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第1章 はじまりの街 編
034 懲役1年又は罰金100万円 <04/04(木)AM 09:24>
しおりを挟むはじまりの街[スパデズ]での目標であった『LV9へのLVUP』と『僧侶への昇格』を達成するべく、ほぼ徹夜で『イルカモネ山猫』LV5にいたぶられた俺は、なんとか両方とも達成したのだが、その代償として短時間の睡眠後、反動?により最悪の目覚めを迎えた。
その後クリスタル前での売買募集の中に「『青銅の長剣』を9,000Gで買いたい」…という内容を見つけ、悩んだ末に売却。思いついた事があったのでペットショップへと足を運んだのだった。
「よう兄ちゃん、どうした? 返品か?」
ペットショップに入るなり、代わり映えのしない量産型おっさん3号がそう言った。
「やはりその手が?……」
「も~、ご主人さまっ!!」
ミケネコさんが背中の毛を逆立て、フーッと威嚇してくる。
だから冗談だよ… そんな青筋立てて睨まんでも。
「いや、ペットフードの……量り売り? とか無いかな~と」
「あぁ、出来るぜ? どれにするんだ?」
おぉ、使えるなおっさん。え~と? どれだったっけ? ペットフードの棚に行き、やっぱり興奮気味のミケネコさんを抱えてたずねてみる。
「いつも食べてるのは、どれだった「これっ」」
またも喰い気味にミケネコさんが、右前足をタンッと台に乗せ、≪右から4番目≫の茶色っぽいカリカリした物を指した。
はて? 買った時は確か……3番目だった様な? 場所を変えたのか?
念のためミケネコさんに確認しておいて正解だったな。間違ったのを詰めて、俺オリジナルブレンドにしてしまった日には、ミケネコさんが怒り狂って、七代祟られかねない。
……そう、俺は違いの≪わからない≫男、違いのわからない男のポンコツブレンド。ミケネコさん、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム必至である。
「まぁ追加じゃなくて、別のにしても「これ~!」」
う~ん、ミケネコさんも「ええぃ、開拓精神とか知るかっ。食べたい物を喰うんだよっ!」…派らしいです、気持ちはわかる。
そんな『揺るがない決意』を見せるミケネコさんを地面に降ろし、『インベントリ』から60%に減った、バリ好きー(お得用)の袋を取りだした。
「それじゃおっさん …あの『右から4番目』のを、この袋一杯に詰めてくれ」
「あぁわかった」
量産型おっさん3号は店の奥に行って(お得用)より、さらに大きい袋を持って帰ってきた。
よくある感じの計量器、はかりの様なモノに、まず俺の渡したバリ好きー(お得用)の袋を乗せて計り、それから持ってきた大袋からコップの様な物で1杯ずつ詰めていく。
最後に目盛りを見ながら少しずつ調整し、それが終わってからバリ好きー(お得用)の袋と、大袋の口を縛り直す。
「300Gだな」
ふむ? 800Gで40%減っていたのだから、320Gのはずだが……
『量り売りだから安い』のか? それとも少し『おまけ』してくれたのだろうか?
…ともかく(お得用)よりも『さらに安い』のは良い、今後も『量り売り』にしてもらおう。
幸い? 『インベントリ』は時間が止まってる? みたいだし… ふにゃふにゃに湿気たりする心配も無いだろう。常にカリカリした状態で、ミケネコさんも大満足に違いない。
カウンターの上の小皿に300Gを置いて代金を支払ってから、満タンになったバリ好きー(お得用)を受け取り、インベントリに放り込む。
「毎度~」
量産型おっさん3号の今回の役目は終わった。ペットショップにもう用は無い。
さらばおっさん。そうして俺は『ペットショップ』を後にした。
「これでまた20回しあわせになれるぞ」
「20かい~♪」
ミケネコさんは上機嫌で尻尾をウネウネとウェーブさせている。
少し額をコリコリしてやった。ミケネコは くすぐったそうに目を閉じる。
「………」さて、これで消費した物はかなり補充した事になるが… そうだな、ついでだし『干し肉』も1,000G分ぐらい買っておくか。なんだかんだで癖になる味だ。
ちなみに この『干し肉』は、『バルーンラビット』LV1のレアドロップ『風船兎の肉』である。『レア』ではあるが、初級冒険者に大人気のモンスターであるので大量に集まる。
そのため『1切れ50G』とお手ごろ価格なのだが、材料が『バルーンラビット』であるので、当然はじまりの街[スパデズ]でしか売っていない。まぁ他の街には≪もっと美味しい物≫を売っているわけなのだが、お値段がその分張ってしまうのだ…安い事は素晴らしい。
逆に? ミスターチキンは各都市にある。『伯爵レグホン』などの『ニワトリ種?』は、大陸にも適当に生息しているので、どうにか同額で提供しているのだろう。
そんなわけで南に向かい、前回と同じ店で『干し肉』を20切れ…1,000G分購入し、『インベントリ』に放り込んだ。
視界の右下の方へ意識を向けると<04/04(木)AM 10:03>と表示されていた。
「さて、そろそろ いい頃合いだろう。出会いの街[ヘアルツ]へ向かうぞ」
「へあるつ~?」
「あぁ、まぁ次の街、拠点だな」
