突然、母が死にました。

山王 由二

文字の大きさ
上 下
9 / 24

8日目

しおりを挟む
 通夜と告別式を終えた私たちは、ほっとする間もなく、次なる問題へと取り掛かることにした。

 一つ目は、49日をどうするか。と言うこと。
 これに関しては、お願いするお寺は決まっているので、あとは先方に連絡してもろもろの手続きを済ませていけば良いだけだ。

 二つ目は、母の口座の凍結解除の手続き。
 口座凍結を解除するためには、相続人全員の印鑑証明書、住民票、銀行によってはさらに戸籍謄本が必要になる。この辺りは各自役所なり役所の出張所に行くなりしてもらって来れば良いだけなので、容易い。が、問題になってくるのが母の出生から亡くなるまでが記録されている戸籍謄本、証明書の類だった。
 この、いわば母の人生の軌跡ともいうべき記録を手に入れるためには、母の生まれ故郷である北海道のB市に戸籍謄本を送ってもらい、さらに母がそれまでに暮らしていた場所の役所からももらってこなければならなくなる。
 幸い、それらは郵送で頂けるもので、しかも母はB市から上京してからはずっとこの町で暮らしてきていたようなので、手に入れるのは比較的楽だった……と、兄は言っていた。
 兄は司法書士でこの手の作業を仕事として何度もこなしてきていただけあって、手際が良く、この辺も非常に助けられていた。(ありがとうよ、兄ちゃん)
 こうして集めた書類を銀行に提出しては返してもらい、また次の銀行へと提出するという作業をこなしていくことになる。が、この時点ではまだ、書類集めを開始した段階だったので、まだそこまではたどり着いていなかったのだけど。(この作業が本格的に動き出したのは、さらに2週間くらい経ってからだった)
 
 そして、三つめが母のカードの解約と、各支払いへの対処だった。
 これが実に煩雑と言うか、大変だった。
 何せうちの母、クレカだけでも5枚くらい持っていたし、口座引き落としについても複数の銀行に散らばっているため、それを把握するだけでもかなり手間取ることになったのだ。
 わかっているものから随時一覧表を作り、対処済み、開始、作業中など随時記録していって把握に努め、作業をこなしていくことになった。(この作業は私単独でおこなうことになった)

 最後に集まった香典をどうするか。だった。
 銀行に入れてしまえばよいのだが、使い勝手の良い最寄りの銀行ではすでに口座を持っていて、しかもそれは使用している。遊ばせている口座がなかったのだ。
 銀行の口座と言うものは、各支店につき、一つしか作れない。と言う原則がある。なので、これ以上口座を開設しようと思えば、別の支店に行って開設の手続きをしなければならないのだ。
 仕事の合間に上記三つの作業をしながらさらに別の支店まで言って口座を作る。しかも、その間けっこうな額の大金を持ったままで。そいつは、ちょっとキツすぎる。
 と言うことで、ダメもとでちょうどいらしていた銀行の支店長に話をしてみたところ、
 「あ、いいですよ」
 と、あっさり許可してくれた。
 なんでも原則はそうなのだが、ぶっちゃけ支店長がOK出してしまえば複数口座を持つことも有り。と言うことらしい。最も、そこにはちゃんと身元がはっきりしていることや使用用途がはっきりしていることが重要になってくるのだが。(でないと犯罪に使われてしまう。闇サイトでは口座一つ3000円くらいで売買されているらしいし)
 と言うことで、口座の件も無事クリアしたということで、私は週明けにさっそく口座を開設することとしたのだった。

 
 

 
 
しおりを挟む

処理中です...