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第70話
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秋の夕暮れの色に徐々に染まっていく空に、歓声が響いている。
フィールドの端から端までを走り抜ける選手たちは皆同様に、青春の輝きというものを惜しげもなく放っていたけれど、俺の目が捉える人物はたったひとりだけだった。
そいつは肩口でぴろぴろする赤い髪を一つに縛り、健康的な汗の滴を額に浮かべている。
イケメン揃いと噂されるサッカー部の雇われプレーヤーだけれど、容姿も技術も正規部員に見劣りしない。
いつもよりちょっぴし真剣な目をしているのは、助っ人の報酬、学食一週間分とチームの勝利に貢献したぜボーナスを手に入れる為だろう。
あとは、こっそり賭なんかもしているかもしれない。西河原と椎名あたりが怪しい動きをしていたので。
視線の先で眩しいばかりに輝く男が鮮やかにゴールを決めて、歓声が上がった。
前半終了を告げるホイッスルが鳴り響き、それぞれの陣営に選手が集まってきた。
クラスメイトのサッカー部員に肩を組まれて、上機嫌に笑う男にちょっぴりむっとしてしまった。
ダメだダメだ。男同士でジャレてるぐらいで、いちいち心を動かすなよ。
男相手に嫉妬しても、どうにもならないだろ。男で久賀をそーゆー目で見てるヤツなんてそんな何人もいるわけない。
その何人かの内の一人の顔が思い浮かび、自然と額に皺が寄った。
だめだ、だめだ、平常心。平常心。と、心の中で唱えても、もやもやはちっとも消えてくれない。ああ、嫌なヤツだな俺。
触るなよ。と吠えたくなった。
好きな人の格好いい姿が見えるのは嬉しいけれど、ギャラリーが多すぎる。
フィールドを取り囲む女子陣から『久賀くんステキー』なんて声が上がろうものなら、気分はさらに落ちるわけで……。まったく、アレの何処がそんなに好きなんですかね?と、聞いて回りたいよ……………なんて、自分の気持ちは棚に上げて呆れてみたりね。
声援に、にっこり笑って手を振っている外面男にカチンとする。
皆さんソイツはうそつきで意地悪な下半身男です。
ああ。くそ……俺だってね、心の中じゃあ誰よりも応援してるんだぞ。
ゴールが決まった瞬間、飛び跳ねたい衝動を必死に我慢した。
だってさ、オレ男だし。
女の子たちみたいにきゃあきゃあ騒いで、ぴょんぴょん跳ねるのは、なんか違うってゆーか、ハズかしいだろ。
そんなわけで、グラウンドからはちょっと離れた所にいるわけです。
水道の蛇口が並ぶ手洗い場所のコンクリにもたれて、観戦中だ。
「はぁ、俺……なにやってんだろう」
空の雲のカタチをぼんやり眺めながら、溜め息をついた。
好きな相手と、ようやく友人関係にはなれたが、なにがどーかわったかと言われると……まあ、多少、距離は縮んだ気がするが……取りあえず久賀龍二は素でもタラシだってことが分かりました。
アイツが愛してるトモちゃんレベルの扱いではないけれど、キラキラな笑顔を超至近距離で振りまかれること、今日で三日目。
アイツはマジでトモダチのなんたるかがわかっていない。
なんで友人相手にキラキラエフェクト全開の笑顔を振り撒くんですかね?
俺の理性が飛ぶか、いつまでたっても慣れない胸の鼓動が爆発するか、どっちだろう。
「オガミー。尾上。水ちょうだい。水」
「うぉっ!!!び、びびった」
空に向けていた視線を戻すと、いつの間に接近していたのか、すぐ側に久賀さんがいやがった。
気配消すなよな。
「水ちょーだい」
掌を差し出してくる相手にイラッとする。
「そこに水道があるじゃん」
「水道水マズい」
ちょーだい、とにっこり笑われてむすっとした。ほら、顔がにやけそうになっちゃったからね。心と真逆の表現をするのは、結構難しい。
「俺に水を買いにゆけと?」
因みに、サッカー部が用意していた水分はスポーツ飲料だったので、久賀さん的にアウトだったらしい。
この偏食王め。
「お昼の残り、持ってるでしょ?」
お前はそれを寄越せと言うのか。
なんとワガママでふてぶてしくて、自分勝手なヤツなんでしょう。
買いに行ってこいって言われるよりはマシだけど、なんて思いながら鞄の中から水のボトルを取り出して放り投げた。
パシッとキャッチして「ありがとー」とにこやか笑顔。
うーむ。営業スマイルも混ざっているよな。
半分以上あった水を飲み干して「生き返った」と息を吐いたら、ようやく通常運転にシフトしたのか、あくまでも健全な疲労を顔に滲ませている。
「大活躍じゃん」
「うぃ。そりゃぁね。金が絡むと俺は強いよー」
さらりと問題発言。
どうやら怪しいバイトは謹慎中らしく、別の方法での金稼ぎに奔走している……らしい。といっても、お客さんらしい安田君とよくつるんでいるので、怪しい方のバイトも完全に休業しているわけではないみたいだが。
俺的には裏バイトなんて止めさせたいのだが、話し合いは平行線のままだ。
