２５歳の俺とＪＫギャルの恋は、社会的にアウトですか？

第６０話 「境界線の向こう側」

　胸の上に乗る重みで、俺ははっと目を覚ました。
　薄暗い部屋の中、障子の隙間から差し込む月明かりだけが頼りだ。

「……ひなた……？」

　視線を落とすと、そこにいたのは浴衣を少し乱したひなた。
　頬を真っ赤に染め、潤んだ瞳でこちらを見つめている。
　その手は、俺の胸の上に重ねられ、胸元までじんわりと熱が伝わってきた。

　柔らかさと温もりに理性が吹き飛びそうになる。
　俺は慌てて体を起こそうとしたが、ひなたの指先が胸に触れ、かすかな声で囁いた。

「……翔真さん、キス……したい……」

　その言葉は、か細いのに胸の奥まで響いた。
　ずっと我慢していた何かが、音を立てて崩れていく感覚。

　俺はひなたの頬にそっと手を添えた。
「……本当に、いいのか」

　彼女は小さく頷き、目を閉じた。
　その瞬間、抑えていた感情が一気に溢れ出した。

　唇が触れた瞬間は、確かに“軽いキス”のつもりだった。
　けれど、ひなたの吐息が、腕の中の震えが、すべてを壊していく。
　触れるだけだった唇は、いつのまにか熱を帯び、互いに引き寄せ合い、深く、深く溶け合っていった。

　時間の感覚がなくなる。
　ひなたの手が俺の背に回り、俺の手が彼女の髪を撫でる。
　その温もりだけが現実で、他はすべて夢のように遠のいていった。

「……翔真さん……」
　彼女の声はかすれて、胸の奥にしみこんでいく。

　どれくらいそうしていたのか分からない。
　ただ、月明かりの下で二人の影が一つになっていた。

◆

　やがて、障子の向こうに淡い朝の光が差し込む。
　鳥の声と共に、新しい一日が始まろうとしていた。

　俺は目を開ける。
　隣で寝息を立てているひなたの髪が、頬にふわりと触れた。
　昨夜のことが現実だったのか、夢だったのか――それを確かめるように、指先でそっと彼女の手を握る。

　ひなたが、ゆっくりと目を開けた。
　視線が合った瞬間、二人して頬を赤くする。

「おはよう……翔真さん」
「……おはよう、ひなた」

　それだけで胸がいっぱいになった。
　昨夜の熱がまだ残るような視線の中で、朝の光だけがやさしく降り注いでいた。