うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第54話

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 家のドアを開けて、二人そろって玄関に倒れ込んだ。

 額やら肘やら膝やらと、色んなところをぶつける。
 片方は体力&気力が空っぽで、もう片方も体力が尽きかけた状態だ。

「ヒョロ男のクセに重ぇ」

「ヒョロ男、違ぇし……」

 冬なのに汗がじっとりなのは、どーゆー事でしょうか。
 ヘロヘロの久賀を半ば引きずりながら、何とか俺の家まで帰り着いた。
 今日は母親が用事で実家に出かけているし、姉貴はまだ仕事から帰ってねぇし、父親も夜遅くまで仕事だ。

 スマホで時間を確認すると、17時をちょっと過ぎたくらい。うげっ、アレから1時間近く経過してんの?
 コンビニまではゆっくり歩いても片道、10分もかからないんですけどね。

「俺の部屋まで頑張れ、久賀」

「………………」

「おい、まだ死ぬな」

「…………眠い」

「もうちょっと頑張れ!」

 靴を脱がせて、腕を肩に回して、身体を支える。
 体力無い時に申し訳ねぇですが、俺の部屋は二階だ。
 ひやひやしながら何とか狭い階段をあがりきり、今度は部屋の中に倒れ込んだ。
 多分二人とも、カラダのあちこちに痣とか出来てそうな勢いですね。

「……公園に転がして、貰った方が……幸せだった気がする」

 打ちつけた額を撫でながら久賀がぼそりと呟いた。
 俺の力が足りなくてスミマセンネ!
 屋根と布団と暖房があるんだぞ、外よりマシだろ。

「とにかく……ほら、上着脱いでさっさとベッド入りやがれ」

「色気、ねぇでやんの」

 色気なんて必要ないだろう。
 俺はヤるの目的でお前を買った訳じゃないんだからな。
 のろのろと、上着を脱ぎ捨てて、大人しくベッドに入る相手。うーん、ビジネスになるとちょっと素直になる気がする。
 大人しく布団の中に収まった相手に、ほっと息を吐いた。
 コンビニで買ってきたモノを机に置いて、久賀の方をちょろっとだけ見た。

 顔色最悪だ。
 
 常備薬は探せば見つかるが、確かまともに飯を食ってないって言ってたよな。
 じゃあまずは胃に何かを入れなきゃダメなはず。
 ま、眠いって言ってたから先に睡眠をとって、目が覚めたら何かを食べさせよう。

「あっ、水がいるか」

 水分補給が必要なはずだから、冷蔵庫から水のボトルをとってこよう。

「…………尾上?」

 ドアを開いたところで、どこ行くの?とベッドの上から投げかけられた。

「あ、水とってくる。水分補給するだろ」

「……ん」

 ちょっとだけ手とゆーか殆ど指先だけを挙げて、久賀が了解の意を示した。

 一階に降りて冷蔵庫の中からミネラルウォーターのボトルを取り出し、コップを一個掴んで部屋に戻った。
 パンかなにか、食べやすい物があれば良かったのにな。あ、胃が弱ってるならお粥とかの方がいいのか。

「水、ここにおいて置くから」

「ん」

 ベッドサイドにグラスとボトルを置いて「じゃあ、ゆっくり寝ろよ」と声を掛けた。
 人の気配があると眠れないらしい久賀にベッドを譲った俺は、下に降りてリビングのソファーでだらける事に決めた。俺もちょっと疲れたから、一眠りしてもいいかも。
 歩きだそうとした俺の手が、なぜだか握られて。

「……どこ、いくの?」

 また、おんなじ質問だ。

 無機的な、鈍い目の輝き。
 何だか、色んな事を諦めてしまっているような、そんな悲しさが透けてみえるような目で、久賀は俺を見上げた。

 俺がもう一回、お前を買うよ。
 そう言って手を差し伸べた後から、もともと変な久賀は、さらに変になった。と、いうか、なんか…………上手く言えないけど、一気に弱ってしまった、みたいな。

 壁に縋りついてケホケホしてた時も“やべぇ、ガチで死んじゃいそう”と思ったけど、そんときはまだケラケラとバカみたいに笑っていたから、心のどっかで無意識に安心していたのだと思う。

 でも、今は……。

「ヤんねぇの……?」

 なにを?
 鈍く瞬きをする久賀を見下ろしてポカンと突っ立っていたら、掴まれた腕をぐっと引っ張られた。
 足をベッドに引っ掛けて、そのまま倒れ込む。

「は?えっ……え?」

 なに?と質問する間もなく、ベッドに組み敷かれていた。
 あの、いったい何が?

「くが、むっ…………」

 何のつもりだと続く言葉は、柔らかな唇と激しく攻めてくる舌の熱さに遮られて、音にはならなかった。

「んんっ………んー!!」

 必死の抗議は咽の奥で悲しいうなり声に成り果てる。

 指先一本だって動かすのに全力を注いでいたくせに、キスの上手さは相変わらずというか、激しすぎる。

 叶わぬ想いを内に秘め、情熱を持て余している若い身体に、そのキスは刺激が強すぎる。

 ぞわぞわと、快感の波が全身を駆け抜けて下腹部へと流れていく。こんな事をしている場合ではない!

「ちょ………んんっ!はっ……待っ、んー」

 息継ぎの合間に制止の言葉を口にしようにも、まともな意味すら与えられずにそれらは激しいキスの波に飲み込まれた。

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