」

「だったら自宅でいいじゃん」

「どうしてそんなに嫌がるんですかね」

「…………さぁ?」

 従兄弟に迷惑がかかるからと、今度はそう言わずに鮮やかに笑った。きっと、それ以外にも理由があるのだろうけど、訊くのは止めておいた。
 近づいたと思ったら、すごい早さで離れていく。
 目の前にいるのに、とても遠い。
 何をすれば、お前の力になれるんだろう。

 遠くに飛んでいきそうな思考に蓋をして、俺は久賀に質問を返す。

「じゃあ、お前だったら何に使うんだよ」

「銀行強盗」

 一秒の間もなく、すぱんっ!と言い切られました。
 一瞬、我が耳を疑い、俺の思考は静止する。
 what?
 この男はいま、一体何と申されました?

「えーと……ゴメンナサイ、俺の耳が調子悪いみたいでさ。も一回、いってくれる?」

 俺の聞き間違いですかね?という、僅かな望みを込めて聞き返した。

「宝石強盗でも可。完全犯罪だな」

 ニヤリと笑って、悪人面をつくる久賀。
 聞き間違えではなかったらしい。
 貴様。夢の道具でなんて事を考えるんだ。
 作者に謝れ。そして、子どもたちにも謝罪しろ。
 
「お前が最低だってことを思い出せたよ」

 心底呆れかえってそう言ってみたが、全くダメージを受けた様子はない。
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