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隠蔽
四
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そこには何も無かった。正確にはある事にはあるのだが、趣味の悪い酒場が派手な色合いで思い出をぶっ潰していたのだ。
(…は?)
ショックで立ち尽くす啓は、暫くその汚物を呆然と眺める。半壊した壁、潰れた屋根は真っ赤で塗られて、ギラギラとしたライトが何処そこに取り付けられ、看板には酒の下手くそな絵が描いてある。
「…なんで無いんだ」
そこに住んだのはほんの少しの間だが、彼にとってはとても大切な家だった。それが何故こんなセンスの欠けらも無い見知らぬ建造物にすり変わっているのか。
『二人の家って、何だか家族って感じでいいよな。』
向けられる笑顔、笑顔、えがお。この家は啓にとって大事なものを入れる宝箱だったのに。
(……俺たちの家が…)
瓦礫を拾う隣人らしき老人に人畜無害な笑顔を向けて近づいた。本当にここが自分達の家があった場所なのか再確認しなければならない。周りはえらく変わっているので、もしかしたら住所を間違えているのかもしれないからだ。
「すみません、ここに昔二階建ての家があったと思うんですけど。こう言っちゃ何ですが、壁が蔦だらけのあばら家で」
「ああ、煉瓦の?あの家ね。…随分前に政府が買収して壊された後、会員制のバーが建てられたんだ。」
「そう、…ですか。…昔住んでたもので」
「それは気の毒に」
慣れ親しんだイントネーション、老人が王国民だとすぐに分かった。彼は落胆した啓の肩をぽんと叩き、残念そうに目を細めた。
「今の所有者は何方ですか?」
「…あ、あの人がオーナーさんだよ。」
ちょうどへしゃげた扉から出てきたいかにも輩といった風貌の男に、老人は媚びへつらうようにヘコヘコと頭を下げている。自分よりも二回り以上離れている若造にだ。
「何だって俺の店の上にだけ落ちるかね。…よぉじいさん。アンタのとこは俺の店のお陰で無傷かい」
「家は平屋の一階建てですので…」
男はずいと手を老人に向け、「保護料寄越しな」と金を要求している。
「払えよ!うちは王打会の人間とも繋がりがあるんだ、逆らったらここら一帯火の海だ」
汚い訛りに啓の笑顔は一瞬で消え去った。やはり時代がどれほど移り変わろうとも帝国民は変わらない。
「い、今はこれしか…」
差し出した端金を分捕って、男は老人の顔に唾を吐いた。それなのにヘラヘラと笑っている彼に、啓は我慢の限界だ。
「その金を返せ」
「なんだ?俺に何か文句つけようって?」と一見弱々しい啓に男は距離を詰めて威圧する。それを見てオロオロする老人は「まあまあ、勘弁してやってください。私から言って聞かせますんで…」と二人の間にやんわり割って入った。
「ああ、テメェら老人がこいつらガキに上下関係を教えるべきじゃねーか?王国民はぐずで底辺だってよ」
騒ぎを起こすつもりはなかった。だが染みついた癖というものがある。啓はスムーズにポケットから拳銃を取り出した。間抜けの警察官から奪ったそれの安全装置を外して男に向ける。
「…はは、冗談じゃねぇか」と先ほどまでイキリ散らしていた男はジリジリと後ろに下がった。そしてあろうことか背中を向けて逃げ出そうとする。いい的だ、大して狙ってもいないのにその後頭部に弾丸が一直線に向かっていく。
鳴り響いた銃声に、カラスが一斉に空に飛び立った。抜け落ちた黒い羽根がひらりと足元に舞い降り、啓は濁った瞳でそれを拾い上げる。
(…あのいけ好かない男を思い出しちまった)
ウィルソンを庇うように壁になって、まるで自分のもののように扱う男。
(あいつは一体ウィリアムの何なんだ?何故帝国の警察と一緒にいた?)
