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第一章〜商店街は妖怪騒ぎの巻〜
その⑮
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ケイドロ。
あるいはドロケイとも言う。
ルールはほとんど鬼ごっこと同じだが、若干違う部分がある。
警察(追う側)と泥棒(逃げる側)に分かれ、警察は泥棒を捕まえると牢屋に入れることができる。(さすがに本物の牢屋じゃないよ!)
牢屋に入れられた泥棒は、まだ捕まっていない仲間の泥棒に触れられると再び逃げることができる。
この遊びも昔はよくやっていた。
が。
まさか久しぶりにやるケイドロが鬼と一緒とは、思いもしなかった。
ケイドロ…鬼ごっこ…鬼と…鬼と鬼ごっこ…
「相手が考え事している間にとっととっととっとと逃げるんよー!」
「さっ、ささささせないわよっ!」
いけないいけない、集中しなくては。
…しかしあの猫又ときたら、運良く正気に戻ったからよかったものの、本当に危なかった。
猫又とはその名の通り猫の妖怪で、その愛らしい魅力で人を惑わせ、害をなす存在だ。だいたいは。
ただでさえ猫好きな自分が誘惑に負けていたら、寿命が尽きるまで撫でていたかもしれない。
くそう、かわいいからって調子にのりやがって!
…それより、その場に置いてきてしまったが、みくじちゃんは大丈夫だろうか?
追いかけてこないということは今もあそこで猫又を撫で続けているのだろう。
あとで様子を見に行かなければかな…
ふと、前を見る。
いない。
あれっ、どこに行ったんだと上を見る。
小鬼は看板や屋根の上をぴょんぴょんと移動していた。
なぎさ商店街は天井のあるアーケード商店街ではないため、上へも逃げることが可能はであった。
普通の人間にとってはちょっと(大分)難しい(無理がある)が。
本当に集中しないとやばいかもしれない。
小鬼は余裕そうにはしゃぐ。
「鬼さんこちらー!手の鳴る方へー!」
「あなたも鬼でしょうが!」
むすびちゃん大正解!
みくじちゃんはまだ猫又を撫で続けていた。
「かわいい~~」
「にゃんにゃん。ところでお嬢ちゃん、さっきの子は知り合いかにゃん?」
「そうよ~親戚で幼馴染なんだ~」
「へーそうなのかにゃん」
悠長に二つに分かれた尻尾をゆらゆら揺らし、二つの目で見つめながら問う。
「じゃあお互いのことを何でも知ってるってことなのかにゃん」
「そうね~」
猫又はにやりと笑った。
この人間はちょろい。
この油断している状態なら、どんな情報でも吐いてくれるだろう。
「ちょっと気になるにゃん。あの子のこと色々教えてほしいにゃん」
「え~むっちゃんのことぉ~?」
「そうにゃん、例えば弱点とか…」
「教える訳ないじゃない。あなたなんかに」
先ほどまでの会話からはあり得ないと思ってしまう、別人のような声色。
ただならぬ雰囲気。
さっきの腑抜けた態度はどこへやら、いつのまにか撫でる手は痛く強く締め付ける、謎の真っ黒な影に体を拘束されていた。
「にゃ…」
「なんであなたなんかに貴重な情報を提供しないといけないの?どうして?お前らなんかにお前らなんかに、お前ら妖怪なんかに」
「お前らごときに人間が敵うと思わないで。生意気な」
神聖なみくじちゃんの身体に似合わぬ、次々と吐き出される恨みつらみの呪詛。
微笑みの一つすら浮かべぬその顔は怒りすらも読み取れぬ、無表情であった。
この人間が本性を表すまで、この闇に気づくことができなかった。
もっと早く、
もっと早く気づいていれば。
恐怖。
言葉が出てこない。
影は柔らかな体をどんどん強く締め付けてくる。
潰される。
「に、」
「あなたのことは可愛いと思うし、むっちゃんの前だから愛想よくしてたけど、だからといって友好的な関係を築きたいかと言われたら、それは絶対にあり得ないな」
真っ黒な影がさらに黒く、濃くなっていく。
「消えて」
「この世から一体も残らず消えろ」
「妖怪なんて、物の怪なんて大嫌いよ」
意識が薄れていく。
やがて猫又は為すすべもないまま全身を影に覆われ―
目の前が真っ暗になった。
ケイドロ。
あるいはドロケイとも言う。
ルールはほとんど鬼ごっこと同じだが、若干違う部分がある。
警察(追う側)と泥棒(逃げる側)に分かれ、警察は泥棒を捕まえると牢屋に入れることができる。(さすがに本物の牢屋じゃないよ!)
