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第三章 魅了王子は嫌われたい イライアスとシュゼット
7.ただの嫌がらせ?!(side シュゼット)
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「……でもよろしかったのですか? 他の方へのプレゼントだったのでしょう?」
イライアス様のような綺麗な男性に、こんな素敵なドレスを贈られるのは一体どんな人なのでしょう?
確かお相手のお名前はリュシアン様と仰っていましたっけ?
きっとイライアス様に負けず劣らず美しい方なのでしょう。
嬉し気に微笑むリュシアン様の姿と、恋に浮かれた従兄の姿が不意に重り、何故かまた胸が鈍く痛んで。
鏡越しでも何故だか急にイライアス様のお顔を直視出来なくなり、足元の方に向けてそっと目線を伏せた時でした。
「あぁ、いいんだ。ただの嫌がらせで準備したものだから。そのドレスだって君に来てもらった方が幸せだろう」
イライアス様がサラリと恐ろしい事を仰いました。
「……えっと……」
そう言えば……
『リュシアン』というのは、我が国より巨大な国土と軍事力を誇る隣国の、若き王配殿下のお名前ではなかったでしょうか??!
そんな方に、『嫌がらせ』でドレスを贈る?!
さっと顔色を青くした私の心を知ってか知らずか、イライアス様が楽しそうに笑いながら更にトンデモない事を仰いました。
「そうだ! 悪いと思うならがシュゼットがそのドレスを着て、明日のリュシアンの歓迎パーティーに出席してよ!!」
「絶対にお断りします!!」
とんでもない悪ふざけに巻き込まれる前に、一刻も早くこの場を逃げ出そう!
そう思い、走り去る為ドレスの裾をガッ! と掴んだ瞬間でした。
逃げ出そうとした私の手首と肩をガシッ!! と掴んで、イライアス様が悪魔も真っ青なイイ笑顔を浮かべて私に囁きました。
「もしリュシアンへの歓迎会に協力してくれたら、母の花壇を荒らしたのはボクだって事にしてあげる」
******
翌日開催されたリュシアン様の歓迎パーティーで
「なっ?!!」
リュシアン様が私を見るなり、その綺麗な顔を盛大に引き攣らせられました。
それもその筈。
私はリュシアン様と同じ髪色でアイスブルーの瞳。
そして高い高いヒールを履いた今、背丈も彼とそれほど変わりません。
なんならこうしてお会いしてみると、初対面の時にイライアス様が見間違えられた事から察せられる通り、面立ちもどことなく似ている気がします。
そんな自分とそっくりな人物が、まるで婚約者か何かのようにイライアス様の瞳と同じ色のドレスを着させられ、死んだ目をしながらイライアス様に腰を抱かれ目の前に立っているのです。
リュシアン様とイライアス様、お二人の関係性はよく知りませんが……。
想像するにきっと一方的にイライアス様に執着されていらっしゃるのであろうリュシアン様からすれば、この目の前の光景はホラー以外の何物でもないでしょう。
「イライアス、お前……いくら僕に恨みがあるからって、ここまでやるか?!」
リュシアン様が実に忌々し気に半眼になってそう言えば、イライアス様はそんなリュシアン様を見て、一人だけまた実に嬉しそうに笑われました。
イライアス様の隣で真っ青になっていた時でした。
「……気が済んだなら、いい加減その哀れなお嬢さんを離してやれ」
そんな私の様子に気づいたリュシアン様が、私に向かいそんな助け船を出して下さいました。
リュシアン様の慈悲深いのお言葉に甘えて、脱兎のごとくその場を去ろうとしたその時です。
イライアス様は逃げ出そうとした私の手をまたガシッ!!! と掴み、
「えー!!! 嫌ですよ。ダンスもまだ終わっていないのに。ねぇ? シュゼットもボクと踊りたいよね??」
私が反論出来ないのをいい事に、そんな実に勝手な事を仰ったその時でした。
「いい加減にしろ」
何故かリュシアン様がイライアス様に向かい小さく弓を引くようなジェスチャーをして見せられました。
そして。
私が何だろうと思うよりも早く、ソレをご覧になったイライアス様は、どこか怯えたようにバッ! と勢いよく私から手を離されたのでした。
イライアス様のような綺麗な男性に、こんな素敵なドレスを贈られるのは一体どんな人なのでしょう?
