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本編
金色の瞳
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【Rea】
「こないだみたいに、まずは手を出して」
言われるまま両手を差し出せば、今度はベッドの上、隣に腰かけたラーシュにまた指を絡ませる様にしてそっと手を握られました。
以前感じた様に、体の中を暖かなお湯が巡っていくような感覚がします。
しばらくその心地よい感覚に身を委ねていると、
「痛かったりしない? 大丈夫なら、もう少し強くするよ」
不意に少し低めのラーシュの声が降ってきました。
これまでになくどこかドロッと甘いラーシュの声に、思わず真っ赤になりながら目を閉じたままその感情を誤魔化すようにブンブン頷けば、ラーシュが私の頭の上で優しくフッと笑ったのが分かりました。
「目、開けて。こっち見て」
いつもの通りの優しい声でそう言われ、ホッとした思いでゆっくり目を開き、おずおずと目を上げた時でした。
思いもしなかった程すぐ近くにあったラーシュの金色の瞳に抵抗する間もなく視線を搦めとられた次の瞬間です。
「っぅ!!」
強く真っ白な衝撃が私の中を走りました。
はじめての強すぎる快楽にも似た衝撃に、動くことも、考える事も出来ずハクハクと浅い息を繰り返してラーシュを見つめたまま、ボロっと涙を零せば
「悪い、強すぎたか?」
私の痴態を余す事なく見ていたラーシュがそう言って、全く悪びれた様子もなく形の良い切れ長の目をスッと細めて楽し気に低く低く嗤いました。
指一本満足に動かせないままラーシュの金色の瞳に縋れば、繋いだままの両手をトンと押され、そのままなすすべ無くベッドにあお向けに倒れ込みます。
狭いベッドの上、私の体を膝立ちでまたぐようにして立ったラーシュが、前回手首にそうしたように、今度は私の首にベロッと舌を這わせました。
ラーシュの不快感を煽らないよう、きつくきつく唇を噛んで声を耐えます。
「ちょっと痛くする」
故意にでしょう。
ラーシュはそう言うと自分の犬歯を見せる様に口を開き、それをペロっと赤い舌を出して私に見せつけるよう妖艶な仕草で舐めて見せました。
恐怖なのか、期待なのか。
私の瞳からまた、涙がボロっと零れます。
その涙を払うため、零れた熱いため息と共に伸ばしたその綺麗な手を……。
ラーシュがまた私の頬に触れる直前でハッと留め、指先が白くなる程強く握りしめました。
ラーシュがしようとしていたこと、何となく分かりました。
本当は私の首筋にその歯を立てて回路を刻んでくれるつもりだったのでしょう。
でも……。
その距離は本来、酔うほどに番の香りが甘く甘く立ち込める場所なのでしょう。
その香りが無い私にそんな親密な行為をすることは、ラーシュにとって亡くなってしまった人とそっくりな人形を作って、それで劣情を処理するような、そんな最低な感覚なのかなって……何となくそう思います。
「……嫌だ。もう充分。離して」
そう言ってラーシュの金の色が散った夜の冷たい海を思い起こさせる暗い暗い青の瞳を真っすぐ見て言えば、少し戸惑った末、ラーシュがゆっくり私の手を離し、ベッドの上から降りました。
体を起こし、ラーシュと目が合わせられないまま手櫛で乱れた髪を整えます。
しばらくして、
「ここに詠唱を書いておいた」
ラーシュがそう言って、小さく折ったメモをくれました。
「ありがとう」
今、ラーシュの綺麗な文字で書かれた綺麗な詩を読むのは、あまりに惨めなような気がして。
私はその紙を開くことなく無くさないよう気をつけてポケットの中に仕舞いました。
「こないだみたいに、まずは手を出して」
言われるまま両手を差し出せば、今度はベッドの上、隣に腰かけたラーシュにまた指を絡ませる様にしてそっと手を握られました。
以前感じた様に、体の中を暖かなお湯が巡っていくような感覚がします。
しばらくその心地よい感覚に身を委ねていると、
「痛かったりしない? 大丈夫なら、もう少し強くするよ」
不意に少し低めのラーシュの声が降ってきました。
これまでになくどこかドロッと甘いラーシュの声に、思わず真っ赤になりながら目を閉じたままその感情を誤魔化すようにブンブン頷けば、ラーシュが私の頭の上で優しくフッと笑ったのが分かりました。
「目、開けて。こっち見て」
いつもの通りの優しい声でそう言われ、ホッとした思いでゆっくり目を開き、おずおずと目を上げた時でした。
思いもしなかった程すぐ近くにあったラーシュの金色の瞳に抵抗する間もなく視線を搦めとられた次の瞬間です。
「っぅ!!」
強く真っ白な衝撃が私の中を走りました。
はじめての強すぎる快楽にも似た衝撃に、動くことも、考える事も出来ずハクハクと浅い息を繰り返してラーシュを見つめたまま、ボロっと涙を零せば
「悪い、強すぎたか?」
私の痴態を余す事なく見ていたラーシュがそう言って、全く悪びれた様子もなく形の良い切れ長の目をスッと細めて楽し気に低く低く嗤いました。
指一本満足に動かせないままラーシュの金色の瞳に縋れば、繋いだままの両手をトンと押され、そのままなすすべ無くベッドにあお向けに倒れ込みます。
狭いベッドの上、私の体を膝立ちでまたぐようにして立ったラーシュが、前回手首にそうしたように、今度は私の首にベロッと舌を這わせました。
ラーシュの不快感を煽らないよう、きつくきつく唇を噛んで声を耐えます。
「ちょっと痛くする」
故意にでしょう。
ラーシュはそう言うと自分の犬歯を見せる様に口を開き、それをペロっと赤い舌を出して私に見せつけるよう妖艶な仕草で舐めて見せました。
恐怖なのか、期待なのか。
私の瞳からまた、涙がボロっと零れます。
その涙を払うため、零れた熱いため息と共に伸ばしたその綺麗な手を……。
ラーシュがまた私の頬に触れる直前でハッと留め、指先が白くなる程強く握りしめました。
ラーシュがしようとしていたこと、何となく分かりました。
本当は私の首筋にその歯を立てて回路を刻んでくれるつもりだったのでしょう。
でも……。
その距離は本来、酔うほどに番の香りが甘く甘く立ち込める場所なのでしょう。
その香りが無い私にそんな親密な行為をすることは、ラーシュにとって亡くなってしまった人とそっくりな人形を作って、それで劣情を処理するような、そんな最低な感覚なのかなって……何となくそう思います。
「……嫌だ。もう充分。離して」
そう言ってラーシュの金の色が散った夜の冷たい海を思い起こさせる暗い暗い青の瞳を真っすぐ見て言えば、少し戸惑った末、ラーシュがゆっくり私の手を離し、ベッドの上から降りました。
体を起こし、ラーシュと目が合わせられないまま手櫛で乱れた髪を整えます。
しばらくして、
「ここに詠唱を書いておいた」
ラーシュがそう言って、小さく折ったメモをくれました。
「ありがとう」
今、ラーシュの綺麗な文字で書かれた綺麗な詩を読むのは、あまりに惨めなような気がして。
私はその紙を開くことなく無くさないよう気をつけてポケットの中に仕舞いました。
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