33 / 150
第一章
渦巻く画策③
しおりを挟む
二人を連れて詰所に向かいながらシュンカは事件について現状を教えた
トーマが巻き込まれている事もあり二人には説明しておいたほうがいいと判断したのだ
ズーク宰相が誘拐もしくは殺害されているかもしれないこと、誘拐されている場合は犯人から何らかの要求があるはずだが一日経ってもそれがないこと
出入り口は夜中でも監視があるから侵入することは難しい
極秘でこの街に来たズーク宰相をこの街で誘拐もしくは殺害するのは突発的な犯行の可能性が高いこと
「犯行声明がない限りズークと揉めた彼が疑われるのは仕方がないのかもしれないな」
「トーマっちはその時ウチらといたっちゃ!」
「そうです!それなのにどうして……」
「だからじゃないのか……身内の証言は信頼度が低い……君達もグルで庇っているとなると同じ目に遭う……おそらく黙秘しているか、彼には他にもっと別の秘密が……」
「……」
エリィは沈黙し、コーラルは静かに泣き出した
詰所に着きシュンカが問い詰めると地下のほうに案内された
拷問室が並び奥に進むと血だらけで鎖に繋がれるトーマがいる、複数の殴打の痕に皮膚は電流による火傷で爛れている
食事も与えられてなかったのだろう、意識がない
あまりにも酷い有り様に三人は絶句する
「――!」
シュンカが鎖を外しコーラルが抱き上げる、エリィが即座に治癒を始める
「もう大丈夫です……トーマくん……」
治癒をして傷が癒えても無抵抗に痛めつけられたトーマは衰弱し、意識が戻らない
「ううっトー……マ……ち……」
「後の処理は私がする!彼を連れて行きなさい!」
コーラルがトーマを担ぎ宿まで運びベッドに寝かせる、エリィはトーマがいつ目覚めてもいいように体に優しい料理を作る
二人とも前の日から寝てないので疲弊しているはずだが、自分達の体調を顧みず健気に看病した
――アゥフの覚醒は「メガラニカ」の鍵となる――
――……何のこと?……っていうか誰?メガなんだって?……アゥフってオレとかゼロの事だよな、エリィに聞いたら分かるかなぁ――
目が覚めて上半身を起こすとエリィがベッドの脇で寝ている
エリィの顔にかかる髪をそっと耳にかける
――エリィの寝顔初めて見た……二人で助けてくれたんだ……はっオレ服着てない!エリィ、体を拭いてくれたんだね……オレのために……こんなにキレイに拭いてくれて……しかしコーラルがいないのは珍しい、いつもならウザいぐらい抱きついてくるんだが……話し声?……リビングにお客さん?――
――いいや、寝たふりしとこ……エリィに起こされるイベントしたいし――
「あっエリィちん寝てる?」
「彼もまだ目覚めないか」
――えっシュンカさん?……そうかシュンカさんに頼んで助けてくれたのか――
「エリィちん起こしたほうがいいソ?」
「そうだな……この二人にとって大事なことだが、まだ少し時間がある……待たせてもらおう」
――ええ~こっちにも大事なイベントがあるのに~――
「しかしあんなにボロボロだったがキレイな顔になったな」
――まあね、エリィが治癒してキレイに拭いてくれたからね――
「うん!ウチがすっぽんぽんにして全身拭いたっちゃ!」
――いや、お前が拭いたんか~い!……まあ、有難いけど――
「そうか……私も協力して拭きたかったな」
――なんでやねん!――
「う……う~ん……」
――あっ……エリィが起きちゃう――
「エリィちん、起こしちゃった?」
「あっいつのまにか寝てしまって……」
――可愛い――
「エリィ……でよかったか?実は先程、帝国からグリディア王国に宣戦布告が行われた」
「「えっ!」」
思わずトーマも飛び起きた
「トーマくん!」「トーマっち~!」
「……あっ……二人ともありがとう……ただいま」
「どわっ!あっエリィまで……」
エリィとコーラルは思いっきり抱きつき、トーマはまた意識が飛びそうになった
「シュンカさんありがとうございます、おかげで助かりました」
