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番外編 永遠の迷宮探索者 ~新月の伝承と竜のつがい~
9.魔獣(sideテオドール)
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「怖かったら目をつぶってて」
そう言って彼女をまた痛み事ギュッと抱きしめたまま、片翼を広げ宙を舞う。
着いた先は火口というより、落ち葉に似た薄く脆い洞穴の表層の剥がれ落ちた物が大量に体積した、日の当たらない森の奥深くのようなところだった。
僕達がやって来るのをずっと、腹を空かせて待ちわびていたのだろう。
突然足元が緩んだと思った瞬間、アリジゴクに似た鋭く大きな顎を持つ魔獣がそこから襲い掛かって来た。
軽くいなして距離を取れば、何やら毒のような物を吐いてくる。
レリアを抱いたまま剣を振り下ろせば、あっけなくそれはすぐに絶命した。
気配を探り、もう他に魔獣が潜んでいない事を確認した後で。
僕の腕の中で目をまわしてしまったレリアを腕から降ろし、水を飲ませる。
ただ介抱しているだけなのに。
ずっと番の幻想に囚われ、妻も恋人も持たずに来た自分にとって、触れたレリアの柔らかで甘やかな唇は酷く魅惑的で。
その場で自分のものにしてしまわないよう理性を働かせるのに、酷く骨が折れた。
そうして、夜目が効かない彼女の為にカンテラに明かりをともせば。
目を覚ましたレリアはしばらくまっぷたつになった魔獣の死骸を見て顔を青くしていたが、弟の事を思い出したようで、体積物の塊を恐る恐る靴の先で裏返してみてはそこに薬草が無いか探し始めた。
しばらくそんなレリアを見るうちにいたずら心が湧いて。
こわごわ手を差し入れ探し始めたレリアの傍に膝を突き、落ち葉を掻きわけるようにして堆積物の下でギュッとレリアの手を握れば。
レリアが悲鳴を上げ、文字通り飛び上がって驚いた。
「もう! 魔獣かと思って心臓が止まるかと思ったじゃないですか!!」
実際、レリアの手を取ったのは魔獣以上に危険なモノなのに。
正体が僕だと気づいた途端に安堵した様子の彼女を酷く滑稽に思い、思わず吹き出せば。
何も分かっていないのであろう彼女が少しして、僕につられて笑い出した。
そうして――
無事、薬草を見つけられた僕は、レリアの手を引いて地上までの少し長い道をゆっくり歩いて上る事にしたのだが。
その道すがら、レリアが変な事を言い出した。
何でも、彼女はこの国で悪の権化として嫌われている竜という存在に、幼い頃より心惹かれているらしい。
「私ね、竜が好きなの。無理やり攫って行ってしまう位自らの番を深く愛する竜の事が好きなの。番の心をを傷つけたが為酷く相手から恨まれようと、決してその側を離れないその竜の一途さが、昔から涙が零れてしまいそうなくらい愛おしく思えて仕方ないの」
そんなレリアの言葉を聞いて。
竜の執着とはそんな綺麗なものではなく実に醜いものだとよっぽどで口を挟もうかと思ったけれど。
何も本当の事を言って、レリアを怖がらせる必要もないと思い口を噤んだ。
「だから私の夢はね、竜を討伐する事なんかじゃなくて。いつか竜に会って、その愛情深さに報いる事だったの。例え私がその番として選ばれる事は無くても、それで構わないと思ってた」
彼女が、その夢を過去形で語ってくれてよかったと思った。
そうでなければ、きっとオレはその言葉を聞いた時に沸いたよく分からない激情に囚われて、きっと腹立ちまぎれに彼女を食い殺していたに違いない。
こうして――
二日かけて地上に戻った僕とレリアは、幸いにして彼女の弟を助けるのに間に合った。
そう言って彼女をまた痛み事ギュッと抱きしめたまま、片翼を広げ宙を舞う。
着いた先は火口というより、落ち葉に似た薄く脆い洞穴の表層の剥がれ落ちた物が大量に体積した、日の当たらない森の奥深くのようなところだった。
僕達がやって来るのをずっと、腹を空かせて待ちわびていたのだろう。
突然足元が緩んだと思った瞬間、アリジゴクに似た鋭く大きな顎を持つ魔獣がそこから襲い掛かって来た。
軽くいなして距離を取れば、何やら毒のような物を吐いてくる。
レリアを抱いたまま剣を振り下ろせば、あっけなくそれはすぐに絶命した。
気配を探り、もう他に魔獣が潜んでいない事を確認した後で。
僕の腕の中で目をまわしてしまったレリアを腕から降ろし、水を飲ませる。
ただ介抱しているだけなのに。
ずっと番の幻想に囚われ、妻も恋人も持たずに来た自分にとって、触れたレリアの柔らかで甘やかな唇は酷く魅惑的で。
その場で自分のものにしてしまわないよう理性を働かせるのに、酷く骨が折れた。
そうして、夜目が効かない彼女の為にカンテラに明かりをともせば。
目を覚ましたレリアはしばらくまっぷたつになった魔獣の死骸を見て顔を青くしていたが、弟の事を思い出したようで、体積物の塊を恐る恐る靴の先で裏返してみてはそこに薬草が無いか探し始めた。
しばらくそんなレリアを見るうちにいたずら心が湧いて。
こわごわ手を差し入れ探し始めたレリアの傍に膝を突き、落ち葉を掻きわけるようにして堆積物の下でギュッとレリアの手を握れば。
レリアが悲鳴を上げ、文字通り飛び上がって驚いた。
「もう! 魔獣かと思って心臓が止まるかと思ったじゃないですか!!」
実際、レリアの手を取ったのは魔獣以上に危険なモノなのに。
正体が僕だと気づいた途端に安堵した様子の彼女を酷く滑稽に思い、思わず吹き出せば。
何も分かっていないのであろう彼女が少しして、僕につられて笑い出した。
そうして――
無事、薬草を見つけられた僕は、レリアの手を引いて地上までの少し長い道をゆっくり歩いて上る事にしたのだが。
その道すがら、レリアが変な事を言い出した。
何でも、彼女はこの国で悪の権化として嫌われている竜という存在に、幼い頃より心惹かれているらしい。
「私ね、竜が好きなの。無理やり攫って行ってしまう位自らの番を深く愛する竜の事が好きなの。番の心をを傷つけたが為酷く相手から恨まれようと、決してその側を離れないその竜の一途さが、昔から涙が零れてしまいそうなくらい愛おしく思えて仕方ないの」
そんなレリアの言葉を聞いて。
竜の執着とはそんな綺麗なものではなく実に醜いものだとよっぽどで口を挟もうかと思ったけれど。
何も本当の事を言って、レリアを怖がらせる必要もないと思い口を噤んだ。
「だから私の夢はね、竜を討伐する事なんかじゃなくて。いつか竜に会って、その愛情深さに報いる事だったの。例え私がその番として選ばれる事は無くても、それで構わないと思ってた」
彼女が、その夢を過去形で語ってくれてよかったと思った。
そうでなければ、きっとオレはその言葉を聞いた時に沸いたよく分からない激情に囚われて、きっと腹立ちまぎれに彼女を食い殺していたに違いない。
こうして――
二日かけて地上に戻った僕とレリアは、幸いにして彼女の弟を助けるのに間に合った。
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