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続.雪豹くんと魔王さま
2-44.旅立ちへ④
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白狼族のみんなに別れを告げ、出発した空の旅は快適だった。
アークが傍にいないのは寂しいけれど、がんばって飛んでくれているのは分かるからスノウも我慢。
「アークの翼、キラキラして綺麗!」
白銀の翼が日光を反射して、スノウが見惚れてしまうほど美しい。
普段飛んでいるときも目にしているけれど、少し距離があるからこそ見やすくていい。
「さすが竜族。この威容だけで、獣人はひれ伏すね。スノウにとっては格好いいだけなんだろうけど」
ラトが感心と呆れが半々の声で呟く。
ナイトは空を飛んでいるだけではない恐怖を感じているようで、顔が引きつっていた。
(アークが変化した後の白狼族さんたちも、おじい様みたいな表情になって、ずっと地面で蹲っていたけど、どういうことだったんだろう)
別れ際の白狼族の様子を思い出して首を傾げる。
「おじい様、怖いの?」
「怖いというか……畏れ多い、という感じだな」
「畏れ多い? 何が?」
スノウの問いに、ナイトの横でラトが苦笑した。
ルイスが肩をすくめ、それぞれにハーブティーを渡す。リラックスできる香りだ。
「竜族は多くの魔族にとって畏怖する対象だよ。普段の陛下の様子ではあまり実感がなかったけど……実際に竜型を目にしたら分かる。私たちの本能が竜族を畏れ、ひれ伏そうとするんだ。その身に抱く、偉大な力を感じ取ってね」
「偉大な力……。――アーク、すっごい! っていうこと?」
よく分からない感覚だ。スノウにとって、アークは愛すべき番であり、格好いい存在。畏れというものを感じたことがない。
ディテールのないスノウの感想に、ラトが軽やかに笑って頷く。
畏れを感じていると言っていたわりには、ラトは普段と変わらない様子だ。ナイトが顕著な反応を示しているだけなのかもしれない。
ただ、白狼族たちの反応を考えれば、どちらが一般的な反応なのかはスノウでも分かる。
現にナイトがラトに奇妙なものを見る目を向けていた。
「そうだね。陛下はすっごい! んだよ」
ラトはハーブティーを飲みながら、ナイトの頭をパシッと叩く。視線に籠められた感情に気づいて腹が立ったようだ。
ナイトは「いてぇな」と呟きながらも、それ以上の文句はこぼさなかった。
「――彼が偉大なる竜族であり、魔族の王だとしても、私にとっては孫の番でしかないから。敵に回るわけはないのだし、身の内から噴き上がる力の片鱗を感じ取ったところで、必要以上に恐れる必要はない」
「本能を封じるくらい、孫の番を信用してるってことか。……言うのは簡単でも、なかなかなぁ」
ラトの言葉に、ナイトがぼやく。そして、頭をガリガリとかきながらハーブティーを飲み、少し表情を和らげた。
「白狼は本能に忠実だからね。危機に敏い分、強者の気配を感じ取って身がすくむのは仕方ない」
「へぇ、そうなんだ……」
獣人とまとめても、種族ごとに性質はバラバラだ。
ラトが続けて説明したのは、白狼族に限らず多くの狼族は、本能が強くて縦社会を築いているということ。強者に従う性質で好戦的なのが特徴だという。
新たな学びだった。
「あ、スノウ様。めちゃくちゃいい景色ですよ。射映画撮ります?」
「撮る!」
会話が途切れたところで飛び込んできた提案に、スノウは全力で頷いた。
空の旅が始まってから、何度も射映画を撮ったのだけれど、まだまだたくさんあってもいい。こうして旅をする機会なんて、この先どれくらいあるか分からないから。
「山が白く染まってて綺麗だねー。日光でキラキラ!」
アークの翼も写る画角でパシャリ。
異なる白の色合い、力強い羽ばたきさえも分かりそうな良い射映画が撮れた。
続けて、ラトとナイトに窓の傍に座ってもらい、スノウはその間に入る。ルイスに撮ってもらったら、三人での思い出射映画だ。
「いいね。綺麗に撮れた」
ご満悦な気分でにこにこ笑う。ラトたちも楽しそうで良かった。ナイトは相変わらず顔が少しこわばっているけれど。
『スノウ。お楽しみのようだが、もうすぐ雪豹の里に着くぞ』
「え、もう? ぁ……」
アークの声が頭に響く。スライム型の時のルイスと同じく、頭に言葉を直接伝えてきているのだ。
その声に促されるように、スノウは窓の外に目を向けた。
高い山が雪で覆われている。傾き始めた日差しで、次第に赤く染まっていくのが、過去の記憶を思い出させた。
スノウは白い雪が大好きだ。慕わしい里の景色を思い出すから。