「ヒィイ!こ、殺さないでくれ!」
老人は可哀想に恐怖で足が砕けヘタレ込んでいる。頭を必死に守るようにして啓に命乞いするのだ。武器を持たず、帝国民にいいように扱われても沈黙を、そういう奴がいたから帝国に全て奪われた。
「…この死体、片付けてくれませんか」
「や、やめてくれぇ!」
「……」
混乱しているのだろう老人の胸ぐらを掴み、再度お願いをする。
「おい売国奴!このゴミを捨てておけって言ってんだ。……よろしくお願いしますね」
そう吐き捨てて、啓はかつて自分たちの家だった場所に足を踏み入れる。中にいる帝国民は全て排除しておかなければ。
「…お前何してる」
湯気の中から出てきたノエルを待ち構えていたのはアサルトライフルを抱えて地べたに座るウィルソンだ。
「悪い。お前が出てくるのを待ってた」
「……で?出てきたが。」
裸を見られて何かある訳では無いが、彼に意識されていないのだと突きつけられて残念な気持ちになる。
ノエルはタオルで雑に体を拭き、さっさと下着を穿く事にした。
「随分派手な下着だ。どこかのブランドか」
ウィルソンはまじまじと下腹部を見てそう呟いた。たしかにノエルが選ぶものはどれも世間一般的には派手と言われるものだ。
「なんだ?俺の下着の色でも確かめたかったのか?それにしては物騒なものを持ち歩いているみたいだが」
「…何だか誰かに見られているような気がしてな。気のせいだとは思うがね」
ノエルは退室することもなく座ったままの男に視線を合わせた。よく見たら彼はとても不安そうな顔をして、拳銃を握る手が震えている。
「部屋中探し回って無かったんだろう?」
「ああ。そうだな。……神経が過敏になっているだけかもしれない。」
「大丈夫か?」
男の頬を優しく撫でるといつもよりひんやりしている。彼は「うーん…?多分な」と頼りなく笑った。光が指さぬ虚ろを極めた瞳を一体何が濁らせたのか。
「…そうか。」
その体を、心を抱きしめて不安を全て自分に移せたらいいのに。その感情はただの恋では収まりが悪い。だからと言ってそれが何なのかまでは分からず、ノエルはただその頭を優しく撫でた。
「お前は私の頭が好きだよな。誰にでもするのか」
「いや、そんなことはないと思う。」
「疑問に思ったんだが、お前は先ほど『私たちの関係ではこの位がちょうどいい』と言って私に何もしなかったよな」
「…そうだな」、ノエルはやましさから視線を右方向へ逸らす。
「じゃあ今までのソレはなんだったんだ?てっきり私はお前の中の慰めが口付けなのかと思っていた」
言動と行動の矛盾点を早速見つけられたようだ。どうやって男の気を惹くかに囚われ辻褄が合わなくなっていた。
「俺は気まぐれな時がある。今日は何となくというか…」
その苦し紛れの言い訳が通じるはずはない。「さっきは風呂に入っていなかったから悪いと思っただけだ」と思いついたことを口にした。
このままではまた気持ちの悪い感情を向けた男として距離を置かれてしまう。積み上げてきたものが一から、マイナスからになってしまうのはノエルは嫌だった。
何か言わなくては。一言でも多く。
「それに最近物忘れが多い。」
「……それに…………」
「……」
最後に残るのは無言である。
彼はグイッと人差し指でノエル寄った眉間のシワを伸ばした。
「…まあいいがね。そういう事にしておくよ」と仕返しとばかりに濡れた頭をわしゃわしゃと撫で回すのだ。撫でた経験はあっても撫でられた経験は極めて少ないからかされるがままだ。
(…いいのか)とホッとするだけでなく、この先隠し通さなければならぬ恋慕を更に膨らませていつ破裂しても不思議ではない状況だ。
シャワーから出たばかりだからか、体の熱が下がらない。放出されぬ熱に頭がクラクラと揺さぶられる。
いつもどこか達観して、恋愛に客観的に見ている自分がいた。しかしこの男に関してはその自分が色恋に狂っているのだ。
「お前は何だか可愛い表情も出来るんだな」
「……可愛い?………冗談はやめろ」
図体もデカく可愛げのないノエルを可愛いなどと言うのは死んだ母親くらいだろうと思っていた。
「冗談じゃない。…思わず抱きしめたくなるような…放って置けないような表情だ。私に見せてくれて嬉しい。」
聖人のような男にノエルは触れたいのに触れられない。だがウィルソンはいとも容易く抱きつくと、「落ち着く」と呟いた。
今更その男の肩に触れる手がぎこちなく硬直する。暴れ狂う鼓動をその左耳で聞かれているというのは、まるで初恋のように不慣れで純粋な気持ちを晒しているような気分になった。
「居心地の悪さには自信があったが…そんな事を言うのはお前くらいだ。」
「そうか!」、ウィルソンは先程まで濁っていた瞳をキラキラと輝かせて再びノエルの頭を雑に撫でる。
「私だけなんだな。嬉しい」
体は必要以上の接触をしていない。しかしお互いの不安が打ち消されるのは心が触れているからだろう。
(恋人?家族?…名称は何だっていい。やはり俺はこの人の揺るぎない"特別"になりたい)
―ジジジ。
ささやかな幸せを噛み締めているノエルの姿を上から捉えているのは小さなレンズ。その米粒ほどのレンズに彼らは気が付くことなく脱衣所を後にした。
その男はモニターに夢中でこちらに全く関心がない。時々口元を不満げに結んでは、ソワソワと茶菓子を右手で握って粗末にしているのだ。
「課長、聞いていますか」
「…ああもちろん。スターシールドの件だろう。」
(聞いていたのか…)とローレンは顔を顰める。フェルトマイアーは手で潰した茶菓子を口に放り込んで次のお菓子に手を出した。
「……はい。西側から誘導爆弾を投下する無人航空機の確認ができました。型番は不明、おそらくお手製のものでしょう。」
「これで点検不備という線は無くなった。全く一体どこの連中が壊したんだろう」
死者が多数出ている人災に、彼は何も動揺することなくお茶を嗜む。彼は各部隊に的確な捜査方針を掲げているが、傍から見たら遊んでいるように誤解されがちである。できる人間は仕事が早く、余った時間を有効活用しているだけだ。
その他にも個人で支援金の援助を申し出て、惜しみなく金を弱者へ放出するのだ。彼はそうでなくとも普段から弱者救済のためにボランティアに勤しんでいる。
絵に書いたような聖人君子。
もしローレンが恵まれた環境で育ち、彼と同じ立場だった時同じように振る舞えるか。
(尊敬すべき上司ではあるけど…)
「ああ、そうそう。チャリティーオークションの件、上手くいってる?」
「…はい。会場の詳しい見取り図と詳しい計画書は作成しました。間違いがないか今一度確認お願い致します」
ローレンが作成したそれを彼のデータベースに転送する。見たのか見ていないのか、彼は「うんうん、いいんじゃないかな」と適当にオーケーを出す。
「そういえば君はウィルソン君が不死身だと信用出来た?」
「…血液検査の結果が『帝国美術館無差別殺傷事件』のソレと一致したと報告がありましたので、信じざるを得ません。監視プログラムの画像とも一致しましたし」
目の前でその男が不死身だと確かめた訳では無い。だがノエルが隠し匿っていたという事実も合わせてローレンは信じた。
(それに後々分かること)
「しかし何故彼の"条件"を易易と受け入れたのですか?」
チン、とフェルトマイアーはティーカップをスプーンで鳴らした。「失礼」と一言、静かに茶を啜る。
「ただでさえ不死身を飼うという事はリスクが大きい、それに加えて…」
「そうしないと彼は絶対協力してくれないよ。凶暴な不死身を協力させたいなら、望むことは全て与えるつもりでしないと」
ふふ、とフェルトマイアーは楽しそうに笑った。正直ローレンは初めて彼から『アーサー君は不死身の男を匿っている』と聞かされた時、なんて事をしてくれたんだと怒りに支配された。それは目をかけていた部下の将来を潰されたような気がしたからだ。
「…何故ノ…アーサーはあの男を匿ったりしたのか……」
「無い物ねだり?…あるいは似た者同士惹かれあったのかもしれないね」
「………納得できません」
あの不死身の男を目の当たりにした時、彼女は言い表せぬ気持ち悪さを覚えた。見えたのだ、その美しい姿の中身が直感的に。
「君は彼らの母親のようだ。隊員に優劣はつけても個人の感情は持ち込んではいけないよ。」
「課長こそ、…人の事は言えないと思いますがね」
「言うねえ。僕は気が強い女性は好きだよ。今度一緒にお茶でもどう?」
ヒラヒラと話の核心を躱す男にこれ以上は引き出せない。ローレンは「仕事が山積みですので。」と冷たくあしらって一礼、踵を鳴らしながら退室する。さっさと残った仕事を片付け次のフェーズへ移行しなければ、とその足音は忙しく遠ざかった。
「はてさて、爆弾投下の準備でもするかな。…どれだけ炙り出せるか」
フェルトマイアーはティーカップに残った最後の一口を残したまま自らも一仕事始めることにした。
赤いマークが地図上に点滅している。彼らは「ああ、生きているかな」と互いに顔を見合わせた。何せその建物は瓦礫が突き刺さり、人の気配など一切しないからだ。
「サロメ様、いらっしゃいますか!」
今にも外れそうな扉をゆっくり開けてそう声をかける。しかし暗闇の中に彼女の姿は見えない。目が慣れてぼんやりと荒れた室内の家具が浮かび上がった。慎重にドア枠を越えると、飛び出た釘にズボンの裾がびりっと切れる。
「ああ、せっかく安い給料で買ったのに…」と小言を漏らすと、後ろからドンと背中を殴られた。いや、殴ったのではなく体当たりされただけだろう。
「もー急に止まらんでくださいよー、ただでさえ暗いのに。…げ、そのパプリオンのパンツ高いんじゃないんですか?」
ライトは悲惨な状態になった裾を照らした。
「…こんなとこに着てくるんじゃなかった。」
「保証して貰えないんですか?」
「んなもんあるか!…あの脂市長は自分の娘以外どうだっていいんだよ」
危険区域に使い捨ての部下を向かわせ、自分の娘を救出するように言う奴だぞ、と二人は思っていたが口にはしなかった。だが互いに肩を竦め「さっさと連れて帰って飲みに行こう」と歩みを進める。
サロメ・バーンの救出の為、彼ら下っ端はデータベースの情報を使いここまでやって来た。やる気は全くない。ボーナスすら付かないクソみたいな任務だからだ。
一部屋根が倒壊して月明かりが差し込んでいた。この下にサロメ・バーンがいたなら助かっていないだろう。その他は酒場らしくカウンターの席や酒の残骸が散らかっている。
「にしてもなんかここ、王打会の所有する店なんですよね?襲われたりしないかな…」
「…この様子じゃ誰もいないだろうな。こう言っちゃなんだが死体だけでも回収しねぇと」
「うわッ!何かいません!?」
彼は一瞬薄闇の中、机の下にギラリと光った双眼を見た気がして、ライトを向ける。獣か?それとも王打会の人間か?……そこにはぽっかりと空白があるだけで、誰か、何かがいる訳では無い。
「馬鹿、脅かすんじゃねぇ!何もいねえじゃねーか…」
「あ、あれ~?おかしいな。何かいた気がしたんだけど…」
「あ、…あそこ入れそうだな」
一人が不意に奥の部屋を見つける。どうやら地下倉庫の入口のようだ。データベースを確認して、彼女の位置をもう一度確認する。
「方角的にはこっちですね」
入口が上手い具合にガレキで塞がれているので、二人は内心面倒に思いながらそれらを退かしていった。
「全く、なんだってこんなこと…。」
「しょうがないだろう。市長にとっちゃ原因の究明より、市民の救助より自分の娘が優先なんだ。いいからそっちの端を持ってくれ」
大きな木の柱を腕がつりそうになりながら抱えるが、全く持ち上がらない。チラリと視線を隣に向けるといるはずの同僚がいないではないか。
「……おい、どこいった?」
ゴポゴポとストローで息を吹きかけ水面を泡立てるような不気味な音。ライトをそちらに向けて、男はひっと息を飲む。
「あ゙……」
ブクブクに腫れ上がったそれは、口から血を吹き出しながらゆっくり膝を付いて倒れた。服装からして先程まで話をしていた同僚で間違いない。ビクビクと体を痙攣させ、受身も取らず床に倒れ込む、その衝撃で膨れ上がった水脹れがばちゅんと爆ぜ、血なのか体液か分からぬ液体が顔にかかった。
熱い、そして生臭い。ドロリと粘土のある液体が、肌にねっとり絡みつく。
「うわあ゙あ゙あ゙ッ!!」
闇の中で男は何が起きているのかも分からず無我夢中で出口へ方向転換を試みる。
キュッと靴が溢れた液体に滑り、生暖かい何かにぶつかった。それは地獄の底から響き渡るような低い笑い声を上げるのだ。
凄まじい握力にて絞り上げられた首。ぼうっと闇に浮かび上がった二つの双眼は限界まで開かれ、口元は三日月のように笑っている。
食料も尽き、残っているのはほんの少しの水と大量の酒。酸素が薄くなっているその倉庫の扉がゆっくりと開け放たれた時、彼女は涙でぐしゃぐしゃに崩れた顔で疲弊していた。鼻のギプスは掻きむしったせいでズレている。
「お迎えにあがりました」
聞き慣れないイントネーションでそう告げる声。照らされるライトは容赦なく彼女の目を貫いた。ゆっくりと階段を下る男は、一体どんな人物なのかわからない。
「助けに来てくれたの?」
「はい。市長が心配しておられますよ」
ヌン、と差し伸べられた手を握ると、恐ろしいほど冷たい。…まるで死んだ母親の手のようでサロメは背筋が泡立った。それにギリギリと手首を握られ痛い。
「ちょっと!痛いんだけど!アンタほんとにパパに頼まれた人?」
「ああ、すみませんね。これを見せたら信じられますか?」
男は首に下げていた社員証をライトで照らしながら見せた。そこには『エレモアシティー会計事務 モーリス・ジョンソン』と書いてある。
「さあ、危ないので手を繋ぎましょうね。外に車を回してあります」
父親が用意した人間なら問題ない、サロメは大人しくその手を握り先に進む男の後をついて行った。階段を上り、久しぶりの地上だ。しかし新鮮なはずの空気は、ツンッと鼻腔を刺し、目がシパシパして涙が滲む。
「…なんか臭くない?」
「そうですか。鼻炎なのでわかりません」
足元に転がっているのはなんだ?サロメは何かわからないままその障害物を超える。月明かりが漏れた扉、ようやく出口が現れた。スッと離れた男の手。
(帰ったらパパとちゃんと話さなきゃ…)
「後部座席にどうぞ」
その男はサロメを車に乗せるため、ドアを開いて待っている。どんな男なのか、出来ればイイ男がいいと期待したが、平凡で特徴のない顔立ちだ。がっかりしたところでふと気がついた。
(目の色が違う、猫みたい)
バンと閉められた扉。サロメは行き先が地獄だと気が付かず発進する車に身を預けた。
(…は?)
