28 / 40
28 姉妹
しおりを挟む「リリーシャ様、本日到着分のお手紙でございます」
「ありがとう、そこに置いておいていいわ」
女官が一礼して机の上に手紙を置いていく。
リリーシャはその手紙を確認して、振り分けていくのが毎日の仕事だ。
ふと、手を止めた。
「これは・・・」
差出人はミーナリア、義妹だ。
父親の大事な後妻が産んだ義妹は、とてもかわいらしい容姿をしていた。
小さな頃は仲良くできていたと思う。
いつからだろう、リリーシャの持ち物をうらやましがり、片端からうばっていくようになったのは。
いつ頃からだろう、派手なメイクをして、ドレスも派手な色合いのものを着るようになったのは。
あの子はいつからか、語尾を伸ばして媚びるような話し方をするようになった。
「ミーナ、お食事の時におしゃべりをしないのよ」
「お勉強の時間は先生のお話を座って聞きましょうね」
リリーシャが注意するたびに、癇癪を起して父と義母に泣きつくため、反対に義妹をいじめたと叱責されるのだった。
やがて、ミーナリアには何の教育もされず、ただ父と義母から可愛がられるだけの存在になってしまった。
学園の試験に落ちた時、父はリリーシャにギルバート殿下との婚約をミーナリアに譲るよう言われた。
「何を言ってらっしゃるのか、意味が分かりませんわ、お父様」
「何故わからないんだ、ミーナは学園にも行けず、このまま社交界には出られないのだぞ?
良い縁談は来ないだろう。
あの子の幸せのためにギルバート王子殿下と結婚させて、何不自由ない生活をさせてやらねば」
「そうよ、リリーシャさん、貴女は優秀ですし、もっと他の縁談もたくさんくるでしょう?
あの子に譲ってあげて、お願い」
父親も義母もめちゃくちゃだ。
ミーナリアの事を本当に心配しているようには見えない。
やがて、婚約者のギルバート殿下が友好国であるエシャール国に留学することになった。
連日父親がギルバート殿下のところにミーナリアを連れていき、無理やり会わせている。
ミーナリアも礼儀やマナーを知らないため、ギルバート殿下の心労は積もるばかり。
義妹を溺愛する父親は、フェイト公爵としての仕事はかなり有能で、幅広く商会を運営している。
他国との交流も積極的で、国王も無視できない力を持っているのだ。
その頃にはリリーシャの自宅での扱われ方がぞんざいになり、他の国への縁談まで口に出されるようになってきたため、王妃教育として王宮内に預かられることになっていた。
「このままでは駄目だ、公爵に押し切られてしまう」
「どうする、何か案があるのか?」
「実は、エシャール国に留学してみないか、と打診がありまして」
「あぁ、あそこの第2王子からか?」
「はい、我が国の山の資源を協力して他国に輸出できるようにしたいと。
あちらの技術力は素晴らしいですから・・・。
留学して、エシャール国の技術を生かせるわが国の資源をりようして、友好を深められるかと」
「うむ、エシャール国王からも以前そのような提案があったな。
それと今回の問題はどうかかわってくるんだ?」
「おそらく、私の留学にはミーナリア嬢を無理やりつけてくるでしょう」
「だろうな、あちらの国に連れていき、外堀から埋めようとしてるんだろう。
立太子するまで他国に婚約者を連れてはいかんからな」
「私はアレクセイ殿に協力を願い、なるべくミーナリア嬢とは距離を取ります。
その間にこちらでリリーシャの足元を万全にしてほしいのです。
あわよくば、公爵の力が少しでも削げれば・・・」
そんな密談をしての留学だった。
ギルバートからは定期的に手紙が届く。
相変わらずのミーナリア、他国でも同じようなことをして・・・、どうしたらあの子を救ってあげられるだろう・・・、なんて無力な姉だろうか・・・。
そんなころ、ギルバートからの手紙の内容が変わってきた。
・ミーナリアの周りにエシャール国の令嬢たちが一緒にいること。
・自分やアレクセイ殿下とはほとんど会うことがなくなったこと。
「どういうことなのかしら?」
ギルバートはミーナリアとかかわりを持たないようにしているため、断片的にしかわからない。
ミーナリアからの手紙はそこに届いた。
