うそつきな友情(改訂版)

あきる

文字の大きさ
102 / 135

第73話

しおりを挟む
 サッカーの助っ人の対価は学食+α。

 仲介者の俺には、真面目にやりなさいって条件をのんで返す。
 暗にこれで貸し借りは無しだぞって言ってるのだと思う。

 ウリ……カラダの対価は現金で、秘密を保持する為ならばヒトを脅すことも躊躇しない。

 実際に、脅されたしね。


(あれから、まだ一ヶ月しか過ぎてねぇとか……密度濃すぎ)

 スマホのボイレコで、アレな音声を録音されたのが約一ヶ月前。
 あん時はマジでぶっ殺してやろうかと思ったな。
 音声はナガノさんが消してくれたから良かったけど、取引材料が無くなった久賀に「なんでも要求してください、ご主人様」なんて発言をされて、取引がねぇと信用もされないのかと傷ついた。

 あの日、俺と久賀の関係はバラバラの粉々に壊れて……いや、最初から何もなかったんだよな。俺が勝手にダチだと思っていただけ。その真実に気づき、愕然となった。

 それから一ヶ月。
 本当の友人になるためにがむしゃらに足掻いた。

 にっこり笑顔で拒否られて、マジな声音で脅されて、安いトモダチごっこなら余所でやれよと吐き捨てられた。

 それでも、がむしゃらに後を追いかけた俺って、やっぱりちょっと変なのかな。
 変だ変だって久賀に連呼されるんだよね。

 ま……確かに、友情を主張するには、かなり変だよな。

 だって恋だから。
 足掻くうちに気づいた感情は、友情じゃなくて、恋だった。

 悲しいと辛いと苦しいを何度も感じながら、夜にこっそり泣いて、ガキみたいに怒って、しつこく構って追いかけて、屋根から飛んだり、ドックレースばりに走ったり、噛み合わない会話を繰り返し、繰り返して……久賀に近づきたいと、側にいたいと思う気持ちこころに従った。

 卑屈にもなった、嫉妬もした、ちょっとしたことで心は天国まで飛んでいけるし、地獄にだって落とされる。
 やめようと思わなかったわけじゃない。
 諦めようとしなかったわけじゃない。
 だけど、何度心が痛んでも、好きは消えなかったし、恋を捨てられなかった。
 ただそれだけだ。

 忘れようかと迷う度に、諦めようかと空を見上げる度に、雨の日の久賀の姿が蘇った。

 寂しそうな横顔に恋をした。

 あの日のアイツが、今もまだきっとひとりっきりで、雨の日に立ち尽くしている。そんな気がする。

 何かに傷ついて、涙も流せずに泣いているのなら、何も出来なくてもその隣に寄り添いたいと思った。

 だから、頑張っているだけ。


 何か欲しいモノのがあるから、ダチをやってるワケじゃねぇんだよ、久賀さん?

 そりゃあ、俺のために活躍してやるなんて言われて、嬉しくないわけがないんだけどね。
 だけど対価を得るために、お前に何かをしてるワケじゃねぇんだ。ダチだからだよ。好きだから。
 大切にしたいから、勝手にそうしてるだけなんだ。


 もし、もし何か、得たいモノがあるとすれば、それはあいつの心くらいだろう。
 一番じゃなくていい。特別じゃなくてもいい。心の端っこでいいから、俺の存在を、久賀の中に置いて欲しい。
 なんて、こんな事を考えてることが知られたら、きっとトモダチのフリすらしてくれないだろうな。


「おっがみー」

 きゃぴきゃぴした声に視線を動かしたら大山がいた。
いつも通りのにこやかさでフィールドを見渡して騒ぐ。いきなしウルサくなった。

「ダーリンは活躍中ですかー?」

 誰がダーリンだ。
 ……もしかしてコイツには、バレちゃってたりするのかな?
 いや、大山はいつもこんなカンジか。

「お前さぁ、坂本と帰るって言ってなかった?」

「振られちゃった。大山くんハートブレイク」

 大山はくすん、と泣き真似をはじめた。あー、きっといつもの調子でふざけて……ふざけすぎて、坂本を怒らせたんだろうな。
 
「どーせバカな事を言って怒らせたんだろう」

 坂本は普段はそーでもないんだけど、大山相手だとちょっと短気になるんだよね。
 そういえば坂本が「大山あいつの前だと調子が狂うからムカつく」なんてことを昔言ってたなぁ。それでも、不思議と仲が良い二人なのだ。

 大山と並んで観戦をはじめると程なく、大きな歓声が女子陣を中心に湧き上がった。
 遠く離れたフィールドを走る久賀と、一瞬視線が合った気がした。
 気のせいだ。
 そんなコトが可能な距離じゃない。

 鮮やかにゴールを決めたアイツは、七色の可視光線に包まれている。
 もちろんコレも気のせいだ。
 でも、ホントに発光してるんじゃないの?ってくらい目立っているのは事実。

『後半のシュートはお前にあげる』

 気まぐれに発せられたセリフが脳内をリプレイする。
 シュートしたボールをしっかりゴールさせるところが、アイツの憎らしいくらいカッコイイところだ。
 そりゃモテるよな。

 カッコイイもん。

 気まぐれを本気にしたら、痛い目にあうぞ。と自分に言い聞かせるけど、心臓のドキドキは大きくて煩いばかりだ。

(タラシ。おちょーしもの。下半身男。キザやろー)

 悪口を並べて、心を静めようとしたけど、ダメだった。


 キラキラの、七色可視光線。
 魂ごと持っていかれる。
 わけも分からずに、泣きそうだ。
 いつか……いつかきっと、切なさに押しつぶされる。そんな気がする。

「おおうっー!今度はナイスアシスト。すっげー!サスガ我がクラスのスーパーヒーロー!」

 ぴょんと飛び跳ねる大山を横目でみた。
「いやぁぁぁーん!久賀君ったら素敵よぉぉぉん」と、おふざけ口調の黄色い声援を送っている。……恥ずかしいヤツだな。
 ホレ見ろ、女子陣に笑われてるぞ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...