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第3話 「弟、距離感ゼロ」
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ショッピングモールの食品売り場。
さっき偶然出会った星宮ひなたちゃんと弟のタケルくんは、俺をカート係に任命し、すっかり買い物モードだ。
「ねえ翔真さん、この味噌って高い方がうまいの?」
「いや、必ずしもそうとは限らないけど……俺は合わせ味噌派かな」
「おお、通っぽい!」
タケルくんが目を輝かせて俺を見上げる。
その表情は、初対面の警戒感など皆無で、まるで昔から知っているお兄ちゃんに話しかけるみたいだ。
「タケル、翔真さんに失礼なこと言わないの」
「えー? でも翔真さん、優しそうだし、全然怒らなそうだよ」
「……まあ、そんな怒らないけど」
思わず苦笑いすると、タケルくんは「ほらね!」とひなたちゃんに勝ち誇った顔を向けた。
◆
そのまま三人で売り場を回っていると、タケルくんが俺に質問を投げてきた。
「翔真さんは何の料理が好きなの?」
「俺? そうだな……オムライスかな。ふわとろのやつ」
「ふーん。ひなたのオムライスはうまいよ」
「ちょっとタケル! 余計なこと言わないの!」
「別にいいじゃん。ひなたの料理、俺好きだし」
横で頬を赤くするひなたちゃんを見ながら、俺は内心「そうなのか……」と驚いていた。
ギャル=インスタント食品かコンビニ飯、という勝手なイメージが、またひとつ崩れる。
「ひなたちゃんは?」
「え?」
「得意な料理。オムライス以外だと」
「……ハンバーグ、かな」
「それも好き」
正直に答えると、ひなたちゃんは目を逸らし、わざとらしく棚の品を手に取った。
◆
買い物を終え、モールの出口まで歩く。
夕方の空はオレンジ色で、三人の影が長く伸びていた。
「じゃあ俺はここで」
そう言うと、ひなたちゃんが少し驚いた顔をした。
「え、帰るの?」
「うん。買い物も済んだし」
するとタケルくんが、カートから飛び出す勢いで俺の腕を掴んだ。
「うち来なよ! ひなたがオムライス作ってあげるから!」
「いやいや、それは悪いし……」
「ダメ?」
あまりの真っ直ぐな目に心が揺れるが、ここで家に上がり込むのはさすがに早すぎる。
「……今日はやめとく。また今度な」
「えー!」
タケルくんは駄々をこねて、足をバタバタさせる。
困った俺を見るひなたちゃんが、ふとため息をついて言った。
「……じゃあ、連絡先交換しときなよ。そうすればまた遊べるでしょ」
「マジで!? やった!」
◆
スマホを取り出し、ひなたちゃんとQRコードで交換する。
画面に彼女の名前が表示される瞬間、なぜか心臓がドキッと跳ねた。
「……はい、これで満足?」
「うん!」とタケルくんは満面の笑み。
その直後、ひなたちゃんがタケルくんの耳元に顔を寄せ、何やらコソコソと囁いた。
「……ほんと?」とタケルくんが小声で聞き返し、ひなたちゃんは軽く頷く。
すると、タケルくんは急に満足げな顔になり、
「じゃあまたね! 翔真さん!」と手を振った。
何を吹き込まれたのかは分からない。
でもその時、ひなたちゃんがほんの一瞬だけ見せた、いたずらっぽい笑みが妙に気になった。
そして俺は、もうすでに次に会う日のことを考えてしまっている自分に気づいていた。
さっき偶然出会った星宮ひなたちゃんと弟のタケルくんは、俺をカート係に任命し、すっかり買い物モードだ。
「ねえ翔真さん、この味噌って高い方がうまいの?」
「いや、必ずしもそうとは限らないけど……俺は合わせ味噌派かな」
「おお、通っぽい!」
タケルくんが目を輝かせて俺を見上げる。
その表情は、初対面の警戒感など皆無で、まるで昔から知っているお兄ちゃんに話しかけるみたいだ。
「タケル、翔真さんに失礼なこと言わないの」
「えー? でも翔真さん、優しそうだし、全然怒らなそうだよ」
「……まあ、そんな怒らないけど」
思わず苦笑いすると、タケルくんは「ほらね!」とひなたちゃんに勝ち誇った顔を向けた。
◆
そのまま三人で売り場を回っていると、タケルくんが俺に質問を投げてきた。
「翔真さんは何の料理が好きなの?」
「俺? そうだな……オムライスかな。ふわとろのやつ」
「ふーん。ひなたのオムライスはうまいよ」
「ちょっとタケル! 余計なこと言わないの!」
「別にいいじゃん。ひなたの料理、俺好きだし」
横で頬を赤くするひなたちゃんを見ながら、俺は内心「そうなのか……」と驚いていた。
ギャル=インスタント食品かコンビニ飯、という勝手なイメージが、またひとつ崩れる。
「ひなたちゃんは?」
「え?」
「得意な料理。オムライス以外だと」
「……ハンバーグ、かな」
「それも好き」
正直に答えると、ひなたちゃんは目を逸らし、わざとらしく棚の品を手に取った。
◆
買い物を終え、モールの出口まで歩く。
夕方の空はオレンジ色で、三人の影が長く伸びていた。
「じゃあ俺はここで」
そう言うと、ひなたちゃんが少し驚いた顔をした。
「え、帰るの?」
「うん。買い物も済んだし」
するとタケルくんが、カートから飛び出す勢いで俺の腕を掴んだ。
「うち来なよ! ひなたがオムライス作ってあげるから!」
「いやいや、それは悪いし……」
「ダメ?」
あまりの真っ直ぐな目に心が揺れるが、ここで家に上がり込むのはさすがに早すぎる。
「……今日はやめとく。また今度な」
「えー!」
タケルくんは駄々をこねて、足をバタバタさせる。
困った俺を見るひなたちゃんが、ふとため息をついて言った。
「……じゃあ、連絡先交換しときなよ。そうすればまた遊べるでしょ」
「マジで!? やった!」
◆
スマホを取り出し、ひなたちゃんとQRコードで交換する。
画面に彼女の名前が表示される瞬間、なぜか心臓がドキッと跳ねた。
「……はい、これで満足?」
「うん!」とタケルくんは満面の笑み。
その直後、ひなたちゃんがタケルくんの耳元に顔を寄せ、何やらコソコソと囁いた。
「……ほんと?」とタケルくんが小声で聞き返し、ひなたちゃんは軽く頷く。
すると、タケルくんは急に満足げな顔になり、
「じゃあまたね! 翔真さん!」と手を振った。
何を吹き込まれたのかは分からない。
でもその時、ひなたちゃんがほんの一瞬だけ見せた、いたずらっぽい笑みが妙に気になった。
そして俺は、もうすでに次に会う日のことを考えてしまっている自分に気づいていた。
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