氷の貴公子って呼ばれてるそうですが、ただのコミュ障です。

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暫く歩くと月下光草の群生地にたどり着いた。
まだ完全に日が落ちていないので光ってはいない。

光ってない状態の時は花弁を閉じて下を向いている。

そんな状態も愛らしくてついつい地べたにうつ伏せになって観察してしまう。

月下光草には毒がない。即ち薬にもならない。
そして香りも無ければ色も白、含有魔力量も少ない。
だから、完全なる鑑賞用だ。

昔は光る原理とか栽培実験とかでむしり取られていたが、生息数が激減したせいで今は勝手に採取すると罪に問われる。

「まだ光らないな」

寝そべる僕の横にレオ様が寝転んできた。恋人の距離感！！！！嬉しくて恥ずかしくてドキドキしていると、とある事に気がつく。

素手で草摘みに夢中になっていた僕は草の汁や土で汚れている。昼間に歩き回って討伐もしていたから汗もかいてる。…え、この距離感もしかしてヤバい？臭いとか思われたらショックで死ぬ！！

俺は慌てて浄化魔法をかける。
慌てすぎてレオ様も巻き込んでしまったせいで、レオ様は吃驚している。ごめんなさい。範囲ミスりました。

「…ごめん、もしかして俺汗臭かった？」

「別に」

レオ様じゃなくて俺です！！レオ様からは良い香りしかしませんでした！！恥ずかしくて顔を背けると、レオ様の体温が離れていく気配を感じる。

どうしたんだろうかと僕も身を起こす。

「そろそろ夕飯にしようか。一応携帯食料ならあるけど、アレンは何かある？」

「まあ」

さっき討伐した魔獣の肉や草、果物がある。

レオ様が火を起こしてくれたのでホーンラビットの肉を焼く。香草と塩で味を整えて、レオ様に渡す。

ついでに疲れが取れる薬草のサラダや果汁を絞った飲み物を渡す。

「美味しい、料理上手だな。野営でこんなに美味しいご飯を食べるのは初めてだよ。」

誰にでも作れる簡単なものなのに本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しくて、おかわりまで用意してしまう。
レオ様はその体格通り大食いだった。

好きな人が自分の手料理を美味しそうに食べてくれる幸福に浸っていると、辺りが優しい光に包まれ出した。

月下光草が光っているのだ。

「わぁ…綺麗…」

エルフの国には無い魔草。人間の国に着いてからも態々人の多い場所に行くのははばかられたので、実際に見るのは初めてだった。

想像の数倍幻想的で、根強いファンが居るのも頷ける。

「気に入った？」

「ん、ありがとう…」

エルフは探知魔法を得意としているが、月下光草は光る時に魔力を纏う。光らない昼では存在に気づけないし、例え光っている時でもその魔力は微量なので、気づけない可能性も高い。

レオ様が教えてくれなかったらこの景色を見れなかったかもしれない。

それに。

僕はレオ様を見る。

レオ様が隣にいるから、一層綺麗に見える気がするんだ。