82 / 135
第64話
しおりを挟む
緊急家族会議が開かれるかと思いきや、食卓は激しく騒がしいものの大した事件にはならなかった。
弟は騒いで怒って、最後に拗ねちゃいましたけどね……。
姉はともかく、賛成こそしなかったが交際禁止令を出さなかった父親にビックリだ。それどころか、どっちかってゆーと友好的じゃないですかね。
男同士は結婚できません発言の後、弟にもっともなツッコミを入れられて、ピシリッと硬直してしまったのがいけない。
自分の失言に気づいても、一度カタチにした言葉は戻らない。
ここで久賀みたいに嘘を付きなれたヒトならば「いやいや、今のは笑うところだからね燿くん。そんなんじゃお笑い界の頂点は目指せねぇぞー☆」的な軽いノリでジョークだけどウケませんでしたなんてゆー流れに持っていけるんだけどね。俺には無理でした。
「はぁー?なに!マジかよ、にーちゃん!アノヒトと付き合ってんの?男じゃん!!」
と、大きな声で騒ぐ弟に、隣から詰め寄られて「いやっ。その……あのな、付き合ってはなくて」なんてしどろもどろに答えたら「じゃあ好き合ってんの?片思いなの!」と更に突っ込まれてもはや何も言葉にならなかった。
何も言えないでいると、弟の顔をどんどん険しくなっていく。
「マジなのマジなの兄ちゃん!ホモだよ!キモイだろ」
繊細なハートに弟のシンプルかつ辛辣な言葉が突き刺さった。
もうやめて……俺のライフはとっくにゼロです。
思わず胸を押さえてぷいっと視線を逸らした。
どうやら弟は俺の態度が大変気に入らなかったらしく、もはや飯どころじゃない。
「嘘だ!冗談だろ!!だって兄ちゃんの初恋は、みゆき姉ちゃん(ご近所さんで輝の幼なじみ)だろ!後、ベッドの下とか、本棚の奥とか、机の上から二番目の引き出しに隠してるおかず本も至ってノーマルじゃん!」
弟が特大爆弾を投下しました。
「ぬわぁぁぁぁ!!あーきらーっ!」
家族の前でなんちゅー事を言いやがりますかぁぁぁ!そしてなぜそれを知っているぅぅぅ!
暴走する弟の口を慌てて塞いだ。
燿がじたばたと手をバタつかせた。
「むー!むむむー!!」
「それ以上一言だって喋んじゃない!」
燿がしつこく暴れて、茶碗やコップを薙ぎ倒す。
箸が弾かれて、床に転がった。
そして絶対零度の冷気が、親愛なる姉上様から発せられた。
「輝ちゃん、燿ちゃん。仲がいいのは喜ばしいことだけど、食事中はもう少し大人しくしないと、お姉ちゃん怒っちゃうわよ」
微笑みを浮かべて発せられた台詞に、俺たち兄弟は示し合わせたかのように、ピシッと動きを止めた。
兄と弟は、互いにゆっくりとした動作で距離をとり、食事再開。
まったくもう、と呟きながら落ちた箸を拾った姉がシンクに向かう。
暫くして、父親が口を開いた。
「お父さんはお兄ちゃんの父親だから、諸手を挙げて賛成はしかねるなぁ」
怒るわけではなく、ほんの少しの困惑を滲ませた静かな口調だった。
「同性愛となると偏見も障害も異性愛より増えるからなぁ。父親としては愛する息子に苦しい道を歩んでなんか欲しくないねぇ」
「そうだそうだ!ホモなんて反対!!」
「確かに賛同しかねるけどね。お兄ちゃんのキモチはお兄ちゃんの自由だからな」
僅かに目尻を下げて、父さんはそういった。
「ちょっ!!ダメだって父さんっ!俺は兄ちゃ……兄貴がホモとかイヤだぞ!」
「あら、お姉ちゃんは反対しないわよ。愛に性別も国境も人種も関係ないわー」
「姉貴!」
……どーしようか。本人そっちのけでどんどん話が進んでいくぞ。まだ、自分はハッキリそうだと肯定はしていないのに。
(俺って、そんなわかりやすいか……?)