少し震える手でペパーナイフを取り、手紙を開封する。
ふわっと花の香りがした。
「香水じゃないのね」
あの子は浴びるように香水をかけていたわ・・。
少しだけつけなさい、と教えたら、クンクンしながら私のにおいをかいでいたわね。
手紙を読み終わると、リリーシャは笑顔で泣いていた。
「よかった、あの子が楽しそうで・・・」
リリーシャは侍女を呼び、手紙の返事を書いた。
「うふふ」
~ミーナリアからの手紙~
リリーシャ=フェイト公爵令嬢様
お久しぶりです。
私はミーナリアです。
今、エシャール国にいます。
こちらの学園に通っています。
セリーヌやクラスのみんなとお昼を一緒に食べました。
皆食べるのが早かったです。
マリアンヌ様、やイザベラ様達が勉強を教えてくれます。
食事もマナーを習って食べています。
肩が痛いです。
セリーヌは楽しくて、いろんな人に会わせてくれました。
マリアンヌ様、、イザベラ様は必殺技が使えます。
お姉さまもきっとできると皆いっていました。
私もできるようになりたいです。
勉強が楽しくなりました。
字が上手になったので初めて手紙を書きました。
一番にリリーシャ様に書きたかったからです。
今まで我がままばっかり言ってごめんなさい。
もし許してもらえるなら、またおねえさまって呼んでもいいですか?
良かったらお返事をもらえますか?
ミーナリアー=フェイト
0
あなたにおすすめの小説
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
婚約破棄された公爵令嬢と、処方箋を無視する天才薬師 ――正しい医療は、二人で始めます
ふわふわ
恋愛
「その医療は、本当に正しいと言えますか?」
医療体制への疑問を口にしたことで、
公爵令嬢ミーシャ・ゲートは、
医会の頂点に立つ婚約者ウッド・マウント公爵から
一方的に婚約を破棄される。
――素人の戯言。
――体制批判は不敬。
そう断じられ、
“医療を否定した危険な令嬢”として社交界からも排斥されたミーシャは、
それでも引かなかった。
ならば私は、正しい医療を制度として作る。
一方その頃、国営薬局に現れた謎の新人薬師・ギ・メイ。
彼女は転生者であり、前世の知識を持つ薬師だった。
画一的な万能薬が当然とされる現場で、
彼女は処方箋に書かれたわずかな情報から、
最適な調剤を次々と生み出していく。
「決められた万能薬を使わず、
問題が起きたら、どうするつもりだ?」
そう問われても、彼女は即答する。
「私、失敗しませんから」
(……一度言ってみたかったのよね。このドラマの台詞)
結果は明らかだった。
患者は回復し、評判は広がる。
だが――
制度は、個人の“正
制度を変えようとする令嬢。
現場で結果を出し続ける薬師。
医師、薬局、医会、王宮。
それぞれの立場と正義が衝突する中、
医療改革はやがて「裁き」の局面へと進んでいく。
これは、
転生者の知識で無双するだけでは終わらない医療改革ファンタジー。
正しさとは何か。
責任は誰が負うべきか。
最後に裁かれるのは――
人か、制度か。
異国には嫁に行きたくないので、空を渡ることにしました
七宮叶歌
恋愛
政略結婚が決まった王女・メヌエッタは、決められた未来に従うだけの人生を拒んで王宮を飛び出した。逃げ込んだのは、侯爵令息・アルフレッドの操る飛空船だった。
ところが逃亡の途中、「王女は事故死した」「アルフレッドは指名手配」という報道が流れ、二人は一転して国中から追われる立場になる。更にアルフレッドの父から提示された逃亡の手助けの条件は、逃げ切ることが出来たなら、アルフレッドと『契約結婚』するというものだった。
結婚から逃げてきたはずなのに、行きついた先もまた結婚。けれど、空の旅の中で触れ合う彼の優しさや弱さに、メヌエッタの心は少しずつ揺れ始める。
追手、暗殺の影、契約から始まる恋――。
二人は無事に逃げ切り、幸せを掴むことができるのか。ちょっぴりコミカルで、ときどき切ない空の逃避行恋愛ストーリーです。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる