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第2章 出会いの街 編

064 ”夢”の合わせ技 <04/05(金)PM 02:39>

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 ※※※ 注意 ※※※

 ただいま [夢の洞窟] 中です。


 大量だったり、黒かったり、テカってたり…そういうのが苦手な方は、しばらく読み飛ばしていただいた方が良いかと思います。ご注意下さい。

 [夢の洞窟]終了まで『目印』として、『無理矢理サブタイトルに”夢”の文字を付けていこう』と思います。よろしければ参考にして下さい。

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 出会いの街[ヘアルツ]の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]を探索中の俺達3人は、『最初の小部屋』で宝箱を2つ、『次の小部屋』で更に2つの宝箱を発見し、『G百足』LV18の急襲を受けるも撃退し、合計4つのアイテムを入手した。
 続く3つ目の『中部屋』で、さらに3つもの宝箱を発見し、まず周囲の大量の『オイシイ』モンスター『Gカマド』LV16を、『条件』を満たした『狂戦士』…ケイ1人の『無双』により一掃し、ドロップと宝箱の回収も無事に終了したのだった。


「さっさと次に行くぞ」
 ヒイラギがアイテムを回収したのを見て、ケイはすでに部屋の出口へ向かおうとしている。

「そうだな」
「了解です」
 この『中部屋』は色々と大量だった。しかし今はもう”宝箱”も無いし、『Gカマド』LV16も居ない。長居しても仕方が無いだろう。

 「………」そう言えば… ここまで『G竈』に1体しか遭遇しなかったのは、この部屋で「大量発生してしまったから」だったのだろう。

 以前に話した様にモンスターには、ダンジョン、階層毎に『設定されたMAX生息数』というモノがある。『ランダム』や『無制限』にしてしまうと、このダンジョンの場合、大量にうごめくのが『中ボス』扱いの『G百足』LV18になってしまう…かもしれない。
 そんな事になると『適正LVのプレイヤー』程度では、『翌月になってMAPが新生される』まで、とてもダンジョンに入れないだろう。「月が変わって、おs…挑戦よっ!」

 そのため、このダンジョンだと『Gフライ』、『G亀』、『Gブラック』の3種は『大量』に、『G竈』は10~15体程度? 『G百足』が3~5体程度? ぐらいになっている…はずだ。
 正確なところは分からないが……
≪少なくなるほど≫補充の為に、POP(出現)率が上昇し、
≪多くあふれて≫『MAX生息数』に近付くほど、POP率は減少している…らしい。
(これにより狩りつくされたり、大量にあふれ過ぎたり、≪しにくく≫なっている)

 ただし この[夢の洞窟]の3種の様に、『異常なPOP率』になっていて「常にMAX数に近い」とか、はじまりの街[スパデズ]の『イルカモネ山猫』のレアPOP『トシマ山猫』の様に「常にPOP率が低い」 …などの例外はある。

 しかし『ダンジョン、階層毎に設定されている』だけで、部屋毎…などには≪なっていない≫。そのため「たまたま『この中部屋』で『G竈』が大量にPOP(出現)してしまい、MAX生息数に近くなり、他の通路、部屋ではPOPしにくく、又は出来なくなり、見かけなかった」 ……と推測出来るわけだ。


 ケイを先頭に『中部屋』を出て、T字路を西(←)に進みはじめる。
 この虫通路も狭めで、緩やかに左へカーブしていて先の様子はよくわからない、…いやまぁ”ウジャウジャ”、”ワサワサ”の『虫地獄』なのは見るまでも無く わかってますよ?

 例によって混雑して大渋滞なので移動速度は、かなりゆっくりだ。「プ~ン」、「ガサガサササ…」、「バサーッ…」「キチキチキチ…」「ブーン」と大騒ぎである。
 うぎぎぎ…せっかく回復したSAN値がまた減少してしまう。
(※TJOにSAN値や正気度といった概念はありません)


「む!」
 と、ケイが手で『止まれ』の合図をする。
それを見て俺とヒイラギは立ち止まり、黙ってケイの様子をうかがう。

「『G百足』が2体だ」
 小声でそう言いながら、ケイが指さした方を見ると、3種の虫達がワサワサ退散していった後の、右手(北)側の壁に『G百足』LV18が2体、2mほどの間隔を空けて張り付いていた。まだこちらには気付いていない様だ。

「とりあえず罠を調べとくか …探知:罠[トラップディテクション]」
 ヒイラギが周辺の罠を調査する。

「あ~、南西の壁の向こう13mほどに、≪例の≫罠LV32の『スライム』がある…だけだな」
 そう言えばスライムがある(居る?)んだった。MAPを確認すると ぐる~っと『スライム』の居る地点、を囲む様に周って来た感じだ。円周の中に部屋があるパターンだろうか?

「俺達は少し戻って待ってるから、ケイは何とか1体だけ誘い出して戻ってこい」
 と『リーダー』のヒイラギが作戦を立てる。まぁ『壁役』が『誘い出し』をやるのが無難だろう、憎しみヘイト管理もスムーズに出来る。

「わかった」
 ケイが〈通常状態〉のまま≪じりじり≫と2体の方へ近寄っていく。
俺達は通路を戻って戦闘に備える…まぁ俺は(略。
 見ると奥の方の『G百足』は上(天井)側を向いている。この隙に手前側の『G百足』がケイに気付いてくれれば、上手く『各個撃破が狙える』だろう。

「!! …GYOGYOOoo!」
 手前側の『G百足A』がケイに気付いて威嚇いかくの声、音? をあげた。ケイはすぐさま俺達の方に戻りはじめる。
(※混乱を避けるため、これより手前の『G百足』をA、奥の方をBと呼称する)
 『G百足A』の声を聞いて、少しの間『G百足B』が周囲を見回した様だが、すばやく逃走したケイは『G百足B』にはタゲ(攻撃対象ターゲット)られなかった様だ。

 すでにかなり戻っていたケイは、丁度『G百足AB』達が居た地点と、俺達がいる地点との中間地点ほどで〈戦闘状態〉に切り替えた。戦闘BGMが流れはじめる。

「よし、上手くやったな」
 ヒイラギも〈戦闘状態〉に切り替え、腰の『鋼のメイス』を右手に持ち、左手に『鋼の小盾バックラー』を持った。『鋼の小盾バックラー』は通常時には、左腕にベルト? を通す形で、左ひじ辺りに装備? している。


 ケイは俺達のすぐ近くまで戻って来ると、振り返って…追って来る『G百足A』の方を向いて『棒立ち』になる。
 『狂戦士』なので、まずは『30%以上のダメージを食らわなければ』ならない。

「GYOOoooo!」
 追ってきた『G百足A』が頭部の『毒牙』でケイに『噛み付き』攻撃をしかけてくる。

 「………」この後、俺がダメージを回復して、ケイが攻撃して『本FA』を取ってから、ヒイラギが攻撃、後はケイが攻撃後に、ヒイラギが追撃を入れていく…という予定だ。

 ガブッっ! ズブシューッ!(ピカッ)…『G百足A』の『毒牙』で噛み付かれた瞬間、鈍い音が響き、ケイの左肩から大きく『血しぶき』があがり、そして一瞬≪眩しく光る≫。…クリティカルヒットだ。

「うがあああぁぁぁっ!!」
「ケイっ!」
 ケイは激痛で苦痛の声を漏らし、その場に崩れ落ちた。ケイの身体全体からシュワシュワと、水色の煙(蒸気?)の様なモノが立ち上っている。
 HPゲージを確認すると「80%の大ダメージ」を食らって、ケイのHPバーが≪激しく点滅≫している。慌てて治癒魔法をかけた。

「…治癒魔法[ヒーリング]」
 『G百足A』はケイを発見しただけ…つまりまだ『仮FA』である。ヒイラギは迂闊うかつに手を出す訳にもいかず、右手の『鋼のメイス』を握り締めて”ぐっ”とこらえている。

 「………」この『HPバーの激しい点滅』は、俺が70%のダメージを食らった時の、眼前が真っ赤になり、心臓音がバクバクと鳴っていた…あの『危険演出』中の状態だ。
 あの時の俺も…オプション設定で『危険演出表示』をONにしたプレイヤーから見れば、この状態だったはずである。

 俺達『回復職』は「回復優先度が一目でわかる」様に、この『危険演出表示』を『ON』にする訳だ。「自分が危険なのを知る為では無い」って事である。
 まぁ『自分がピンチ』なのは、”こんなもん”無くても分かるからな。
(特に『痛み、苦しみ』がある…この世界なら尚更だ)


 治癒魔法によりケイのダメージが回復していく。しかし『わずかに全快しなかった』。
 どうやら俺の治癒魔法1回で、ケイは77~8%ほど回復していたらしい。ともかく≪ほぼ全快≫したのを見て、ヒイラギもほっと安堵あんどした様だ。

 「………」俺は1回の≪回復量が45%だった≫。しかしおそらくLVUPで、42~3%くらいに落ちているハズだから、ケイのMAXHPは『俺の半分ちょっと』程度しか無い? という事になる。まぁ俺が「MAXHP増やしすぎー」 …とも言えるか。

 TJOも序盤には、そこまで強力な『防御貫通攻撃』を仕掛けてくるモンスターは居ない。しっかりと『鎧や盾などの防具』を購入して装備しておけば、『VITが0』でも『LVUP時のHP増加』でやっていける。

 無論VITに振れば”安定感”が増すのだが、STRや、INT上昇による『攻撃力の増加』は、『戦闘時間の短縮』に繋がり、結果として『被弾によるダメージも減る』ので、「攻撃は最大の防御」…が成り立つ。
 『戦闘職』が俺の様に≪MAXHPだけ≫増やしても、いつまでも敵を倒せず被弾しまくって『無意味』という事だ。まずは「倒せ」である。