三人の会話にドキドキしながら居たたまれない気持ちになる。けれども、何処までも味方になってくれる姉と、息子の将来を案じながらも理解を示そうとしてくれる父に、言葉には出来ない感謝が胸内に生まれた。
自分は本当に恵まれていると思う。
「父さん!息子が道を踏み外さないように正すのが親の愛じゃねぇの!」
踏み外した、事になるのかな、道を。
「息子が選んだ生き方をそっと見守るのも愛だねぇ」
にっこりと、目尻に笑い皺をつくりならが父が言った。
どっちも正論、だと思う。どちらか片方だけが正しくて、もう片方が間違っているわけじゃない。
「心配は出来ても、人生を肩代わりはしてあげられないからなねぇ。支えることや励ますことは出来ても、実際に偏見や理不尽な差別に立ち向かって乗り越えてゆくのは輝くんたちだ。嫌な思いをしたり、とても傷つきながら、それでも歩いていかなければならない。
だから、よく考えなさい」
選ぶこと、愛すること、生きること、立ち向かうこと。
思考しなさい。
たとえ答えが出なくとも、ただ立ちすくむだけでは、人は何も得られない。
立ちすくむだけでは、何ひとつ得られはしない。
弟は騒いで怒って、最後に拗ねちゃいましたけどね……。
姉はともかく、賛成こそしなかったが交際禁止令を出さなかった父親にビックリだ。それどころか、どっちかってゆーと友好的じゃないですかね。
男同士は結婚できません発言の後、弟にもっともなツッコミを入れられて、ピシリッと硬直してしまったのがいけない。
自分の失言に気づいても、一度カタチにした言葉は戻らない。
ここで久賀みたいに嘘を付きなれたヒトならば「いやいや、今のは笑うところだからね燿くん。そんなんじゃお笑い界の頂点は目指せねぇぞー☆」的な軽いノリでジョークだけどウケませんでしたなんてゆー流れに持っていけるんだけどね。俺には無理でした。
「はぁー?なに!マジかよ、にーちゃん!アノヒトと付き合ってんの?男じゃん!!」
と、大きな声で騒ぐ弟に、隣から詰め寄られて「いやっ。その……あのな、付き合ってはなくて」なんてしどろもどろに答えたら「じゃあ好き合ってんの?片思いなの!」と更に突っ込まれてもはや何も言葉にならなかった。
何も言えないでいると、弟の顔をどんどん険しくなっていく。
「マジなのマジなの兄ちゃん!ホモだよ!キモイだろ」
繊細なハートに弟のシンプルかつ辛辣な言葉が突き刺さった。
もうやめて……俺のライフはとっくにゼロです。
思わず胸を押さえてぷいっと視線を逸らした。
どうやら弟は俺の態度が大変気に入らなかったらしく、もはや飯どころじゃない。
「嘘だ!冗談だろ!!だって兄ちゃんの初恋は、みゆき姉ちゃん(ご近所さんで輝の幼なじみ)だろ!後、ベッドの下とか、本棚の奥とか、机の上から二番目の引き出しに隠してるおかず本も至ってノーマルじゃん!」
弟が特大爆弾を投下しました。
「ぬわぁぁぁぁ!!あーきらーっ!」
家族の前でなんちゅー事を言いやがりますかぁぁぁ!そしてなぜそれを知っているぅぅぅ!
暴走する弟の口を慌てて塞いだ。
燿がじたばたと手をバタつかせた。
「むー!むむむー!!」
「それ以上一言だって喋んじゃない!」
燿がしつこく暴れて、茶碗やコップを薙ぎ倒す。
箸が弾かれて、床に転がった。
そして絶対零度の冷気が、親愛なる姉上様から発せられた。
「輝ちゃん、燿ちゃん。仲がいいのは喜ばしいことだけど、食事中はもう少し大人しくしないと、お姉ちゃん怒っちゃうわよ」
微笑みを浮かべて発せられた台詞に、俺たち兄弟は示し合わせたかのように、ピシッと動きを止めた。
兄と弟は、互いにゆっくりとした動作で距離をとり、食事再開。
まったくもう、と呟きながら落ちた箸を拾った姉がシンクに向かう。
暫くして、父親が口を開いた。
「お父さんはお兄ちゃんの父親だから、諸手を挙げて賛成はしかねるなぁ」
怒るわけではなく、ほんの少しの困惑を滲ませた静かな口調だった。
「同性愛となると偏見も障害も異性愛より増えるからなぁ。父親としては愛する息子に苦しい道を歩んでなんか欲しくないねぇ」
「そうだそうだ!ホモなんて反対!!」
「確かに賛同しかねるけどね。お兄ちゃんのキモチはお兄ちゃんの自由だからな」
僅かに目尻を下げて、父さんはそういった。
「ちょっ!!ダメだって父さんっ!俺は兄ちゃ……兄貴がホモとかイヤだぞ!」
「あら、お姉ちゃんは反対しないわよ。愛に性別も国境も人種も関係ないわー」
「姉貴!」
……どーしようか。本人そっちのけでどんどん話が進んでいくぞ。まだ、自分はハッキリそうだと肯定はしていないのに。
(俺って、そんなわかりやすいか……?)
三人の会話にドキドキしながら居たたまれない気持ちになる。けれども、何処までも味方になってくれる姉と、息子の将来を案じながらも理解を示そうとしてくれる父に、言葉には出来ない感謝が胸内に生まれた。
自分は本当に恵まれていると思う。
「父さん!息子が道を踏み外さないように正すのが親の愛じゃねぇの!」
踏み外した、事になるのかな、道を。
「息子が選んだ生き方をそっと見守るのも愛だねぇ」
にっこりと、目尻に笑い皺をつくりならが父が言った。
どっちも正論、だと思う。どちらか片方だけが正しくて、もう片方が間違っているわけじゃない。
「心配は出来ても、人生を肩代わりはしてあげられないからなねぇ。支えることや励ますことは出来ても、実際に偏見や理不尽な差別に立ち向かって乗り越えてゆくのは輝くんたちだ。嫌な思いをしたり、とても傷つきながら、それでも歩いていかなければならない。
だから、よく考えなさい」
選ぶこと、愛すること、生きること、立ち向かうこと。
思考しなさい。
たとえ答えが出なくとも、ただ立ちすくむだけでは、人は何も得られない。
立ちすくむだけでは、何ひとつ得られはしない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる