悪魔に憑かれた男

大松ヨヨギ

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 『パパから着信です。応答しますか?』、その執拗な連絡に彼女は機嫌を悪くする。何せお気に入りのブランドバッグは破片が飛んで破け、ヒールを履いていたせいで足を挫いたのだ。
 
「もう!なに!?うっざ~!」
 
 ヒステリックに喚き散らしても、自分の声が反響するだけで誰も慰める人間などいない。
 
 サロメ・バーンはその日王国打倒委員会の事務所の一つである会員制のバーで酒を煽り泥酔していた。目が覚めたのは凄まじい爆音と、建物がバリバリ鳴っていたからだ。幸い地下の倉庫に逃げ込んで助かったが、入口が倒壊して出られない。全身傷だらけで気分は最悪だ。
 
「なんでレアもスカンクもいないわけ!?あたしを一人にして、アイツら許さない!」
 
 仲間がいないのは自分の酒癖の悪さが原因だと彼女は頭を抱える。
 
「もー!…どうしたらいいのよ~!」
 
 一晩薄暗い倉庫に閉じ込められ、彼女は心細さを感じ始めていた。食料や水はあるが、救助がいつ来るのかも分からない。
 
「……」
『パパから着信です。応答しますか?』
「…はぁ~…」
 
 サロメは危機的状況の中まだ応答するかどうか悩んでいる。それは反抗期の娘らしい、なんともくだらない理由だ。
 
(…でも、ケーサツも救急も繋がんないし…)
 
 仕方がない、彼女は諦めて応答することにした。
  
『サロメ!良かった、今どこにいるんだ!』
 
 漂う加齢臭、ベタベタの頭にサロメは嫌悪感が湧く。ホテルの一室だろうか、背後には大きなベッドとお付の秘書がいる。
 
「…え~っと……」
『良かった、生きていた…良かった…』
 
 彼は安心したように涙ぐんだ。後ろの秘書は彼にハンカチをサッと差し出し、それで光った顔を拭く。
 
(何も泣かなくてもいいじゃん…)とサロメは戸惑い、「…パパこそ大丈夫?」とその男に問いかける。彼は頷いて、愛情深い笑顔を浮かべた。

『他に誰かいるのか?』
「んー、いないよ。あたしだけ。」
『そうか…。どこにいる?パパが助けに行くよ』
 
 過保護、サロメが内心父親を面倒だと思う一つの要因だ。あまり邪険にするといざという時利用できないと上手く転がしていたが、今は彼の過保護に安心している。
 
「はあ?パパはどうせお仕事でしょ?…そのうち王国打倒委員会のみんなが助けに来てくれるもん」
『…サロメ、いい加減目を覚ましなさい。こんな事になったのは彼らのせいだ。』
 
 何回、何十回と聞いた言葉にサロメはウンザリしていた。彼は口を開けば『彼らのような不良と一緒にいるな』と唱える。自分の友人を悪く言われていい気持ちになる人間などいないだろう。
 
「みんなの事悪く言わないで!」
『彼らはスターシールドを爆破したんだ、確認できるだけで沢山の犠牲者が出ているんだよ。』
「そんなのあたしに関係ない!それになんでそんな事する必要があるの!」

 
 チクリと罪悪感が胸を刺すが、だからと言ってどうしたら良いのか彼女自身も分かっていない。
 
『サロメ、彼らから一つでも連絡があったかい?』
「……」
『ない、ということは利用さ…るだけ…だ…』
「パパ?」
 
 電波の調子が悪く、そこで通信は途絶えた。静かな倉庫の中にたった一人閉じ込められている、その現実に段々恐怖が襲ってくるのだ。
 
 サロメはメッセージに彼らの名前を探すが、誰一人として『大丈夫?』の一言すら送ってきていない。
 
「…確かに、連絡来てないけど…」
 
 彼女にとって王国打倒委員会は日々の寂しさを埋められる居場所だった。同じ歳くらいの仲間と朝から晩まで一緒にいる、それは広い屋敷で孤独を育て続けるよりも楽だ。
 
 悪い事に手を染めたのは殆ど家に帰らず仕事に明け暮れる父親に対しての当て付けだった。多少の罪悪感は酒で誤魔化せる。
 
 王国民に大して恨みなど無かったが、お金に困っていたわけではなかったが。人に迷惑をかけることで構ってもらえる、どこまで父が自分を気にかけ愛しているのか確認したかったのだろう。
 
「今更戻れないよ…」
 
 バキバキと天井が軋み、チラチラと埃や砂が降ってくる。きっとこのまま生き埋めになるのだ、彼女は自分の生き方に後悔して蹲った。
 
 
 
 
  「ヒラキ・ライト、我々と同行願おう」
 
   皆の注目が集まる中、その男はノエルに向かってニッコリと微笑んだ。正確にいえばノエルの背後に隠れて怯えるウィルソンに対して笑っている。狂気じみた笑顔とは裏腹に彼の声は冷静だ。
 
「どうかしたんですか?ここで話せばいいのに…。」
「そういう訳にはいかない。部屋を用意してある。そちらに移動してくれ」
 
 隣のサコダはいざという時に対応できるようにピストルの位置を確認している。ノエルは直ぐに地元の警察官に事情を説明し、ヒラキ・ライトが逃げないよう取り囲むよう協力を要請した。彼が何か行動するとは思えないが、警戒するに越した事はない。その状況に気がついたのかヒラキのぼんやりと虚ろな瞳がギョロギョロと蠢く。
 
「…なんだか俺、疑われてる?」
 
 呟きは独特なイントネーションだ。俗に言う王国訛りである。確かにヒラキは王国の人間であるが今まで気になるほどの訛りは無かった。心の余裕がなくなってその訛りが顔を出したのだろうか。
 
「いやいや、そんなんじゃないすよ~!俺たちは単純に話聞きたいだけすから…ね!行きましょ!」
 
 サコダが逃げないようにヒラキの肩に手を置いた。フレンドリーに接して別室へ誘導しよう、という魂胆だ。だが中々その場を動こうとしない。確かに疑われていると分かれば行きたくないのは理解できるが、気の弱い彼なら押しに負けて直ぐに言う通りにするはずである。
 
(…何か…)
 
 ノエルはヒラキを注意深く観察し、ある事に気がついた。
 
「ヒラキさん、そのズボンのポケットには何が入っている?」 
 
 上着を被せてあって分かりづらいが、明らかに右のポケットが膨らんでいる。ゴツゴツとした、何か細長い物だ。
 
「……」
「…あ、ほんとだ。何入れてるんすか?見せて見せて~」

 サコダは手をヒラキのポケットに突っ込んで、その中身を取り出した。

「…うッ……」
 
 現れたのは、一本のネイルハンマーだ。監視プログラムの映像で被害者の男性が持っていたそれと同じものだ。尖った先には、毛を生やした肉片がこびりついている。
 
 言い逃れ出来ない物的証拠だ。
 
 サコダがそれを驚きのあまり手から滑らせた時、そのケダモノはギラリと目を光らせる。

「―ッ!?」

 無駄のない動きで伸ばされた腕はサコダの顎を下から打ちのめした。そして素早く後ろに周り首をギュッと締め上げ、サコダの内ポケットからピストルを抜き取ってこめかみに押し付ける。その間五秒程の短い時間だ。ノエルも反射的にピストルを引き抜いたが人質を取った向こうの方が有利である。

「ひぃいい!!先輩助けて!!」

 武器を取り上げられたサコダは情けない悲鳴を上げた。ヒラキは四方八方、沢山の銃口を向けられているというのに平然としている。

「銃を下ろせ!」
「…断る。」

 信じがたいがヒラキは昨晩トイレで男を殺害し、平気な顔をして今の今まで過ごしていたのだ。
 
「サコダを解放しろ。…何か訳があるなら話を聞く」
「訳?そんなものない」
「…じゃあ何故こんな事をする」
「ただの嫌がらせだよ。…ウィリアム!」
 
 ヒラキはノエルの背中に隠れている男に強い口調で呼びかけた。それにビクリと反応を示し、異様なほど早い呼吸音がさらに早く短く刻まれる。ウィルソンの事だ、ヒラキが疑われているとなれば庇いそうなものだが今の彼はそうする余裕すらない。

 ヒラキは「ごめん、怒鳴るつもりはなかったんだ。こっちにきて。一緒に行こう」といつもの優しい口調に戻すが、人質には優しさのカケラもなく銃口でガンガンとこめかみを突く。それでも顔を出さないウィルソンに血が滴るほど唇を噛んで、赤くなった歯をニカっと見せて笑うのだ。

「あーあ、お前のせいでこいつが死ぬ、それでもいいのか?」
「うぅ…や、やめて欲しいっす…!」
 
 ウィルソンの心の揺らぎを感じ取ったノエルは片腕を伸ばし静止する。サコダが殺される事は望まないが、男を危険人物に引き渡す訳にはいかない。
 
(どうする?…だがどれを選んでも後悔するに違いない)
 
 正解なのか分からずノエルは石のように固まった。男の足を撃ち抜いてサコダを救出する事も考えたが、激高して他の人間に無差別に攻撃するかもしれない。
 
(狙うなら……右腕か?いや手はサコダの頭と近い。となれば…)
 
 トリガーに指をかけた。しかし左手の負傷のせいか震えて上手く定まらない。右手でグッと震えを押さえ込み、できる限りサコダに当たらぬようその狂人の頭を見据えた。鼓動がバクバクと跳ね、背筋に一筋の汗がゆっくり下りていく。この弾丸が男の命を奪うのだ。
 
 
 思えばノエルはヒラキ個人を憎んでいない事に気がついた。
  
  
 
 ―呼吸を止めてあとは押し込むだけ。
 
 
 
「止めろ!」とウィルソンはノエルのピストルに手をかける。そのせいで照準が外れ、弾丸はサコダの足元ギリギリを掠めた。
 
「―ッ!待て!」 

 ウィルソンが邪魔をしたせいで男に大幅な猶予を与えてしまった。彼はすんなりサコダを手放して、人集りの中に飛び込んだ。
 
「逃がすな!!」

 ノエルはヒラキが紛れた人混みに自らも飛び込み追いかける。しかし見えていた頭が一瞬視界から外れるとたちまち彼の姿が消え去るのだ。三方向に設置された出入口を確認し、近くにいた人間に尋ねて回ったが「分からない」という回答しか得られなかった。
 特徴がない平凡な容姿だからこそ誰の印象にも残っていない。
 
「…クソッ!」

  ノエル達は目に見えて危険な人物を易々と取り逃し、オマケにピストルまで与えてやったのだ。
 
 
 
 
白熱灯の下、机を挟んだ先に座る男はようやく恐怖から解放されたのか体の強ばりを解いた。
 
 その別室は元々ヒラキから話を聞くために用意したものだったが、ノエルはウィルソンと二人きり対面している。
 
 地元の警察官らは危険を承知でヒラキ・ライトを捜索する為上部駅の外に出ていった。サコダはデータベースが繋がったのでローレンに今回の事を含め諸々報告を入れている頃だろう。
 
 ノエルは、ヒラキ・ライトの逃走を手伝った男の尋問を任されている。
 
「少しは落ち着いたか?」
 
 その問いに、彼は頷いて「情けない姿を公衆の面前で晒してしまったよ」と笑った。先程までの怯えは影を潜め、そこには疲れた笑顔だけ残る。
 
「単刀直入に言うが…お前がヒラキさんの共犯ではないかと疑われている。」

 ノエルは隠すこと無くウィルソンにそう話した。彼は片眉を上げて「あー…」と机に視線を落とす。
 
「それは私があいつを逃がしたように見えたと言うことか…」
「そうだな。違うならここでちゃんと宣言してくれ」
「…」
 
 ウィルソンは何故かだんまりだ。ただ『違う』と言えばそう報告出来る。しかし彼は直ぐには答えなかった。ノエルもまた直ぐに催促はしない。五分ほど彼は唸りながら悩み、ようやく口を開いた。
 
「もしそうだと言ったら私は捕まるのか?」
「…その可能性はある」
「どっちにしろ面倒ということか…。」

 はぁ、と体の空気を全て出すかのような大きなため息。彼はボリボリと乱暴に頭を掻きむしって答えを探す。ヒラキをどうにかして庇いたいのだろう。
 
「私がヒラキに頼み込んで殺してもらった。」

 ウィルソンの発言にノエルは驚かない。言葉に真実味を持たせるため敢えてノエルの目を真っ直ぐ見るが、机の下の足が落ち着きなく動いている。

「…本当は?」   
「…本当?えっと…本当の事だ」
「ヒラキさんは明らかに様子がおかしかった。まるで人が変わったように。その原因を知っているんだろう?」
「………」
 
 ピタリとウィルソンの呼吸が止まる。呼吸を再開した頃、じんわりと汗が額から流れ落ちていった。ノエルになら話してもいいと思ったのか、それとも一人で抱えるには荷が重かったのかポツリと話し始める。
 
「…確かに、あいつはヒラキじゃない。」
「あの人は二重人格か何かなのか?」
「恐らく。病院で診断された訳では無いがね。…あるきっかけでまた表に出てきてしまったようだ」
 
 その日のヒラキは確かに情緒不安定だった。頭上から瓦礫が落ちてくると考えれば誰だってそうなるが、彼の場合は他の原因がありそうだ。
 
(だが昨日話した時は普通だった。…その時はまだヒラキさんだったという事か?)
 
 子供に優しい表情浮かべたヒラキが思い起こされ、ノエルはやはりまだ信じ難い。
 
「だからヒラキは悪くない。悪いのはあいつなんだ。いや、根本を辿れば私が悪いのだが…とにかく、ヒラキを捕まえないで欲しい」
 
 男はテーブルから身を乗り出してノエルにそう懇願した。言いたいことは分かるが、それにうん、と頷く訳にはいかない。こうしている間にあの男は誰かを手にかける可能性がある。
 
「例えヒラキさんの別人格がそうさせていたとしてもこのまま野放しにしたら犠牲者が増える可能性がある。罪が重なれば苦しむのは本人だ。…お前は馬鹿な事を言わず大人しくしていてくれ」
 
 幾ら秩序維持課の課長と知り合いだと言っても派手な行動を取れば隠蔽できないかもしれない。
 
「…そう、だな。分かった。私は何も知らなかった。…これでいいか?」
「ああ。」
 
 話が纏まった時、ちょうど雑なノックが部屋に響き渡った。扉の先には憔悴しきった顔のサコダが立っている。恐らく事のあらましを説明する過程で、ピストルを奪われた事を話したのだろう。
 
「先輩終わった?」
「…ああ。彼は無関係だと主張している」
 
 ノエルは何か言いたげなウィルソンに目配せした。『絶対に余計なことはするな』と。
 
「…ローレン部隊長から本庁に来るよう指示されました。十六時に一部ゲートが解放されるんで、青色のスキープカーに乗ってください」
「ヒラキ・ライトの捜索はどうなる?地元の警察官達だけでは…」
 
 机にぼんやり映る自分の影が、ソワソワと落ち着きをなくしている。
 
「現場は俺が任されたんすよ。呼ばれてるのは先輩とおにーさんだから」
 
 
 
 
 男は床にこびり付いた黒いシミを見て眉を寄せた。壁には無数の爪痕があり、薄暗い独房のようだと居心地の悪さを感じているのだろう。
 
 壁沿いに置かれた三つのベンチのひとつにノエルは腰を下ろすがウィルソンは立ったままソワソワと体を揺らす。
 
「この部屋は気味が悪い」
「以前は拷問に使われていたらしいからそう思うのも無理はない」
 
 二時間、スキープカーに揺られ帝都シュタイゲンにある帝国警察庁にやって来た。一度家に帰ってウィルソンを置いてこようと思っていたが、乗ったが最後、目的地を操作出来ぬようロックがかけられていたのだ。
 
