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17 公爵家にて
しおりを挟む「さて、メルダさん、もう一度聞きますね、貴女の立場は?」
「・・・」
「単なる居候ですよ」
グリーが答えた。
「そんな、居候だなんて・・・」
「そうですよ、メルダ様は公爵家の為に一生懸命働いておられて」
「お前に発言を許した覚えはないが?」
「!!」
フリッツの冷たい声にハントは黙った。
その時、もう一人の人物がサロンに入ってきた。
「「!!」」
その人物を見たメルダとハントの顔は青ざめた。
「久しいな、セバス」
「はい、フリッツ様も大きく成長されましたな」
「ふふ」
「グリー、お前も随分と成長したようだな」
「はい」
領地に追いやられていたセバスティアンだ。
「さて、ハント、お前は旦那様からの命令だと言って私を領地に行かせたが、旦那様からはそのような指示をしていない、と伺った。どういうことか説明してもらおう」
「いや、あの」
「その後も、旦那様の容態を伺う手紙の返事は まだ領地にいるように だったな。
旦那様は別邸から手紙はおろか、誰かと面会もできなかったそうだが、お前は誰の指示であのような返事をしたのだ?」
セバスティアンの追及にハントは大量の汗をかき、目をきょろきょろさせている。
「その・・・」
「私からの手紙も、シャーロットあての手紙はほとんど届いていない。それもお前の仕業だな」
「いえ、あの・・・」
「ほかの使用人たちからも聞き取りを済ませた。手紙の確認はお前がすべて引き受けていたそうだな。
抜き取った手紙はどうした?」
「・・・メルダ様に・・・」
「全部渡していたのか?」
「・・・はい」
他の使用人からの聞き取りをした、と聞いてからのハントは、観念したように正直に話した。
「で、メルダさん、手紙はどうしたんですか?」
「知らないわ、ハントが勝手にやったのよ!」
「何だと?お前がお嬢様に来る手紙は全部よこせと言ったんじゃないか!」
「知らないって言ってるじゃない!」
二人が言い争う様子に、セバスティアンがため息をついた。
「話になりませんな、フリッツ様、執務室とメルダさんの部屋を捜索いたしましょう」
「ベッティの部屋も、ですよ」
「では、フリッツ様はメルダさんの部屋をマリーと、ベッティさんの部屋はサラとグリーに任せましょう。私はフィルと執務室を確認いたします」
セバスティアンの提案にうなずき、それぞれ動き出した。
「やめて!勝手なことしないでよ!」
メルダが叫んだが、昔からいる使用人たちが素早く拘束した。
メルダの部屋には、エマーリアの部屋から持ち出したと思われる宝飾品や衣類が詰め込まれていた。
「奥様が亡くなられてから、奥様のお部屋は封印していたのですが・・・」
マリーが悔しそうに確認していく。
ベッティの部屋も同じようにシャーロットの部屋を確認したが、
「こんなにため込んで、あの女!」
「口が悪くなったぞ、サラ」
「何言ってるんですか!これも、これも全部お嬢様の!」
「すごいな、盗賊のアジトみたいだ」
「あ、多分これは婚約者様からの贈り物ですね」
「なんでわかるんだ?」
「だって、お嬢様の好きなデザインですし、色が、婚約者様の瞳の色なのでしょう?」
「あれ?なんで知ってるんだ?」
「お嬢様とこっそりお話させていただいていたんです。その時に・・・、あまり頻繁ではありませんでしたが」
「そうか」
執務室ではセバスティアンが資料を確認していた。
「めちゃくちゃだな、すべてが適当なうえに、横領だな、これは」
「セバスティアン様、これもお願いします」
「ああ、全く、領地に追いやられている間に、公爵家を好きにされてしまったな」
「すみません、お嬢様をお守りするくらいしかできなくて・・・」
「じゅうぶんだよ、今日からは一緒に公爵家を支えよう」
「さて、証拠は十分にあった、何か言うことはあるか?」
「・・・」
「お前たち母娘おやこは騎士団で聴取の後、しかるべきところへ送ってやる」
「しかるべきところ?」
「楽しみにしていろ」
「ハント、お前も一緒に送ってやろう」
「え?」
「3人で楽しく暮らせ」
メルダとハントは騎士団に引き渡された。
「あとは、ベッティが帰るのを待つだけだな」
「フリッツ様!お嬢様が!!」
その時、ジャンが急いで駆け込んできた。
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