「いや、君に生きていて欲しいのは彼女達だけじゃないよ、私もその一人だ」
――あれっ?シュンカさんとオレそんな接点ないような……ああ、同じ能力者としてってことね……モテない男は勘違いするから気をつけてね――
「そう言ってもらえるとオレも嬉しいです!」
「そうか……嬉しいか」
「?、はい、もちろん!」
「……では本題に入るぞ、宣戦布告の後に文書が届いた……ズーク宰相の身柄を拘束したと」
「このタイミングで!どういう事ですか?」
「つまり誘拐事件は帝国の計画だった……ということだ」
「でもこの街には厳しい検問がありましたよね~特にズークさんが視察に来るからって、帝国の人はどうやって街に入り警備をかいくぐって誘拐出来るんですか?街の人じゃなかったら目立ちますよ………はっ!」
「そういう事だ」
「そんな……」
「どういうことっちゃ!」
「この街に帝国のスパ……工作員?……間者?がいる」
「ということは、宣戦布告をする予定があったから誘拐犯はなかなか要求してこなかったんですね」
「だったらズークさんとの交換条件は軍事的な要求」
「君はなかなか鋭いな、私と思考が似ている」
「ウチはまったくわからんっちゃ!」
エリィは二人の会話の邪魔にならないように聞いているが、不安な表情からはもう何かを察しているようだ
「交換条件はグリディアの秘宝、八咫鏡!」
「八咫鏡!アースで言うところの「三種の神器」!」
「ほぅ、君は詳しいな「三種の神器」とはなんだ」
「あ~……ちょっとそういうの好きで……知り合いに聞いたんです……」
――シュンカさんには、いつかバレるな……もういっそ……――
「わたしも知りたいです!」
エリィが珍しく食いつく
「そっそう?じゃあえ~と……八咫鏡と天叢雲剣そして八尺瓊勾玉という「三種の神器が」あって、一番偉い神様がその下の神様に命令したんだ」
「「中つ国」を治めよって、その時に神が持たせたのが「三種の神器」……だったかな」
「……」
エリィとシュンカは沈黙し考え込んでいる
「トーマっち!物知り~!ウチ……全然分からんソ…」
落ち込むコーラルをトーマがヨシヨシと慰める
「帝国は何かとんでもない事をしようとしているのかもしれないな……天叢雲剣は帝国にある」
「天叢雲剣は魔将校レイジンの武装具だ」
「――!、レイジン!?武装具?」
「武装具は知らないだろうな、現状ラビス全世界で「十三本の戦力」!私のこの籠手が七星剣、レイジンが天叢雲剣、過去にドイルさんがデュランダル」
――聞いた事ある名前……すべて「アースの神器」だ……いや、すべてもともと「ラビスの神器」なのか?本当は……――
「だが八咫鏡は武装具ではない……何に使うのかすら分かっていないんだ」
シュンカは腕を組み顎に手をあてる
「ラビスで三種揃うと何か凄いチカラが働くみたいな?……予想ですけどね」
「君の言うことは何故か説得力がある、だとすると八咫鏡を帝国に渡すのは危険だな」
「ですね……まあたぶんですけど「八尺瓊勾玉」はまだ手に入れて無いでしょうね」
「なぜ君に分かる?」
「オレが「アース人」だからです!」
「――!」
エリィは目を閉じて、シュンカは目を見開き、コーラルは…………笑顔だった
「やっと言ってくれたっちゃ!」
「コーラルはアース人が怖くないのか?」
「アース人は怖いかも……」
「オレは怖くないのか?」
「?、ぜんぜん!」
「アース人なのに?」
「トーマっちは、トーマっち!」
「……そうか……ありがとう……嬉しいよコーラル」
「うん!」
シュンカはそんな二人を微笑ましく眺め、エリィは大粒の涙を流していた
トーマは奇跡的にラビスに来れたこと、帝国には行ったこともないこと、アースに帰るつもりは無いこと
を伝えた
「ますます君を知りたくなったよ」
「トーマっち!……ふふ~ん!」
シュンカに余計に気に入られ、コーラルはやたらと上機嫌、エリィは泣きすぎて疲れてた
トーマが巻き込まれている事もあり二人には説明しておいたほうがいいと判断したのだ
ズーク宰相が誘拐もしくは殺害されているかもしれないこと、誘拐されている場合は犯人から何らかの要求があるはずだが一日経ってもそれがないこと
出入り口は夜中でも監視があるから侵入することは難しい
極秘でこの街に来たズーク宰相をこの街で誘拐もしくは殺害するのは突発的な犯行の可能性が高いこと
「犯行声明がない限りズークと揉めた彼が疑われるのは仕方がないのかもしれないな」
「トーマっちはその時ウチらといたっちゃ!」
「そうです!それなのにどうして……」
「だからじゃないのか……身内の証言は信頼度が低い……君達もグルで庇っているとなると同じ目に遭う……おそらく黙秘しているか、彼には他にもっと別の秘密が……」
「……」
エリィは沈黙し、コーラルは静かに泣き出した
詰所に着きシュンカが問い詰めると地下のほうに案内された
拷問室が並び奥に進むと血だらけで鎖に繋がれるトーマがいる、複数の殴打の痕に皮膚は電流による火傷で爛れている
食事も与えられてなかったのだろう、意識がない
あまりにも酷い有り様に三人は絶句する
「――!」
シュンカが鎖を外しコーラルが抱き上げる、エリィが即座に治癒を始める
「もう大丈夫です……トーマくん……」
治癒をして傷が癒えても無抵抗に痛めつけられたトーマは衰弱し、意識が戻らない
「ううっトー……マ……ち……」
「後の処理は私がする!彼を連れて行きなさい!」
コーラルがトーマを担ぎ宿まで運びベッドに寝かせる、エリィはトーマがいつ目覚めてもいいように体に優しい料理を作る
二人とも前の日から寝てないので疲弊しているはずだが、自分達の体調を顧みず健気に看病した
――アゥフの覚醒は「メガラニカ」の鍵となる――
――……何のこと?……っていうか誰?メガなんだって?……アゥフってオレとかゼロの事だよな、エリィに聞いたら分かるかなぁ――
目が覚めて上半身を起こすとエリィがベッドの脇で寝ている
エリィの顔にかかる髪をそっと耳にかける
――エリィの寝顔初めて見た……二人で助けてくれたんだ……はっオレ服着てない!エリィ、体を拭いてくれたんだね……オレのために……こんなにキレイに拭いてくれて……しかしコーラルがいないのは珍しい、いつもならウザいぐらい抱きついてくるんだが……話し声?……リビングにお客さん?――
――いいや、寝たふりしとこ……エリィに起こされるイベントしたいし――
「あっエリィちん寝てる?」
「彼もまだ目覚めないか」
――えっシュンカさん?……そうかシュンカさんに頼んで助けてくれたのか――
「エリィちん起こしたほうがいいソ?」
「そうだな……この二人にとって大事なことだが、まだ少し時間がある……待たせてもらおう」
――ええ~こっちにも大事なイベントがあるのに~――
「しかしあんなにボロボロだったがキレイな顔になったな」
――まあね、エリィが治癒してキレイに拭いてくれたからね――
「うん!ウチがすっぽんぽんにして全身拭いたっちゃ!」
――いや、お前が拭いたんか~い!……まあ、有難いけど――
「そうか……私も協力して拭きたかったな」
――なんでやねん!――
「う……う~ん……」
――あっ……エリィが起きちゃう――
「エリィちん、起こしちゃった?」
「あっいつのまにか寝てしまって……」
――可愛い――
「エリィ……でよかったか?実は先程、帝国からグリディア王国に宣戦布告が行われた」
「「えっ!」」
思わずトーマも飛び起きた
「トーマくん!」「トーマっち~!」
「……あっ……二人ともありがとう……ただいま」
「どわっ!あっエリィまで……」
エリィとコーラルは思いっきり抱きつき、トーマはまた意識が飛びそうになった
「シュンカさんありがとうございます、おかげで助かりました」
「いや、君に生きていて欲しいのは彼女達だけじゃないよ、私もその一人だ」
――あれっ?シュンカさんとオレそんな接点ないような……ああ、同じ能力者としてってことね……モテない男は勘違いするから気をつけてね――