確かお相手のお名前はリュシアン様と仰っていましたっけ?
きっとイライアス様に負けず劣らず美しい方なのでしょう。
嬉し気に微笑むリュシアン様の姿と、恋に浮かれた従兄の姿が不意に重り、何故かまた胸が鈍く痛んで。
鏡越しでも何故だか急にイライアス様のお顔を直視出来なくなり、足元の方に向けてそっと目線を伏せた時でした。
「あぁ、いいんだ。ただの嫌がらせで準備したものだから。そのドレスだって君に来てもらった方が幸せだろう」
イライアス様がサラリと恐ろしい事を仰いました。
「……えっと……」
そう言えば……
『リュシアン』というのは、我が国より巨大な国土と軍事力を誇る隣国の、若き王配殿下のお名前ではなかったでしょうか??!
そんな方に、『嫌がらせ』でドレスを贈る?!
さっと顔色を青くした私の心を知ってか知らずか、イライアス様が楽しそうに笑いながら更にトンデモない事を仰いました。
「そうだ! 悪いと思うならがシュゼットがそのドレスを着て、明日のリュシアンの歓迎パーティーに出席してよ!!」
「絶対にお断りします!!」
とんでもない悪ふざけに巻き込まれる前に、一刻も早くこの場を逃げ出そう!
そう思い、走り去る為ドレスの裾をガッ! と掴んだ瞬間でした。
逃げ出そうとした私の手首と肩をガシッ!! と掴んで、イライアス様が悪魔も真っ青なイイ笑顔を浮かべて私に囁きました。
「もしリュシアンへの歓迎会に協力してくれたら、母の花壇を荒らしたのはボクだって事にしてあげる」
******
翌日開催されたリュシアン様の歓迎パーティーで
「なっ?!!」
リュシアン様が私を見るなり、その綺麗な顔を盛大に引き攣らせられました。
それもその筈。
私はリュシアン様と同じ髪色でアイスブルーの瞳。
そして高い高いヒールを履いた今、背丈も彼とそれほど変わりません。
なんならこうしてお会いしてみると、初対面の時にイライアス様が見間違えられた事から察せられる通り、面立ちもどことなく似ている気がします。
そんな自分とそっくりな人物が、まるで婚約者か何かのようにイライアス様の瞳と同じ色のドレスを着させられ、死んだ目をしながらイライアス様に腰を抱かれ目の前に立っているのです。
リュシアン様とイライアス様、お二人の関係性はよく知りませんが……。
想像するにきっと一方的にイライアス様に執着されていらっしゃるのであろうリュシアン様からすれば、この目の前の光景はホラー以外の何物でもないでしょう。
「イライアス、お前……いくら僕に恨みがあるからって、ここまでやるか?!」
リュシアン様が実に忌々し気に半眼になってそう言えば、イライアス様はそんなリュシアン様を見て、一人だけまた実に嬉しそうに笑われました。
イライアス様の隣で真っ青になっていた時でした。
「……気が済んだなら、いい加減その哀れなお嬢さんを離してやれ」
そんな私の様子に気づいたリュシアン様が、私に向かいそんな助け船を出して下さいました。
リュシアン様の慈悲深いのお言葉に甘えて、脱兎のごとくその場を去ろうとしたその時です。
イライアス様は逃げ出そうとした私の手をまたガシッ!!! と掴み、
「えー!!! 嫌ですよ。ダンスもまだ終わっていないのに。ねぇ? シュゼットもボクと踊りたいよね??」
私が反論出来ないのをいい事に、そんな実に勝手な事を仰ったその時でした。
「いい加減にしろ」
何故かリュシアン様がイライアス様に向かい小さく弓を引くようなジェスチャーをして見せられました。
そして。
私が何だろうと思うよりも早く、ソレをご覧になったイライアス様は、どこか怯えたようにバッ! と勢いよく私から手を離されたのでした。
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