ショックで立ち尽くす啓は、暫くその汚物を呆然と眺める。半壊した壁、潰れた屋根は真っ赤で塗られて、ギラギラとしたライトが何処そこに取り付けられ、看板には酒の下手くそな絵が描いてある。
「…なんで無いんだ」
そこに住んだのはほんの少しの間だが、彼にとってはとても大切な家だった。それが何故こんなセンスの欠けらも無い見知らぬ建造物にすり変わっているのか。
『二人の家って、何だか家族って感じでいいよな。』
向けられる笑顔、笑顔、えがお。この家は啓にとって大事なものを入れる宝箱だったのに。
(……俺たちの家が…)
瓦礫を拾う隣人らしき老人に人畜無害な笑顔を向けて近づいた。本当にここが自分達の家があった場所なのか再確認しなければならない。周りはえらく変わっているので、もしかしたら住所を間違えているのかもしれないからだ。
「すみません、ここに昔二階建ての家があったと思うんですけど。こう言っちゃ何ですが、壁が蔦だらけのあばら家で」
「ああ、煉瓦の?あの家ね。…随分前に政府が買収して壊された後、会員制のバーが建てられたんだ。」
「そう、…ですか。…昔住んでたもので」
「それは気の毒に」
慣れ親しんだイントネーション、老人が王国民だとすぐに分かった。彼は落胆した啓の肩をぽんと叩き、残念そうに目を細めた。
「今の所有者は何方ですか?」
「…あ、あの人がオーナーさんだよ。」
ちょうどへしゃげた扉から出てきたいかにも輩といった風貌の男に、老人は媚びへつらうようにヘコヘコと頭を下げている。自分よりも二回り以上離れている若造にだ。
「何だって俺の店の上にだけ落ちるかね。…よぉじいさん。アンタのとこは俺の店のお陰で無傷かい」
「家は平屋の一階建てですので…」
男はずいと手を老人に向け、「保護料寄越しな」と金を要求している。
「払えよ!うちは王打会の人間とも繋がりがあるんだ、逆らったらここら一帯火の海だ」
汚い訛りに啓の笑顔は一瞬で消え去った。やはり時代がどれほど移り変わろうとも帝国民は変わらない。
「い、今はこれしか…」
差し出した端金を分捕って、男は老人の顔に唾を吐いた。それなのにヘラヘラと笑っている彼に、啓は我慢の限界だ。
「その金を返せ」
「なんだ?俺に何か文句つけようって?」と一見弱々しい啓に男は距離を詰めて威圧する。それを見てオロオロする老人は「まあまあ、勘弁してやってください。私から言って聞かせますんで…」と二人の間にやんわり割って入った。
「ああ、テメェら老人がこいつらガキに上下関係を教えるべきじゃねーか?王国民はぐずで底辺だってよ」
騒ぎを起こすつもりはなかった。だが染みついた癖というものがある。啓はスムーズにポケットから拳銃を取り出した。間抜けの警察官から奪ったそれの安全装置を外して男に向ける。
「…はは、冗談じゃねぇか」と先ほどまでイキリ散らしていた男はジリジリと後ろに下がった。そしてあろうことか背中を向けて逃げ出そうとする。いい的だ、大して狙ってもいないのにその後頭部に弾丸が一直線に向かっていく。
鳴り響いた銃声に、カラスが一斉に空に飛び立った。抜け落ちた黒い羽根がひらりと足元に舞い降り、啓は濁った瞳でそれを拾い上げる。
(…あのいけ好かない男を思い出しちまった)
ウィルソンを庇うように壁になって、まるで自分のもののように扱う男。
(あいつは一体ウィリアムの何なんだ?何故帝国の警察と一緒にいた?)
