雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

文字の大きさ
19 / 224
三章.雪豹の青年

46.雪豹の青年と魔法

 地面を覆う雪を操る。雪玉を作るように、魔力で固めて、ポンッと投げてみた。

「手で投げる方が、威力ある気がする……」

 雪玉が地面でくしゃっと崩れるのを見て、腕を組んで首を傾げる。母たちはどのように戦っていたのだろうかと考えて、ふと思い出したことがあった。

「そうだ! 水の状態変化を操るんだって言ってた」

 里の雪豹族たちが宴で話していたことを思い出して、スノウは近くの木を見つめる。空気中の水分を操って、水に変え、一気に凍らせる。
 木の根元付近が薄い氷で覆われた。

「おお!? スノウ様がしたんですか? 凄いですね!」
「ふふん、でしょ? でも、もっと厚みがないと、獲物の足止めもできない感じだよね」

  氷を爪先で叩く。簡単には割れないだろうけど、大型の獲物には逃げられそうだ。

「――空気中の水分を氷にするなら……」

 再び魔力を操る。水分を凝縮して凍らせて作ったのは、氷柱のように一方が尖った氷。それを矢を放つようなイメージで飛ばす。
 木の根元に張った氷を砕き、突き刺さった。

「フオッ!? え、凄! ……凄いですけど、木に刺さってたら、庭師が悲しむんじゃないですか?」
「あ……」

 スノウは木に傷をつけてしまったことを反省する。戦闘の練習に集中しすぎていた。
 しゅんと耳を垂れ、まずは氷を溶かす。傷を確認すると、細く穴が空いていた。

「庭師さんに、謝りに行く……」
「それがいいですね」

 苦笑するルイスの返事を聞いて、トボトボと歩き出す。スノウがつけた傷のせいで木が枯れてしまったらどうしよう。薬をつけたら治らないだろうか。





「――アッハッハ! スノウ様は意外とヤンチャさんやったんですなぁ! 大丈夫、大丈夫。このくらいの傷やったら、ちょいちょいのちょいで治りますからな!」

 庭師に声をかけて木の傷を見せると笑い飛ばされた。スノウはホッとして頬を緩める。垂れていた耳も立ち、尻尾がゆらりと揺れて、地面の雪を掃いた。

「どうやって治すの? お薬つける?」
「ちゃいますよ。これをこうして――」

 庭師が魔力を操ると、木の傷を指先で撫でる。傷から魔力が木に伝わっていった。ざわりと枝が揺れる。なんだか木が喜んでいるみたいだ。

「魔力で修復できるんですわ。私、樹精の一種、ドライアドですからな!」
「ドライアドさん! 凄いね、木のお医者さんだ!」

 スノウが尊敬の目で見つめると、庭師は照れたように頬を掻く。緑の髪の下で、小麦色の肌が僅かに赤くなっていた。

「ハッハッハ! いやぁ、そないに褒められても、花くらいしか渡せんですよ?」

 言いながら、手品のようにポンッと取り出されたのは黄色い薔薇のような花。トゲはないようなのでありがたく受け取る。

「スノウ様の瞳の色に似てますね」
「あ、じゃあ、アークの瞳の色もほしい!」
「よろしいですよ――ほな、これどうぞ」

 図々しいかなと思いつつ頼むと、夕陽色の薔薇のような花を差し出された。
 どこから取り出すのかと注視していたけど、全く分からなかった。取り出すというより、瞬時に生み出しているのかもしれない。ドライアドは凄い。

 キラキラと瞳を輝かせるスノウから、ルイスが花を受け取って髪につけてくれる。即席の花飾りだ。スノウは見えないけれど、似合っているのだろうか。
 庭師がニコニコと頷き、ルイスも満足そうにしているから、問題はないのだろう。

 ふと、ルイスが持つ籠を見下ろして、スノウは「あっ!」と声を漏らした。

「――南天を探すの忘れてた!」
「おや……目のない雪うさぎやな。これでも可愛いやろけど、確かに南天があるといいですな。南天はあっちの方に植えてありますよ」

 庭師が指さした方を見る。庭の奥の方にあるようだ。スノウは早くアークに雪うさぎを見せてやりたい。雪はまだ溶けないだろうけど急いで向かおう。

「分かった! 庭師さん、傷を治してくれてありがとう! これからもお仕事頑張ってね」
「ありがとさんです。スノウ様も、お元気で~」

 駆けるスノウを、庭師が微笑ましげに見送った。

感想 55

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