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続々.雪豹くんと新しい家族
3-57.輝く世界
今日は卵と一緒にお散歩。
春の日差しが心地良い。結局、雪豹の卵は雪を浴びられなかった。卵から孵ってからのお楽しみとして、待っていてもらいたい。
「スノウ様、籠にお入れしなくても大丈ですか?」
「うん、こうして抱えているからね」
肩から掛けた大きなバッグに、卵が二つ。アークが用意した守護の布に包まれているから万が一の事態だって起こりえない。
それならば、少しでも体温を感じさせてあげたいと思って、スノウは卵を抱きかかえるのを好んでいた。
生まれて二週間。一周り以上大きくなった卵は、スノウの手に余っているように見えるらしく、ルイスたちから心配されることも多い。
でも、スノウは笑って自分の意志を押し通す。アークが守ってくれているから大丈夫なのだ、と心底信じているのだ。
「——良い天気だねぇ」
「そうですね。暖かくて大変よろしいことです」
「ルイスは春が好き?」
「スノウ様と過ごせるなら、どんな季節だって好きですよ」
そういう意味で聞いたわけじゃない、と思ったけれど、ルイスらしいと笑ってしまった。
「この子たちはどの季節が好きかなぁ」
「雪豹の子は冬なんじゃないですか?」
「そうだねぇ。雪がやっぱり好きだろうね。一緒に雪遊びしなくちゃ。雪玉投げたり、雪うさぎ作ったり。お父様にプレゼントしないとね」
前にスノウがアークに雪うさぎを贈った時、すごく喜んでもらえたのだ。きっと、スノウが子どもと作ったそれも、宝物にしてくれるだろう。
「竜族はどうだろう?」
「陛下はどの季節でも変わりないですが。今度聞いてみては?」
「そうする」
そういえば聞いたことなかった、と思いながら庭を歩いていると、久々に梅の木があるところまでやって来ていた。もう花は散っている。
「——マルモとロウエンさん、上手くいっているみたいだね?」
時々デートの相談を受けるから、なんとなく進捗は把握しているけれど、一度マルモと話をしたいなぁと思う。きっと幸せそうな顔を見せてくれるだろう。
「番の契約を早々にされるそうですよ」
「……え、そこまで話が進んでいるの?」
その報告は受けていなかった。
目を丸くするスノウに、ルイスが肩をすくめる。
「マルモ様の病気のことがありますから。契約を結んでから、関係をさらに深めるつもりなんだとか。どちらにせよ、運命の番である以上、離れるという選択はないわけですし。……あれですね、私、結構ロウエン様に頼りにされるようになった気がしなくもないですよね?」
「うーん、ちょっと悔しい。僕だってデートの相談にのってるのに」
知らない内にロウエンと話していたらしいルイスを、スノウは横目で軽く睨む。冗談のようなものだけれど。
慌てて宥めようとしてくるルイスが面白くて、すぐに微笑んでしまった。
「——でも、みんな幸せになれたなら、こんなに嬉しいことはないよね」
梅の木を見上げて目を細める。
来年はもっと綺麗な花を咲かせられるといい。その時は、みんなでお花見をしよう。
スノウとアーク、ルイス、ロウエン、マルモ。そして、忘れてはならないのが、スノウたちの大切な子どもたち。
「いつ出てきてもいいんだよ。世界はこんなに暖かく輝いて二人を待ってるんだから。きっともっとたくさんの幸せが二人に降り注ぐよ」
卵を撫でながら空を見上げる。
この子たちが世界に生まれ落ちた日と同じくらい、希望に満ちた光がスノウたちに降り注いでいた。
聞こえなくなったはずの声が聞こえた気がする。きっとスノウが思い出に浸っていて届いた幻聴なのだろう。
それでも小さな二人が世界を見るのを心待ちにしているように思えて、スノウは嬉しくてたまらなくなった。
「待ち遠しいですね」
「うん。でも、こうして抱っこしていられるのも楽しいよ。きっと生まれたら、動き回って抱っこしていられなくなるかも」
雪の中を駆け回っていた自分を思い出し、クスリと笑う。もっと母の腕を味わっておけば良かったなんて、なくしてから分かることだ。
でも、それでいい。スノウは今幸せだから。後は、子どもたちにスノウ以上の幸せをあげるだけ。
「——あのね、ルイス。アークには秘密にしてくれる?」
「なんでしょう。私はスノウ様のお世話係ですから、秘密にしろと仰せなら、いくらでも」
軽く受けながらも、真剣な眼差しのルイスに微笑む。その言葉に嘘がないことをスノウは誰よりもよく知っていた。
「この子たちを生む時ね。本当は死ぬかと思ったの」
「っ、スノウ様……?」
「でもね、母様たちが力をくれた。……僕、ずっと心配をかけてばっかり。けど、みんなが守ってくれてるのが分かって、嬉しくてたまらないんだよ」
静かに頷くルイスから、スノウは空へと視線を移す。
スノウが亡くした同族は、この空の下にも上にもいない。ずっとスノウと一緒にこの心の中にいるのだ。
「——僕、アークに会えて幸せ。ルイスやロウエンさんたとと一緒にいられて楽しい。みんなの分まで幸せに生きるんだ。この子たちにも、そんな幸せな日々を過ごしてほしいな」
「きっとそうなりますよ」
力強く断言したルイスに、スノウは大きく頷きを返した。
——いつかこの世界を見るこの子たちが、幸せをたくさん感じられますように……。
そんなスノウの願いに、母たちも力を貸してくれる気がした。
*******
次回から新章になります。
増えた家族たちとの話を、引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです。
春の日差しが心地良い。結局、雪豹の卵は雪を浴びられなかった。卵から孵ってからのお楽しみとして、待っていてもらいたい。
「スノウ様、籠にお入れしなくても大丈ですか?」
「うん、こうして抱えているからね」
肩から掛けた大きなバッグに、卵が二つ。アークが用意した守護の布に包まれているから万が一の事態だって起こりえない。
それならば、少しでも体温を感じさせてあげたいと思って、スノウは卵を抱きかかえるのを好んでいた。
生まれて二週間。一周り以上大きくなった卵は、スノウの手に余っているように見えるらしく、ルイスたちから心配されることも多い。
でも、スノウは笑って自分の意志を押し通す。アークが守ってくれているから大丈夫なのだ、と心底信じているのだ。
「——良い天気だねぇ」
「そうですね。暖かくて大変よろしいことです」
「ルイスは春が好き?」
「スノウ様と過ごせるなら、どんな季節だって好きですよ」
そういう意味で聞いたわけじゃない、と思ったけれど、ルイスらしいと笑ってしまった。
「この子たちはどの季節が好きかなぁ」
「雪豹の子は冬なんじゃないですか?」
「そうだねぇ。雪がやっぱり好きだろうね。一緒に雪遊びしなくちゃ。雪玉投げたり、雪うさぎ作ったり。お父様にプレゼントしないとね」
前にスノウがアークに雪うさぎを贈った時、すごく喜んでもらえたのだ。きっと、スノウが子どもと作ったそれも、宝物にしてくれるだろう。
「竜族はどうだろう?」
「陛下はどの季節でも変わりないですが。今度聞いてみては?」
「そうする」
そういえば聞いたことなかった、と思いながら庭を歩いていると、久々に梅の木があるところまでやって来ていた。もう花は散っている。
「——マルモとロウエンさん、上手くいっているみたいだね?」
時々デートの相談を受けるから、なんとなく進捗は把握しているけれど、一度マルモと話をしたいなぁと思う。きっと幸せそうな顔を見せてくれるだろう。
「番の契約を早々にされるそうですよ」
「……え、そこまで話が進んでいるの?」
その報告は受けていなかった。
目を丸くするスノウに、ルイスが肩をすくめる。
「マルモ様の病気のことがありますから。契約を結んでから、関係をさらに深めるつもりなんだとか。どちらにせよ、運命の番である以上、離れるという選択はないわけですし。……あれですね、私、結構ロウエン様に頼りにされるようになった気がしなくもないですよね?」
「うーん、ちょっと悔しい。僕だってデートの相談にのってるのに」
知らない内にロウエンと話していたらしいルイスを、スノウは横目で軽く睨む。冗談のようなものだけれど。
慌てて宥めようとしてくるルイスが面白くて、すぐに微笑んでしまった。
「——でも、みんな幸せになれたなら、こんなに嬉しいことはないよね」
梅の木を見上げて目を細める。
来年はもっと綺麗な花を咲かせられるといい。その時は、みんなでお花見をしよう。
スノウとアーク、ルイス、ロウエン、マルモ。そして、忘れてはならないのが、スノウたちの大切な子どもたち。
「いつ出てきてもいいんだよ。世界はこんなに暖かく輝いて二人を待ってるんだから。きっともっとたくさんの幸せが二人に降り注ぐよ」
卵を撫でながら空を見上げる。
この子たちが世界に生まれ落ちた日と同じくらい、希望に満ちた光がスノウたちに降り注いでいた。
聞こえなくなったはずの声が聞こえた気がする。きっとスノウが思い出に浸っていて届いた幻聴なのだろう。
それでも小さな二人が世界を見るのを心待ちにしているように思えて、スノウは嬉しくてたまらなくなった。
「待ち遠しいですね」
「うん。でも、こうして抱っこしていられるのも楽しいよ。きっと生まれたら、動き回って抱っこしていられなくなるかも」
雪の中を駆け回っていた自分を思い出し、クスリと笑う。もっと母の腕を味わっておけば良かったなんて、なくしてから分かることだ。
でも、それでいい。スノウは今幸せだから。後は、子どもたちにスノウ以上の幸せをあげるだけ。
「——あのね、ルイス。アークには秘密にしてくれる?」
「なんでしょう。私はスノウ様のお世話係ですから、秘密にしろと仰せなら、いくらでも」
軽く受けながらも、真剣な眼差しのルイスに微笑む。その言葉に嘘がないことをスノウは誰よりもよく知っていた。
「この子たちを生む時ね。本当は死ぬかと思ったの」
「っ、スノウ様……?」
「でもね、母様たちが力をくれた。……僕、ずっと心配をかけてばっかり。けど、みんなが守ってくれてるのが分かって、嬉しくてたまらないんだよ」
静かに頷くルイスから、スノウは空へと視線を移す。
スノウが亡くした同族は、この空の下にも上にもいない。ずっとスノウと一緒にこの心の中にいるのだ。
「——僕、アークに会えて幸せ。ルイスやロウエンさんたとと一緒にいられて楽しい。みんなの分まで幸せに生きるんだ。この子たちにも、そんな幸せな日々を過ごしてほしいな」
「きっとそうなりますよ」
力強く断言したルイスに、スノウは大きく頷きを返した。
——いつかこの世界を見るこの子たちが、幸せをたくさん感じられますように……。
そんなスノウの願いに、母たちも力を貸してくれる気がした。
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次回から新章になります。
増えた家族たちとの話を、引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです。
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