「ヒィイ!こ、殺さないでくれ!」
老人は可哀想に恐怖で足が砕けヘタレ込んでいる。頭を必死に守るようにして啓に命乞いするのだ。武器を持たず、帝国民にいいように扱われても沈黙を、そういう奴がいたから帝国に全て奪われた。
「…この死体、片付けてくれませんか」
「や、やめてくれぇ!」
「……」
混乱しているのだろう老人の胸ぐらを掴み、再度お願いをする。
「おい売国奴!このゴミを捨てておけって言ってんだ。……よろしくお願いしますね」
そう吐き捨てて、啓はかつて自分たちの家だった場所に足を踏み入れる。中にいる帝国民は全て排除しておかなければ。
「…お前何してる」
湯気の中から出てきたノエルを待ち構えていたのはアサルトライフルを抱えて地べたに座るウィルソンだ。
「悪い。お前が出てくるのを待ってた」
「……で?出てきたが。」
裸を見られて何かある訳では無いが、彼に意識されていないのだと突きつけられて残念な気持ちになる。
ノエルはタオルで雑に体を拭き、さっさと下着を穿く事にした。
「随分派手な下着だ。どこかのブランドか」
ウィルソンはまじまじと下腹部を見てそう呟いた。たしかにノエルが選ぶものはどれも世間一般的には派手と言われるものだ。
「なんだ?俺の下着の色でも確かめたかったのか?それにしては物騒なものを持ち歩いているみたいだが」
「…何だか誰かに見られているような気がしてな。気のせいだとは思うがね」
ノエルは退室することもなく座ったままの男に視線を合わせた。よく見たら彼はとても不安そうな顔をして、拳銃を握る手が震えている。
「部屋中探し回って無かったんだろう?」
「ああ。そうだな。……神経が過敏になっているだけかもしれない。」
「大丈夫か?」
男の頬を優しく撫でるといつもよりひんやりしている。彼は「うーん…?多分な」と頼りなく笑った。光が指さぬ虚ろを極めた瞳を一体何が濁らせたのか。
「…そうか。」
その体を、心を抱きしめて不安を全て自分に移せたらいいのに。その感情はただの恋では収まりが悪い。だからと言ってそれが何なのかまでは分からず、ノエルはただその頭を優しく撫でた。
「お前は私の頭が好きだよな。誰にでもするのか」
「いや、そんなことはないと思う。」
「疑問に思ったんだが、お前は先ほど『私たちの関係ではこの位がちょうどいい』と言って私に何もしなかったよな」
「…そうだな」、ノエルはやましさから視線を右方向へ逸らす。
「じゃあ今までのソレはなんだったんだ?てっきり私はお前の中の慰めが口付けなのかと思っていた」
言動と行動の矛盾点を早速見つけられたようだ。どうやって男の気を惹くかに囚われ辻褄が合わなくなっていた。
「俺は気まぐれな時がある。今日は何となくというか…」
その苦し紛れの言い訳が通じるはずはない。「さっきは風呂に入っていなかったから悪いと思っただけだ」と思いついたことを口にした。
このままではまた気持ちの悪い感情を向けた男として距離を置かれてしまう。積み上げてきたものが一から、マイナスからになってしまうのはノエルは嫌だった。
何か言わなくては。一言でも多く。
「それに最近物忘れが多い。」
「……それに…………」
「……」
最後に残るのは無言である。
彼はグイッと人差し指でノエル寄った眉間のシワを伸ばした。
「…まあいいがね。そういう事にしておくよ」と仕返しとばかりに濡れた頭をわしゃわしゃと撫で回すのだ。撫でた経験はあっても撫でられた経験は極めて少ないからかされるがままだ。
(…いいのか)とホッとするだけでなく、この先隠し通さなければならぬ恋慕を更に膨らませていつ破裂しても不思議ではない状況だ。
シャワーから出たばかりだからか、体の熱が下がらない。放出されぬ熱に頭がクラクラと揺さぶられる。
いつもどこか達観して、恋愛に客観的に見ている自分がいた。しかしこの男に関してはその自分が色恋に狂っているのだ。
「お前は何だか可愛い表情も出来るんだな」
「……可愛い?………冗談はやめろ」
図体もデカく可愛げのないノエルを可愛いなどと言うのは死んだ母親くらいだろうと思っていた。
「冗談じゃない。…思わず抱きしめたくなるような…放って置けないような表情だ。私に見せてくれて嬉しい。」
聖人のような男にノエルは触れたいのに触れられない。だがウィルソンはいとも容易く抱きつくと、「落ち着く」と呟いた。
今更その男の肩に触れる手がぎこちなく硬直する。暴れ狂う鼓動をその左耳で聞かれているというのは、まるで初恋のように不慣れで純粋な気持ちを晒しているような気分になった。
「居心地の悪さには自信があったが…そんな事を言うのはお前くらいだ。」
「そうか!」、ウィルソンは先程まで濁っていた瞳をキラキラと輝かせて再びノエルの頭を雑に撫でる。
「私だけなんだな。嬉しい」
体は必要以上の接触をしていない。しかしお互いの不安が打ち消されるのは心が触れているからだろう。
