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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-6.二人の思い
今日明日中にでも生まれそうな子の名前は決まったけれど、もう一人、お寝坊さんの子が残っている。
「それじゃあ、雪豹の子も、アークがいい感じに名前をつけてね」
「……そんな風に期待されても、あまり応えられる気はしないが。スノウが言うなら頑張ろう」
苦笑するアークに、片方の紙を再度差し出す。スノウが雪豹の子のために考えた名前を三つ書いてある。
「僕はね。冬とか雪に関わる名前がいいと思うの。この子、雪が好きみたいだから。それで考えたのが『ルミ』と『ウィンタ』と『プティー』だよ」
「あまり聞いたことがないな。どんな意味なんだ?」
「『ルミ』は雪豹族の里の古い言葉で、『愛しい雪』って意味なんだって。『ウィンタ』は『待ち遠しい冬』で、『プティー』は『可愛らしい白』だって、おばあ様に教えてもらったの」
スノウが卵を産むのと、育てるのをしばらく手伝ってくれたラトは、すでに白狼の里に帰還している。今度は子どもたちを連れて、スノウの方から会いに行くつもりだ。
名前についてアイデアをくれたのは、スノウが随分と悩んでいたから。
ラトに教えてもらうまで、スノウは雪豹族の里の古い言葉なんて知らなかった。教えてもらえる年歳に育つ前に、同族のほとんどを失ってしまったのだから仕方ない。
ラトには知る限りの言葉を教えてもらい、ノートに書き残してあるので、いつか子どもにも伝えるつもりだ。
もう雪豹族の里はないけれど、文化はスノウたちが生き続ける限り、引き継いでいきたい。それが、みんなが生きた証であるとも思うのだ。
「……そうか。良い意味のある名だ。特に『ルミ』と『プティー』は雪豹を示す『雪』と『白』に『愛しい、可愛い』という意味がかかっていて、相応しいんじゃないか」
「そう思う? 僕も結構気に入ってるの!」
胸を張って微笑むと、アークが頭を撫でてくれた。耳も一緒にくすぐられて、気持ちいいようなムズムズするような、不思議な気分になる。アークに触れられているというだけで、幸せであることに変わりはないのだけれど。
(そういえば、最近、発情期がなかったな……?)
卵を産んでしばらくは発情期がないと聞いているけれど、いつまでなのだろうかと、小さく首を傾げる。突然来るのは少し困るかもしれない。
「雪豹の子は女の子なのか」
アークの言葉で思考が遮られ、疑問に思ったことすらすぐに忘れてしまった。今のスノウにとっては、子どものことが一番大切なのだ。
常々「俺を忘れるな。同率一番までは許容できる……はずだ」と苦々しい表情で言っているアークには、あまり伝えられないことだけれど。
「うん、たぶん。直感だけど」
「スノウがそう思うなら外れはしないだろう。……女の子か。『ルミ』も『プティー』も、そのままで良い名前だと思うが——」
二択まで絞られたらしい。でも、スノウはにこにこ笑いながら、アークに案を出してもらうことにする。だって、ブレスラウだけアークが考えるなんて、雪豹の子が可哀想ではないか。
「竜族の里の言葉で、何かないの?」
「俺も、あまり多くを知るわけではないからな……」
唸るように言いつつも、アークは真剣に考えてくれているようだ。今までの子どもへの関心の低さを思うと、随分と父親らしくなった気がする。それがスノウは嬉しくてたまらない。
このまま子煩悩になってほしい、と思ったけれど、それはそれでスノウの方が拗ねてしまうような予感がして、口には出さないことにした。
おそらくそのように伝えたところで、アークは「スノウ以上に子を愛すことなんてありえない」と返してくるのだろうけれど。
「——『シャンス』や『トゥーナ』は使えるかもしれないな」
「どんな意味?」
思わず身を乗り出して尋ねる。アークが出してくれた案が悪いはずがないのだと、期待を超えた信頼が表情に溢れた。
アークは小さく肩をすくめながら、ポツリと「どちらも、幸運という意味だな」と呟く。
「幸運?」
「ああ。使い分けるとしたら、『シャンス』は『良いことに巡り会える』という意味で、『トゥーナ』は『生まれ持って運がいい』という意味になる」
「『シャンス』と『トゥーナ』……どっちも良い意味だね!」
子どもの幸せを願うなら、運があるに越したことはない。
単純にそう考えて微笑むスノウの頬に、アークが愛おしげに触れた。
「ああ。……いずれ、雪豹族をさらに増やしたいと思うなら、雪豹の子にも運命の番が現れてほしいからな。女の子なら、普通に他種族と番になる可能性もあるが……あまりその機会は多くない、という事情もある」
アークに言われて、スノウはハッと息を呑んだ。
生き残っている雪豹族に、子どもの番になりえる相手はもういないと思う。
そして、魔族は基本的に同族と番関係を持ちたがるので、女の子であっても、将来他種族の番を持つのは難しいのだ。
でも、運命の番ならば問題なくなる。そして、その番の相手と生まれた子は、雪豹族になる可能性を持っている。
アークの言葉はスノウの望みを写したものだった。
「……そうだね。正直、この子が幸せになるのなら、孫が雪豹族かどうかなんて、そんなに気にしないけど。番を持つのに苦労させたくはないもんね」
一人きりで一生を過ごすなんて、なんだか寂しい。この子はそれさえも楽しめるのかもしれないけれど。
スノウはアークと同じ寿命だから、おそらく子より長生きだ。何があっても一人きりにはしないけど、番と家族はまた別だろう。
「——うん。たくさんの幸運を持てるように、そのどちらかの名前をつけよう!」
微笑んだスノウに、アークも穏やかな眼差しで頷き返してくれた。
「それじゃあ、雪豹の子も、アークがいい感じに名前をつけてね」
「……そんな風に期待されても、あまり応えられる気はしないが。スノウが言うなら頑張ろう」
苦笑するアークに、片方の紙を再度差し出す。スノウが雪豹の子のために考えた名前を三つ書いてある。
「僕はね。冬とか雪に関わる名前がいいと思うの。この子、雪が好きみたいだから。それで考えたのが『ルミ』と『ウィンタ』と『プティー』だよ」
「あまり聞いたことがないな。どんな意味なんだ?」
「『ルミ』は雪豹族の里の古い言葉で、『愛しい雪』って意味なんだって。『ウィンタ』は『待ち遠しい冬』で、『プティー』は『可愛らしい白』だって、おばあ様に教えてもらったの」
スノウが卵を産むのと、育てるのをしばらく手伝ってくれたラトは、すでに白狼の里に帰還している。今度は子どもたちを連れて、スノウの方から会いに行くつもりだ。
名前についてアイデアをくれたのは、スノウが随分と悩んでいたから。
ラトに教えてもらうまで、スノウは雪豹族の里の古い言葉なんて知らなかった。教えてもらえる年歳に育つ前に、同族のほとんどを失ってしまったのだから仕方ない。
ラトには知る限りの言葉を教えてもらい、ノートに書き残してあるので、いつか子どもにも伝えるつもりだ。
もう雪豹族の里はないけれど、文化はスノウたちが生き続ける限り、引き継いでいきたい。それが、みんなが生きた証であるとも思うのだ。
「……そうか。良い意味のある名だ。特に『ルミ』と『プティー』は雪豹を示す『雪』と『白』に『愛しい、可愛い』という意味がかかっていて、相応しいんじゃないか」
「そう思う? 僕も結構気に入ってるの!」
胸を張って微笑むと、アークが頭を撫でてくれた。耳も一緒にくすぐられて、気持ちいいようなムズムズするような、不思議な気分になる。アークに触れられているというだけで、幸せであることに変わりはないのだけれど。
(そういえば、最近、発情期がなかったな……?)
卵を産んでしばらくは発情期がないと聞いているけれど、いつまでなのだろうかと、小さく首を傾げる。突然来るのは少し困るかもしれない。
「雪豹の子は女の子なのか」
アークの言葉で思考が遮られ、疑問に思ったことすらすぐに忘れてしまった。今のスノウにとっては、子どものことが一番大切なのだ。
常々「俺を忘れるな。同率一番までは許容できる……はずだ」と苦々しい表情で言っているアークには、あまり伝えられないことだけれど。
「うん、たぶん。直感だけど」
「スノウがそう思うなら外れはしないだろう。……女の子か。『ルミ』も『プティー』も、そのままで良い名前だと思うが——」
二択まで絞られたらしい。でも、スノウはにこにこ笑いながら、アークに案を出してもらうことにする。だって、ブレスラウだけアークが考えるなんて、雪豹の子が可哀想ではないか。
「竜族の里の言葉で、何かないの?」
「俺も、あまり多くを知るわけではないからな……」
唸るように言いつつも、アークは真剣に考えてくれているようだ。今までの子どもへの関心の低さを思うと、随分と父親らしくなった気がする。それがスノウは嬉しくてたまらない。
このまま子煩悩になってほしい、と思ったけれど、それはそれでスノウの方が拗ねてしまうような予感がして、口には出さないことにした。
おそらくそのように伝えたところで、アークは「スノウ以上に子を愛すことなんてありえない」と返してくるのだろうけれど。
「——『シャンス』や『トゥーナ』は使えるかもしれないな」
「どんな意味?」
思わず身を乗り出して尋ねる。アークが出してくれた案が悪いはずがないのだと、期待を超えた信頼が表情に溢れた。
アークは小さく肩をすくめながら、ポツリと「どちらも、幸運という意味だな」と呟く。
「幸運?」
「ああ。使い分けるとしたら、『シャンス』は『良いことに巡り会える』という意味で、『トゥーナ』は『生まれ持って運がいい』という意味になる」
「『シャンス』と『トゥーナ』……どっちも良い意味だね!」
子どもの幸せを願うなら、運があるに越したことはない。
単純にそう考えて微笑むスノウの頬に、アークが愛おしげに触れた。
「ああ。……いずれ、雪豹族をさらに増やしたいと思うなら、雪豹の子にも運命の番が現れてほしいからな。女の子なら、普通に他種族と番になる可能性もあるが……あまりその機会は多くない、という事情もある」
アークに言われて、スノウはハッと息を呑んだ。
生き残っている雪豹族に、子どもの番になりえる相手はもういないと思う。
そして、魔族は基本的に同族と番関係を持ちたがるので、女の子であっても、将来他種族の番を持つのは難しいのだ。
でも、運命の番ならば問題なくなる。そして、その番の相手と生まれた子は、雪豹族になる可能性を持っている。
アークの言葉はスノウの望みを写したものだった。
「……そうだね。正直、この子が幸せになるのなら、孫が雪豹族かどうかなんて、そんなに気にしないけど。番を持つのに苦労させたくはないもんね」
一人きりで一生を過ごすなんて、なんだか寂しい。この子はそれさえも楽しめるのかもしれないけれど。
スノウはアークと同じ寿命だから、おそらく子より長生きだ。何があっても一人きりにはしないけど、番と家族はまた別だろう。
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