雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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続々.雪豹くんと新しい家族

3-33.二人の出会い

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 雪の白、空の青。
 二つに挟まれた赤と濃いピンクは、鮮やかで人の目を惹きつける。

 それはマルモも例外ではなかったようで、見惚れた様子で凝視し固まっていた。
 鼻をくすぐる梅と椿の香り。それはスノウをホッとさせるけれど、マルモはどうなのだろう。

「……美しいですね。それに、とても心惹かれる香りがします」

 マルモの目が切なげに細められる。どこか潤んでいるようにも見えて、スノウはそっと目を逸らした。

 マルモが梅の香りに番を重ねたことは、言われずとも分かっていた。スノウとマルモの出会いは、梅のアロマオイルがきっかけだったのだから。

「……マルモ、番は見つかりそう?」
「いいえ。……でも、もういいのです。見つからないのも、私の運命だったのでしょう。こうして似ている香りを見つけられただけでも、心がやすらぎました」

 ふわりと微笑むマルモを、スノウはじっと見つめた。
 満ち足りたような表情が悲しくて、抱きしめたくなる。でも、それはスノウの役目ではない。

 背後で雪を踏む音を聞き、スノウは目を伏せた。
 二人が出会い、どうなるだろう。スノウになにができるだろうか。

「……スノウ様、陛下がお探しでしたよ」
「っ……宰相様……」

 ハッとした様子でマルモが振り返り、ロウエンを見つめて固まる。ロウエンとマルモの視線が交わった。

 その様子をドキドキとしながら、スノウは見守る。
 マルモはフェロモン異常症を患っているけれど、これほど近くにいる運命の番に気づけるのだろうか。

「わ、分かったよ。でも、もうちょっとだけ、ここにいる」
「さようですか。まぁ、緊急性はなさそうなので、私は構いませんよ」

 微かに笑むロウエンはいつも通りの様子だった。
 でも、ちらりとスノウに視線を向けた後、惹きつけられるようにマルモを凝視するので、やっぱり運命の引力には逆らえないらしい。

「あ……私は、このへんで……」
「え、やだよ。一緒にお花見しよう。ほら、あったかいお茶でも飲もうよ」

 マルモを慌てて引き止めて、ルイスが持つ籠を示す。
 ピクニックにはちょっと寒いけれど、少しくらい寛ぎたい。なにより、ここで立ち去られてしまったら、せっかくのロウエンとの出会いが無駄になる。

「で、ですが……」
「大丈夫。ロウエンさんは怖い人じゃないよ」
「そ、それは、分かっていますが……!」

 動揺した様子でマルモがひっついてきた。
 ルイスが少し眉を顰めたけれど、スノウの目に気づき口を引き結ぶ。そして、簡易のお茶会の準備を始めた。お花見ともいう。

「スノウ様っ……わ、私、なんだか、おかしい、です。医務室に、行きますっ……」
「え、大丈夫?」

 耳元で囁かれて、スノウはマルモの顔を見上げた。
 いつもは白磁のようなマルモの頬が、赤く染まっている。熱でもあるのかと額を触ってみたけれど、体温はスノウとあまり変わらなそう。

 フェロモン異常症による体調不良だろうか。どうしたらいいのだろう。
 ロウエンとの出会いは何度だってセッティングできるのだから、スノウが優先するのはマルモの体調だ。でも、なんとなく、今は問題ない気がする。勘だけれど。

「体調が悪いのなら、私が付き合おうか」
「ひぇっ!?」

 マルモがビクッと大げさに驚いて、背を丸めた。小さなスノウの背に隠れようとする姿が、とても可愛らしい。守ってあげたくなる。

「……っ、『ひぇ』って……くくっ」
「わ、笑われた……!?」

 ロウエンが顔を背けて、口元を手で押さえた。なんだかとても楽しそう。
 その代わりにマルモがちょっとショックを受けているけれど、それも可愛いから良しとする。良さげな雰囲気にも思えるし。

 スノウは綻びそうになる口元を、必死に引き締めた。ここでスノウまで笑ってしまったら、さすがにマルモが傷つくだろう。

「失礼。とても可愛らしい鳴き声だったので」
「……鳴き声、じゃ、ない、です」

 小さすぎるマルモの抗議は、ロウエンには届かず宙に消える。でも、ロウエンもなんとなく分かっていると思う。

 だって、マルモが唇を尖らせて拗ねているのは隠せていないし、それを眺めるロウエンはとても愉快そうに笑っているから。

(なるほど。ロウエンさんは気になる人をいじめたくなるタイプ。アーク、予想外のところで、僕のフォローが必要かもしれない)

 ロウエンが過去の事情からマルモを受け入れられず、傷つけてしまう可能性は想定していた。でも、このような場合の対応は考えていなかった。

 さて、どうしよう。

 新たに生じた問題に、スノウは頭を悩ませることになった。

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