 しかし終盤、難易度が上がり、強力な『防御貫通攻撃』を仕掛けてくるモンスターがあらわれはじめると、VIT不足による『MAXHPの低さ』は、時に≪致命的な弱点≫となる。
 ゲーム時代でも、「VITはMAXHPが増えるだけだしーwww」と馬鹿にしていたプレイヤーが、高LVになって、特定の敵に出くわす度に「大ダメージ連発」、「死亡祭り」になって涙目になっていた。
 そして高LVになるほど『なかなかLVUPしない』から、VITに振ってMAXHPを増やしたくても思う様に増やせない…という地獄を、長く味わう事になるのである。


「ぐう… すまん、助かった」
 ケイが礼を言いつつ体勢を立て直し、背中に背負った『鉄の大剣』を右手で掴んで、”スッ”と抜いて、真っ直ぐ天に向かってつき上げた。
 そして左手をそっと添えて両手で構える(”蜻蛉トンボの構え”?)と、

「っりゃぁーっ!」
 と、巨大な『鉄の大剣』を、『G百足A』目がけて力一杯振り下ろす。その瞬間、

 ズガガガ――――ンッ、と爆音と衝撃音が響き渡り、『G百足A』がその場に叩きつけられて、100本の足をウゾウゾモゾモゾと不規則に動かしながら のたうち回る。そしてそこへ、

「おりゃあ~っ!」
 「”待”ってたぜェ、この”瞬間(とき)”をよォ!!※」とばかりに、ヒイラギが右手の『鋼のメイス』を思いきり振りかぶり、のたうち回っている『G百足A』に力一杯叩き付けた。
※(問い1)この時のヒイラギの様子から、ヒイラギのどんな気持ちがわかりますか?
(解答例)ケイが『本FA』を取ってヘイトを集め、自分が攻撃に参加出来るようになるのを心待ちにしていた様子。

 ドガンッ、と鈍い音が響き『G百足A』の硬くて堅固な外殻にヒットする。『G百足A』は(苦痛で?)少し仰け反った様に見えた。
 今度は『鋼の剣』の時のように、弾かれたり、滑ったりしていない。≪派手さは無い≫が しっかりと『衝撃』を内部へと伝えて、ダメージを与えているだろう。殴りつけたヒイラギは、すぐに『G百足A』のそばから離脱する。

 この間に、俺は再度『治癒魔法[ヒーリング]』を使用してケイを完全回復させた。
 「この数%が命に関わるかもしれない」…というのは嘘だ。治癒回数稼ぎのためである。ほぼMP満タンだったしな。

 ともかく離脱したヒイラギを見て、再び『鉄の大剣』を振り上げていたケイが、両手でしっかりと構えて振りおろす。

「うらああぁぁぁっ」
 力を込めて振りおろされた『鉄の大剣』が、

 ゴガガガ――ンッ、と爆音と衝撃音を響き渡らせ、再び『G百足A』を地面に叩きつける。重い一撃を食らった『G百足A』が苦しそうに のたうち回る。
 そこへヒイラギの追い打ち(ダウン攻撃?)が入る。

「てやあぁぁぁっ」
 振りかぶった右手の『鋼のメイス』を、力一杯『G百足A』の外殻に叩きつけた。

 ボゴンッ、と鈍い音が響き、『G百足A』が一瞬ビクンッと跳ねたかと思うと、ウゾウゾと動いていた100本の足の動きが止まり、少しずつ霞んで消滅していった。

「おぉ? 俺がトドメ(FB〔※1〕)… か?」
 というヒイラギの戸惑った様な声の後、その足元に『1,062G』と『百足硬殻』が落ちていた。


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LV:12(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,961G
武器:なし
防具:布の服
所持品:14/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2、弓(不確定名)、鉄のブーツ、棒(不確定名)


〔※1〕TJOにおいて、
 『最初の攻撃』を、『ファーストアタック』(略されてFAと呼ばれている)という。そして『トドメの一撃』を、『フィニッシングブロウ』(略されてFBと呼ばれている)という。これらはどちらも討伐時に『経験値ボーナス』が加算され獲得できる。
 戦国時代などにおいての『一番槍』や、『首級をあげる、首を取る、討ち取る』といった行為に相当する…と考えていただくとイメージしやすいかと思われる。


「(ジトー)……」
「なんだ? その目は?」
「……ご主人さま …せこい~」
「…まぁ≪回復しか≫する事が無いからな。 …それに≪MPに余裕が無い≫時は、さすがに無駄回復はしない」

「(ジトー)…………」
「それにほらっ… 一応、全快しておく方が安全だしなっ」
「(ジトー)………………」
「…回復職は、大変なんだよ……」
「せちがらい~」
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