人を尊重できないやつは皆死んじまえ!

pizzeman

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荒ぶる希望

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「誰かが言っていたね。今日から十年前、俺たちの日常が変わったのは」

 車で移動している。視界にわずかに入る外の景色は醜い。今日もしたいが見える。この世からルールが消え、破壊の権化となっちまった人類さんたちの結果。そういう俺も破壊の権化になっちまったけど。今日もどこかで拾った帽子をかぶり、殺して手に入れた服を着てシートに座っている。

「ああ、もうそんなにたったのか。長かったような短かったような」

 ドライバーがそんなことを言い、こちらに目をくれない。

「俺は長かったような感じがしたな。生きることに必死すぎて一日一日が長すぎる」

「もとのユイヤはもういないんだな。あんなに動かなかったお前が悪事に簡単に手を染めやがって」

 ユイヤというのは俺の名前だ。カタカナなのは二人とも漢字が書けないからだ。義務教育とかはやっぱ受けないと駄目だったなと今になって思う。

「必要ならな。それにお前だってもとのヒロトじゃなくなっているんだからよ。お互いにおかしくなってんだよ」

 冗談をいったつもりだったがコイツは笑わねえ。つまんねえ。だから俺にこき使われるぐらいしかないんだ。悪く思いすぎた。ヒロトはヒロトで健気なやつだ。……何やってんだ。
 しばらくの沈黙の後、ため息をつく。

 呑気にしていたら腹が減ってきたな。

「おい、外に生きている奴はいないか? 本当にルール無用な生き方をしている奴」

 ドライバーはほんの少しだけ横を見た。

「……今いたな。あいつらか?」

「何人いた? 三人ぐらいならいつもの感じでいいだろ」

「……そうだな、じゃあやるか。あと少し走ったところで降ろすからな」

 廃工場の手前、そこで標的にされた三人は血にまみれた宝石を手にして笑っている。ああいうやつらはどうしていたのか単純にわかることで、すぐ近くで誰かを殺して手に入れたという解釈で間違いないだろう。

「おい、はやくやれよ」

 小声で言ったと同時に三人の方向に車が突っ込む。あれはヒロトだ。後のけがをしていない生き残りは

「覚悟しやがれ! テメェら!」

 隠し持ったスパナを尊重忘れた人間に遠慮なくたたき殴る。

「おい、手に持っている宝石は何だ? 誰かから盗んだんだろう! さっきの通り道で死体が転がっていたぜ。お前らがやったんだろう? なぁ!」

 コイツ等に言葉なんか必要ない。俺から与えるのは暴力だけだ。どうせ言葉は伝わらねえんだからこうしたほうが時間もかからないしお得だ。

「おい、もう死んでるぞ」

 俺を止めたのはヒロトだ。仏頂面から少し険しい表情で目を見てくる。

「そこまでにしとけ。やりすぎは駄目だ」

 なんだ、いつものヒロトじゃねえ。

「別にいいじゃねえか。こんな世界になっちまった以上俺たちを止められそうなやつなんていねえ。筋も通さねえやり方を肯定していいわけじゃねえからな」

「だからと言って殺していいわけじゃないぞ」

「法律と世間だったらな、けど今じゃんなもんは一切通用しねえ。お前はまだ殺さないでいられるなんて思ってんのか?」

 ヒロトは黙ってしまった。殺さないでは生きていられない。そんなものは心のどこかで感じているのだろう。まだこんな世界になる前はこんなことしないでも生きていられるっていうのに。

 死体を回収し、廃墟の中で焚火をたく。この廃墟はかつては民家だったようだ。古びてほこりまみれになり、壁は徐々に崩れ、天井からは星が見える。今日手に入れた肉は川で汚れを落としてきれいにする。刃物は無いので手でちぎって食べやすいサイズにして焼く。見栄えが悪い焼肉だ。
 視界の隅で写るヒロトは肉を食べながら浮かない表情をしている。

「あ~あ、リアルで課金要素とかねえかな」

 と冗談を言って、

「何言っちゃってんの? てか課金って何?」

 こう返してくる、いつものありえねえ話。

「知らねえのか。まあ無理もないな、お前の家庭は結構ひどかったもんな」

「うっせ、んなもんどうだっていいだろ。んで、課金ってなんだよ」

「……お金があれば強くなれるって感じだな」

「まじで! 金持ち最強理論じゃん」

「だろ! 金があれば最強なんだよ、金さえあればこんなところ……」

 言葉が詰まってしまった。俺たちに未来を語ることは少し禁句に近い。
 ……いやそろそろ一歩歩みだしてもいいだろう。こんなことは疲れてしまった。

「……いつか安全なところに連れて行ってやる」

「え」

 突然の言葉にヒロトは驚いたようだ。それも当然だが俺自身も驚いている。

「それまで、なんとしても生き延びるぞ」
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