牢屋に入れられた泥棒は、まだ捕まっていない仲間の泥棒に触れられると再び逃げることができる。
この遊びも昔はよくやっていた。
が。
まさか久しぶりにやるケイドロが鬼と一緒とは、思いもしなかった。
ケイドロ…鬼ごっこ…鬼と…鬼と鬼ごっこ…
「相手が考え事している間にとっととっととっとと逃げるんよー!」
「さっ、ささささせないわよっ!」
いけないいけない、集中しなくては。
…しかしあの猫又ときたら、運良く正気に戻ったからよかったものの、本当に危なかった。
猫又とはその名の通り猫の妖怪で、その愛らしい魅力で人を惑わせ、害をなす存在だ。だいたいは。
ただでさえ猫好きな自分が誘惑に負けていたら、寿命が尽きるまで撫でていたかもしれない。
くそう、かわいいからって調子にのりやがって!
…それより、その場に置いてきてしまったが、みくじちゃんは大丈夫だろうか?
追いかけてこないということは今もあそこで猫又を撫で続けているのだろう。
あとで様子を見に行かなければかな…
ふと、前を見る。
いない。
あれっ、どこに行ったんだと上を見る。
小鬼は看板や屋根の上をぴょんぴょんと移動していた。
なぎさ商店街は天井のあるアーケード商店街ではないため、上へも逃げることが可能はであった。
普通の人間にとってはちょっと(大分)難しい(無理がある)が。
本当に集中しないとやばいかもしれない。
小鬼は余裕そうにはしゃぐ。
「鬼さんこちらー!手の鳴る方へー!」
「あなたも鬼でしょうが!」
むすびちゃん大正解!
みくじちゃんはまだ猫又を撫で続けていた。
「かわいい~~」
「にゃんにゃん。ところでお嬢ちゃん、さっきの子は知り合いかにゃん?」
「そうよ~親戚で幼馴染なんだ~」
「へーそうなのかにゃん」
悠長に二つに分かれた尻尾をゆらゆら揺らし、二つの目で見つめながら問う。
「じゃあお互いのことを何でも知ってるってことなのかにゃん」
「そうね~」
猫又はにやりと笑った。
この人間はちょろい。
この油断している状態なら、どんな情報でも吐いてくれるだろう。
「ちょっと気になるにゃん。あの子のこと色々教えてほしいにゃん」
「え~むっちゃんのことぉ~?」
「そうにゃん、例えば弱点とか…」
「教える訳ないじゃない。あなたなんかに」
先ほどまでの会話からはあり得ないと思ってしまう、別人のような声色。
ただならぬ雰囲気。
さっきの腑抜けた態度はどこへやら、いつのまにか撫でる手は痛く強く締め付ける、謎の真っ黒な影に体を拘束されていた。
「にゃ…」
「なんであなたなんかに貴重な情報を提供しないといけないの?どうして?お前らなんかにお前らなんかに、お前ら妖怪なんかに」
「お前らごときに人間が敵うと思わないで。生意気な」
神聖なみくじちゃんの身体に似合わぬ、次々と吐き出される恨みつらみの呪詛。
微笑みの一つすら浮かべぬその顔は怒りすらも読み取れぬ、無表情であった。
この人間が本性を表すまで、この闇に気づくことができなかった。
もっと早く、
もっと早く気づいていれば。
恐怖。
言葉が出てこない。
影は柔らかな体をどんどん強く締め付けてくる。
潰される。
「に、」
「あなたのことは可愛いと思うし、むっちゃんの前だから愛想よくしてたけど、だからといって友好的な関係を築きたいかと言われたら、それは絶対にあり得ないな」
真っ黒な影がさらに黒く、濃くなっていく。
「消えて」
「この世から一体も残らず消えろ」
「妖怪なんて、物の怪なんて大嫌いよ」
意識が薄れていく。
やがて猫又は為すすべもないまま全身を影に覆われ―
目の前が真っ暗になった。
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