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19.月夜
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この本があるということはさっき脳内で立てた仮説があっているかもしれないということだ。残酷だがあの母は星空を見せたあの本と同じように呼び寄せの本が生み出した幻覚みたいなものと推測できてしまう。
でもどうして私はあの人を母と思ってしまったんだろう。初めてあった人なのに、自らの髪色が違い振舞いなんかも全く違う。きっとあの本は読んだ本人を勘違いさせるように思わせる何かがあるんだろう。
アルザは子供ながらにしては冷静に考えを埋めていく。本当なら考えたくもないこと、きつく言えば何でもできる道具を手に入れたと納得するしかない。
「アルザ、何しているの?」
本から目を離し、周囲を見渡す。ここはカリアの部屋ではない、来たこともない別の部屋だ。でもどうして? まだ部屋から出てもいない。そもそもずっと立ち尽くしていて体は動いていなかったのに。
声がした方向を見るとそこにはカリアがいた。でも、あえてうれしいなんて感情は無い。本を投げ捨てでも抱き着きたいくらい、涙があふれてもおかしくない再開。カリアを見た瞬間にすぐに言葉にできたどうしてこんな時だけ勘は鋭くなってしまうんだろう。
「カリア、その本は何?」
カリアは数冊本を持っていた。何の本かわからない、けどこれまでのことを思い出せばただの本を持ち歩くことはないはず。それにカリアは本を読みたがる人ではない。カリアがここで本を持っている、それは何かを呼び寄せる本であることの証明であった。
「私はここで何しているのか聞いているの。アルザの話を聞くのはそのあとだよ、さあ答えて」
鋭い。いつものカリアはこんな冷たく言葉を発する人ではないはず。私の手は震えているよ、カリアは私と違う時間を過ごして変わってしまった。わずか数日離れ離れになっただけでもこれだ。
「カリアを探しに来たんだよ。いつもいつも突然いなくなっちゃうんだからそのたびに心配して探しに来ているんだよ。お願い、帰ろう? あの人と一緒にいるのは確かに怖いけど、それでもいつも通りに過ごせるなら私はそれでもいいよ」
「私は別にあの人のことは気にしてはいないよ。多分……いや、確信するものがもうあるから」
気にしていない? いったいどういうことなんだろうか。私とカリアが言うあの人と言うのは青年であることは間違いないだろう。だとしたら気にしていないとはどういうことなんだろう。
「どうしてそう言い切れるの?あの人だって地下でやっていたこと以外は別に優しい人だったじゃない」
するとカリアはため息をだした。冷たいというよりはあきれたなんて言いたそうな顔だ。カリアのそんな顔は初めて見る。私自身その表情を見るのは初めてだったがどうも好きになれない。こういうのを嫌悪と言うのだろう。
「アルザは何も知らないんだね。いいよ、知らないだけだと思うし知っていても理解できないと思うし」
「どうしてそんな言い方をするの! 私は別に何もしていないじゃない。カリアおかしいよ、どうしちゃったの」
とうとう心のなにかが途切れてしまった。言いたいことを思いっきり吐き出した気分だ。まだ言いたいことは本当はもっとある。けど今はこれだけでも十分だ。
「私のことを何も知らないくせに! 保護者にでもなったような口をきくな!!」
カリアは私よりも荒々しく、怒りにその体を任せて言葉を発する。警告だ。人間が同じ人間に対する最終通告、これ以上来るなら攻撃するぞとでも表す行為だ。
「アルザはいつだってそうだ! 自分は好き勝手にやっているくせに私のやりたいことは何にでも言ってきて。ちょっとは私のことを考えてよ」
いつの間にか。そう、いつの間にか私はカリアを苦しめていたのかもしれない。カリアの立場を一つも気に留めていなかったせいなのか、怒り狂うことになるまで気が付けなかったみたいだ。
「……ごめん」
何か言い返そうと思っても思いつくのはそれだけだ。必死に答えを探す。何かこの状況をたった一つの言葉でくつがえしてしまいそうな魔法のような反則な言葉を。本に、壁に、床。何かを探して思考を巡らせる。
「アルザが一体何を求めているのか私はよくわからない……。けど私だって心配していっているんだよ。それが私のことばかり考えた言葉だったとしても」
「うん。だからこそなんだよ。結局は自分のことばかり考えているだけなんだよね」
そこまで言われてしまうともう何も言うことができない。私はもう何もできない。
「……じゃあ、さようならだね。でも一人で帰ってくれないでしょ」
そういって持っていた本を選び始めた。そうだ本だ。今手元にある二冊の本でどうにか時間を稼いで考えていくしかない。でも何をすればいいんだろう。本当の目的は? カリアを説得するのが目的であって倒して服従させたいこととは違う。ではカリアの目的は? いつもの触れたくなるようなぬくもりを感じる温度の彼女はいつの間にか鉄をも溶かしてしまう高熱、溶岩になってしまったカリアは、なぜ屋敷に帰ってきてくれないんだろう。
「だからこれで帰ってもらうからね。気を付けてね」
「カリア!」
何を言っても無駄だと悟った。今のカリアに説得は無駄だとわかった。なんとかでた叫びは届かなかった。急激に目の前が暗くなる。これは一体?