「そう言ってもらえるとオレも嬉しいです!」
「そうか……嬉しいか」
「?、はい、もちろん!」
「……では本題に入るぞ、宣戦布告の後に文書が届いた……ズーク宰相の身柄を拘束したと」
「このタイミングで!どういう事ですか?」
「つまり誘拐事件は帝国の計画だった……ということだ」
「でもこの街には厳しい検問がありましたよね~特にズークさんが視察に来るからって、帝国の人はどうやって街に入り警備をかいくぐって誘拐出来るんですか?街の人じゃなかったら目立ちますよ………はっ!」
「そういう事だ」
「そんな……」
「どういうことっちゃ!」
「この街に帝国のスパ……工作員?……間者?がいる」
「ということは、宣戦布告をする予定があったから誘拐犯はなかなか要求してこなかったんですね」
「だったらズークさんとの交換条件は軍事的な要求」
「君はなかなか鋭いな、私と思考が似ている」
「ウチはまったくわからんっちゃ!」
エリィは二人の会話の邪魔にならないように聞いているが、不安な表情からはもう何かを察しているようだ
「交換条件はグリディアの秘宝、八咫鏡!」
「八咫鏡!アースで言うところの「三種の神器」!」
「ほぅ、君は詳しいな「三種の神器」とはなんだ」
「あ~……ちょっとそういうの好きで……知り合いに聞いたんです……」
――シュンカさんには、いつかバレるな……もういっそ……――
「わたしも知りたいです!」
エリィが珍しく食いつく
「そっそう?じゃあえ~と……八咫鏡と天叢雲剣そして八尺瓊勾玉という「三種の神器が」あって、一番偉い神様がその下の神様に命令したんだ」
「「中つ国」を治めよって、その時に神が持たせたのが「三種の神器」……だったかな」
「……」
エリィとシュンカは沈黙し考え込んでいる
「トーマっち!物知り~!ウチ……全然分からんソ…」
落ち込むコーラルをトーマがヨシヨシと慰める
「帝国は何かとんでもない事をしようとしているのかもしれないな……天叢雲剣は帝国にある」
「天叢雲剣は魔将校レイジンの武装具だ」
「――!、レイジン!?武装具?」
「武装具は知らないだろうな、現状ラビス全世界で「十三本の戦力」!私のこの籠手が七星剣、レイジンが天叢雲剣、過去にドイルさんがデュランダル」
――聞いた事ある名前……すべて「アースの神器」だ……いや、すべてもともと「ラビスの神器」なのか?本当は……――
「だが八咫鏡は武装具ではない……何に使うのかすら分かっていないんだ」
シュンカは腕を組み顎に手をあてる
「ラビスで三種揃うと何か凄いチカラが働くみたいな?……予想ですけどね」
「君の言うことは何故か説得力がある、だとすると八咫鏡を帝国に渡すのは危険だな」
「ですね……まあたぶんですけど「八尺瓊勾玉」はまだ手に入れて無いでしょうね」
「なぜ君に分かる?」
「オレが「アース人」だからです!」
「――!」
エリィは目を閉じて、シュンカは目を見開き、コーラルは…………笑顔だった
「やっと言ってくれたっちゃ!」
「コーラルはアース人が怖くないのか?」
「アース人は怖いかも……」
「オレは怖くないのか?」
「?、ぜんぜん!」
「アース人なのに?」
「トーマっちは、トーマっち!」
「……そうか……ありがとう……嬉しいよコーラル」
「うん!」
シュンカはそんな二人を微笑ましく眺め、エリィは大粒の涙を流していた
トーマは奇跡的にラビスに来れたこと、帝国には行ったこともないこと、アースに帰るつもりは無いこと
を伝えた
「ますます君を知りたくなったよ」
「トーマっち!……ふふ~ん!」
シュンカに余計に気に入られ、コーラルはやたらと上機嫌、エリィは泣きすぎて疲れてた
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
18
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる