突然、母が死にました。

山王 由二

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7日目

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 朝9時。私はまた斎場へとやってきた。告別式と火葬を行うために。
 
 I氏にご挨拶し、二階にある休憩室へと向かった。 
 親族が、弔問客が集まり、そして、朝10時。
 告別式が始まった。
 告別式もつつがなく進行していき、いよいよ出棺。この斎場に併設されている火葬場まで母を運ぶ段になった。
 最後に手向けの花を母の棺に入れていくのだが、その時にはもう、私は、いや、私たちは、涙を堪えることなど到底出来なかった。
 花を添えていく間中、兄も私も、集まってくれた弔問客の方々も涙を流し、嗚咽を漏らしていた。
 蓋が閉じられ、I氏からこの花束をお母様の上に。と、手渡された。
 母の棺の上に花束を置いた時、私はその時、最も激しく泣いた。
 わけのわからない悔しさを覚え、何度も「ちくしょう! ちくしょう!」と呟きを漏らしていた。
 出棺し、火葬場へと向かう母。そのあとを私たちは言葉なくついて行きーー

 母の身体が、火葬場の窯へと入れられていくのを、力無く見送った。

 作業用のエレベーターを思わせる窯の蓋が閉じられ、私たち遺族と親族、それから数人の弔問客が二階の控え室へと戻ることになった。
 それから約一時間、母の身体が焼き尽くされるのを待ち続けた。
 何をする事もなく、
 何も考えられず、
 ただ黙って、椅子に沈み込んでいた。
 永くもあり、そうでもないような一時間が過ぎ去り、係の方が私たちを呼びに来た。
 係に連れられ、再び火葬場へと向かう。
 蓋が開けられ、引き出された母は、真っ白な骨に変わっていた。
 この時はもう、何も感じてなかった。
 無心のまま、母の骨を骨壺に入れていき、私は母の骨壺を大事に抱え込みながら、家へと帰ったのだった。
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