「ふ~ん?」
「まぁ行けばわかる。とりあえず西口に行くぞ」
「は~い?」
ミケネコは首を傾げていてピンと来ていない様だが、実のところ俺もこの世界での 出会いの街[ヘアルツ]が、一体どんな感じなのか? はわからない。
この世界も基本的には大体ゲームと同じ様ではあるのだが、『視点が固定されていた』ゲーム時代には、絶対に見られなかった『建物の裏側』が見られたりして、色々と違いを感じる事がある。
まぁともかく はじまりの街[スパデズ]で、『旅立ち』と言えば『西口』だ。
さっさと行って募集とかを見ていよう。
『西口広場』にやってくると10時過ぎという事もあり、おそらく俺と同じ目的のパーティ、プレイヤーで活気に満ちていた。
とりあえず北口の時と同じ様に、広場の片隅の『ベンチ』に座ると、ミケネコが俺のヒザの上に飛び乗って丸くなったので、その背中を撫でつつ募集を眺める。
「LV10以上の方~ 10kで[ヘアルツ]まで護衛して下さい」
「出会いの街[ヘアルツ]まで一緒に行きましょう。誰でも~@3」
「誰か『伯爵レグホン』、一緒に狩りませんか~」
「詳しい人、別のクリスタルの街? まで連れていってください。LVは9です」
…等々だ。当然西口なので『伯爵レグホン』LV3の募集もあるが、まぁ少しLVが上がれば、1人でも狩れる相手なのでやはり 出会いの街[ヘアルツ]関連が多い。
最後のプレイヤーは、おそらくTJO未経験者で、LV9になった途端『ココのクリスタルでは、LVUP出来なくなってしまった』から途方に暮れている…とかなのだろう。
「………」ところで俺はゲーム時代から大体ソロだったのだが、この手の募集には参加した事が無い。何故かというと、『勝手に付いて行っていたから』…である。
ご存知の通り、TJOのゲーム時代の『画面範囲は、おおよそ20m』である。
そしてこの20mというのは、モンスターのPOP『不可能』範囲でもある。
つまり相手パーティの最後尾のプレイヤーが、俺の画面に表示されるか、されないか…の辺りをついていくと、向こうのパーティ全員の20m範囲 + 俺の20m範囲が、モンスターPOP不可能範囲となり、旅の安全性がグンと高まるのだ。
それから前を歩いているパーティの方が、当然モンスターとの接触率は高いので、俺は左右と後方を特に注意していれば良い。…せこくないぞ? 頭脳プレイなんですよ?
これは『フィールドPOP宝箱』の時とは、全く≪逆の考え方≫になる。あの場合はリスクを上げ、早朝、夜間など、他のプレイヤーが少なく、宝箱のPOP不可能範囲と重ならない様に探していたわけだ。
今回は、なるべく人が多い昼前~日中で、しかも≪多くのパーティが移動する≫時を狙い、安全性を高める。これは相手側にとってもリスクが減るので、お互い様でもある…はず。まぁ俺が一方的に付いていくだけだが。
また、俺はもう大体の街、村などの場所がわかってるから関係無いのだが…
『知らない街や土地』に行く場合は、知っているプレイヤーに(勝手に)付いて行くだけで、道案内にもなってくれて便利だった…… せこくない。
まぁそういったわけなのだが……
当面の一番の問題は、『リアルっぽくなってしまった』事なのだ。つまり『20m後方』というのは、『画面外』…では無く、『振り向けば俺が居る』…状態なのである。
……ストーカー≪ばればれ≫じゃないすか! やだ――――!
さて、どうしたものか… 「誰でも~」というのは一見すると優良物件なのだが、
・自分のLVが高い、又は詳しいから『誰でもドンと来い』な場合と、
・自分のLVが低い、又は良く知らないから『人のLVなどに文句を言えないので誰でも』……などという場合がある。
また『誰でもいい』という事は、集まったメンバーも玉石混交なので、結局全員がLV1で、誰も目的地に詳しく無かった…などという事も
……ありえなくなくもなくもなくってよ?
…そんな事を『考えながら』、募集をぼ~っと『眺めつつ』、ミケネコの背中をサラ~っと『撫で続けていた』。…なにげにマルチタスクだな、生産性ゼロだが。
ミケネコさんも退屈なのか、時折あくびをしてはウトウトしている。
う~ん… やはり2パーティぐらいが出発する時に、タイミングを合わせて付いていくか? しかし付いていってるのはバレバレだろうしなぁ…… う~む。
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LV:9(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:8,465G
武器:なし
防具:布の服
所持品:9/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×24、バリ好きー(お得用)100%、樽(中)100%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ
「ご主人さま~、さぶたいとる、なに~?」
「ストーカーアカン」
「すとーかーあかん~?」
「この物語はフィクションです。」
「ふぃくしょん~?」
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