雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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続々.雪豹くんと新しい家族

3-22.熱い眼差し(☆)

 本日の執務は終わり。
 アークと一緒に部屋まで帰ってきて、スノウはたくましい身体の上に寝そべった。大きなソファは二人で寝たら程よい広さだ。

「早く湯浴みしよう」
「うーん……まだ、ここにいる……」

 髪を梳かれて促される。時々耳を噛まれるのがくすぐったい。
 小さく快感が走って、どうにもならなくなりそうだから、今はあまり悪戯されたくないのだけれど。アークがそれを気にしてくれる素振りはない。
 まったく、困った番だ。でも、それさえも愛しいと思うから、どうしようもない。

「このまま寝てしまいそうだな」
「……んー……ん、おきてる……」
「くくっ、半分寝てるだろう」
「おきてる、もん……」

 身体が揺れる。
 アークが笑っていると、スノウも嬉しくなって、胸元に擦りつきながら微笑んだ。

「寝るなら湯浴みしないと駄目だぞ」
「……なんでー」

 いつもなら、朝入ればいいかと妥協してくれるのに、今日は駄目らしい。
 純粋に疑問に思って、重たい瞼を上げる。

「――どうしたの?」

 思いの外真剣な目が、少しの苛立ちを滲ませていたので、本気で驚いて目が覚めてしまった。

「……随分と、長時間近くで接触していたようだな」

 手を取られる。アークが匂いを嗅いで、グッと眉根を寄せた。どう見ても不快そうだ。
 そこでようやく、アークとロウエンが話していたことを思い出す。

「そんなに、マルモさんの香りが残ってる?」

 スノウも嗅いでみたけれど、全く分からない。
 首を傾げていると、アークに指を噛まれた。ついで手のひらに熱い舌が這い、指先から手首まで熱心に嬲られる。

「微かだが。スノウに香りが残されているのが業腹だ」
「んっ……近くにいるだけで、そんなに残るんだね……」

 余す所なく舐めたアークは、仕上げと言わんばかりにスノウの鼻先を噛んできた。匂いに気づかないことを咎められているみたいだ。スノウにはどうしようもないことなのだけれど。

「スノウに極力他の香りが混ざらないように、ルイスを傍においているというのに」

 アークがギロッとルイスを睨む。
 湯浴みの準備を終えたルイスは「すみません、配慮が欠けていました」と平身低頭だ。
 珍しく軽く躱さないくらい、アークの機嫌は悪いらしい。

「……そっか、ルイスが僕のお世話係なの、香りが薄いのも理由だったんだ」

 今更知らされた事実に、スノウは納得した。
 ルイスから「どうにか宥めてくださいーっ」と目で訴えられていても、あまり気にしない。大丈夫、大丈夫。

 そんな脳天気なスノウを咎めるように、再び鼻先を噛まれた。スノウの鼻はおやつではないのだけれど。

「アーク、そんなに怒らないで」

 ちゅう、と唇を食んで離れる。薄いけれど柔らかな感触が名残惜しくて、何度も繰り返した。いつもならすぐに主導権が取り返されるのに珍しくアークがおとなしい。

 スノウの自由にできるのが少し嬉しくて、でもなぜだか寂しくもあって、ガブッと唇に噛みついた。
 舌を忍ばせて、ぎこちなく絡み合わせる。唾液がくちゅくちゅと混ざり溢れた。

「……アーク、もっと、キスして」

 動いてくれないアークに観念してねだる。どうしても、キスが上手くならない。いつもアークがスノウをすぐに気持ちよくして、頭をぼうっとさせてしまうから、学ぶことができないのだ。
 唯一、口づけを交わしながら呼吸することだけは覚えた。

「……ふっ、スノウが今、どんな目をしているか、分かっているか」
「どんな目……?」

 眦を指先で撫でられて、スノウは目をパチリと瞬かせる。頭が上手く働かない。
 アークの眼差しは熱くて、スノウを今にも食べてしまいそうなほどの欲が溢れていた。早く食べてくれたらいいのに。

「欲しくて欲しくてたまらない、と訴えてくる目をしてる」
「……うん、だって、ほしいもん」

 何を当然のことを言うのか。
 スノウは陶然と目を細めて、アークの頬に唇を寄せた。軽く噛みつくと、アークの身体が揺れる。ご満悦そうで、スノウも嬉しい。

「発情期が近いな」
「番欠乏症の症状ではなくですか?」
「香りが強くなっている。明日あたりには本格的に来そうだ」
「……早まりましたね」
「それこそ、番欠乏症の影響かもしれない」

 アークがルイスと話している。スノウ以外に意識を向けられているのが不満だ。
 むぅ、と唇を尖らせて、アークの頬に額を擦りつけて抗議する。

「アーク……暑い……」
「そうだな。まずは湯浴みしよう」
「んん……やぁだ」
「拒否しても連れて行くぞ。俺は別の男の香りを滲ませた番を抱くつもりはない」

 身体が起こされる。
 包みこまれるように抱き上げられて、不満はあるけれど心地よくもある。

「アーク……はやく……」

 身体の奥にある疼きに耐えかねて必死にねだっても、与えられるのはキスだけだ。

「……俺だって、早く抱きたい」

 必死に欲を抑え込むような声音。
 それなら我慢しなければいいのにと思いながら、スノウは『どう誘おうかな』とぼやけた頭を悩ませた。

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