(恋人?家族?…名称は何だっていい。やはり俺はこの人の揺るぎない"特別"になりたい)
―ジジジ。
ささやかな幸せを噛み締めているノエルの姿を上から捉えているのは小さなレンズ。その米粒ほどのレンズに彼らは気が付くことなく脱衣所を後にした。
その男はモニターに夢中でこちらに全く関心がない。時々口元を不満げに結んでは、ソワソワと茶菓子を右手で握って粗末にしているのだ。
「課長、聞いていますか」
「…ああもちろん。スターシールドの件だろう。」
(聞いていたのか…)とローレンは顔を顰める。フェルトマイアーは手で潰した茶菓子を口に放り込んで次のお菓子に手を出した。
「……はい。西側から誘導爆弾を投下する無人航空機の確認ができました。型番は不明、おそらくお手製のものでしょう。」
「これで点検不備という線は無くなった。全く一体どこの連中が壊したんだろう」
死者が多数出ている人災に、彼は何も動揺することなくお茶を嗜む。彼は各部隊に的確な捜査方針を掲げているが、傍から見たら遊んでいるように誤解されがちである。できる人間は仕事が早く、余った時間を有効活用しているだけだ。
その他にも個人で支援金の援助を申し出て、惜しみなく金を弱者へ放出するのだ。彼はそうでなくとも普段から弱者救済のためにボランティアに勤しんでいる。
絵に書いたような聖人君子。
もしローレンが恵まれた環境で育ち、彼と同じ立場だった時同じように振る舞えるか。
(尊敬すべき上司ではあるけど…)
「ああ、そうそう。チャリティーオークションの件、上手くいってる?」
「…はい。会場の詳しい見取り図と詳しい計画書は作成しました。間違いがないか今一度確認お願い致します」
ローレンが作成したそれを彼のデータベースに転送する。見たのか見ていないのか、彼は「うんうん、いいんじゃないかな」と適当にオーケーを出す。
「そういえば君はウィルソン君が不死身だと信用出来た?」
「…血液検査の結果が『帝国美術館無差別殺傷事件』のソレと一致したと報告がありましたので、信じざるを得ません。監視プログラムの画像とも一致しましたし」
目の前でその男が不死身だと確かめた訳では無い。だがノエルが隠し匿っていたという事実も合わせてローレンは信じた。
(それに後々分かること)
「しかし何故彼の"条件"を易易と受け入れたのですか?」
チン、とフェルトマイアーはティーカップをスプーンで鳴らした。「失礼」と一言、静かに茶を啜る。
「ただでさえ不死身を飼うという事はリスクが大きい、それに加えて…」
「そうしないと彼は絶対協力してくれないよ。凶暴な不死身を協力させたいなら、望むことは全て与えるつもりでしないと」
ふふ、とフェルトマイアーは楽しそうに笑った。正直ローレンは初めて彼から『アーサー君は不死身の男を匿っている』と聞かされた時、なんて事をしてくれたんだと怒りに支配された。それは目をかけていた部下の将来を潰されたような気がしたからだ。
「…何故ノ…アーサーはあの男を匿ったりしたのか……」
「無い物ねだり?…あるいは似た者同士惹かれあったのかもしれないね」
「………納得できません」
あの不死身の男を目の当たりにした時、彼女は言い表せぬ気持ち悪さを覚えた。見えたのだ、その美しい姿の中身が直感的に。
「君は彼らの母親のようだ。隊員に優劣はつけても個人の感情は持ち込んではいけないよ。」
「課長こそ、…人の事は言えないと思いますがね」
「言うねえ。僕は気が強い女性は好きだよ。今度一緒にお茶でもどう?」
ヒラヒラと話の核心を躱す男にこれ以上は引き出せない。ローレンは「仕事が山積みですので。」と冷たくあしらって一礼、踵を鳴らしながら退室する。さっさと残った仕事を片付け次のフェーズへ移行しなければ、とその足音は忙しく遠ざかった。
「はてさて、爆弾投下の準備でもするかな。…どれだけ炙り出せるか」
フェルトマイアーはティーカップに残った最後の一口を残したまま自らも一仕事始めることにした。
赤いマークが地図上に点滅している。彼らは「ああ、生きているかな」と互いに顔を見合わせた。何せその建物は瓦礫が突き刺さり、人の気配など一切しないからだ。
「サロメ様、いらっしゃいますか!」
今にも外れそうな扉をゆっくり開けてそう声をかける。しかし暗闇の中に彼女の姿は見えない。目が慣れてぼんやりと荒れた室内の家具が浮かび上がった。慎重にドア枠を越えると、飛び出た釘にズボンの裾がびりっと切れる。
「ああ、せっかく安い給料で買ったのに…」と小言を漏らすと、後ろからドンと背中を殴られた。いや、殴ったのではなく体当たりされただけだろう。
「もー急に止まらんでくださいよー、ただでさえ暗いのに。…げ、そのパプリオンのパンツ高いんじゃないんですか?」
ライトは悲惨な状態になった裾を照らした。
「…こんなとこに着てくるんじゃなかった。」
「保証して貰えないんですか?」
「んなもんあるか!…あの脂市長は自分の娘以外どうだっていいんだよ」