「尾上は賭には参加しなかったのな。稼がせてあげたのに、残念」
……やっぱ闇賭博がこっそり行われていやがったか。
フィールドの端から端までを走り抜ける選手たちは皆同様に、青春の輝きというものを惜しげもなく放っていたけれど、俺の目が捉える人物はたったひとりだけだった。
そいつは肩口でぴろぴろする赤い髪を一つに縛り、健康的な汗の滴を額に浮かべている。
イケメン揃いと噂されるサッカー部の雇われプレーヤーだけれど、容姿も技術も正規部員に見劣りしない。
いつもよりちょっぴし真剣な目をしているのは、助っ人の報酬、学食一週間分とチームの勝利に貢献したぜボーナスを手に入れる為だろう。
あとは、こっそり賭なんかもしているかもしれない。西河原と椎名あたりが怪しい動きをしていたので。
視線の先で眩しいばかりに輝く男が鮮やかにゴールを決めて、歓声が上がった。
前半終了を告げるホイッスルが鳴り響き、それぞれの陣営に選手が集まってきた。
クラスメイトのサッカー部員に肩を組まれて、上機嫌に笑う男にちょっぴりむっとしてしまった。
ダメだダメだ。男同士でジャレてるぐらいで、いちいち心を動かすなよ。
男相手に嫉妬しても、どうにもならないだろ。男で久賀をそーゆー目で見てるヤツなんてそんな何人もいるわけない。
その何人かの内の一人の顔が思い浮かび、自然と額に皺が寄った。
だめだ、だめだ、平常心。平常心。と、心の中で唱えても、もやもやはちっとも消えてくれない。ああ、嫌なヤツだな俺。
触るなよ。と吠えたくなった。
好きな人の格好いい姿が見えるのは嬉しいけれど、ギャラリーが多すぎる。
フィールドを取り囲む女子陣から『久賀くんステキー』なんて声が上がろうものなら、気分はさらに落ちるわけで……。まったく、アレの何処がそんなに好きなんですかね?と、聞いて回りたいよ……………なんて、自分の気持ちは棚に上げて呆れてみたりね。
声援に、にっこり笑って手を振っている外面男にカチンとする。
皆さんソイツはうそつきで意地悪な下半身男です。
ああ。くそ……俺だってね、心の中じゃあ誰よりも応援してるんだぞ。
ゴールが決まった瞬間、飛び跳ねたい衝動を必死に我慢した。
だってさ、オレ男だし。
女の子たちみたいにきゃあきゃあ騒いで、ぴょんぴょん跳ねるのは、なんか違うってゆーか、ハズかしいだろ。
そんなわけで、グラウンドからはちょっと離れた所にいるわけです。
水道の蛇口が並ぶ手洗い場所のコンクリにもたれて、観戦中だ。
「はぁ、俺……なにやってんだろう」
空の雲のカタチをぼんやり眺めながら、溜め息をついた。
好きな相手と、ようやく友人関係にはなれたが、なにがどーかわったかと言われると……まあ、多少、距離は縮んだ気がするが……取りあえず久賀龍二は素でもタラシだってことが分かりました。
アイツが愛してるトモちゃんレベルの扱いではないけれど、キラキラな笑顔を超至近距離で振りまかれること、今日で三日目。
アイツはマジでトモダチのなんたるかがわかっていない。
なんで友人相手にキラキラエフェクト全開の笑顔を振り撒くんですかね?
俺の理性が飛ぶか、いつまでたっても慣れない胸の鼓動が爆発するか、どっちだろう。
「オガミー。尾上。水ちょうだい。水」
「うぉっ!!!び、びびった」
空に向けていた視線を戻すと、いつの間に接近していたのか、すぐ側に久賀さんがいやがった。
気配消すなよな。
「水ちょーだい」
掌を差し出してくる相手にイラッとする。
「そこに水道があるじゃん」
「水道水マズい」
ちょーだい、とにっこり笑われてむすっとした。ほら、顔がにやけそうになっちゃったからね。心と真逆の表現をするのは、結構難しい。
「俺に水を買いにゆけと?」
因みに、サッカー部が用意していた水分はスポーツ飲料だったので、久賀さん的にアウトだったらしい。
この偏食王め。
「お昼の残り、持ってるでしょ?」
お前はそれを寄越せと言うのか。
なんとワガママでふてぶてしくて、自分勝手なヤツなんでしょう。
買いに行ってこいって言われるよりはマシだけど、なんて思いながら鞄の中から水のボトルを取り出して放り投げた。
パシッとキャッチして「ありがとー」とにこやか笑顔。
うーむ。営業スマイルも混ざっているよな。
半分以上あった水を飲み干して「生き返った」と息を吐いたら、ようやく通常運転にシフトしたのか、あくまでも健全な疲労を顔に滲ませている。
「大活躍じゃん」
「うぃ。そりゃぁね。金が絡むと俺は強いよー」
さらりと問題発言。
どうやら怪しいバイトは謹慎中らしく、別の方法での金稼ぎに奔走している……らしい。といっても、お客さんらしい安田君とよくつるんでいるので、怪しい方のバイトも完全に休業しているわけではないみたいだが。
俺的には裏バイトなんて止めさせたいのだが、話し合いは平行線のままだ。
「尾上は賭には参加しなかったのな。稼がせてあげたのに、残念」
……やっぱ闇賭博がこっそり行われていやがったか。
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