 仕方がないのでノエルはウィルソンにフードを深く被るよう指示し、刺さるような視線を無視しながら庁内の地下二階の休憩室に待機している。

 
 「待たせたわね」
 
 その休憩室独房にやって来たローレン・クロウリーは、ノエルの顔色を伺いその次にウィルソンに視線を向けた。
 
「…彼が例の共犯者?」
「はい。しかし彼は無関係だと主張しています」

 ローレンは向かい側のベンチに腰掛け、スラリと長い脚を組んだ。そしてウィルソンにも座るよう促す。男は仕方なくノエルの隣に座ったが落ち着きがない。
 
「あなた、名前と生年月日、現在の住所は?」 
「…」
 
 男は彼女の質問に答えない。確かにノエルは『余計な事は言うな』と執拗いくらいに言ったが、リアクションしないのは良くない。ローレンは男の態度を不審に思って腕を組む。
 
「彼はウィリアム・ウィルソン、住所はエレモアシティー西区799-5です」
「私は本人から聞きたいんだけれど。生年月日は?」
「…」
「まあいい、名前と住所さえあれば関係ないことだ」
 
 彼女はノエルから聞いた情報を元にデータベースの管理者画面の権限にてウィルソンの国民番号を割出した。
 
「…ウィリアム・ウィルソン、十三年生まれ二十八歳…住所も一致。犯罪歴もなし、データベースの登録は三種に区分されているけれど外付け機器の提示を願おう」

 知る限りウィルソンは外付けのデータベースを使っている形跡がない。ノエルは彼がデータベース未導入だと思って腕時計を買ってやったのだが、登録済みの端末があったのだ。しかし未導入よりは登録の履歴がある方が事はスムーズに進むだろう。

「…家に置いてきた。」
「データベースの携帯は義務よ。特に三種は常に意識して…」
「空から瓦礫が落ちてきたんだ。替えの利く機械より自分の命の方が大事だとは思わないか。」
 
 おかしな事を言わないか心配していたが、ウィルソンは当たり障りのない返答をする。ローレンはそれ以上追求する気はないようで肩を竦めた。
 
「…まあそれもそうね。今回は見逃す事にしましょう。さて、本題に入りましょうか」 
 
 
 ローレンが指をパチン、と鳴らすと休憩室の扉を乱暴に開け放ち、白い防護服を着た連中がドっと押し寄せる。
 
「おい!何をする!ノエル、どういう事だ!」
 
 ウィルソンは防護服の連中三人がかりで取り押さえられ、地面に押し付けられた。ノエルが助けようにも壁を作るように阻まれ、下手に動けば自分の行動も制御される可能性がある。
 
「部隊長!何の真似ですか!」
 
 ノエルの声など聞こえていないのか、彼女は防護服の人間に「慎重に採取しなさい」と命令する。
 
 その命令を受け、取り出されたのは注射器だ。一人がウィルソンの袖を捲り暴れないよう押さえ、もう一人が素早く腕に注射器を射し込んで赤黒い血を吸い上げた。それを採血管に移し、ゆっくり混ぜ合わせる。そしてアタッシュケースに保管し、彼らはローレンに一礼してゾロゾロと退室した。
 
「………」
 
 部屋の密度が一瞬にして増え、そして一瞬にして減った。ウィルソンはぐちゃぐちゃの服を正して起き上がって呆気に取られている。
 
 (何が起こってる?)とウィルソンはノエルに視線で問いかけるがそんな事はノエルも知りたい。今の段階で言えることは『良くない事が起きようとしている』という勘に基づいた答えだけだ。
 
「…部隊長、説明願います!一体これはどういう事ですか!」 
 
 焦り、不安、怒り…その感情が滲んだ声が防音の壁に吸収される。
 
「あなたが声を荒らげるなんて珍しい。それ程心酔しているということか」
「…なんの事ですか」
「気がついていない?あなたはどんな事でも感情を表に出すような人間じゃなかった。良くも悪くも…ね。」
 
 ローレンはゆっくりベンチから立ち上がる。そして扉に向かって「お願いします」と声をかけた。
 
 
 その合図に答えるように、ゆったりとした足取りで部屋に入ってきた男は三星の階級章を輝かせる。

 フェルトマイアー・GFジークフリートは笑顔を絶やさず凍りついた空間をものともせずその場を支配するのだ。
 
「説明は僕からさせてもらうよ」
 
 
 
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