危険区域に使い捨ての部下を向かわせ、自分の娘を救出するように言う奴だぞ、と二人は思っていたが口にはしなかった。だが互いに肩を竦め「さっさと連れて帰って飲みに行こう」と歩みを進める。
サロメ・バーンの救出の為、彼ら下っ端はデータベースの情報を使いここまでやって来た。やる気は全くない。ボーナスすら付かないクソみたいな任務だからだ。
一部屋根が倒壊して月明かりが差し込んでいた。この下にサロメ・バーンがいたなら助かっていないだろう。その他は酒場らしくカウンターの席や酒の残骸が散らかっている。
「にしてもなんかここ、王打会の所有する店なんですよね?襲われたりしないかな…」
「…この様子じゃ誰もいないだろうな。こう言っちゃなんだが死体だけでも回収しねぇと」
「うわッ!何かいません!?」
彼は一瞬薄闇の中、机の下にギラリと光った双眼を見た気がして、ライトを向ける。獣か?それとも王打会の人間か?……そこにはぽっかりと空白があるだけで、誰か、何かがいる訳では無い。
「馬鹿、脅かすんじゃねぇ!何もいねえじゃねーか…」
「あ、あれ~?おかしいな。何かいた気がしたんだけど…」
「あ、…あそこ入れそうだな」
一人が不意に奥の部屋を見つける。どうやら地下倉庫の入口のようだ。データベースを確認して、彼女の位置をもう一度確認する。
「方角的にはこっちですね」
入口が上手い具合にガレキで塞がれているので、二人は内心面倒に思いながらそれらを退かしていった。
「全く、なんだってこんなこと…。」
「しょうがないだろう。市長にとっちゃ原因の究明より、市民の救助より自分の娘が優先なんだ。いいからそっちの端を持ってくれ」
大きな木の柱を腕がつりそうになりながら抱えるが、全く持ち上がらない。チラリと視線を隣に向けるといるはずの同僚がいないではないか。
「……おい、どこいった?」
ゴポゴポとストローで息を吹きかけ水面を泡立てるような不気味な音。ライトをそちらに向けて、男はひっと息を飲む。
「あ゙……」
ブクブクに腫れ上がったそれは、口から血を吹き出しながらゆっくり膝を付いて倒れた。服装からして先程まで話をしていた同僚で間違いない。ビクビクと体を痙攣させ、受身も取らず床に倒れ込む、その衝撃で膨れ上がった水脹れがばちゅんと爆ぜ、血なのか体液か分からぬ液体が顔にかかった。
熱い、そして生臭い。ドロリと粘土のある液体が、肌にねっとり絡みつく。
「うわあ゙あ゙あ゙ッ!!」
闇の中で男は何が起きているのかも分からず無我夢中で出口へ方向転換を試みる。
キュッと靴が溢れた液体に滑り、生暖かい何かにぶつかった。それは地獄の底から響き渡るような低い笑い声を上げるのだ。
凄まじい握力にて絞り上げられた首。ぼうっと闇に浮かび上がった二つの双眼は限界まで開かれ、口元は三日月のように笑っている。
食料も尽き、残っているのはほんの少しの水と大量の酒。酸素が薄くなっているその倉庫の扉がゆっくりと開け放たれた時、彼女は涙でぐしゃぐしゃに崩れた顔で疲弊していた。鼻のギプスは掻きむしったせいでズレている。
「お迎えにあがりました」
聞き慣れないイントネーションでそう告げる声。照らされるライトは容赦なく彼女の目を貫いた。ゆっくりと階段を下る男は、一体どんな人物なのかわからない。
「助けに来てくれたの?」
「はい。市長が心配しておられますよ」
ヌン、と差し伸べられた手を握ると、恐ろしいほど冷たい。…まるで死んだ母親の手のようでサロメは背筋が泡立った。それにギリギリと手首を握られ痛い。
「ちょっと!痛いんだけど!アンタほんとにパパに頼まれた人?」
「ああ、すみませんね。これを見せたら信じられますか?」
男は首に下げていた社員証をライトで照らしながら見せた。そこには『エレモアシティー会計事務 モーリス・ジョンソン』と書いてある。
「さあ、危ないので手を繋ぎましょうね。外に車を回してあります」
父親が用意した人間なら問題ない、サロメは大人しくその手を握り先に進む男の後をついて行った。階段を上り、久しぶりの地上だ。しかし新鮮なはずの空気は、ツンッと鼻腔を刺し、目がシパシパして涙が滲む。
「…なんか臭くない?」
「そうですか。鼻炎なのでわかりません」
足元に転がっているのはなんだ?サロメは何かわからないままその障害物を超える。月明かりが漏れた扉、ようやく出口が現れた。スッと離れた男の手。
(帰ったらパパとちゃんと話さなきゃ…)
「後部座席にどうぞ」
その男はサロメを車に乗せるため、ドアを開いて待っている。どんな男なのか、出来ればイイ男がいいと期待したが、平凡で特徴のない顔立ちだ。がっかりしたところでふと気がついた。
(目の色が違う、猫みたい)
バンと閉められた扉。サロメは行き先が地獄だと気が付かず発進する車に身を預けた。
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