でも、それが赤く染まっているのは嫌い。恐ろしい光景を思い出すから。
グッと握り込んだ手に温かな手が重なって、ハッと息を呑んだ。
ラトがスノウを見つめている。
その温もりと眼差しが心強くて、スノウは泣きたい気分で微笑んだ。
アークが傍にいないのは寂しいけれど、がんばって飛んでくれているのは分かるからスノウも我慢。
「アークの翼、キラキラして綺麗!」
白銀の翼が日光を反射して、スノウが見惚れてしまうほど美しい。
普段飛んでいるときも目にしているけれど、少し距離があるからこそ見やすくていい。
「さすが竜族。この威容だけで、獣人はひれ伏すね。スノウにとっては格好いいだけなんだろうけど」
ラトが感心と呆れが半々の声で呟く。
ナイトは空を飛んでいるだけではない恐怖を感じているようで、顔が引きつっていた。
(アークが変化した後の白狼族さんたちも、おじい様みたいな表情になって、ずっと地面で蹲っていたけど、どういうことだったんだろう)
別れ際の白狼族の様子を思い出して首を傾げる。
「おじい様、怖いの?」
「怖いというか……畏れ多い、という感じだな」
「畏れ多い? 何が?」
スノウの問いに、ナイトの横でラトが苦笑した。
ルイスが肩をすくめ、それぞれにハーブティーを渡す。リラックスできる香りだ。
「竜族は多くの魔族にとって畏怖する対象だよ。普段の陛下の様子ではあまり実感がなかったけど……実際に竜型を目にしたら分かる。私たちの本能が竜族を畏れ、ひれ伏そうとするんだ。その身に抱く、偉大な力を感じ取ってね」
「偉大な力……。――アーク、すっごい! っていうこと?」
よく分からない感覚だ。スノウにとって、アークは愛すべき番であり、格好いい存在。畏れというものを感じたことがない。
ディテールのないスノウの感想に、ラトが軽やかに笑って頷く。
畏れを感じていると言っていたわりには、ラトは普段と変わらない様子だ。ナイトが顕著な反応を示しているだけなのかもしれない。
ただ、白狼族たちの反応を考えれば、どちらが一般的な反応なのかはスノウでも分かる。
現にナイトがラトに奇妙なものを見る目を向けていた。
「そうだね。陛下はすっごい! んだよ」
ラトはハーブティーを飲みながら、ナイトの頭をパシッと叩く。視線に籠められた感情に気づいて腹が立ったようだ。
ナイトは「いてぇな」と呟きながらも、それ以上の文句はこぼさなかった。
「――彼が偉大なる竜族であり、魔族の王だとしても、私にとっては孫の番でしかないから。敵に回るわけはないのだし、身の内から噴き上がる力の片鱗を感じ取ったところで、必要以上に恐れる必要はない」
「本能を封じるくらい、孫の番を信用してるってことか。……言うのは簡単でも、なかなかなぁ」
ラトの言葉に、ナイトがぼやく。そして、頭をガリガリとかきながらハーブティーを飲み、少し表情を和らげた。
「白狼は本能に忠実だからね。危機に敏い分、強者の気配を感じ取って身がすくむのは仕方ない」
「へぇ、そうなんだ……」
獣人とまとめても、種族ごとに性質はバラバラだ。
ラトが続けて説明したのは、白狼族に限らず多くの狼族は、本能が強くて縦社会を築いているということ。強者に従う性質で好戦的なのが特徴だという。
新たな学びだった。
「あ、スノウ様。めちゃくちゃいい景色ですよ。射映画撮ります?」
「撮る!」
会話が途切れたところで飛び込んできた提案に、スノウは全力で頷いた。
空の旅が始まってから、何度も射映画を撮ったのだけれど、まだまだたくさんあってもいい。こうして旅をする機会なんて、この先どれくらいあるか分からないから。
「山が白く染まってて綺麗だねー。日光でキラキラ!」
アークの翼も写る画角でパシャリ。
異なる白の色合い、力強い羽ばたきさえも分かりそうな良い射映画が撮れた。
続けて、ラトとナイトに窓の傍に座ってもらい、スノウはその間に入る。ルイスに撮ってもらったら、三人での思い出射映画だ。
「いいね。綺麗に撮れた」
ご満悦な気分でにこにこ笑う。ラトたちも楽しそうで良かった。ナイトは相変わらず顔が少しこわばっているけれど。
『スノウ。お楽しみのようだが、もうすぐ雪豹の里に着くぞ』
「え、もう? ぁ……」
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でも、それが赤く染まっているのは嫌い。恐ろしい光景を思い出すから。
グッと握り込んだ手に温かな手が重なって、ハッと息を呑んだ。
ラトがスノウを見つめている。
その温もりと眼差しが心強くて、スノウは泣きたい気分で微笑んだ。
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