体が宙に浮いているような浮遊感がある。回っているのか? 頭の中で体が回転しているかのような感覚が激しくなってくる。私はどうなってしまうんだろう。
でもどうして私はあの人を母と思ってしまったんだろう。初めてあった人なのに、自らの髪色が違い振舞いなんかも全く違う。きっとあの本は読んだ本人を勘違いさせるように思わせる何かがあるんだろう。
アルザは子供ながらにしては冷静に考えを埋めていく。本当なら考えたくもないこと、きつく言えば何でもできる道具を手に入れたと納得するしかない。
「アルザ、何しているの?」
本から目を離し、周囲を見渡す。ここはカリアの部屋ではない、来たこともない別の部屋だ。でもどうして? まだ部屋から出てもいない。そもそもずっと立ち尽くしていて体は動いていなかったのに。
声がした方向を見るとそこにはカリアがいた。でも、あえてうれしいなんて感情は無い。本を投げ捨てでも抱き着きたいくらい、涙があふれてもおかしくない再開。カリアを見た瞬間にすぐに言葉にできたどうしてこんな時だけ勘は鋭くなってしまうんだろう。
「カリア、その本は何?」
カリアは数冊本を持っていた。何の本かわからない、けどこれまでのことを思い出せばただの本を持ち歩くことはないはず。それにカリアは本を読みたがる人ではない。カリアがここで本を持っている、それは何かを呼び寄せる本であることの証明であった。
「私はここで何しているのか聞いているの。アルザの話を聞くのはそのあとだよ、さあ答えて」
鋭い。いつものカリアはこんな冷たく言葉を発する人ではないはず。私の手は震えているよ、カリアは私と違う時間を過ごして変わってしまった。わずか数日離れ離れになっただけでもこれだ。
「カリアを探しに来たんだよ。いつもいつも突然いなくなっちゃうんだからそのたびに心配して探しに来ているんだよ。お願い、帰ろう? あの人と一緒にいるのは確かに怖いけど、それでもいつも通りに過ごせるなら私はそれでもいいよ」
「私は別にあの人のことは気にしてはいないよ。多分……いや、確信するものがもうあるから」
気にしていない? いったいどういうことなんだろうか。私とカリアが言うあの人と言うのは青年であることは間違いないだろう。だとしたら気にしていないとはどういうことなんだろう。
「どうしてそう言い切れるの?あの人だって地下でやっていたこと以外は別に優しい人だったじゃない」
するとカリアはため息をだした。冷たいというよりはあきれたなんて言いたそうな顔だ。カリアのそんな顔は初めて見る。私自身その表情を見るのは初めてだったがどうも好きになれない。こういうのを嫌悪と言うのだろう。
「アルザは何も知らないんだね。いいよ、知らないだけだと思うし知っていても理解できないと思うし」
「どうしてそんな言い方をするの! 私は別に何もしていないじゃない。カリアおかしいよ、どうしちゃったの」
とうとう心のなにかが途切れてしまった。言いたいことを思いっきり吐き出した気分だ。まだ言いたいことは本当はもっとある。けど今はこれだけでも十分だ。
「私のことを何も知らないくせに! 保護者にでもなったような口をきくな!!」
カリアは私よりも荒々しく、怒りにその体を任せて言葉を発する。警告だ。人間が同じ人間に対する最終通告、これ以上来るなら攻撃するぞとでも表す行為だ。
「アルザはいつだってそうだ! 自分は好き勝手にやっているくせに私のやりたいことは何にでも言ってきて。ちょっとは私のことを考えてよ」
いつの間にか。そう、いつの間にか私はカリアを苦しめていたのかもしれない。カリアの立場を一つも気に留めていなかったせいなのか、怒り狂うことになるまで気が付けなかったみたいだ。
「……ごめん」
何か言い返そうと思っても思いつくのはそれだけだ。必死に答えを探す。何かこの状況をたった一つの言葉でくつがえしてしまいそうな魔法のような反則な言葉を。本に、壁に、床。何かを探して思考を巡らせる。
「アルザが一体何を求めているのか私はよくわからない……。けど私だって心配していっているんだよ。それが私のことばかり考えた言葉だったとしても」
「うん。だからこそなんだよ。結局は自分のことばかり考えているだけなんだよね」
そこまで言われてしまうともう何も言うことができない。私はもう何もできない。
「……じゃあ、さようならだね。でも一人で帰ってくれないでしょ」
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「だからこれで帰ってもらうからね。気を付けてね」
「カリア!」
何を言っても無駄だと悟った。今のカリアに説得は無駄だとわかった。なんとかでた叫びは届かなかった。急激に目の前が暗くなる。これは一体?
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