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三章.雪豹の青年
82.雪豹の青年と給餌(☆)
幸せな香りが遠くなる。腹の奥がズクッと疼いた。熱い。
籠った体温を逃がすように息を吐き、愛しい香りを味わおうと深く息を吸い込む。でも、香りが薄くてもどかしい。
(アーク……アーク、どこ……?)
薄目を開くと、暗い室内に求める姿がない。じわりと視界が滲んだ。
火照った手をシーツに這わすと、ほんの僅かに温かさが伝わってくる。アークが出て行ってから、まださほど時間は経っていないらしい。
寂しさにグスグスと鼻を鳴らしながら、身体を起こす。
夜に乱れていた寝具類は、いつの間にか綺麗に整えられていた。スノウが持ってきたアークの私物はベッドに散らばり、巣を作ったままだけれど。
「――約束したのに……」
傍にいると言ってくれたのに、どうしていないのか。
熱い身体は鉛が詰まったように重くて動かしづらい。それでも、アークの姿を求めて、ベッドから足を下ろした瞬間、扉が開く音がした。同時に求めてやまなかった甘い香りがブワッと襲ってくる。
「っ、悪い。起きていたか」
「アーク……なんでいなかったの……?」
アークに手を伸ばす。サイドチェストにトレイを置いたアークが、抱き上げてくれたことで、ようやく不安が拭い去られた。でも、身体の熱は加速度的に高まっていく。
ベッドに腰を下ろしたアークの膝に跨って座り、スノウは本能的に腰を揺らした。アークの首筋に鼻を寄せ、甘い香りを胸いっぱいに吸い込むと、幸福感と共に、よく分からない衝動が込み上げる。
(もっと、ほしい……ちょうだい……)
「――ん……ふ、あ……」
「こらこら、もう少しだけ、大人しくしような。夕食とってなかったから、さすがに朝は食べないと、体力が持たないぞ」
アークに下腹部を押しつけ揺すると、びりびりするような甘い刺激が身体を走る。逃げたくなるのに、もっとほしくもなる。昨夜覚えたばかりの感覚は、既にスノウの身体に馴染んでいた。
何かを言われているのは分かっていたけれど、耳を通り抜けていく。今はとにかく、アークのことがほしくてたまらなかった。
「アーク……ちょうだい……」
「ああ。朝食はサンドイッチだぞ。ほら、スノウが好きな蒸し鶏が入ってる。卵のもあるぞ」
「んん……違う……」
唇に何かが触れるが、スノウは首を振って拒んだ。お腹は空いている気がするけれど、今はそれよりもほしいものがある。
なぜ与えてくれないのだ。ジトリとアークを睨むと、苦笑を返されてしまった。
「凄い香りだな……。本格的に発情期が始まったか。少しでも食ってもらいたいんだがなぁ」
呟いたアークが、持っていたものを皿に戻し、何かを口に含む。そのまま、スノウに口づけてきた。
スノウは嬉々として迎える。愛し合う者同士のキスだ。求めるものとは少し違うけれど、これもまたスノウを幸せで満たしてくれるもの。
「んん……ん?」
絡み合う舌と共に、甘いものが口を満たす。桃の果汁だ。寝起きで喉が渇いていたからか、水分が身体に染み渡るような感覚で美味しい。
「――もっと……」
「ああ、もっと食べような」
一度唇が離れる。待ちきれずに口を開けると、アークがとろけるような眼差しで微笑んだ。
さほど間をおかずに、再び果物が与えられる。今度は少し酸味がある。オレンジだ。これもスノウの好物である。
何度も口移しで食べ物を与えられていたら、お腹が満たされてきた。そうすると、他のものを求める感覚が高まり、スノウは食事を拒否する。今度はアークも素直にそれを受け入れてくれた。
「アーク、ほしい……」
首に回した腕に力を込め、首元に顔を埋める。溢れだす甘い香りに頭がクラクラした。でも、離れるなんて考えられず、胸いっぱいに吸い込む。
アークの香りに夢中になっていると、不意に体勢が変わった。背中にベッドのマットレスが当たっている。
きょとんと目を瞬かせながらも、スノウは覆いかぶさってきたアークの身体を受け止めた。体重はさほど掛かっていないけれど、アークに全身を包み込まれている感覚に、うっとりと目を細める。
「……待たせたな。たくさんやるから、ちゃんと覚えるんだぞ」
耳元で囁かれた甘い声音に、ぞわぞわと震えが走る。それは、スノウの本能が求めていたものが、ようやく与えられることへの歓喜に違いなかった。
籠った体温を逃がすように息を吐き、愛しい香りを味わおうと深く息を吸い込む。でも、香りが薄くてもどかしい。
(アーク……アーク、どこ……?)
薄目を開くと、暗い室内に求める姿がない。じわりと視界が滲んだ。
火照った手をシーツに這わすと、ほんの僅かに温かさが伝わってくる。アークが出て行ってから、まださほど時間は経っていないらしい。
寂しさにグスグスと鼻を鳴らしながら、身体を起こす。
夜に乱れていた寝具類は、いつの間にか綺麗に整えられていた。スノウが持ってきたアークの私物はベッドに散らばり、巣を作ったままだけれど。
「――約束したのに……」
傍にいると言ってくれたのに、どうしていないのか。
熱い身体は鉛が詰まったように重くて動かしづらい。それでも、アークの姿を求めて、ベッドから足を下ろした瞬間、扉が開く音がした。同時に求めてやまなかった甘い香りがブワッと襲ってくる。
「っ、悪い。起きていたか」
「アーク……なんでいなかったの……?」
アークに手を伸ばす。サイドチェストにトレイを置いたアークが、抱き上げてくれたことで、ようやく不安が拭い去られた。でも、身体の熱は加速度的に高まっていく。
ベッドに腰を下ろしたアークの膝に跨って座り、スノウは本能的に腰を揺らした。アークの首筋に鼻を寄せ、甘い香りを胸いっぱいに吸い込むと、幸福感と共に、よく分からない衝動が込み上げる。
(もっと、ほしい……ちょうだい……)
「――ん……ふ、あ……」
「こらこら、もう少しだけ、大人しくしような。夕食とってなかったから、さすがに朝は食べないと、体力が持たないぞ」
アークに下腹部を押しつけ揺すると、びりびりするような甘い刺激が身体を走る。逃げたくなるのに、もっとほしくもなる。昨夜覚えたばかりの感覚は、既にスノウの身体に馴染んでいた。
何かを言われているのは分かっていたけれど、耳を通り抜けていく。今はとにかく、アークのことがほしくてたまらなかった。
「アーク……ちょうだい……」
「ああ。朝食はサンドイッチだぞ。ほら、スノウが好きな蒸し鶏が入ってる。卵のもあるぞ」
「んん……違う……」
唇に何かが触れるが、スノウは首を振って拒んだ。お腹は空いている気がするけれど、今はそれよりもほしいものがある。
なぜ与えてくれないのだ。ジトリとアークを睨むと、苦笑を返されてしまった。
「凄い香りだな……。本格的に発情期が始まったか。少しでも食ってもらいたいんだがなぁ」
呟いたアークが、持っていたものを皿に戻し、何かを口に含む。そのまま、スノウに口づけてきた。
スノウは嬉々として迎える。愛し合う者同士のキスだ。求めるものとは少し違うけれど、これもまたスノウを幸せで満たしてくれるもの。
「んん……ん?」
絡み合う舌と共に、甘いものが口を満たす。桃の果汁だ。寝起きで喉が渇いていたからか、水分が身体に染み渡るような感覚で美味しい。
「――もっと……」
「ああ、もっと食べような」
一度唇が離れる。待ちきれずに口を開けると、アークがとろけるような眼差しで微笑んだ。
さほど間をおかずに、再び果物が与えられる。今度は少し酸味がある。オレンジだ。これもスノウの好物である。
何度も口移しで食べ物を与えられていたら、お腹が満たされてきた。そうすると、他のものを求める感覚が高まり、スノウは食事を拒否する。今度はアークも素直にそれを受け入れてくれた。
「アーク、ほしい……」
首に回した腕に力を込め、首元に顔を埋める。溢れだす甘い香りに頭がクラクラした。でも、離れるなんて考えられず、胸いっぱいに吸い込む。
アークの香りに夢中になっていると、不意に体勢が変わった。背中にベッドのマットレスが当たっている。
きょとんと目を瞬かせながらも、スノウは覆いかぶさってきたアークの身体を受け止めた。体重はさほど掛かっていないけれど、アークに全身を包み込まれている感覚に、うっとりと目を細める。
「……待たせたな。たくさんやるから、ちゃんと覚えるんだぞ」
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