雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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続々.雪豹くんと新しい家族

3-55.春の雪

 春めいてきていた気候が唐突に冬に戻った。
 ちらちらと窓の外を舞い始めた雪を見ながら、スノウは内心でなるほど、と呟く。

「スノウ様、今日は寒いようですから、もう少し薪を足しましょうか?」

 暖炉を見て、ルイスが悩ましげな表情だ。
 アークの魔法で室温は暖かく保たれているとはいえ、暖炉は冬の必需品。でも、最近は暖かい日が続いていたから、薪の補充を怠っていたらしい。
 ルイスはいつ卵が生まれる予兆があってもいいようにと、ほとんどスノウの傍を離れなくなっていたからしかたない。

「そうだね~……」
「私が薪の追加を頼んでこようか?」
「いえいえ、それには及びません。私が行ってきますから、ラト様はスノウ様のお傍に。お茶の準備もしてきましょう」

 ぽいぽいと薪を暖炉にくべて、ルイスが立ち上がる。
 思い立ったが吉日、とばかりに動き出すルイスを視線で追いながら、スノウはお腹を撫でた。

「雪豹ってやっぱり雪が好きだよね」
「うん? それはそうだけど」

 不思議そうな顔を見せるラトの背後を横切ろうとするルイスに呼びかける。

「ルイス。雪豹の子は、卵の状態で雪を感じたかったみたいだよ」
「そう、なんですか? さすがに、外出は駄目ですよ?」

 よく分からないと言いたげな表情を浮かべるルイスに、スノウの方が首を傾げてしまった。

「卵って、生まれてからすぐに雪を浴びたらダメなの?」

 ルイスとラトが固まる。
 そして、暫くしてから、ハッと息を飲んだ。

「は、あ!? え、もしかして、今日ですか!?」
「え、生まれるのか。……あ、確かに、そんな感じの魔力変化があるような?」

 ラトにじぃっと見つめられながら、スノウはルイスにひらひらと手を振った。

「ルイス。薪を用意するついでに、ドリーさんにも声かけてきてね。あ、お茶は飲む余裕ないかもしれない」
「むしろ、どうして今そんなに余裕なんですか?? え、あ、とりあえず、ドリー様っ!」

 パニック状態のまま駆けていくルイスの後ろ姿をぽかんとしながら見送り、下ろした手で再びお腹を撫でる。

「そんなに急がなくても、大丈夫そうなんだけど」
「そのようだね。でも、そろそろ寝室に移っておこうか」
「はーい」

 よいしょ、とソファから起き上がり、ラトと一緒に寝室に入る。こちらも暖炉がある。ルイスがきちんと管理してくれていたようで暖かい。

「不安はなさそうで良かったよ」

 ベッドに横になると、ラトに頭を撫でられた。それが心地よくて、思わず目を細めて口元を緩める。

「うん。たぶん、たくさんこの子たちと過ごせたからかな。今日だな、って感じたら、嬉しさしかないもん」
「そう、それなら随分と親孝行な子たちだ。きっと良い子に育つ」

 ラトの穏やかな声を聞きながら、お腹を撫でる。なんだかもぞもぞと起き出す気配がしていた。
 まだ卵だから、生まれても動き出せないのに。ちょっと早とちりな子たちなのかもしれない。

「……あのね。僕が生まれた日も、春に雪が降った日なんだって」
「春の雪は雪豹の里での吉兆だ。そのような日に生まれたスノウは、里にとっても大きな喜びだっただろうね」
「そうなんだ……。うん、そうだといいな。僕にとっても、この子たちは大きな幸せだもん」

 ラトと目を合わせて微笑む。
 生まれてくる子どもたちに、早くこの幸せを伝えてあげたいな。たくさんの『愛してる』を贈ろう。一緒に遊んで、笑いあって、いつだって心に寄り添ってあげたい。

(そんな親に、なれるかな……)

 少しばかりの不安が胸に落ちた瞬間に、寝室の扉が開かれた。
 慌てた表情のアークが、ベッド傍まで駆けてくる。

「スノウ!」
「アーク、ルイスに聞いたの?」
「ああ。……まだ大丈夫そうだな」

 スノウのお腹に手を当てて、アークがホッと息を吐く。ルイスがなんと伝えたのかはわからないけれど、随分と焦らせてしまったみたいだ。

 そんな風にスノウを一心に思ってくれるアークを見ていたら、不安なんてどこかに消えていった。
 初めて親になるのはスノウだけじゃない。アークも一緒だ。きっとアークはスノウに寄り添ってくれる。

(僕にはアークがいるから大丈夫)

 ふわふわと温かいものが心に満ちて、スノウはにこりと微笑んだ。

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